黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

おたふく風の話

2015-01-11 18:46:38 | 健康・病気
おたふく風の話
☆おたふく風は、流行性耳下腺炎とも言い、全身の腺組織と神経組織を好んで侵すムンプスウイルスによる急性の全身の感染症です。
☆普通は、唾液腺(特に耳下腺)が腫れて大きくなり、痛いのが特徴です。
☆ムンプスウイルスは16~18日の潜伏期を経て60~70%が発病します。不顕性感染(かかったのに症状が出ないままに治ってしまうこと)は30~40%ですが、ある追跡調査によれば不顕性感染は4歳までで、4歳過ぎると必ず発病したと言います。
☆多くの場合、両側(たまに片側)の耳下腺炎になります。それに加えて比較的多いのは、同じ唾液腺の顎下腺と舌下腺、それに睾丸炎、髄膜炎です。膵臓炎、卵巣炎、甲状腺炎、涙腺炎などは比較的まれです。これらの様々な症状は、耳下腺炎に先立ったり、後から来たり、中には耳下腺炎を伴わないこともあります。
☆耳下腺炎では、典型的には発熱、頭痛、食欲不振とだるさがあります。24時間以内に「耳が痛い」と耳たぶのそばと下に、U字型に耳下腺のある所を痛がり、食べる時にあごを動かすと痛みが強くなります。それから耳下腺がはれて1~3日で急速に大きくなります。熱は普通1~6日で下がり、熱がひいてから耳下腺のはれがひきます。
☆耳下腺は普通では触れませんが、U字(馬蹄)型で、はれが急速に大きくなり、その間ひどく痛いです。痛みは、はれがその頂点に達するとひいてゆき、はれも3~7日でひきますが、はれだしてから6~10日続くこともよくあります。普通は一方がはれてから2~3日以内にもう一方もはれてきます。時々両側同時にはれます。しかし、ほぼ25%は片側だけで終わります。
☆顎下腺のはれは、下顎の角の下がはれます。耳下腺がはれない場合は、リンパ腺のはれとの見分けが難しいです。
☆舌下腺のはれは、普通顎の下の中央の部分か、口の中の舌の下がはれます。唾液腺三つのうち一番まれです。
☆睾丸炎は、おとなの男性のもっとも多い合併症です。成人男性の20~30%に片側におき、両側に来るのは2%です。流行時にはもっと高率になります。普通は、おたふく風にかかって始めの1週以内(遅くとも2週以内)におきます。睾丸の痛みが特徴で、それで大人では痛くて入院する人もいます。子どもでは、精通(精子ができる時期)以後になることが多いですが、まれには幼児でもなります。
 睾丸炎は、突然発熱、寒む気、頭痛、吐き気、下腹部痛と共に始まります。熱は、正常から、41度までいろいろで、3~5日間がほとんどで、まれに1週間を超えることがあります。熱と共に睾丸がはれてきて痛くなります。子どもでは、下腹痛があったら、睾丸を触って見て下さい。小さい子は睾丸が痛いとは言いません。
 不妊症はまれで、多分片側が多いせいでしょうか、ほとんどありません。しかし、男性も女性(卵巣炎)も、否定はできません。
☆髄膜炎、髄膜脳炎
 検査すると非常に多く、約5~10%に起きると言われています。しかし、ほとんどは軽く、頭が痛いくらいで、特に治療をしなくても治りますが、ひどい場合は入院が必要で、約1%以下と言い、髄液穿刺をして髄液圧を下げると、頭痛は治ります。
 髄膜炎は、普通耳下腺炎に続く3~10日後に発病します。2週間過ぎたら起きません。症状は、発熱、吐き気、痛み止めの効かない頭痛が特徴です。まれにけいれんがあります。
☆膵臓炎
 まれですが、しばしばひどくなります。
ひどい上腹部痛で始まり、発熱、寒む気、吐き気と繰り返し吐きます。この症状はしだいに3~7日かけておさまります。胃腸炎と違って、まだら吐きが特徴で、飲んだり食べたりしても、吐く時と吐かない時があり、連続して吐く時は、絶飲食にして点滴が必要ですが、滅多にありません。この時は、脂肪が含まれるようなもの、牛乳、肉、魚などを食べると、腹痛と吐き気がひどくなりますから、食べないようにして下さい。
☆その他、涙腺炎、卵巣炎、甲状腺炎、乳様突起炎など
☆合併症
 聴力障害。極くまれと言われていましたが、最近は1万人に一人と言います。聴神経炎でめまいや吐き気、耳鳴りなどを伴いますが、無症状のこともあります。片側が多いです。
 神経系合併症。極くまれ。頑迷神経炎、脊髄炎、脳炎、―後遺症や死ぬことも。
 水頭症
 心筋炎(成人に心電図上では15%位ある)、心外膜炎。
 関節炎、糖尿病、肝炎、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血。
☆治療
 おたふく風そのものには特にありません。合併症などにはあります。
☆予防
 3~4歳過ぎたら予防接種をしたほうが良いと思います。小さいうちは、軽く済むことが多いので急がず、大きくなったら、特に精通以後の男子にはお勧めです。女性も大人になってからかかると、大変なようです。
☆生活
 軽い場合は、家の中にいるだけで、後は普通でよいです。入浴可。熱が高い時でも元気があれば、ぬるま湯を浴びるのは可。具合が悪い時はやめましょう。寝ていなくても楽にしていればよいです。下痢や吐き気がなければ食事も普通でよいです。
 痛みが強い時には耳下腺部を冷やし、それでだめなら鎮痛剤を使います。かむと痛いので、食べる時に痛がらない物や流動食を食べていればよいです。膵臓炎がおきたら、牛乳など脂肪が含まれる物を避けること。
☆しばしば繰り返して、おたふく風にかかったと言われることがありますが、本当のおたふく風は一度で、他は反復性耳下腺炎といわれる細菌や他のウイルスによる耳下腺炎です。これはほとんどは片側で終わり、まれに両側になることがあります。抗体検査をすれば、かかったかどうかが判ります。
☆私の理論では、おたふく風と人間との適応関係ができつつあり、病気の症状も軽くなっている筈です。合併症の確率も過去のもので、現在はもっと少ない筈です。無症状の人も増えていると思います。無症状の保菌者(キャリヤー)もいる筈です。しかし、それは確かめる方法はありません。統計が取られていないし、一般に関心が持たれていないし、病原環境論など考えていないからです。今後の動向を歴史的に見ていくしかありません。


福島原発事故による甲状腺がんが発生か

2015-01-11 16:00:08 | 健康・病気
 福島県県民健康調査の結果が発表されています。
ひどいことに、国は福島県民のしかも当時の子どもだけを対象に、甲状腺がんの発見だけにしぼって、検診をしています。ほかの周辺の県(宮城、茨木、栃木、群馬、それに飛び地のホットスポットの埼玉、千葉、東京)は対象にならず、また、当時の大人も対象外。しかも、甲状腺がんだけしか検診しないというものです。
 東京新聞の記事では、12月25日に福島県県民健康調査検討委員会の会合がありました。その報告は、公表されている筈ですが、まだ入手できていません。記事の内容は、関係者からの取材とのことでした。
 その内容は、甲状腺検診は、2014年4月から二順目に入り、一巡目で異常なしと判定された子どもから、4人のがん疑いの子が見つかったのです。
 これは、明らかに原発事故による甲状腺がんであることは明らかです。
 一巡目の検診では、甲状腺がんとその疑いの子どもが109人見つかり、その内85人が手術を受け、一人は良性でしたが84人はがんで、二人に転移が見つかりました。これには、元々がんをもっていたものが、検診で見つかったと福島県の検討員会は言っていますが、それに対し、放射線誘発のがんが全部ではないにしても、含まれていると主張する私たちもいます。
 確かに、チェルノブイリ原発事故では、4年目から子供を中心に甲状腺がんが急増しました。もちろん、甲状腺がんだけでなく、白血病やほかのがんも増えて行きました。さらに、大人でも、がんで死亡する人も多くなったし、他にいろいろな病気も増えて行きました。しかし、国際的な原子力推進機関は、子どもの甲状腺がんだけしか、原発事故の被害としか認定していません。しかも、現在でも事故後に生まれたこどもからも、甲状腺がんが出ていますし、白血病も少なくなく、さらに今は脳腫瘍の子どもも増えています。先天性の病気の子どももふえています。特徴的なのは、骨の異常です。私の所属する「チェルノブイリ子ども基金」も、もう20年以上、現地の子どもの支援をしてきましたが、まだまだ支援が必要ですが、ベラルーシやウクライナは、当初認めませんでしたが、その後原発事故の影響を認めて、いろいろな法律を作り、被曝者の支援を行うようになったのですが、途中で国の財政が行き詰まって、予算が削られてきています。
 私たちは「未来の福島こども基金」という団体を作り、福島の子どもたちの支援も行っています。
 私は、小児科医としてかかわってきたことに、昔、子どもの白血病の治療をしていました。その頃、妊娠中の母親の骨盤計測にレントゲン写真を撮っていましたが、統計的にそれが子どもの白血病の発病率を高めていると言われていました。チェルノブイリの経験からも、3年したら白血病が出て来ていいはずですが、報道されていません。福島県は、医療機関はほとんどが、福島県立医大の出身者が多く、また医師会も福島県立医大の影響下にあり、それで公表していないのかも知れません。というのは、甲状腺検診も、他の医療機関ですることを牽制していました。しかし、今はそれも崩れて来ています。福島県の保険医協会や民医連も県立医大に逆らっていません。
 私は、年間1ミリシーベルトの被ばく地に、子どもやこれから妊娠する可能性のある女性の居住を、心配しています。ベラルーシとウクライナでは、できるだけ避難すべき地域になっています。年間5ミリシーベルト以上は、避難地域です。しかし、それを適用すると、福島県は崩壊しますから、政府はそれをしていません。福島県の三大都市のうちの福島市、郡山市が含まれてしまうからです。もう一つのいわき市の一部も含まれてしまいます。だから、年間20ミリシーベルトで大丈夫だと言っているのです。このままで行けば、今後甲状腺がんだけでなく、白血病やいろいろながん、いろいろな病気特に循環器疾患も増えてくるでしょう。しかし、日本のがん統計は、まだ不十分で、信頼できるものではありませんから、どこまで表面化するか判りません。
 これからが心配です。