14-8.さよなら、アドルフ
■原題:Lore
■製作年、国:2012年、オーストラリア・ドイツ・イギリス
■上映時間:109分
■料金:1,800円
■観賞日:1月19日、シネスイッチ銀座(銀座)
□監督・脚本:ケイト・ショートランド
□脚本:ロビン・ムケルジー
◆サスキア・ローゼンダール
◆カイ・マリーナ
◆ネレ・トゥレーブス
◆ウルシーナ・ラルディ
◆ハンス・ヨッヘン・ヴァーグナー
◆ミーカ・ザイデル
◆アンドレ・フリート
◆エーファ・マリア・ハーゲン
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
レイチェル・シーファーの小説『暗闇のなかで』を映画化。終戦後のドイツを舞台に、ナチ親衛隊高官の子供たちが直面する過酷な運命を描く人間ドラマ。2013年アカデミー賞外国語映画賞オーストラリア代表作品。
1945年春、敗戦後のドイツ。ナチ親衛隊の高官だった父と母が、連合軍に拘束される。置き去りにされた14歳の少女ローレは、幼い妹、弟たちを連れ、900キロ離れた祖母の家を目指す。終戦を境に何もかも変わってしまったドイツでは、ナチの身内に対する世間の風当たりは冷たく、たとえ子供であっても救いの手を差し伸べる者はいなかった。そんな中ローレは、ナチがユダヤ人にしてきた残虐行為を初めて知る。さらに、ローレたちを助けてくれるユダヤ人青年トーマスが旅に加わり、ローレがこれまで信じてきた価値観やアイデンティティが揺らぎ始める……。
ナチス時代を扱った映画が数多く有る中でも、この作品では直接ナチスが前面に出て来る事は無い。原題はただ単に姉妹弟達の長女ローレの名前で、邦題には?が付く。
ナチスの高官だが家庭では優しかった父と母がヒトラー政権の崩壊で連合軍側に拘束され、残された子供たちは900キロ離れたハンブルグに住む祖母宅を目指す。そこに辿り着くまでの子供たちの苦しみは、結局、ナチス時代が終焉を迎えドイツは連合国側によって分断され、途中、あれ程嫌っていた(親の影響を受けていたローレは特に)ユダヤ人青年トーマスが途中から一緒に旅することで救われるのは皮肉だった。
そのトーマスとも途中で別れてしまい(と言うより彼の方から半ば一方的に)子供たちはかすかな記憶を辿って祖母宅を再び目指すが、道中で弟を一人既に失っており、14歳のローレにはキツイ旅だった。
この旅で子供たちは自分が信じていたアイデンティティが敗戦(ヒトラー政権崩壊)によって崩れ、道中でユダヤ人虐殺の事実も知り、それに父が関わっていたことも知る。両親を失って厳しい現実を突き付けられながらも何とか祖母宅に到着。だが、そこでは心が安らぐはずもなく、住んでいた南部ドイツとは風土も異なり規律も躾も祖母は厳格で過去に自分が受けてきたナチの教育と重なった。
過去と決別して生きなければならないローレ達、これから先この子供たちの将来はどうなるのか(或いはどうなったのか)気になるエンディングだった。
これはオーストラリア人監督が全てドイツ語で撮った作品で、子供たちの視線からみたヒトラー政権崩壊後のドイツを描いている点が新鮮に映った。ヒトラーが亡くなって動揺する両親と、何が何だか分からないままに価値観の変った世界へいきなり放り込まれた子供たちの戸惑いを良く描いていた。
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