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めぐりくる春

2012年07月16日 19時11分34秒 | Books

  めぐりくる春              ヤンソギル

ヤンソギルの作品 5作目です。彼の裏社会を あばくというか 覆っているのもを引き剥がし隠されていたものを つかみ出し日の下に晒し出すような作品、といったものばかりである。

主人公の淳花は、朝鮮の寒村に生まれ、日本の統治下、苦しい生活を強いられていた。そして実家の口減らしのため 近所に奉公に出されていたが、上海の紡績工場で働かないかという誘いにだまされて、日本軍の従軍慰安婦として南京に送られてしまう。 以後軍の移動に付き添いながら兵士の性のはけ口として無給で働かされる。慰安婦の館の前には 見張りが立ち逃亡は許されない。食事も僅かであり、そんな中多くの若い慰安婦が最初は抵抗するが、仲には受け入れられず自死したりする者もいたりはするが この運命をこの仕事を受け入れ、たくましく生き抜いてゆく。そんな一人が淳花である。3人の誰が父親かは分からない赤ちゃんを身ごもるが、出産と同時にどこかへ葬られ、顔も見られず、乳も抱いてやれずといった生活であった。

 やがて最後は前線で敗走する日本軍の隙を見つけて 数人の仲間と脱走しアメリカ軍に保護され、その後、韓国軍により ソウルへ、そして故郷へと還ることが出来た。帰ってみると両親はいきなり行方不明になった淳花を探しつつ 亡くなっていたが 義理の母や妹、弟達に暖かく迎えられた。この最後のシーンは読みつつも涙が滲んできた。ヤンソギルを読みつつ涙ぐみなんていうのは初めてである。

 慰安婦といえば、チョット目を背けてしまう対象であるが、彼女らにも当然の事だが立派な人権、尊厳があることを知らせてくれました。