黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

大絶滅の時代

2021-03-09 11:09:24 | 人新世
        新型コロナが明らかにした現実-2

     この現実の世界を変えるには何をしたらよいか

 斉藤幸平とマイケル・ハートと共に立ち上がろう




 今、斉藤幸平が明らかにした世界の現実、つまりもう社会運動をして、今の現実社会を変えなければ、地球の第6番目の大絶滅の時代に突入するのではないかという危機意識が、各方面から提起されている。
 これらは1970年代から始まっていた。しかし、今それが明白な妥当性を持って語られるようになり、しかも緊急性をもつようになった。人類の大破滅を招かないために。
 私はここに、入手した情報を私の問題意識のもとに、皆様に提供する。私は現代の日本で多くの分野で新人が台頭してきたことに喜び、経済学哲学分野や社会運動の分野での新人の台頭を渇望してきた。そして斉藤幸平という新人が、世界の、特にマルクス生誕200年、ヘーゲル生誕300年という節目のドイツでドイッチャー賞を最年少で受賞したことを称賛する。待っていた新人が出て来たのです。
★ 無限を前提とする資本主義と有限な地球生態系
(「自由と平等のホモ・サピエンス史」三宅芳夫:世界2021.2.)
 約6億年前からの生物の歴史では、「ビッグ・ファイブ」と呼ばれる生物の大絶滅の短時間(地質学的時間として)に突発した時があった。直前の第5番目の絶滅は、恐竜時代であった。およそ7000万年前に大隕石がもたらした気候変動による恐竜の絶滅である。
 今資本主義社会がもたらした成長を止められない社会が、地球を破滅に向かわせている。だからクルッツェンはこの時代を、ホモ・サピエンス(人)が起こした地質学的時代「人新世」と呼んだのである。
今日の地球温暖化、アマゾンやボルネオ、そしてアフリカなどの熱帯雨林の劇的減少、生物多様性の縮減、未知の感染症のパンデミックなどの、相互に絡み合った危機は、すべて無限の成長を「可能性の条件」とする資本主義と有限な地球生態系との論理的な矛盾であると捉えることができる。ホモ・サピエンスによって作られた資本主義によって、6番目の生物の「大絶滅」が動き出している。
 人類は20万年の間、「バンド」と呼ばれる小集団で移動しながら、狩猟・採集生活を営んでいたと考えられている。この当時の人類の労働時間は、三、四時間を超えることはなく、栄養バランスもよく、虫歯も感染症もなかった。感染症は家畜との「共生」によってもたらされたものである。バンド社会では平等であった。人類史の中でもっとも自由な社会、支配のない社会であった。自由は自然権である。バンド社会は話し合いの社会である。ほとんど所有するものがないから、暴力を行使する理由がないから。その後の世界史を三宅芳夫は解き明かした。
〇1万2000年ほど前から一部が植物栽培を伴った定住を始めた。小麦次いでオリーブが栽培され、ヤギ、羊、豚、続いて牛、馬が家畜化された。
〇紀元前3200年頃、メソポタミアで支配階層が出現し、徴税が始まり、国家が出現する。
 定住コミュニティから国家への移行の7000年の期間に、階級分化や、国家による支配、定住による感染症の発生(危険)などへの、狩猟・採集民の「抵抗」があったとスコットは説く。
 この時期には(1)狩猟・採集/バンド社会、(2)経済的格差のない数百人規模の部族社会、(3)農耕を基礎に経済格差のできた人口数千人規模の首長制社会の三つが併存していた。
 (この社会は近現代まで世界の一部には続いていた)。
〇その後、定住・農耕の拡大により、紀元一世紀ころには、ローマ、パルティア、漢の三つの帝国が並立した。農耕による土壌の劣化、建築材料や熱エネルギーは木材によって得られ、古代文明と人口を支えるために、森林の消滅と生態系の消失があった。少数の支配層と多数の民衆に階層分化し、長時間労働、栄養状態の低下、周期的な感染症の流行による大量死が19世紀末まで、20世紀の福祉国家の出現まで続く。(砂漠は人工的に作られたものであったのだ。デュボスは1970年代にそう言っていた)
〇 首長制社会から始まった階級分化は、国家となって確固となり、政治的不平等と経済的不平等は強固な関連があった。
〇 バンド社会は、少ない労働時間、比較的良好な健康状態、そして平等主義であった。
争いは構成メンバーの話し合いで解決された。暴力は成立しない。それは「眠り」の間に報復に対抗できないし、ほとんど所有するものがないから、暴力を行使する理由もない。
〇その後、たびたび支配層の消滅により、不平等は一時的に圧縮されるが、再び再建されて現代にいたる。
〇 ペストのパンデミックの後は、労働人口の減少のために、一時的には民衆への労働分配率が上昇し、良い時代であったという。資本主義の登場で「近代社会システム」が形成され、16世紀半ばには「古き良き時代」は終わり、不平等が拡大し続ける。
〇 その後、科学革命、産業革命、動力革命(石炭)、第二次動力革命(電気と石油)と進んだが、16世紀から20世紀までの近代世界の受益者は一部の上層部に限られていた。
〇 世界システムの中心国家群は、20世紀初頭1914年から1945年までの30年戦争に突入した。その初めの時期にスペイン風邪のパンデミックが起きた。この結果、人類史でも稀な、富と所得の大圧縮が起こった。それが最も著しかったのが日本だという。アメリカ並みの不平等な社会から、デンマーク並みの平等な社会に移行した。
欧米でも階級妥協と福祉国家の形成、社会主義国家の成立で、中間層、労働者層をつなぎとめるために、格差の縮小の傾向が一定期間維持された。
〇 その結果、人口の一定部分が、バンド社会以来一万年ぶりに、自由と平等を享受できた時代となった。黄金の30年とも言われた。
〇 しかし、これは1970年代の新自由主義のグローバル化で、かつ資本主義国となった旧ソ連圏と中国をも巻き込んで、世界中で格差は再び急激に拡大し始める。
 それはナオミ・クラインに「新自由主義は、第二次世界大戦後(30年戦争後)に労働者が獲得したものを解体するための階級闘争だ」と言わしめた。こうした急激な不平等の拡大が、資本の自由主義と市民の民主主義の妥協として成立した大戦後の政治システムを不安定化させ、格差の拡大による大量の貧困層の出現が、コロナウイルスのパンデミックの温床となった。
◎資本の複利的再投資の無限の反復が、富となる。年1.5%前後の経済成長が無いと資本主義は崩壊すると考えられている。
 成長のない「定常化社会」へ移行しない限り、地球生態系の危機に対処できない。定常化社会への移行は、資本主義を廃止して初めて可能になる。持続可能な発展などという持続可能な開発目標(SDGs)は本質を隠ぺいする煙幕に過ぎず、斉藤幸平は「現代版の大衆のアヘンだ」という。もうローザ・ルクセンブルクの「社会主義か野蛮か」というテーマしか語られなくなっている。だから「脱成長のコミュニズム」を提唱する斉藤幸平に賛同したい。
 私の孫たちが生き残る社会を残す為に。
★ スラヴォイ・ジジェク(スロベニアのマルクス哲学者) 世界2020.6.より
コロナの出口は、ラディカルな社会変革が必要だという。
それは今までの、つまり既存の世界秩序の枠組みの中では不可能と見えることを実現しなければならないということ。ジジェクはコロナの終息には2年かかりそうという
 権力者たちの真のメッセージは、私たちの社会的倫理の基本的前提を破らなければならないということだ。それが「最適者生存」というトリアージ(選別)である。
 私たちの社会的倫理の基本的前提は、老いた者、弱い者への配慮(ケア)にほかならない。
 このトリアージは戦争の世界でさえしてはいない倫理である。戦時でさえ、真っ先に重症者の治療が行われるべきだとされている。
 イタリアでは既に3月にはこのメッセージ「事態が悪化するなら、80歳以上の人びとや基礎疾患のある人びとの生死に関して、困難な決定がなされることがある」が出されている。
 コロナ問題は、私たちが今の経済的・社会的システム全体をどうやって変えていくべきかということに目を向けなければいけない。
 ケイト・ジョーンズが述べているように、野生動物から人間への病気の伝染は、「人間の経済発展の隠れたコストである」とジジェクは言うが、私はそうとは思はない。私は、コストではなく、そうやって人間の社会が発展してきた自然の摂理であると思う。
 環境資源学者マーシャル・バークによると、コロナによる経済的混乱に起因する大気汚染減少が救った人命は、ウイルスによる死者数を上回っているのではないかという。彼によると、汚染レベルが二カ月の間に低下しただけで、中国国内に限っても五歳未満の児童四千人と七十歳以上の高齢者七万三千人の命が救われたと推定されるという。
 ジジェクは「今、三重の危機の中にある。医療危機、経済危機、精神衛生の危機である」という。よく言われるように、私たちはみな危機に際しては社会主義者になる。
 今回の伝染病は、ナオミ・クラインが「災害資本主義」と呼んだものの長く悲痛な歴史に新たに一章を付けくわえるだけか、それとも新しい世界秩序が、そこから生まれてくるのだろうか?                       2020.3.18.
△文芸春秋(宮下洋一2020.10)によると、「それは民族の違いや遺伝的な『ファクターX』の有無とは無縁の『命の選別(トリアージ)』による悲劇だった。・・ある集中治療医は、ICUで起きていたトリアージを嘆いていた。・・病院で亡くなった患者数は約九千人、介護施設では約二万人もの死者を生んだ。
★デヴィッド・ハーヴェイ(マルクス主義経済地理学者、ニューヨーク市立大教授)世界2020.6   
 資本の流れの連続性における閉塞と中断は価値喪失をもたらし、それが大きければ、それは危機の始まりを示すという。自然は社会と切り離せない。自然との物質代謝関係がある。この観点からは、真の自然災害というものは存在しない。
 ウイルスは絶えず変異している。しかし、ある突然変異が声明を脅かすようになるといった状況は、人間の行動にかかっている。これには二つの側面がある。
 一つは、突然変異の確率を高めるのに有利な環境的諸条件が存在する。生息環境の急速な変化や、多湿の亜熱帯地域での自然依存型の食料調達システムの存在など。
 第二に、急速な宿主間感染に有利な諸条件は大きく違っている。人口密度の高さなど。
 △新自由主義での四十年の下でのパンデミック
 当初は、たかをくくられていた。武漢や韓国の流行は一部の流行とみなされた。しかしイタリアでの急激な流行が火を付けた。公的機関と医療サービス制度は殆どあらゆる所で人手不足に見舞われた。四十年にわたる新自由主義によって、人びとはこの種類の公衆衛生危機に無防備にも完全にさらされたままとなった。
 利益の上がらない感染症研究には、営利企業である大手製薬企業は関心をよせず、抗生物質からは手を引き、専ら儲かるワクチン製造にだけ力を入れている。(だからコロナの治療薬の話が無く、専らワクチンだと言っている)
 公衆衛生危機への準備体制に投資することはしていないし関心もない。
 おそらく象徴的なのは、新自由主義化の程度の小さい国々――中国、韓国、台湾、シンガポール――が、イタリアより良好な形でパンデミックを切り抜けたことである。
 この経済の最も大きな脆弱性は、短期の回転期間をともなう消費形態にあった。
 その象徴は、観光業である。接客業、外食、さらに文化イベントなどの体験型消費様式もおしまいで、現代資本主義の最先端モデルの消費様式は機能できない。
 現代資本主義経済の7割か8割を牽引しているのは消費である。最富裕国の中心で消費の崩壊が起きている。終わりなき資本蓄積(利潤追求)という形態が崩壊した。
 最前線にさらされる「新しい労働者階級」の人たち。経済的、社会的影響は「慣習的」差別を介して引き起こされる。
 第一に、増加する患者を介護するはずの労働力は、ほぼ世界中にわたって通常、極度にジェンダー化され、人種化され、民族化されている。(日本は未だ少ない)→それで世界中でブラック・ライブズ・マター運動が広がったのだ。
 また空港などの物流部門を見ると、階級に基づく労働力の現状を示している。この「新しい労働者階級」は最前線にいる。新型コロナウイルス感染症の進展は、階級的、ジェンダー差別的、人種差別的な世界的大流行の特徴を示している。「頑張ろうね」には懐柔策が潜んでいる。「この事態がどの位続くのか」長くなるほど、労働力の価値喪失も大きくなる。このままだと、1930年代に匹敵する大恐慌、失業率の増加が来ることは間違いないという。
 この解決には、サンダース以上の社会主義的政策が必要となる。
★ グリーン・ニューディールは来ないのではないか。
避けられない経済構造の変化と言うが、資本主義の下での対策では追い付かず、社会主
義的政策が必要となるであろう。
 企業による脱炭素化は難しい。この事態に及んでも、日本の政権は脱炭素化を原発で賄おうとしている。「人類が生き延びる」には、もうグリーン・ニューディールでは間に合わなくなっている。
 飯田哲也は、「文明史的なエネルギー大転換に沿って提起されているグリーン・ニューディールは、軸となる分散型技術の活用とともに、オープンで水平・参加型の統治を可能とする民主主義の深化がもとめられるからだ」という。
 (それを明快に斉藤幸平は、解明した。脱成長のコミュニズムだと。)
★ 中東でコロナによって起きているのは、
油価低迷が中東特に石油産出国の経済に与える影響は深刻である。イランの大流行はト
ルコに抜かれた。湾岸アラブ諸国は外交政策を転換させた。
ポスト石油時代の経済のあり方をどうとるかかが問われている。カタールとドバイは、
ハブ空港としての役割にも大打撃を受けた。その上、移民労働者に経済開発の大部分を依存してきたことも足かせになっている。
 難民キャンプではどうか。感染者数は実に少ないという。シリア、パレスチナ
 医療資源を制するものが、国家を制するというが。ガザなどは自助能力の高さでカバーしている。
★コロナ禍のラテン・アメリカ
 ラテン・アメリカ諸国は、アメリカ、ブリックス諸国についで多くなっている。
 ブラジルはもとより、アルゼンチン、コロンビア、メキシコ、ペルー、チリと広がっている。しかもこれらの国々では実態把握が困難であり、実際にはもっと深刻であることが見込まれている。
 影響は健康被害だけにとどまらない。なん百万人もの人びとが、一週間生き延びるたくわえを持っていない。その為、昨年3月以降は、殺人、恐喝、略奪などの暴力犯罪が増加し、暴動がおきている。しかも一昨年から政治的、社会的混乱の中にあり、重層的な困難に直面している。
 この地域の保健医療システムは脆弱そのものである。その一つの理由は、規制緩和、民営化、緊縮財政といった新自由主義の政策パッケージが財政援助の見返りに推進されている。
 それで集中治療用の病床数や医療従事者、公立病院数なども削減されている。アルゼンチンやエクアドルなどが典型であり、カリブ諸国を含めてこの地域の八か国が公的医療支出よりも債務返済に多くの額を費やした。ベネズエラでは前のチャベス政権は、社会開発と貧困削減に取り組み、貧困地区での無料診察サービスや診療所の建設を推進してきた。チリやエクアドルでの公共料金値上げ反対運動やブラジルでのサッカーW杯開催反対デモなどが起き、ラテンアメリカ・カリブ地域での経済成長は2019年には0.1%であった。
 そこにコロナが起きた。
★ 違う世界に通じる入り口へ  ―誰一人取り残さない―   世界2020.9
ナオミ・クライン対アルンダティ・ロイ対談、アサド・レーマン司会
〇 誰一人取り残さずに済む新しい世界を築こう。私は、勇気が出た。やっと期待の新人が現れたからだ。なんと日本から。マルクスに匹敵する、マルクスの後継者である新人が出てきたからだ。


★「未来への大分岐」斉藤幸平編

〇 マイケル・ハート
 リーダーなき社会運動は持続しない。サンダース現象は、ウォール街占拠運動の連続です。
 ウォール街を占拠した人たちが、運動の継続を求めて、それをサンダースに求めたのです。
 彼らの要求を表現する「手段」が、サンダースだったのです。サンダースはいろいろな運動をして来た人々の主張を取り込んで、政策にしたのです。
 サンダースの発する声の背後に、ウォール街占拠運動や、ブラック・ライブズ・マター運動、パイプライン建設に反対する環境運動(ダコタ州のスー族居留地を通すことへの反対)、学生ローンのボイコット運動(オキュパイ・スチューデント・ローン)などのさまざまな運動体の主張が流れこんでいる。
 
(サンダースは民主党下院議員の中で、進歩的グループを4人で結成しましたが、今は4割を占めるほどになり、大統領候補を争うまでになっています。その進歩派議員は、様々な人種や女性、若い議員で占めています)

△イギリス労働党党首のコービンはどうか。
 コービンを支えているのは、労働党の中での核の存在ですが、活動の中心は35歳以下の若者たちと70歳以上の高齢者で、中間の年齢層が余りいないのです。
 若い支持者は、サンダース支持層に似ています。違うのは社会主義的な政策を訴えてきた長い歴史を持つ労働党に調和しながら、うまくやっていることです。
 70歳以上の支持者たちは、労働党がラディカルだった1960年代以前から党員だった人たちです。

△選挙がすべてではない。
 社会運動が社会を変えるのです。
 政治を民主化するだけでは不十分で、社会全体を民主化することが重要なのです。
△コモンから始まる、新たな民主主義
 コモンとは何か
  民主的に共有されて、管理される社会的富のことです。
  コモンは水、空気、電気などです。土地も入るようです。
 コモンの自主管理を基盤とした民主的な社会が、コミュニズムです。

マイケル・ハートの最後の言葉は、
 この時代に左派の意味が失われてしまうわけではないのです。
 自由、平等、連帯、そして民主主義―私にとって左派が意味するのは、やはりこういった一連の言葉であり、こうした言葉の持つ可能性を問い続けなくてはなりません。


新型コロナ感染症情報 第10報

2021-03-06 10:17:45 | 新型コロナ感染症
             新型コロナウイルス感染症の日本の奇跡

   なぜ日本は欧米諸国に比べて、新型コロナ感染症の感染者や死者がけた違いに少ないのか


  新型コロナウイルス感染症の日本の奇跡
 世界では、中国で始まった新型コロナが、すぐヨーロッパに飛び火し、急速に広がったのに、なぜか隣国の日本や韓国、台湾、マレーシアでは広がらないことが奇跡と言われた。
 特に日本は特別なことをせず、ロックダウン(都市封鎖)も中途半端であり、国民に自粛を要請する形に近いものであった。また今回の非常事態宣言も飲食店への規制だけで、これも中途半端でしかない。それでも、他に国に比べたら感染者は少ない。
 日本で感染者数が少ない理由はなぜか。
 ピーター・テミンはその「中間層はなぜ没落したか」で、マンチェスター大ルイス教授によると、発展途上国はいわゆる二重経済をもち、それを「資本主義」部門と、「生存」部門と名付けた。資本主義部門は、資本と労働の両方を利用した近代的生産の拠点で、その発展は資本の量によった。生存部門は貧しい農民からなり、その人口は土地や自然資源の量に比べてあまりにも大きい為、最貧の農民一人当たりの生産性はゼロに近かった。ルイスが考えたのはアジア、アフリカ、中南米の国々で最大の国は中国であった。多数の農民が小規模農業に従事し、生存部門を構成していた。ほとんどの発展途上国はそうした二重経済であったが、日本、韓国、マレーシアは1960・70年代に急成長を遂げ、人口のほぼ全体が資本主義部門へ組み込まれた「成長の奇跡」として知られているという。この国々がコロナの少ない国である。
「人新世の資本論」の著者斉藤幸平は、日本人の大多数は世界の裕福な上位10%に入るという。世界銀行は一日一人1.9ドル(約200円)以下で生活している人を貧困と定義していて、世界の人口77億人の約一割の7億3千万人が絶対的貧困層である。
日本では年収200万円以下の貧困層は、2018年では約1100万人で、人口の約8.5%である。失業率は2019年2.3%。これがコロナ直前の状況であった。貧富の格差指数も、失業率も、世界の中で北欧並みの数字である。また日本では内戦や政治的紛争が起きていないし、難民も受け入れていない。それがコロナウイルスに感染しても発病しない状況を作っている。
国際医療福祉大の高橋泰教授に言わせれば、日本人はまだ自然免疫の段階でコロナウイルスを防御している。だから抗体検査をしても、欧米に比べて二桁低い数字しか出ていないという。抗体は、ウイルスが血液中に侵入し、獲得免疫まで発揮されないとできない。自然免疫の段階つまり、侵入する気道の粘膜細胞での細胞性免疫で闘って勝利していれば、抗体はできない。アメリカのウィルキンソンとピケットがその著「格差は心を壊す。比較という呪縛」で「格差の小さな国はうまくいっている」。アメリカは「世界で最も経済格差の大きな国」。「所得の不平等がもっとも小さな日本」とし、日本が健康や社会問題の指標(平均寿命、乳幼児死亡率、薬物・アルコール依存症、殺人犯罪率、未成年出産など)において世界でいちばんいいという。それが日本人の多くの人が自然免疫を発揮できている要因ではないか。
そのためこれだけコロナが騒がれていても、抗体検査では昨年12月の調査で東京は0.9%(6月は0.1%)しかなかった。昨年5月スウェーデンのストックホルムで25%、ロンドンで17%、ニューヨークで12%、モスクワで10%、オランダで3%、ドイツのガンゲルトで15%という抗体保有率であることと比べて極端に低い。ここから考えても、自然免疫段階で対処している人が多いと考えられる。これが日本の奇跡であった。
だから有効性と安全性に問題のあるワクチンは、日本では接種を急ぐ必要性はないと思う。コロナワクチンは、インフルエンザワクチンと同じ程度のものと考えて良い。
 

 これは「チェルノブイリ子ども基金」のニュースレターに載せたものです。