夕陽丘

時事問題とロースクールの日常など

乱気流か長い下り坂か

2008年10月19日 12時28分04秒 | 企業法務学習日記
サンプロを見ていました。欧米、とくに今回の金融危機の震源地であるアメリカが本気で政策転換(市場原理主義の修正)を始めているということで、直近の問題は収束するということを再確認できました。もちろん、マーケット自体はすでに織り込み済みで次の問題である実体経済の悪化へ関心が移っているのでしょう。

金融危機の一段落が日本の政局へも影響を与えているようです。麻生首相は、昨日はTIFFのオープニングに参加し、今日はスーパーを視察していたようです。補正の問題が片付いたので、いよいよ選挙モードということなんでしょうね。自民党幹部の事務所開きが続いていることからしても、金融危機の再燃という波乱要因が起きない限り、11月下旬の選挙は固いでしょう。選挙の秋到来ですね。

ところで、昨日の日経にウォーレン・バフェットがニューヨークタイムズに寄稿したという記事が掲載されていました。「私は米国株を買っている」のだそうで、しかも、傘下のバークシャーハサウェイではなく自己資金なのだそうです。

NT紙を読んだわけではないので文脈がわかりませんが、これは市場心理の改善を狙ったものということでいいのでしょうか?

それはそうと、バフェットによると、「投資のルールはシンプルで、他の人が欲張っているときには恐れを抱き、他の人が恐怖にさいなまれている時に強欲になることだ」そうです。

論旨は明快、しかし実行は素人では難しいのではないでしょうか。

とはいえ、最近の株安でネット証券などには口座開設の申し込みが急増しているそうです。確かに、今後の実体経済がどうなるかを脇に置けば、歴史的な買い場といえるかもしれませんね。

◆サブプライムと貸し渋り

2008年04月16日 23時51分42秒 | 企業法務学習日記
いつかどこかで見た覚えのある光景だ。

経済環境の急速な悪化により、銀行の体力が弱くなり、銀行は、それまででは考えられなかったような厳しい対応を融資先にとり始める。

バブル経済の崩壊がもたらした失われた時間。アメリカも日本と同じ道を歩むことになるのであろうか?

WBSの特集を見ていると、それが現実になりつつあるように思える。

しかし、仮に同じ道を歩むことになるとしても、大きく異なる事情があるのが気になる。アメリカは、バブル経済当時の日本とは比較にならないほど、現在の世界経済を支えている。アメリカの不況は、世界に伝播してしまう。

そういえば、以前は、アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪を引くなどといわれた。これを現在の状況にあてはめると、そら恐ろしい。

ヨーロッパ、中国、ロシア。政治の軸は、明らかに多極化しつつある。しかし、経済の軸は多様なものになるだろうか?

経済のグローバル化は様々な面で世界に恩恵を与えた。反面、世界は多様性を喪失し、よく言って一蓮托生の状態になっているように見える。

日本経済はどのような影響を受けるのだろうか。

◆民間事業者における通報処理制度の実態調査

2007年12月02日 22時10分23秒 | 企業法務学習日記
内閣府が10月10日に公表した「民間事業者における通報処理制度の実態調査報告書」によると、公益通報者保護法の認知度は、調査対象の民間企業全体としては、69.4%で、同法の施行から1年半を経た時点での認知度そのものは高水準に達していると感じた。

ただ、詳細に見ていくと、問題点は多いように思える。

認知度を上場企業と非上場企業で見てみると、上場企業が94.2%であるのに対して、非上場企業では61.9%に低下する。従業員数別で見ると、1000人超の企業が90%以上であるのに対して、100人以下だと52%程度まで下がる。

また、内部通報制度の導入に関しては、全体で34%が導入済みとする一方で37%が今後も導入の予定はないとする。

昨今の企業不祥事事例を見るまでもなく、不祥事の多くは、内部からのリークによって発覚することが多い。このことからすれば、内部通報制度は、不祥事の外部へのリークが行われる前に経営レベルへ情報をあげる機会を付与し、十全な処理を行うことで企業イメージを防衛する可能性を生み出すと考えられる。

そう考えると、約4割の企業が導入の予定なしとするのは、いかにもコンプライアンスに対する認識が甘いといわざるを得ない。

内閣府国民生活局「民間事業者における通報処理制度の実態調査報告書」


◆コンプライアンスの心構え

2007年11月20日 02時23分45秒 | 企業法務学習日記
「何か問題が起きたときには、何が正しいかを考える。普通、何か問題を起こすと損得を先に考える。損をしたくないから物を隠したり、いろんな手当てをするが、私は、何が正しいかを考えて、もし間違ったなら正しい道を行く。必ず損得はそのあとに考える。何が正しいかということが先であって、損得はそのあとにあるということを心掛ければ不祥事は起きないと思う。」

今週のカンブリア宮殿における鳥羽博道ドトール名誉会長の言葉である。

この言葉は、コンプライアンスを実践する際の心構えを端的に示したもののように思える。コンプライアンスといえば、法令を守ることととらえられがちではあるが、その実質は、企業行動を社会の要請に適合させることであろう。

そうすると、コンプライアンスは、実は、CSRやビジネスエシックスとも連関している概念であることになる。そして、それは究極的には、経営者個人の道徳や倫理に規定されるものになりうる。鳥羽会長の言葉には、そのことを端的にあらわしていると感じる。

◆2007年の新司法試験

2007年09月14日 23時01分40秒 | 企業法務学習日記
13日の夕方、法務省から本年度の新司法試験の結果が公表された。新司法試験としては第2回であり、未修者が受験した試験としては一回目ということになる。

法務省によると、合格者数は1851人。出願者数が5401人、受験者数4607人(うち途中欠席10人)で短答式試験に合格したのは3479人だった。

合格者の年齢別構成は、最高が56歳、最低が24歳で平均年齢は29.20歳だったそうだ。

いわゆる合格率としては40%程度。約6割が涙を飲んだことになる。

合格者数トップは東京大学だが、漏えい問題を起こした慶応大学が2位についている。

関東圏で社会人が通学できる夜間開講の法科大学院では、大宮法科大学院が受験者数43人に対して合格者6人、成蹊大法科大学院が42人に対して16人、大東文化大法科大学院が36人に対して4人、桐蔭横浜大法科大学院が35人に対して9人であった。

◆弁護士費用の価格破壊?

2007年09月10日 00時49分32秒 | 企業法務学習日記
日経MJにこんな記事があった。

法曹に「格安」申し立て 法律事務所ホームロイヤーズ所長
 「弁護士業はサービス業に徹するべきだ」と言い切る弁護士がいる。法律事務所ホームロイヤーズ(東京・千代田)所長の西田研志(57)だ。「パラリーガル」と呼ぶ法律事務職員やIT(情報技術)を駆使することで弁護士業務を効率化し、“価格破壊”を仕掛けてきた。弁護士業界の禁じ手を次々と繰り出し「異端児」扱いされることも少なくないが、「評価は顧客が決める」と意に介さない。
[2007年9月9日付]


記事にもあるように、弁護士会でも有名な人である。

確かに、司法書士や行政書士あるいは一定の法律知識を有する職員を実働部隊として、さらに、IT化で処理を標準化することで弁護士費用を下げる事が可能になる。

サービス業であるという点もその通りといえる面がある。

とくに、費用面や能力の見極めが難しいことから弁護士へのアクセスが困難であった一般市民にとっては、価格破壊と能力の標準化は望ましい面がある。

ただ反面、依頼者が望む解決を柔軟に行う事が困難になることも事実だろう。

それ以上に問題となりそうなのは、長期的に可能なモデルなのかということである。

まず、現在は、いわゆるグレーゾーン金利の問題で法改正があり、また、最高裁判例が出されたことで、定型的に処理すれば相当額の手数料が見込めるが、これは、特需のような状態であり、特需が終了した後に継続的に収益を上げられるかどうかわからないことである。

また、弁護士が直接関与する部分が少ないことで、仮に、懲戒請求がなされ、それが通ってしまった場合、とたんにモデルが破綻することである。

さらにいえば、法曹人口の大幅増加で、自然と弁護士費用が下がり、パラリーガルを実働部隊とする必要があるのかどうかもわからない。

というように、今後も安定的成長が可能なモデルかはわからないが、法曹界の変革の可能性の一例であることは確かである。

◆一般法人法の施行日 平成20年12月1日

2007年09月09日 11時31分10秒 | 企業法務学習日記
一般法人法の施行日が決定した(官報 平成19年9月7日 号外第205号2頁)。



 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の施行期日を定める政令をここに公布する。

 御 名  御 璽
  平成十九年九月七日
         内閣総理大臣 安倍 晋三

政令第二百七十五号
   一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の施行期日を定める政令
 内閣は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)附則第一項の規定に基づき、この政令を制定する。
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の施行期日は、平成二十年十二月一日とする。
           法務大臣 鳩山 邦夫
         内閣総理大臣 安倍 晋三

◆ブルドックソース、買収防衛策導入

2007年09月01日 00時15分27秒 | 企業法務学習日記
昨日付けのリリースによると、ブルドックソースは、平成22年6月に開催予定の定時株主総会の終結時までという時限措置として買収防衛策の導入を、8月30日の取締役会で決定、即日効力を生じたという。ただし、来年(平成20年)の定時総会で本防衛策について承認が得られない場合、ただちに廃止されるという。


◆未来時給 弁護士より高い企業が続々

2007年05月14日 12時34分40秒 | 企業法務学習日記
週刊東洋経済5月19日号が未来時給の特集をしている。

弁護士よりも高い時給の企業が続々という刺激的な見出しだが、それによると、40歳時点の時給ランキングトップはフジテレビである。弁護士は4位で電通さんの下。やはりテレビ業界は高収入のようだ。

素朴な疑問としては、時給というからには、平均勤務時間を算出していると思うのだが、弁護士の勤務時間というのはどうやって算出するのだろうか?

それにしても、不況の時代は、これからは資格の時代だといわれて弁護士を目指す人が増えたものだが、それも過去の話なのだろうか?

景気が回復してバブルさながらの売り手市場となった昨今の我が国では、わざわざ法科大学院を経て司法試験を目指すという自己投資はリスクが高いといえるのかもしれない。

◆法科大学院認証評価

2007年03月27日 05時58分44秒 | 企業法務学習日記
日弁連法務研究財団が実施する法科大学院認証評価事業の初の評価結果が出ているという事で、公表されている内容を見てみた。

日弁連のサイト

今回、評価結果が出されたのは、早稲田大学と駒澤大学の法科大学院で、両校とも法務研究財団の認証評価基準はクリアしたようだ。

ただ、ざっと見ですが、個別の内容を見る限り、駒澤大学はかなり厳しい評価を受けているという気がする。

早大は、さすがに多方面で高評価を得ている。いわゆる法科大学院の理念というものとの関係で、組織編制から実施内容といったハード面・ソフト面双方にわたり有機的な統一がなされているという印象を受けた。まあ、報告書を読む限りではあるので、実際は別かもしれない。

こういう評価が受験者の志望校選択に与える影響は、新司法試験合格者数なんかと比べれば大きくはないのだろうが、入ってからのミスマッチを避ける意味では、評価の内容を受験者が知る意味はかなりあるのではと思う。


◆顧客情報流出で著作権法を適用

2006年09月14日 21時12分01秒 | 企業法務学習日記
■概要
警視庁捜査一課は,KDDI協力会社の社員による顧客情報流出に著作権法を適用,13日,著作権法違反容疑で元社員ら2人を書類送検した。顧客情報流出に著作権法を適用するのは全国で初めてのケースだという。

■被疑事実の要旨
KDDI協力会社の元社員は,KDDIからの委託によりDIONの「お客様情報管理システム」のプログラム作成業務に従事していたところ,2003年12月,顧客情報の保存されたパソコンを自宅に持ち帰り,将来何かに使えると思い顧客情報のコピーを作成保管し,これを2006年4月に知人の無職の男に譲渡した。

知人の無職の男は,当該顧客情報が無断で持ち出されたものと知りながら,2006年4月下旬に知人の男性に譲渡した。

(9月14日日経朝刊)



◆五味広文金融庁長官

2006年06月13日 19時08分12秒 | 企業法務学習日記
日経夕刊に五味金融庁長官の人物像についての記事があった。それによれば,五味長官は自身のことをピルグリムファーザーズになぞらえるという。旧大蔵省から分離独立した金融監督庁に最初に乗り込んだメンバーという意味のようである。

最近の金融庁は,処分の多さと重さで世間の注目を浴びている。この記事にも書いてあるが,金融庁に勤める友人からも金融庁は最近は金融処分庁と呼ばれて業界サイドから恐れられているという話を聞いたことがある。

記事には,処分が重過ぎるという業界関係者の嘆きのような声が紹介されている。従来からの常識からするとその嘆きも肯ける面がある。ただ,大局的に見ればそれは従来の常識であったこととして置いて,業界関係者としても新しい常識への対応が必要のようにも思える。

記事にあるように,厳しい処分を受けた会社に共通する点は,会社内部の問題によって市場や顧客といった外部に多大な損害を及ぼしたということだ。業界や個々の企業の利益よりもまず利用者を中心とした全体の利益を擁護する。それが金融庁の姿勢のようだ。

「利用者保護の徹底は不良債権を処理していくことよりもきつい仕事」という五味長官の言葉は象徴的だ。これが新しい金融行政のあり方であるという意識に迷いはなさそうである。

◆ヤマハ発動機,社内にコンプラ特別委を設置

2006年06月12日 01時14分27秒 | 企業法務学習日記
報道によれば,6月9日にヤマハ発動機がコンプライアンス推進特別委員会を社内に設置する旨公表したという。

委員会は,麗沢大大学院の高巌教授を委員長として,大学教授や弁護士等専門家合計6名で構成される。6月12日に第一回の委員会を行い,来年1月まで月1回ペースで行う予定のようだ。

不正輸出事件を起こしたことで経済産業省から内部管理体制の問題を指摘されたことが設置の動機になっているとの報道だが,半年間の時限措置でどの程度問題点の解消につながるのか多少疑問もある。

コンプライアンスを十全にするためには,管理体制の構築と意識改革の双方が必要不可欠だと思うが,月1回・半年間のいわば諮問機関の設置では不十分とも思える。常設の内部監査機関の活動を定期的に外部の有識者にチェックしてもらう方式のほうが意味があるのではないだろうか。