茂原市ことぶき堂鍼灸院

茂原市で鍼灸治療院を営んでおります。
東洋医学や日常生活のあれこれを日々綴っています。

壽堂日記29年10月29日「東洋医学的な妊活・不妊症の治療とは?」

2017-10-29 08:44:52 | 日記

先日「安産のお灸」について書きましたが「ことぶき堂鍼灸院」では東洋医学的な人体観に基づき鍼灸による「妊活・不妊症」治療を行っております。

現代西洋医学的な「妊活・不妊症」治療を受けている方から『東洋医学的な妊活治療も受けて見たい。』と相談を受ける事が増えました。


治療内容は患者さん一人一人のオーダーメイドですが、基本となる東洋医学的な考え方をご紹介したいと思います。


現代の様なストレス社会において、人は常にストレスに曝されています。ストレスは気・血・水の流れの変調をもたらします。

ストレスが不妊症の原因となるのは「ストレスによってホルモンバランスが崩れる。」のが原因で、実はストレスに対抗するホルモンを分泌する器官と、生殖活動を行う際に必要となるホルモンを分泌する器官は同じことが多いのです。

モントリオール大学のハンス・セリエ教授が提唱した「ストレス学説」によれば、過度のストレスにさらされると人間の体は防衛反応として視床下部にある自律神経の中枢が興奮を起こし、副腎髄質がホルモンを分泌して「防衛行動=緊急反応」をとります。

妊娠に必要な性腺刺激ホルモンも、この視床下部を通して分泌されています。

そのため、ストレスへの防衛行動が優先されて、生殖活動に必要なホルモンが十分に分泌されない場合があります。そうなると、ストレスで妊娠しづらくなり、その不妊によってさらにストレスが溜まると言う悪循環になります。

妊活・不妊症の改善には、ストレス解消が欠かせません。


鍼灸治療は気・血・水の流れ・陰陽バランスを調える治療であり、また自律神経の興奮を鎮静化させる効果があります。


では具体的に「妊活・不妊症」の治療において鍼灸治療はどのような効果を持つのでしょうか。

東洋医学において、大きく分けて肝・脾・肺・腎の4つが、妊娠に影響すると言われています。

昔から、「腎は精を貯蔵する『作強の官』(生命エネルギーの強さを作り出すもの)と呼ばれ、人体の生命活動を維持する基本的な栄養物資である精を貯蔵し、五臓六腑の要求に応じて随時その精を供給し、それらの健全な働きを維持しているといわれています。

そして、全身に精力を与え、粘り強さや根気を生み出すとされています。

腎は、生殖用の精も貯蔵しています。

生殖用の精が不足すると、妊娠ができない様々な症状となって出てきます。
男の精と女の精が合体し、胎児の腎気となり妊娠が成立します。受精した時点で胎児の腎気の強弱が決まっていて、これが持って生まれる「先天の気」です。

腎の力は成長と同時にその力も高まっていきます。

中国の古典医書『黄帝内経』という書物の中では、腎気の年齢的消長を次のように述べています。

 女子では、「七歳で腎気の働きが活発化し、歯が生え替わり、髪も長くなる。14歳で天癸が充満し、任脈と衝脈の流通が増進し、月経が始まる。
21歳で体格は頂点に達し、28歳で筋骨は充実して引き締まり、毛髪は最も長く豊かになる。しかし、35歳になると陽明経脈の機能が衰え、白髪が進行し、49歳で任脈が空虚になり、月経が停止する」

最近CMで見かける女子は7年ごとに節目を迎えるとの出典はこの『黄帝内経』の記載です。

生殖能力において腎は非常に大切であり、どんなに年齢が若くても、生活環境や食生活などで腎の力が不足して来ると、生殖能力が衰え、次第に卵巣機能や子宮機能が低下し、無排卵や無月経、子宮内膜が薄くなり、着床しにくいなどの症状が出てきます。

また肝は血を蓄え、体の血量を調節する働きをしています。東洋医学では「肝は血を蔵する」と言われています。

肝は過度の怒り(怒る・イライラするということ)が起きると、精神上の激しい刺激を受けてその正常な働きができなくなり、酷いときは吐血まで引き起こすことがあるといわれ肝はストレスが影響を与えやすい臓腑であると考えられます。

つまり肝経の血の流れ、特に、骨盤内の流れが悪くなることにより、冷え症・お血が出現します。

女性の場合、骨盤内に子宮という血液を集めたり、出したりを繰り返す臓器があるために、月経がスムーズに繰り返さなければ、血という形で滞った悪い血が溜まってきます。

このお血の状態が進むと、軽い症状としては頭痛・肩凝り・月経前のイライラ・めまい・足の冷えとして現れます。


鍼灸を用いて、経脈上のツボを刺激することによって女性が本来持っている力を引出し、卵巣と子宮の機能が高まると、妊娠し易い体質へと改善されていきます。

また黄体機能不全、卵巣過剰刺激症候群などのホルモンのバランスの崩れには、東洋医学が非常に効果的です。


当院では東洋医学だけに全てを頼るのではなく、症状によっては現代医学との併用が有効と考えます。

当治療院では鍼灸治療により不足している五臓の気を補い、「ストレス」「お血」「体の冷え」を治療し妊娠し易い体を造ることを目標とし治療をしております。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

壽堂日記29年10月28日「安産のお灸」

2017-10-28 07:19:27 | 日記

「安産のお灸」について問い合わせを頂きました。

一般に「安産のお灸」と言われているのは「三陰交」のお灸を指すことが多い様です。

「三陰交」は足の太陰脾経の経穴で主治は月経閉止・月経不順・不妊症・子宮内膜炎・帯下・胎児の位置不正等の産婦人科疾患に効果があり、また下腹部膨満感・腎炎・膀胱炎・足関節痛・下肢麻痺・胃腸炎等にも効果があります。

実際は「安産のお灸」は総称みたいなもので「子宝のお灸」とか「安胎のお灸」とか「逆子の灸」とか「産後の肥立ちを良くする灸」とか様々な物があります。

当院で「妊活」の治療の際に使用するのが「子宝のお灸」や「安胎のお灸」で「安胎」とは胎児を安定させる治療方法のことで胎動の不安や、流産・早産を治療・予防して、妊娠の安定を図ることを目的とします。

当院の「妊活」の治療では「本治法」の後に鍼と併用して灸を使用しています。

また「逆子・難産のお灸」も用いることがあります。「難産」にならない様に治療をするので「安産のお灸」の一つとされます。

東洋医学的には「難産」の多くは気血虚弱または気機不調のため子宮の収縮力が乏しくなり分娩異常となったもので、「分娩促進」には合谷・三陰交・催産穴を使用すると古書に書かれています。

三陰交・合谷は生殖器系統に対して調整作用を有しており分娩間近の妊婦に刺鍼すると子宮の収縮を増強させ出産に要する時間を短縮させることが出来るとされています。これは「鍼灸大成」が出典の様です。

現在では皆様病院で出産されるので当院では「分娩促進」の治療はしておりません。

「産後の肥立ちを良くする灸」は胎盤遺残がある場合や産後の子宮収縮不全に効果があります。

灸の名著「名家灸選」に「婦人産を易くする灸法」が記載されていますが、当院では「安産の灸」は一種類では無く、患者さんお一人お一人の状態で配穴を考えるオーダーメイドであると考えます。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

壽堂日記29年10月26日「脳を醒めさせる鍼?」

2017-10-26 08:53:41 | 日記

「頭をスッキリさせる鍼をお願いします。」と患者さんがお見えになりました。

腹診して「腎のエリア」に圧痛があるので「腎積腎虚証」で本治法を行いました。

患者さんから「どこが悪いのですか?」と質問されましたが、東洋医学では脳は奇恒の腑の一つであり「脳は髄の海」とも「精明の府」とも呼ばれ「腎」と関係が深いとされています。

「霊枢」には腎が蔵している精が髄を生じ、髄が脳を養うとされています。髄海の正気が虚すと頭がぐらぐらして耳鳴りがして、目が回ったりすることがあるとされています。

腎精が充足していれば脳髄は十分に栄養を受ける事ができ、腎精が不足して脳髄の栄養状態が悪くなると、頭暈、健忘、耳鳴り、記憶の減退、思惟力の低下などが生ずるとされています。

今回は「腎虚」なので「腎精が不足」していることが原因の一つではないかと考えられます。

補助治療は四神聡・本神・身柱を用いました。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

壽堂日記29年10月7日「冷え性の治療。」

2017-10-07 09:18:06 | 日記

明日10月8日は「寒露」ですね。今回来院された方は「腰痛」と「冷え性」が酷く夜眠れないと言うご相談でした。

この方の「冷え性」は夏場でも夜足先が冷たくて眠れない程で、触診したら手足の先が氷の様に冷えていました。
「腰も足先から冷えが昇ってくる感じです。」とのことで、触るととても冷たく凝っています。

この患者さんの「腰痛」の原因は「冷え」が原因の様です。

冷え性の原因の一つとしては「腎の温煦作用」の低下が考えられます。温煦作用とは身体を温めるはたらきの事です

今回は腹診で腎の気が虚している「腎虚証」とし証を立て治療しました。

「腎虚証」の中の「腎陽虚」であるため温煦作用、気化作用の低下が起こり腰や膝の軟弱化と冷え、四肢の冷えが起きたようです。、

鍼灸では「手足の症状には体幹部を刺し」「体幹部の症状には手足を刺す」というのが基本です。

「冷え」の症状が強く、体幹部と手足の症状が出ているので「本治法」は積聚治療で五臓の気を補い局所は「澤田流太極療法」を使い治療してみました。

鍼を刺すと患者さんから「手足がじわ~として来ました。暖かい物が指先に動いていくのが分かります。」と言われました。

証は「腎虚証」で取りましたので、背部の腎のツボに鍼と灸をして、更に「ビワの葉温湿布」をすると「腰がとても温まり痛みが治まりました。」と言われました、治療を終えると手足の先まで気血が流れ「ぽかぽか」との事でした。

鍼灸治療は気血水の滞りによる、各種の痛みや冷え性によく効きます。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする