セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「ひきしお」

2012-10-31 01:17:41 | 映画感想
 「ひきしお」(「Liza」/「Melampo」1971年 仏・伊)
   監督 マルコ・フェレーリ
   音楽 フィリップ・サルド
   出演 カトリーヌ・ドヌーブ
       マルチェロ・マストロヤンニ
       コリンヌ・マルシャン

 この作品以前のC・ドヌーブって、クール・ビューティそのもので温かい人間
の血が流れてる感じがしませんでした(「シェルブールの雨傘」を除く)。
 美人だけど面白味のない女。
 それが当時、愛人関係だったM・マストロヤンニのお陰なのか、この作品か
らドヌーブは変わりました。
 人間の血が流れてるマトモな女、そして、大人のフェロモンを発散しだします。
 僕は「ひきしお」から「終電車」までのドヌーブが好きです。

 無人の離れ小島で愛犬メランポだけを話相手に一人気儘に暮らす作家(M・
マストロヤンニ)。
 そこへ我儘で意地っ張りの女(C・ドヌーブ)が入って来て・・・。

 ヌード・シーンなんて有って無いようなもの、絡みシーンも無いのに、何だか、
とってもエロティックな映画。(これは推測だけど、「男から見ると」限定かも)
 この作品、正直よく解らない。
 一つのシンプルな愛の形を描いてるのか、世の束縛から離れ、もっと自由に
自分に忠実なれと言ってるのか、それとも、只の男の願望なのか。
 再見一度目は、それなりに面白く感じたけど、もう一度見直した時はそれ程
でもなかった。
 初めから3分の2くらいまでは、かなりいいんです、でも、そこから後(作家が
家族の元へ戻ってから)がグダグダなんですよね。
 ここで編集者かなんかの役でM・ピッコリが出てくるんですけど、何の意味が
有ったのかよく解らんし。
 で、一番の問題はラスト・シーン。
 寓話のように描いてるけど、いったい何の寓話なのか理解できない。
 このシーンの率直な感想は、
 「で、どうするの?」
 そもそも小金持ちの勝手気儘な話で、努力なんか一切放棄してるし・・・。
 「好きにすれば」と思ってしまうから、「憧れ」がないとは言わないけど、大きな
シンパシーが持てないんですよね(困ったことに)。

 とても名作と呼べる作品じゃないし、佳作と言うのも気が引ける。
 でも、印象に残る変な作品。
 それは多分、ドヌーブが放つ初めてのナチュラルな美しさにあるのかな?と
(少し)思っています。

※この作品に誘発されたのか、似た映画に「流されて」というのがあります(こち
 らは未見)、また、似た状況下、この作品の 姉妹編とでも呼べそうな「うず潮」
 (Y・モンタン&ドヌーブ)という作品もあります、作品としては「うず潮」の方が面
 白いと思います。
※この無人島には戦争中?に作った滑走路があるのですが、そこへドイツ人の
 操縦する小型機が着陸してくるシーンがあります。
 その時、背後の山に大型車が走ってるのが写ってる(笑)、話に無関係だった
 から明らかなミスでしょう。
※ボートの喪失は本当に高波にさらわれた為だったんでしょうか、それとも、ドヌ
 ーブが故意に・・・。
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4 コメント

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ありがとうございます! (*jonathan*)
2012-11-04 19:55:58
 こんばんは!70年代映画をご紹介くださってたのですね!ありがとうございます!!しかし「とても名作と呼べる作品じゃないし、佳作と言うのも気が引ける。」のですね^^;
 最後に書かれている「うず潮」の方は、イヴ・モンタンにも馴染みがありますし気になるな~と思いました。Amazon のレビューに "ラブコメ" との表現を見つけましたが、気軽に観られるタイプのお話ということかしら?ちなみに個人的には「流されて」(ガイ・リッチーしか観てませんが)の男尊女卑っぽい感じはちょっと苦手でした・・・って、ご覧になってないのですね。失礼しました。
 この時代のドヌーブ、ステキですよね~♪それ以前はお人形のようだったんでしょうか?この美しさから言って初期は、演技よりもアイドルっぽかったのですか?^^
 「早速見てみます!」と言えないのが申し訳ないのですが、"魅惑の女優シリーズ" (笑)とかってDVDが出ていますので、(もう少し価格が下がるのを待って)是非観たいと思います。
返信する
ようこそ! (鉦鼓亭)
2012-11-04 21:17:57
 *jonathan*さん、こんばんは!
 コメントありがとうございます!!

「流されて」は当時「ひきしお」にインスパイアされた作品と言われてた気がします。
「流されて」には「チャタレイ夫人の恋人」要素が入ってるようですけど、「ひきしお」は、ほぼ同じ階級同士の話です。
「ひきしお」、「うず潮」、「流されて」、いずれも男尊女卑の映画ですよ、観るなら、その覚悟が要るかも。(笑)
ただ「うず潮」のドヌーブは「ひきしお」と違って男と激しく対立してたと記憶してます。
僕の中では「ひきしお」と「うず潮」、面白いのは「うず潮」だけど、記憶に残ったのは「ひきしお」だった、そんな感じです。
「ひきしお」は絵が綺麗で、ドヌーブもプライベート・フィルムみたいにリラックスした感じがあります。

それ以前のドヌーブ>フランスを代表する女優だから「暗くなるまでこの恋を」、「うたかたの恋」のような一般向けの映画にも多数出ていますが、芸術志向が強かった女優さんで、難解系のブニュエルとか、鬼才と言われたポランスキーの作品なんかに出てて、それが有名でした。
返信する
こんばんは☆ (miri)
2013-01-21 18:49:04
「ひきしお」タイトルは知っていたけど、ご縁がなく、
今回やっと初見しました☆
とてもフランス映画らしい素敵な作品でした。
理屈ではなく感覚で見るモノでしょうね~。

>それが当時、愛人関係だったM・マストロヤンニのお陰なのか、この作品からドヌーブは変わりました。

なんとなく(こちらは結婚していないけど)
結婚直後のリズ&バートンの「いそしぎ」を思い出しました。
“私たち・らぶらぶなの~見て見て~”って感じ(笑)。

>この作品、正直よく解らない。

自分が思うように思えば良い・・・
そんなタイプの典型的な作品だと思いました。

>ここで編集者かなんかの役でM・ピッコリが出てくるんですけど、何の意味が有ったのかよく解らんし。

あのヒトは一応男がマトモな仕事をしている社会人だと
そう言いたかったから存在したように思いました。

>で、一番の問題はラスト・シーン。

「暗くなるまでこの恋を」とかと同じような気がします。
私は生きる方向にないと思うのですが、人それぞれだと思います。。。

>大きなシンパシーが持てないんですよね(困ったことに)。

まぁ映画ですから(笑)。
私もシンパシーは一切持てませんが、女の心情は分かるような気がしました。

>それは多分、ドヌーブが放つ初めてのナチュラルな美しさにあるのかな?と(少し)思っています。

私にはそうは思えなかったけど、
最近、これ以外の初見作品もあって、この女優は今まで私が
思っていたタイプとはちょっと違うと思うようになりました。
本当に演技の出来る素晴らしい役者ですね!

>※この作品に誘発されたのか、似た映画に「流されて」というのがあります

オンエアがあったので、数日おいてこちらも初見しました。
(もちろん74年版の「流されて・・・」です)
(昔・宣伝は山ほど見たのですが・笑)

全然違う作品だと思いましたよ~。 イタリア映画らしかったです(笑)。
どちらの作品も「男尊女卑」とは関係ないと、私は思います。

>その時、背後の山に大型車が走ってるのが写ってる(笑)、

凄い! 巻き戻して凝視して分かりました!

>※ボートの喪失は本当に高波にさらわれた為だったんでしょうか、それとも、ドヌーブが故意に・・・。

これもそれぞれの人が自分の思いたいように思えば良いと思うのですが、
私は故意ではないと思いました。
でもそういう事が積み重なって「もうどうでも良いわ~」みたいな
そんな気持ちしかなくなっていったように思いました。


******************


「レ・ミゼラブル」のお返事読ませて頂きました。
鉦鼓亭さんのお考えは、製作者のお考えと近いのかもしれませんね~。
私には自分なりの「死生観」がありますので、それはその作品以外のどんな作品にも
感じるモノなので、考えが変わらないのは仕方ないことです。
返信する
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2013-01-21 23:54:44
 miri さん、こんばんは
 コメントありがとうございます

理屈ではなく感覚で見るモノ>そうですね、感覚的な映画だから具体的な「うず潮」より記憶に残ったんだと思います。

らぶらぶ>一種の露悪趣味です。(笑)
リズ&バートンは、歳を召されてからなので、観てるのが拷問でした・・・。

そう言いたかったから存在(M・ピッコリ)>ギャラ高いのに。(笑)
でも、マストロヤンニと同格クラスじゃないとダメな役かもしれませんね。

生きる方向にないと>それは解ります、違う世界へ旅立つ象徴が飛行機なんでしょうけど、僕としては「間の抜けた」終わり方だったですね。
(何で止まるまで描いたんだろう、僕なら飛行機がゆっくり下っていく所でFINにするんだけど~汗)

イタリア映画らしかった「流されて」>今年中に観る事を、たった今、決めました!(笑)

男尊女卑>これはですね、男だから「予防線」を張っておいたんです。
僕自身は「男尊女卑」映画とは思ってませんが、やっぱり、不快に思う人も多い映画だと思うので、「この映画がいい=封建主義者」のレッテルを貼られない為の用心、逃げ道を作っておいたんです。(笑)

ボートの喪失>映画の主題から見れば、偶然でも故意でも、本当はどちらでもいいんですよね。miriさんの指摘通り、一つの切っ掛けに過ぎない出来事だと思います。
これを付け加えたのは、故意か偶然か?を考えてみるのも、一種の「遊び」として面白いんじゃないかな、と思ったからです。

C・ドヌーブ>映画館で最初に見たのが本作、でも、その後が「昼顔」に「哀しみのトリスターナ」(笑)、そのイメージが強烈で「暗くなるまでこの恋を」が霞んでしまいました。(笑)
その後に「うず潮」、「ハッスル」を観て、やっと時系列に整理できた感じです。

「ひきしお」は、僕にとって「雰囲気を楽しむ映画」ですね、いろいろ不満は有るけど嫌いじゃないですよ。


「レ・ミゼラブル」>僕の感じ方、感想なので、押し付ける気持ちは毛頭有りません。
僕の言ったことは気にしないで下さい。
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