夕陽丘

時事問題とロースクールの日常など

◆企業買収 プリヴェ,中堅証券買収断念

2005年03月31日 23時47分11秒 | 企業法務学習日記
 新聞報道等によると,プリヴェチューリッヒ企業再生グループ株式会社は,30日,いちよし証券等中堅証券5社に対する買収交渉を中止すると発表,保有していた5社の株式をすべて関連会社のプリヴェチューリッヒ アセット・マネジメント株式会社に売却したという。同社は,友好的買収が困難と判断したことを買収中止理由としているという。

◆民法 振り込め詐欺の被害者に振込先口座の払戻権を認めた事例(05.03.30東京地判)

2005年03月31日 23時31分40秒 | 企業法務学習日記
◆概要

 東京地裁民事第34部(藤山雅行裁判長)は,3月30日,振り込め詐欺で架空名義の口座に現金を振り込まされた被害者5人が,振込先の都市銀行4行(東京三菱・UFJ・りそな・三井住友)に被害額の返還を求めた訴訟で,被害者に振込先口座の預金を払い戻す権利があることを認め,都市銀行4行に対して,計約260万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 理由の要旨は,被害者は振込先口座名義人に対し不当利得返還請求権を有するが,口座名義人の実在・所在の把握が困難で被害者が直接に口座名義人に返還請求する方法は現行法上存在せず,不当利得の返還のためには口座名義人の預金払戻請求権を被害者が代位行使するほかない,として債権者代位権に基づく口座名義人の預金払戻請求権の行使を認めるというもの。

 新聞報道等によると,同訴訟は,裁判所の指揮によって訴訟進行が当初と大きく異なっている。被害者側は,当初,口座名義人を訴えたが実在しないことが判明,裁判所が民法の規定に基づいて銀行に払い戻しを求める訴訟に変更するよう提案したことを受け、訴えの変更を行った。また,裁判所は,被害者側の立証の負担を軽減する措置をとっており,振り込め詐欺の被害者救済に司法が積極的に関与したと評価されている。

◆要旨

1 判文によると,原告請求原因は,①被告銀行に対する不当利得返還請求,及び,訴外口座名義人が被告銀行に有する預金返還請求権の債権者代位権に基づく代位行使で,両請求の選択的併合とした。

2 これに対し,裁判所は,①については「被告らはいずれも入金関係表のうち指定口座欄記載の口座名義人に対して預金返還債務を負うものであるから」被告銀行には利得がないとして原告請求を排斥した。②については,以下のように述べて,原告請求を認容した。

ア 被保全債権

 「原告らは、それぞれ、電話をかけてきた氏名不詳者に対して何ら債務を負っていないにもかかわらず、その氏名不詳者からの脅迫的言辞ないし欺罔行為に基づき、畏怖状態ないし誤信状態に陥り、これにより氏名不詳者の指示した銀行口座に金銭を振り込んだというのであるから、当該氏名不詳者に対して、それぞれ振込額と同額の不当利得返還請求権を有することが認められるし、しかも当該氏名不詳者が振込先口座を有している者であることが容易に推認でき」るとして被保全債権の存在を認定した。

イ 保全の必要性

 「原告らは電話をかけてきた氏名不詳者らに対し振込金と同額の不当利得返還請求権を有し、その氏名不詳者が振込先として指定した各銀行口座を所有しているものと認められるところ、所在も明らかでない氏名不詳者に対して直接債務名義を取得する方法は現行法制上存在しないし、当該氏名不詳者の財産と認められるものは上記各口座についての預金払戻請求権以外には見当たらないのであるから、原告らとしては、自己の不当利得返還請求権を保全するには当該預金払戻請求権を代位行使するほかなく、保全の必要性は優に認められる。」

東京地裁主要判決速報

◆政治と金,日経新聞夕刊から

2005年03月31日 21時40分54秒 | 日記・書評
 日経新聞夕刊の連載記事である永田町インサイドの今日の記事が面白かった。見出しは,「点検 政治資金収支報告書,各党の台所事情」というもの。

 記事によれば,資金の入手方法・使い道に各党それぞれ特徴があるという。例えば,自民党は収入に占める献金の割合が高く,献金依存度は39.7%になるという。同じく民主は22.7%,公明は23%,共産は17.2%,社民は15.7%である。対して,政党交付金への依存度は民主党がダントツで,46.1%と半分近くである。他党は,自民21.6%,公明10%,共産ゼロ,社民29.9%。共産がゼロなのは,公費助成に反対で受け取っていないからだという。それはそれでスジが通っている。まあ,機関紙の売り上げ等の事業収入が自民党の献金額に匹敵するほど大きいからできることともいえるのだが。

 支出の面で厳しいのは,凋落著しい社民党だろう。議員数が減ることで交付金が減り,職員のリストラにまで踏み切らざるを得なくなった。労働運動を指導してきた歴史からすると,隔世の感がある。もはや社民党は時代についていけなくなったということだろうか。

 資産内容で気になったのは,公明党が高級絵画を8枚保有しているということ。取得価額の最高は1800万円だという。正直,意味がわからない。政党に絵画がいるのだろうか?同党の出自も含めて,特殊性のある政党である。政教分離原則を常に意識していただきたいものだ。

 それぞれの政党の歴史を理解したうえで,それぞれの項目を見ていくと,こういう特徴ができてくるのにも肯ける。政治と金は切り離せない。しかし,公明正大に,国民の代表者として正義や道義に反しないような運用を怠らないで欲しい。そのためには,自分たちもこの報告書などでよくよく監視していくことが必要なのだと思う。

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◆知財法 ファイルローグ事件 控訴審判決 一審支持,控訴棄却

2005年03月31日 21時02分51秒 | 企業法務学習日記
 31日,ファイルローグ事件として著名な訴訟の控訴審判決が東京高等裁判所でなされた。東京高裁(佐藤久夫裁判長)は,MMO側に約7100万円の損害賠償の支払いとサービス差止を命じた一審判決を支持,MMO側の控訴を棄却した。

●事案の概要: 同訴訟は,MMOが2001年11月に始めた「ファイルローグ」サービスが著作権を侵害するとして,日本音楽著作権協会と日本レコード協会加盟19社が訴えていたもの。一審(東京地裁)は,2003年12月の判決で,原告請求を認容し,被告MMO側に約7100万円(著作権協会3450万円・レコード会社約3650万円)を支払うようMMOに命じていた。なお,サービスは,2002年4月の仮処分決定を受け既に停止している。
 同サービスは,同社がインターネット上に音楽ファイルを交換できる場を無料提供し,会員同士が市販の音楽CDを圧縮コピーしたファイルを自由に交換できるというもので,MMOは,カナダの会社と提携して2001年11月から,交換のためのソフトウエアを提供していた。 

●事案の感想: 現在公判中のWINNY事件にも少なからず影響を与えると思われる。

◆個人情報流出 住友生命,過失で採用応募学生の個人情報を流出

2005年03月28日 19時05分40秒 | 企業法務学習日記
1 概要

 住友生命保険相互会社は,同社2006年度総合職員採用に応募している関東地方の特定私立大学学生303人分の個人情報が記載されているリストを,同リストに記載されている私立大学学生56人に対して電子メールを送信する際に誤って添付した。現時点で流出した個人情報の不正利用は確認されていないという。

2 流出内容及び原因

 流出内容は,氏名・大学名・学部・学科・生年月日・携帯電話番号・メールアドレス・携帯メールアドレス・現住所・電話番号・面談状況。
 流出原因は,3月24日20時50分頃,学生56名に対し,会社訪問に関する電子メールを送信する際,上記リストが添付されていることを見逃して発信したという担当者の不注意による。

3 同社の対応

 流出発生後,送信先学生に直接連絡を行い,メール削除を依頼し,情報が流出した学生に対しては,事情を説明の上,謝罪したという。当該大学へも連絡,謝罪したという。28日,公表。

◆ライブドアPJについての雑感

2005年03月27日 06時40分32秒 | 日記・書評
 時間があったので,ライブドアのパブリックジャーナリズム・ニュースを読むことにした。なるほど,内容は様々である。時事というより近隣の話題といったものが多いように思える。一般のジャーナリズムが取り上げない内容を重視するという意図なのだろうか?

 正直な感想をまず書かせて頂きたい。実際,あの程度の内容の記事をよく掲載しているなという印象が最初から最後まで拭えなかった,というのが正直なところだ。文章表現の稚拙さはさておくとして,論理構成のなさ,事実と主張の無分別,調査や資料検討のなさについては,読んでいて悲しくなるほどだ。これでジャーナリズムを名乗っていいのだろうか? ライブドアは,記者希望者に有料で記事の書き方やジャーナリズム論などをレクチャーしているというが,一体どのような内容をレクチャーしているのだろう。また,記事をチェックするデスクは何を思い掲載を許可しているのだろう。少なくとも,ライブドアの名を使って掲載される記事である。その評価はライブドアの評価にもつながる可能性があるのだ。安易な記事掲載はライブドアの評価を下げることにつながると思うのだが。

 気になる点がいくつかあった。堀江社長は,インタビューなどで既存メディアの偏向性を批判していた。中立的でない,受けとり手の視点に立ってない,というのだ。しかし,PJを読むとどうだろう,オピニオン的な記事はライブドア擁護の記事ばかりではないか。ライブドアの業務の宣伝にしか思えない記事もある。どうも,堀江社長の言っていることと,現実にライブドアがやっていることは一致しないように思える。自らがやっていることのほうが,よほど偏向してはいないのか?

 内容が理解しにくい点も気になる。例えば,言葉の使い方に一貫性がないので,読んでいてどういう意味で使われているのかわからなくなることがある。また,記者が理解していることは読者も理解しているという前提で書かれているのか,○○事件と書かれていても要旨も書かれていないので,それがどんな事件なのかさっぱりわからない。新聞などと異なり,字数に制限などないのだから,少しくらい丁寧に書いてくれよと言いたくなる。これでは,記者が書きたいことを一方的に記述しているだけで,読み手の立場に立った記事とはどう贔屓目に見ても,いえない。

 私は,昨年のプロ野球参入問題のときは,堀江社長とライブドアを応援していた。競馬参入のときも,そうだった。今回のニッポン放送買収も,当初は,さすがだなと思っていた。しかし,今は失望しかない。自分でも驚くのだが,以前の期待感といったものは全く冷めている。これはなぜだろうと考えて見ると,やはり,虚実がはっきり見えてきたということにつきるのだろうと思う。

 昨年来,私の中の期待感は,堀江社長の発想の革新性にあったと思う。野球のときも,競馬のときも,停滞気味の世界に新しいビジネスモデルを持ち込み,風を起こす。そういう姿に期待したのだと思う。ところが,よくよく見てみると,そこに革新性はなかった。風も起きなかった。

 以前にも書いたが,このパブリックジャーナリズムにしても,すでに,インターネット新聞のJANJANが手がけており,二番煎じに過ぎない。もっといえば,韓国のオーマイニュースの真似事に過ぎない。そこに革新性はなかったのだ。

 堀江社長の他のビジネスモデルもそうだ。堀江社長の基本戦略は,ポータルへすべてを集約して,来訪者をエンクローズすることにあるようだが,これは,どのポータル事業者も考えていることだ。堀江社長は,こうも言う。物販をやるにしても普通の物販をやるだけではなくオークションや共同購入といったものをやる,と。しかし,これも様々な業者がすでにやっている。やはり革新性はない。仮に革新性があるとするならば,共同購入といったニッチの業態をポータルで大々的に行う点だろうが,ニッチだから成功している点を考慮しているのか疑問が残る。

 やはり,堀江社長ないしライブドアは,ドンキホーテでしかないのだろうか? アンチテーゼは唱えられても,ジンテーゼは築けないのだろうか? 今回,PJニュースを読んで,このような問いかけが読後に残った。

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◆企業犯罪 三菱ふそう,リコール対策済み車でも事故・不具合が発生

2005年03月26日 19時09分51秒 | 企業法務学習日記
 新聞報道によると,サスペンション部品の欠陥によるリコールが届けられていた三菱ふそうトラック・バスの車両で,リコール後も事故・不具合が25件発生しており(7件が火災),同社が国土交通省への報告を怠っていたことが25日に明らかになったという。問題のサスペンション部品の欠陥は,一連の欠陥隠蔽とは別に昨年9月22日にリコールが届けられていたもので,事故・不具合は,昨年9月末から発生し,うち修理済み車や新車では9件発生していた。

 三菱ふそうによると,問題の欠陥部品は,後車軸を車枠に固定するサスペンションVロッド。欠陥は,Vロッド中央部のボールジョイント部において,ナットが走行中の振動,荷重で緩み脱落。そのため,Vロッドから車軸が離脱し,後車軸が横方向にずれて操縦安定性が損なわれたり,タイヤホイールが車体と接触し,最悪の場合,車両火災が発生するという。

 国土交通省は,昨年9月28日の火災事故の際に,同社に報告を要求したが,同社からの報告は,今年2月2日。しかも,報告までに事故・不具合が12件発生していたが,報告は,国土交通省が要求した最初の1件だけだったという。また,今月14日にも火災事故が発生したことを受け,国土交通省が報告を求め,同社は16日に報告したが,14日の事故以外は報告しなかったという。

 国土交通省では,依然として「欠陥隠し」が続いていた疑いもあるとみて,同社から事情を聴いているという。三菱ふそうは,報道機関に対して,「他の事故は聞かれなかったので答えなかった。結果的に公表が遅れただけで,『欠陥隠し』をしたつもりはない」旨説明。同社の秋川文雄コーディネーションオフィス室長は「隠蔽の意図はなく,技術的に説明がつくようになってからと思っていた」と説明したという。

 説明の趣旨が,三菱ふそうの本意だとすると,同社のコンプライアンス意識は依然としてかなり低いものといわざるを得ない。隠蔽の意図はないとしているが,技術的に説明がつくまで報告・公表しないことについて認識認容はあるわけだから,隠蔽の故意があると考えられてしかるべきだからだ。

 国土交通省から要求された事件のみ報告している点も,不利益な情報はできるだけ公表したくないというマインドが背景に存在すると考えられる。しかし,コンプライアンスにおいて重要なのは,自己に有利不利を問わず,法令を遵守するという意識であり,問題が生じた場合,速やかに改善する意識だ。

 一連の隠蔽の影響で,同社は多大な社会的・経済的影響を受けているが,今回の件で同社に対する影響は当分継続することになったと思われる。経済的損失も相当なものになると考えられる。コンプライアンス違反の影響力の大きさを再認識させられる出来事であると思う。

 なお,同社は,不具合に対する緊急対策を実施する。詳細は,三菱ふそうトラックバスホームページを参照。


◆ホリエモンは人を活かせるのか?

2005年03月24日 06時00分14秒 | 日記・書評
 スポーツ新聞等で,タモリや中島みゆき等が,ライブドアがニッポン放送の経営権を握った場合,ニッポン放送での出演を拒否するという。すでに,エモヤンが同様のことを表明していたが,これからも出演拒否が広がる可能性がありそうだ。ここにきて,人を無視した買収劇が多方面に影響を与えだした格好だ。

 堀江社長率いるライブドアは,従来からかなり人を軽視した経営を行ってきた。堀江社長は,買収先の企業の従業員は大切にするとよくいっているが,同時に,やめたければ自由だといってもいる。言葉を総合すれば,自分の役に立てば重用するがそうでなければやめてくれということだろう。

 実際,ライブドアの従業員は出入りが多いといわれる。また,買収後に大量の従業員を退職に追い込んでもいる(旧ライブドアやバリュークリックジャパンの場合)。強引なリストラを実行しようとして買収自体が破綻した事例もある(イーバンクの場合)。今回,ニッポン放送の従業員に対して,「尊重する」「給料を下げることはしない」等等いっているが,過去の事例からすれば信用しがたい面を持つ。

 買収や合併では,たとえ,友好的になされた場合であっても,従業員同士の融和など難しい面がある。敵対的買収ならなおさらだ。確かに,アメリカのように雇用の流動性が強い企業風土ではある程度は強引でも許されるが,まだ今の日本で,平気で首切りをするような経営者が許容されるとは思えない。

 堀江社長も,当初の過激発言を控え低姿勢で提携を願い出ているが,ここまでこじれると,少なくともニッポン放送従業員との和解は簡単ではない。やはり,金だけで物事は動かせない。最後は人だということだろうと思う。

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◆ネットは既存メディアを殺すか?

2005年03月24日 00時36分29秒 | 日記・書評
 今週のニューズウィークに「報道を変えるブログの破壊力」という記事が掲載されている。「草の根のネットジャーナリズムがアメリカや韓国で第5の権力に成長 新聞やテレビを脅かす存在になりはじめた」ことと今回のライブドア騒動を絡めて,WEBジャーナリズムの可能性について述べている。デーナ・ルイス氏の署名記事だ。

 ホリエモンに限らず,日本でも,将来的にはブログなどのWEBジャーナリズムが既存メディアを駆逐し主流になるという人がいる。しかし,それは技術的創成期に見られる楽天的な未来像に過ぎないと思う。

 メディアにはそれぞれ特徴があり,その特徴が同時にそのメディアの限界を示している。既存メディアでいえば,新聞や雑誌は情報発信と情報受信の時間差がひとつの限界を示し,ラジオやTVは電波という有限の送信手段がやはり大きな限界を示していた。これと同様に,ブログやWEB新聞といったWEBにもメディアとしての限界がはじめから内包されている。いくつかあるが重要なのは商業性と匿名性だろう。

 まず商業性の問題。ブログやWEB新聞など,既存メディアとリンクしないでWEBメディアが運営していこうとすると,どこに収入源を求めるかという問題が生じる。運営元もそうだが,執筆する記者もそうである。

 よくいわれるのは,WEBメディアは市民記者など今まで情報発信できなかった人を基盤とした新しいジャーナリズムであるということだが,市民記者なる人たちが専業でやるとしたら運営元が収入面を手当てしなければならなくなる。専属として囲い込むのだとしたら既存の新聞と変わらない。ただ,配信媒体が電子的か紙がの違いだけである。記事単位で報酬を支払うのだとしたら不特定多数の人が記事を執筆することが可能となるが(現在はこれが主流),記事内容の信頼性や文章のレベルなど,ジャーナリズムとしての信頼性確保に運営元が多大な労力を割く必要が生じ,運営元に多くのスタッフが必要になる。それだけ費用もかかる。では,市民記者に報酬を支払わないとしたらどうか?。やはり,記事が集まらないということになるだろう。

 結局,運営元が広告収入を得るか,読者に一定の購読料を請求するしかない。しかし,広告収入で運営しようとしても,費用面で印刷・配達コストがなくなるだけであるから,多額の広告費を確保する必要が生じ,やはり紙媒体の新聞と大差ないことになる。読者に購読料を請求するとなると,普通の新聞との差異がますますなくなる。まして現在,WEBで情報収集する人にとって重要なのはタダということだから,必要経費をペイできるほど読者が集まるか疑問が生じるところである。

 では,商業性を度外視して,ブログや2ちゃんねるのような掲示板での情報発信をWEBジャーナリズムととらえるとしたらどうか。ここで,匿名性の問題が生じる。

 もちろん,ほとんどの場合,最終的には情報発信者を特定することが技術的には可能なのだが,大多数の人は,匿名性を前提に(つまり情報発信したことに対する責任を負わないことを前提として)書き込みを行っている。そのことにより,WEB上の情報の信頼性は必ずしも高くないことになる。情報の真実性を担保する仕組みがないからである。また,他者の権利侵害も多い。よく,ブログは日記だからと他人の記事や画像を引っ張ってきて掲載されるが,明確な著作権侵害である。

 上記のような問題点を解決しうる形は,少なくとも現時点では誰からも提示されていない。そうすると,WEBが既存メディアを駆逐するという可能性はやはり低いと考えられる。確かに,既存メディアに警鐘を鳴らすという,いわばアンチテーゼとしての役割はあると考えられる。しかし,代替はできないと思う。

 考えて見れば,既存メディアも,それぞれの特徴を活かして,相互補完の関係を形成してきたといえる。新聞雑誌は,TVなどの電波メディアと比べて情報配信に時間がかかることを利用して,ある程度多様な情報を詳細に配信する。TVなどの電波メディアは,配信の即時性を利用して,重要と考えられる生の情報を直ちに配信する。新聞と雑誌も,日刊と週刊・月刊の差を利用した記事内容を提供し,TVとラジオも音声のみと映像が加わることによる差を利用した情報内容の区別を行っている。

 WEBメディアも,このようなメディアの一部を形成するに過ぎないのではないだろうか?

 確かに,WEBメディアは,情報発信の手軽さから,既存メディアが発進しない情報を提供しうるという特徴を備えている。ニューズウィークも指摘しているとおり,CBSが伝えたブッシュ大統領の軍歴疑惑の虚構性を暴き,ダンラザーを降板に追い込むなど,WEBメディアの果たす役割も大きい。その意味で,WEBメディアが既存メディアの監視役として機能しつつあることは事実と評価できる。

 従来,既存メディアは,公権力などを監視する第4の権力と呼ばれてきたが,それを監視し異なった見方を提供する第5の権力としてWEBメディアが存在する。既存メディアを殺すことはできないが,このような役割を担うものとしてWEBメディアは発展する可能性を秘めている。そういう気はする。

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◆ライブドアにみる企業買収戦略のあり方

2005年03月23日 22時43分56秒 | 企業法務学習日記
 新聞報道等によれば,ライブドアは当面はフジに対して敵対的TOBをかけたり市場で買い増すことはせず,フジサンケイとの提携交渉を行っていくと,熊谷取締役が語ったという。堀江社長の発言も当初の刺激的なものから驚くほどトーンダウンしている。フジに対してTOB等をかけないのには,資金面での手当てがついていないという面も大きく作用しているだろうが,同時に,従来のM&A戦略が問題点をはらんでいることを考慮してということもできる。

 ライブドアによる買収計画が表面化したのは2月8日のことだ。同日,ライブドアは,ニッポン放送の株式35%程度を取得したこととニッポン放送の経営権取得を目指すこと及びフジサンケイとの業務提携を行いたい旨を発表した。ここでライブドアは,敵対的買収の実施と友好的提携の申し出を同時に行ったことになる。他方,現在に至るまで,ライブドアがニッポン放送を傘下におさめた場合の具体的経営戦略,友好的提携を行った場合のフジサンケイ側の具体的メリットについて,ライブドアは,ほとんど明らかにしていない。

 通常,企業買収を行う場合,まず,買収後の具体的経営戦略を被買収側経営陣に提示して,同意の上で買収を行うことを検討する。次に,被買収側経営陣に買収を拒絶された場合,買収後の具体的経営戦略を明らかにしてTOBを実施し,すべての株主に対して,買収された方がいいのか,そうではないのか判断する機会を付与していく。これは,被買収側経営陣に,株主価値向上の観点から買収の是非を判断する時間的余裕を与えるとともに,すべての株主に対して株主権行使の機会を与えることで買収行為の公正さを確保することが目的となる。そして,このような機会を付与せずに敵対的買収を仕掛けることは,株主価値を毀損するおそれのある脅威的買収とみなされ,相当程度の防衛行為を行うことが許されるということになる。

 日本における敵対的買収事例としてよく引き合いに出されるSPJによるソトー買収においても,SPJは当初,友好的買収提案を行っており,敵対的TOBの実施は約半年後から開始されている(買収自体は失敗)。また,最近取り上げられているプリヴェチューリッヒによる中堅証券会社2社に対する買収提案も,現時点では買収後の方向性を明示した友好的買収提案である(プリヴェはすでに大株主になっており今後,敵対的買収に動く可能性もある)。

 今回,ライブドアがこの通常の手法を採用しなかったことで,例外的手法の問題点が明らかになった。まず,今回のような例外的な手段も場合によっては行われうること,つぎに,やはり例外的な手法は大きなインパクトと想定外の問題を発生させうること,さらに,客観的な分析よりも情緒的な判断が影響力を持つ可能性が生じることだ。最近のライブドアの軌道修正は,このような問題点によって生じた事態を収拾し,本来の買収手法に回帰していく面を有していると考えられる。つまり,両経営陣による合理的な解決方法の模索である。

 そして,一連の経過から検討を要するのは,買収側にとって,今回のような例外的手法の採用による買収戦略のメリット・デメリット,防衛側にとって,例外的手法にも耐えうる合理的防衛策の構築ということだろうか。今回の買収劇は,依然として継続中で最終的にどうなるか不明だが,企業買収事例として検討する価値の大きいものだけに,今後も注目される。

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◆ライブドア vs. フジテレビ 関連エントリ

2005年03月21日 09時13分01秒 | 日記・書評
 ご不明な点,理由のあるご批判については,できるだけお答えします。
 なお,あくまで個人のブログで,アフィリエイト目的もありませんので,面白く書いてはいません。ブログに面白さを求める方は不愉快に感じられるかもしれませんのでご退出ください。
 よろしくお願いします。

◆ライブドアの誤算 ホリエモンの人を忘れた買収劇

◆やりすぎたライブドア M&Aの不幸

◆支持派の思いと堀江社長の思い(ライブドア支持派の近視眼その2)

◆ライブドア支持派の近視眼

◆ホリエモンの功績

◆ライブドア vs フジテレビ ライブドア(堀江社長)の戦略と現時点の評価 その1

◆ライブドアの誤算 ホリエモンの人を忘れた買収劇

2005年03月21日 04時09分06秒 | 日記・書評
 18日,FNS系列27局が,ライブドアのニッポン放送株の大量取得を批判する共同声明を発表した。ライブドアの株式取得方法を批判し,フジテレビとニッポン放送を全面的に支持するとしている。また,すでにニッポン放送の社員が一致してライブドアの経営権取得に反対していることを受けて,フジサンケイグループ各社が,ライブドアがニッポン放送の経営権を握った場合,それを嫌気して退職した同放送の社員の受け入れを検討していることが19日に明らかになった。

 ゲーム感覚で,経営権取得をめぐる攻防を追っていると,見えなくなることがある。結局,人がすべてであるという単純な事実である。従業員の存在を無視したライブドアの買収戦略は失敗する危険性を多分に秘めている。従業員全員の反対,関係企業の反対,これらは本当に堀江社長の「想定内」の出来事なのだろうか?

 今回の騒動で,当初よくいわれたことは,株主の意思をどう考えるか,ということである。株式会社の所有者は株主であり,経営陣は,会社経営の受任者にすぎない。だから,株さえ握ればどんなことも許される。それが所有者としての権利だから,というものである。WEB上の発言はもとより,マスメディアでまたぞろ出てきた識者も弁護士も同じ趣旨の発言をよくしていた。

 しかし,こうした発言に違和感を感じていた人も多い。私もその1人だ。考えて見ると,この趣旨の発言は物事の一面しか照らしておらず,ある種の人間にしか利益のない不公正な発言だ。

 会社は誰のモノか? 株式会社は株主のモノである。

 その通りである。しかし,所有には義務が伴う。所有権は絶対ではないのである。株式会社における法を語るとき,考慮すべき価値は,何も所有者である株主の利益だけではない。一般論としていえば,株式会社には様々なステークホルダーが存在する。自分以外の株主はいうに及ばず,経営者,従業員,顧客,社会,様々である。これらを無視し,所有者としての権利を振りかざすことは,公正さを欠く結果を招く。度を超して金にモノを言わせることは許されないのである。

 この観点から見れば,ライブドアの一連の動きを株主の意思という視点から正当化することは,不公正であるといえる。

 当初,次のような言われ方もあった。従来,日本は経営者や従業員重視で株主は無視されていた。これからは株主が重視されるべきである。なにやら,進化論的な発想である。また,こんな趣旨の発言も相次いだ。敵対的買収は欧米では常識だ。日本は20年は遅れている。このままでは日本に投資する者がいなくなる。

 これらの発言は正しいのだろうか? 私はそうは思わない。

 確かに,従来,株主よりも経営者・従業員の意思が重視されていた。しかし,それは別に不公正なことではなかった。従来の株主は,持ち合い関係にある他の企業や創業者一族,あるいは従業員持株会が多く,経営陣・従業員・関係会社と株主の利益はそれほど相反する関係になかったのである。つまり,おおむね経営者・従業員の意思=株主の意思でもあったのだ。マーケットを介した株主の存在が大きくなったのはつい最近のことである。したがって,従来の仕組みが悪であるという図式は根本的に問題がある。

 また,海外では当たり前だから,外資が逃げるから,だから,ライブドアの敵対的買収は正しい。この論法もどうかな,と思う。

 確かに,海外では敵対的買収も企業再編の一手法に過ぎない。しかし,それは買収側・防衛側双方に公平な手段がある場合に許されることだ。日本の場合,法制度の問題もあるし,企業風土の問題もあり,防衛手段はほとんど整備されていない。これに対して米企業では,防衛策が講じられているのが前提で敵対的買収が行われる。例えば,話題の毒薬条項(ライツプラン)は,2004年時点で,S&P500企業(488社)のうち6割が導入している。その他の防衛策を含めれば,ほとんどの企業が防衛策を準備している。何も,まったくの不意打ちが許されるわけではないことに注目すべきである。

 外資が逃げるという論法。今回の騒動で,日本企業の敵対的買収への恐怖感が一気に増した。外資脅威論もあって,政府・自民党は,会社法案の外国株利用等の条項を一年間凍結することにした。もともと,外資を呼び込もうという意図もあって,内外平等の原則で,グローバルスタンダードにも配慮した会社法案だったわけだが,ライブドアのおかげで,むしろ外資が逃げるという結果を招いていることになる。

 話を元に戻そう。現在の時点で想定できるのは次のような流れだ。仮に高裁の判断が地裁の判断を是認するものとして,ライブドアがニッポン放送の経営権を取得できたとしても,ニッポン放送の社員をつなぎとめておかなければ,大きな問題が生じる。これは,ライブドアがLBOで資金調達してフジを買収したとしても,同じだ。人が動かなくでは利益は生まれない。フジやニッポン放送,さらにいえばフジサンケイグループの有するコンテンツの権利を取得できたとしても,運用する人間がいなければ砂上の楼閣にも等しい。

 考えてみれば,堀江社長の本来の目標は,ライブドアポータルをコアにしたコングロマリットの形成であったはずだ。しかし,今回の騒動でついた印象のうち,悪印象となった部分がポータル事業に与える影響は大きいように思える。単純にいえば,ポータル利用者が増加することで広告料や手数料が増加するわけだが,悪印象を抱く企業のポータルを利用しようという人は少数派であろう。

 武田信玄は,人は石垣といったものだが,今回の騒動によく当てはまる比喩だと思う。守るも攻めるも,人が基盤であるということだ。

 そういえば,テレビで堀江社長が,ライブドアが買収されても自分が儲かれば何の問題もない,かまわない,と発言していた。あそこまで拝金主義的な発言をして批判されないと思っているのだとしたら,たいしたものだと思う。ライブドアにも多くの株主がいる。その中には,堀江社長の手腕に期待して投資している人もいるだろう。企業への投資は,何もリターンだけを目的にしているわけではない。人に投資する,事業に投資する,製品に投資する,様々である。デイトレーダーのような投資家(投機家)ばかりではないことを,堀江社長はよく知るべきだろう。そうすれば,あのような発言は不利益だとわかると思う。

 せめてライブドアの株主から批判されるような状況にならないことを願う。何はともあれ,あの行動力は魅力的なのだから。

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◆米雇用創出法 知財戦略への影響

2005年03月20日 19時22分33秒 | 企業法務学習日記
 新聞報道によると,米有力企業が,海外の子会社に蓄積されている利益を米国本社に大量に吸い上げる方針だという。海外子会社は,利益の大半を配当原資として米本社に吸収しているが,それでも,留保されている利益は昨年で6500億ドルにのぼるという(JPモルガンの推計)。ここから米国本社に吸い上げられる金額は,3200億ドル程度になるという。

 2004年10月,米国での雇用拡大・投資促進を目的に様々な減税措置を採用する雇用創出法が成立した。従来,海外子会社が米本国に送金する場合,海外で支払った税金の一定額を控除した上で35%の法人税が適用されていたが,同法の内国投資促進条項により,2005年に限り5.25%に減税される(ただし,配当原資・自社株買い原資・役員報酬などには利用できず,設備投資・研究開発・財務体質改善などに利用しなければならない。また,投資計画を取締役会で決定の上税務当局に提出しなければならない)。この減税効果を狙って,利用表明が相次いでいるという。

 すでに雇用創出法の利用を表明している米企業は約200社にのぼり,この中にはファイザー,ブリストル・マイヤーズ,イーライ・リリーといった製薬メーカーやIBM,インテル,ヒューレットパッカードといったIT企業など名立たる大企業が含まれている。

 同法は,米企業が研究拠点をインドなどに移転させる動きが相次いだことから,米国内の資本・雇用の空洞化が進み,将来の競争力不安が生じたことを背景として立法されたと記憶しているが,米企業の動きを見る限り,立法は成功だったようだ。米国内の景気を押し上げる効果が生じることは容易に予想される。

 ただ,より重要なのは,ゲノム研究など先端研究を促進するべく製薬大手が積極的な利用を計画している点だろう。例えば,ファイザーは,昨年約76億ドルを研究開発に投じているが,最大290億ドルを米国に送金して,研究開発をさらに強化するという。いうまでもなく,ゲノムなどの医薬分野の基礎研究は,将来の知財戦略に大きな影響を与える。応用の幅が広い分,パテント料など知財ビジネスへの寄与が極めて大きいと予想できるからだ。

 基礎的先端技術の米国による囲い込みが一層進みそうである。ひるがえって,日本政府も知財立国を喧伝しているが,具体的政策のインパクトは見えてこない。日本政府にも,米国のような大胆な政策の実施を期待したいものである。

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◆会社法 企業防衛 いちよし等の中堅証券に買収提案

2005年03月19日 18時24分28秒 | 企業法務学習日記
 新聞報道によると,プリヴェチューリッヒ企業再生グループ(東証2部)が,いちよし証券と丸三証券の中堅証券会社2社に対して友好的買収提案を行っていたという。提案内容の要旨は,2社がプレヴィの傘下に入った上で「メザニンファイナンス」という中リスクの金融事業を展開していくというもの。経営陣や社名の変更は要求しない。これに対して,2社は拒否の意向で交渉長期化の見通しだという。

 プリヴェチューリッヒ企業再生グループ株式会社は,企業価値向上を目的に国内外の企業を買収・運営する投資銀行業務を手がけている。設立は,2003年8月。現在までに,静岡日産自動車,三河日産自動車,東武運輸栃木,東武運輸新潟などを買収している。


 用語・メザニンファイナンスとは,「シニアファイナンスより返済順位が下位にある資金」のことをいう(メザニンとは中2階の意味)。つまり,社債や通常の融資等(シニア)と,出資(エクイティ)の中間を担うミドルリスク・ミドルリターンの性格を持つファイナンス手法である。リスクはあるがシニアファイナンスより高く適切な金利水準を確保することができる。例えば,劣後ローンや優先株(優先出資証券)の利用がこれにあたる。メザニンファイナンスは,米国等の市場においては既に資金供給手段として重要な役割を果たしている。川崎駅西口再開発プロジェクト(ミューザ川崎)や秋葉原再開発でも利用されている。

社債や通常の融資等=シニアファイナンス
通常の出資=エクイティファイナンス

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◆やりすぎたライブドア M&Aの不幸

2005年03月19日 02時57分46秒 | 日記・書評
 一昨日来,ライブドアがLBOで3000億円超を調達し,敵対的TOBをフジテレビにしかけるのではないかとの憶測があちこちで飛び交っている。ライブドア支持派は,やはり堀江社長はすごいと称え,批判派は,フジまで金にモノを言わせて乗っ取る不道徳さを責め,傍観者を気取る人たちは,今後のワイドショー的展開を予想して楽しんでいる。

 それにしても,あの時点で朝日がすっぱ抜いたことは,ライブドアにとっては誤算だっただろう。フジ買収に取り掛かると報道されたことで,フジテレビ株は急騰した。買収費用は桁違いに高くなったわけだ。フジが増配を発表した時点で,高等は予想されたが,LBO報道で拍車がかかった。

 また,LBOという手法が報道された点も不利に働く。マスメディアで解説されているように,LBOは80年代のアメリカで流行したが,相手の財産を担保にして金を借り乗っ取りを図るというマネーゲームそのものの手法が社会的にも大きな批判を受け,90年代には下火になっている。90年代以降のLBO事例は,友好的買収の事例が多い。以後,フジへの同情とライブドア批判は高まるだろう。

 さらに,新株予約権の問題が高裁でひっくり返る可能性は低いが,LBO問題が裁判官に何らかの影響を与えないとは言い切れない。報道当初,堀江社長は,明確には否定しなかったが,翌日あたりから「妄想」などと,堀江社長独自の用語で否定し始めている。影響の大きさを考慮しての軌道修正であろう。

 私が思うに,LBO手法の活用が事実かどうかは別にして,一連のライブドアの敵対的買収手法が過激に過ぎるので,敵対的買収に対する不安が過度に広がりかねないことが問題だ。すでに改正会社法案ではM&A関連条項の1年凍結が決定されているし,今後,かなり経営陣に有利な(その意味で過剰防衛的な)企業防衛策が上場企業を中心に導入される可能性が高い。結局,今回の騒動がかえって株主の利益に反する動きを助長しかねなくなっているのだ。

 今回の騒動で,ライブドア支持派・批判派・傍観者関係なく,敵対的買収の影響力の大きさを実感した。攻撃する側にとってはスピーディでいいけれど,される側になったらやだなあというのが実感ではないだろうか。その意味で,M&Aに対する恐怖感や不安感が印象づけられたといってよいと思う。これは,すなわち,正当なM&Aと不正なM&Aを冷静に計算するという発想が遠のいたことを意味する。本格的M&A時代を前にして,今回の騒動がおきたことは,日本経済にとって不幸なことではないだろうか。

 堀江社長もあの若さであれだけの会社を築いたのだから,焦らず,地道に本業を固めていただきたいものである。いくらM&Aが優秀でも,本業のポータルがあの状況ではどうしようもない。

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