寄りの読売世論調査で支持43%、不支持49%と初の逆転!
寄りの読売世論調査で支持43%、不支持49%と初の逆転!
「植草一秀の『知られざる真実』」
2015/07/27
安倍政権がつくる世界でもっとも貧しい国日本
第1201号
ウェブで読む:http://foomii.com/00050/2015072712280827784
EPUBダウンロード:http://foomii.com/00050-28437.epub
────────────────────────────────────
安倍晋三内閣の支持率が順調に下がり続けている。
各社世論調査で内閣支持率が急落し、不支持率が支持率を上回った。
政権危機ラインは支持率30%と言われており、この水準を切るのは時間の問
題だろう。
日本の主権者は、一刻も早くこの政権を退場させるべきである。
そもそも、この政権の基盤は脆弱である。
衆参両院で与党勢力が占有する議席数が多いために、ある種の「錯覚」が生ま
れているが、主権者国民多数の支持に支えられてきた政権ではない。
2014年12月の総選挙で、主権者のなかで自民党に投票した者は、わずか
17.4%に過ぎない(比例代表選挙)。
公明党を含めても24.7%だ。
主権者の4分の1にしか支えられていない政権なのだ。
それでも衆院議席の68%を占有してしまったのは、小選挙区選挙において、
安倍政権に対峙する勢力が候補者を乱立し、自公勢力を側面支援してしまった
からなのだ。
安倍政権の支持率が急落している理由は明白である。
国民主権の国であるにもかかわらず、主権者国民の多数が反対している施策を
強行実施しようとしているからだ。
原発の再稼働
憲法違反の戦争法案強行採決
TPP参加
は、いずれも主権者多数が反対している施策である。
国民主権の国で、主権者国民の多数が反対している施策を強行する政権は、論
理的に退場を迫られるはずである。これを「理の当然」と言う。
安倍政権は安保法制=戦争法案の強行採決で内閣支持率が急落したことを気に
して、国立競技場の建設計画を白紙撤回した。
テレビでは、「トップの英断でこのような決断ができる」という主旨の発言を
示したコメンテーターが何人もいたが、この手のコメンテーターは100%権
力の狗(いぬ)と見て間違いない。
白紙に戻したことを絶賛するのでなく、このような計画をいままで引っ張って
きたことが糾弾されるべきが、あたり前だからである。
諸外国のオリンピックメインスタジアムの建設費用が
1996年 アトランタ 254億円
2000年 シドニー 660億円
2004年 アテネ 355億円(改修)
2008年 北京 513億円
2012年 ロンドン 600億円
2016年 リオデジャネイロ 550億円(改修)
であるときに、緑の自然のなかに巨大な鉄とコンクリートの塊を2500億円
もかけて建造することの異常さが認識されてこなかった。
本ブログ、メルマガでは、諸外国の建設費用を踏まえて700億円以内に抑え
ることが必要だと主張したが、日本がギリシャ規模の財政状況の悪い国だと主
張するなら、アテネの355億円以下に収めるべきだろう。
「コンパクトな大会」
を提唱するなら、日本の
「わびとさび」
の芸術観を生かした簡素な造りを目指すべきだ。
それなら、300億円で建造することが十分に可能だろう。
この国の政治が間違った方向にある根本は、財政の構造にある。
「財政の構造」とは、
利権につながる財政支出は大盤振る舞いし、
国民生活の基礎を支える財政支出は徹底的に切り棄てること
にある。
子どもの貧困率が世界最悪レベルである。
とりわけ、ひとり親世帯の子供の貧困率は5割を超えている。
母子世帯の子どもの生存権が脅かされているのだ。
母子心中や母親による子殺しなどの悲惨な現実が広がっている。
生活保護の適用を排除しようとする政治の意思が、悲惨な現実を生み出してい
るのだ。
オリンピックに巨大な国費を投入する前に、すべての国民が安心して生きてゆ
けるための体制を整えるのが先である。
豊かな社会とは、巨大な建造物を世界にひけらかす社会ではない。
社会を構成するすべての構成員に、居場所と、生存の保障と、笑顔が提供され
るのが「豊かな社会」の証しである。
いま日本は、世界有数の「貧しい社会」に転落しつつある。
こんな「貧しい社会」で巨大な費用をかけてオリンピックを開催する意味はな
い。
ギリシャの話題が出ると、NHKはいつも日本との比較をする。
ギリシャの政府債務はGDP比180%。
これに対して、日本の政府債務のGDP比は200%を超えている。
日本はギリシャよりも財政事情が深刻な国だと宣伝するのである。
その目的は、
消費税大増税を推進し、
社会保障を切り刻む、
ことにある。
ギリシャのようになっていいのか、
と脅しをかけて、消費税大増税と社会保障制度の破壊を推進しているのだ。
しかし、政府、財務省、NHKが一切報道しない、重大なデータがある。
それは、政府資産の規模だ。
日本の一般政府(中央政府、地方政府、社会保障基金)の
債務残高は2013年末時点で1167.1兆円ある。
(国民経済計算年報)
他方、
資産残高は2013年末時点で1167.5兆円ある。
つまり、1000兆円の政府債務、GDP比200%超の政府債務残高はうそ
ではないが、日本政府はこの債務を上回る資産を保有しているのだ。
資産債務を通算して、資産超過である国が債務危機に陥るわけがない。
すべての日本国民は騙されているのだ。
政府が「完全虚偽の財政危機」を喧伝している理由は、既述したように、
1.巨大庶民増税を強行すること
2.社会保障制度を破壊すること
を目的とするものだ。
これで金を作り、金を浮かしてどうするのか。
官僚と利権政治屋と癒着企業の私腹を肥やすのだ。
その、もっとも分かりやすい例が国立競技場である。
この話のなかにも、利権政治屋の顔が何人も登場する。
かれらは、国民の血税で私腹を肥やす連中なのだ。
国民生活の基礎を支えているのが社会保障制度である。
何らかの要因で困窮している人を支える公的扶助
老後の生活を支える年金と介護支援制度
疾病に陥った際の支えとなる公的医療保険
子どもの成長と教育を支える制度
これらを十分に備えた社会を
「豊かな社会」
と呼ぶ。
いまの日本は、
「豊かな社会」
ではなく、
「貧しい社会」
にまっしぐらである。
「貧しい社会」にまっしぐらに進んでいる理由は、日本の為政者の心が貧しい
からである。
彼らは、
「今だけ、金だけ、自分だけ」
の心しかもたない。
自分の利益、自分の利権だけを追求する。
だから、生活保護を切って、国立競技場に2500億円のお金をかけるような
施策が表面化してくるのだ。
これが、小泉竹中政権が本格稼働させ、安倍政権が引き継いでいる
新自由主義経済政策
弱肉強食推進政策
弱者切り捨て政策
なのである。
財務省は財政危機を叫び、財政再建を叫んで、
消費税大増税
と
社会保障制度の破壊
には全力を注ぐが、
自分たちの
天下り利権解消
には一切力を注がない。
力を注がないどころか、天下り利権のさらなる拡大に突進しているのだ。
利権支出を切れば、増税などしなくとも、日本の社会保障制度を大幅に拡充す
ることができる。
日本の社会保障制度を大幅に拡充するなら、多くの日本国民は、税および社会
保障負担の引き上げを容認するだろう。
国民負担は大きいが、すべての社会の構成員が、安心して、居場所を確保し
て、笑顔で暮らすことのできる社会が実現する。
私たちは、北欧型の福祉社会を目指すべきである。
安倍政権は、日本を米国型の弱肉強食社会に移行させようとしている。
その一方で、政治屋と官僚の利権構造だけは維持拡大しようとしているのであ
る。
最悪の国である。
安倍政権の支持率をさらに順調に下落させて、この政権を退陣させ、まったく
正反対の政権を一刻も早く樹立しなければならない。