茂原市ことぶき堂鍼灸院

茂原市で鍼灸治療院を営んでおります。
東洋医学や日常生活のあれこれを日々綴っています。

壽堂日記29年2月22日「疼痛緩和ケア・線維筋痛症の鍼灸治療。」

2017-02-22 07:04:03 | 日記

当院では鍼灸による「疼痛緩和ケア」を行っております。

「線維筋痛症」の患者様が「冷えのぼせ」「全身の痛み」と「頭痛」の治療に見えられました。

「線維筋痛症」とは全身の広い範囲で強い痛みがある病気で、今のところ原因は不明とされています。

それ故に治療方法も確立されておらず、現代医学では対症療法的な鎮痛剤やステロイド剤が使用される事もありますが、副作用を心配されたり、鎮痛効果があまり効かないと相談を受けました。

東洋医学は現代医学と病に対するアプローチ方法が異なる為に現代医学では原因不明とされる病でも治療方法が用意されている事があります。

東洋医学の最大の特徴は、身体を構成するものを気・血・水と呼ばれる三種のものに分けて考えることです。

「東洋医学では気・血・水のバランスが崩れると病になると考えますが、特に気は「気不通即痛」と言われ「気が通じなくなると痛む。」と東洋医学の古典「黄帝内経」に記述されています。

東洋医学的には「線維筋痛症」の患者さんの場合も体の中の気の異常が痛みを引き起こしているのではないかと考えることが出来ます。

私の治療院では先ず「積聚治療」を用いて「本治法」で治療してから「標治法」で治療しております。

最初に脈診をしてから全身の指標を確認すると腎経の兪府の反応が強く右復溜にも反応がありました。全体的に上部症状が強く気が体の上に昇り頭痛の原因となっていると判断しました。

腹部に丁寧に接触鍼をして腹診をすると臍の左下方に圧痛があり皮膚が冷たく感じられお血があるようです。
心窩部の任脈上にも違和感があります。下腹部の曲骨上の圧痛が一番著明です。

今回は「腎虚証」として治療を進めて行く事となりましたが、治療の組み立てとして最後に八脈交会穴の後谿と申脈を使う事としました。

うつ伏せ状態で背候診して指標を確認すると肩甲骨の間の神堂・心兪・神道に反応があり脊柱起立筋全体に硬さが見られます。

私が治療の際に採用している指標の箇所は「線維筋痛症」の圧痛点診断点18箇所と殆ど同じです。

背部に接触鍼をしてから膀胱経に丁寧に鍼をしていくと、神堂穴で「鍼が響きます。いい感じです。」との事。上部に集まっていた気が下がり始めました。

脊際に鍼をすると完全に気が下がり体全体の痛みも和らいできた様です。

背部の治療を終えて腹臥位で四神聡を行い、最後に八脈交会穴の後谿と申脈に鍼を軽く当てると『この鍼すごく良いです。頭がはっきりして来ました。こんなに効く鍼は初めてです。』と驚いておられました。

八脈交会穴の後谿と申脈の組み合わせは顔面・側頭部・肩甲骨の周囲の疾患(古典では内眼角・耳後・項部・肩甲骨の証)を主治するとされていますが
単独で使用するのではなく、本治法で治療をした後に用いるから、より効果が出る訳です。


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壽堂日記29年2月21日「不妊症の治療・黄体機能不全と鍼灸。」

2017-02-21 09:25:23 | 日記

当院では不妊症の鍼灸による治療を行っております。
「不妊症」は様々な原因があり、男性不妊も増加しております。

今回は「黄体機能不全」による不妊症の治療についてお話してみたいと思います。
「黄体機能不全」は女性不妊の中では代表的な物で女性不妊の10%が「黄体機能不全」によるものと言われております。
「黄体機能不全」とは、黄体からのホルモン分泌が不十分になったり、黄体の存続期間が短縮する症状のことで不妊症の原因となります。

「黄体」は卵巣で卵胞が排卵したあとに変化して作られる器官で、プロゲストロン(黄体ホルモン)を分泌し子宮内膜を厚くし、受精卵の着床や妊娠の維持に重要な役割を果たしています。

「黄体機能不全」の原因は未だ明確にはわかっておりませんが、卵巣機能は間脳視床下部、脳下垂体という性機能を主る脳中枢により調節されており、これらの中枢が性周期の適切な時期に適切なホルモンを分泌することにより、卵巣における排卵やホルモンの分泌が正しく行われます。
したがって間脳視床下部、脳下垂体の機能異常があると「黄体機能不全」となることがあり。また中枢に異常がなくても卵巣自体の異常のために卵胞から黄体への移行が不完全になることもあります。
「黄体機能不全」は原因が多岐にわたります。

西洋医学では「黄体機能不全」の治療の主流は黄体ホルモン(プロゲストロン)の補充が一般的な様です。

当院では原因が多様な「黄体機能不全」の「不妊症」について東洋医学の伝統的な四診を用いて患者様に合わせた鍼灸治療を行っております。
「黄体機能不全」を東洋医学的な観点から捉えると「体の冷え」「精神的なストレス」「自律神経の変調」などが深く影響している場合が多くみられ、鍼灸治療による「体の冷え」「精神的なストレス」の軽減が「黄体機能不全」の改善に効果があります。

西洋医学と東洋医学を上手に併用すれば「黄体機能不全」の患者様の妊娠率を高めることが出来ます。


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壽堂日記29年2月10日「痿証と東洋医学。」

2017-02-10 07:55:10 | 日記

痿証の治療について問い合わせがありましたので簡単に説明してみたいと思います。

痿証とは肢体の筋肉が弛緩して軟弱・無力となり、しばらくすると随意運動が出来なくなって肌肉の萎縮が起こるという病証のことです。

現代医学における多発性神経炎、急性脊髄炎、小児麻痺後遺症、進行性筋委縮症、重症筋無力症、周期性麻痺、筋ジストロフィー、ヒステリー性麻痺、中枢神経系感染後遺症などの疾患が痿証を参考に弁証取穴を行い鍼灸治療が出来ます。

痿証の発病の外因としては主に温邪、湿熱がありこれらにより津液が損傷すると本病が起こるとされ、また内因として正虚または久病による虚、あるい労傷過度による気血陰性の虧損(きそん)があげられ、病変は肺・脾・胃・肝・腎といった臓腑に及びます。

また痿には更に痿躄・脈痿・筋痿・肉痿・骨痿の種類があります。

治療法ですが黄帝内経素問の痿論篇に「痿を治すは独り陽明経を取穴せよ」と調理胃脾の原則が記載されています。

これは痿証の臨床上で下肢の痿弱が多くみられることから痿躄を治療する原則を述べたものと思われます。

陽明経とは足陽明胃経の事ですが、なぜ陽明胃経なのかと言いますと、足陽明胃経は五臓六腑の海と言われ、そして宗筋を潤すことを司り、宗筋は骨と骨を繋ぎ合わせて関節の働きをしています。足陽明胃経が虚すると宗筋が緩み足が萎えて歩くことが出来ません。

脾胃の機能が失調したために肺津液不足や肝腎精血不足を引き起こし痿証となっているものには、脾胃の調理をベースにして治療せよという事だと考えます。

ただ痿証には痿躄・脈痿・筋痿・肉痿・骨痿などの多くの証型があり「独り陽明を取る」だけでは治療する事は出来ません。

痿証は肝腎肺胃の四経の病であり、原因は熱邪・湿熱だけでなく痿証の原因は肝腎不足や気血虧損(きそん)など多岐にわたるものであると考えます。

痿証の治療は先ず「全体治療」を行い「本」を治療してから「標」を治療しなくてはならないと考えます。


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壽堂日記29年2月9日「当院の不妊症の治療(腎虚証)」

2017-02-09 11:16:12 | 日記

不妊症の治療を受けてみたいと初診の患者さんが見えられました。

当院では腹診して証を立て、「証」に従って治療を行います。東洋医学では「証」に従って治療を行うことを「従証療法」と呼びます。

腹診すると臍の左下方と曲骨上の圧痛が強く瘀血があり、子宮が冷えている胞寒の様に感じられました。

今回は「腎虚症」で治療を進めました。東洋医学の不妊症の治療で一番大切なのは「気」を高める事です。

「気」と言うと捉えどころが無い様に思いますが、実は「気」と「血」の間には相互依存・相互資生・相互為用といわれる密接な関係があります。

「気」には「先天の気」と「後天の気」があり「先天の気」とは腎、「後天の気」とは胃腸の事を言います。臓腑で言えば脾と胃に当たります。

東洋医学で言う「腎」とは現代医学の腎臓のみでなく内腎・副腎・外腎の三つを言い、内腎・副腎は腎臓・副腎、外腎は泌尿生殖器を指すと思ってください。

女性の場合は膀胱・子宮・卵巣が外腎に当たります。

そしてこの「腎」の機能が低下することを「腎虚」と言います。

東洋医学では腎虚・血虚・血瘀・痰祖・胞寒などがあると「腎の気=腎精」が損傷して妊娠しずらくなると考えられています。

胞寒とは命門という東洋医学でいう生命力の火(即ち、体の温度)が弱く、胞宮が冷え、寒が胞宮に悪い影響を与えていると考えるものです。

胞宮とは子宮の事です。東洋医学では奇恒の腑に属し女子胞(子宮)胞宮、子宮、子臓、胞臓、子処、血臓とも呼ばれます。

当院では、妊娠に関係の深い臓腑は腎・脾・肝であると患者さんに説明していますが、簡潔に言えば腎と脾(胃)が「先天の気」と「後天の気」の生成に深く関わり、肝は血を蔵し気血を主り、気血の流れをのびやかに全身の隅々までゆきわたらせる働きがあります。

「冷え」と「瘀血」と「ストレス」が不妊症の原因とお話しするのも肝がストレスに弱い臓腑であり「冷え」と「瘀血」と「ストレス」が腎虚・血虚・血瘀・痰祖・胞寒の原因となり易いからです。

 


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壽堂日記29年2月4日「東洋医学的な不妊症の治療とは?」

2017-02-04 08:11:40 | 日記

「ことぶき堂鍼灸院」では東洋医学的な人体観に基づき鍼灸による「不妊症」治療を行っております。

当院で鍼灸による「不妊症」の治療を受けている患者さんが体外受精のための採卵に行かれ『質の良い卵が採卵でき、良い受精卵を準備することが出来ました。』と連絡を受けました。

質の良い卵を多く準備するためには、母体となる女性の体調を事前に管理・調えることは重要性です。

卵巣・子宮の存在する骨盤腔の中の血流を良くすることは当然のことながら、生殖に関係するホルモンの分泌を調え、消化器系の機能を調える事が卵の発育には欠かせません。

現代の様なストレス社会において、人は常にストレスに曝されています。ストレスは気・血・水の流れの変調をもたらします。

ストレスが不妊症の原因となるのは「ストレスによってホルモンバランスが崩れる。」のが原因で、実はストレスに対抗するホルモンを分泌する器官と、生殖活動を行う際に必要となるホルモンを分泌する器官は同じことが多いのです。

モントリオール大学のハンス・セリエ教授が提唱した「ストレス学説」によれば、過度のストレスにさらされると人間の体は防衛反応として視床下部にある自律神経の中枢が興奮を起こし、副腎髄質がホルモンを分泌して「防衛行動=緊急反応」をとります。

妊娠に必要な性腺刺激ホルモンも、この視床下部を通して分泌されています。

そのため、ストレスへの防衛行動が優先されて、生殖活動に必要なホルモンが十分に分泌されない場合があります。そうなると、ストレスで妊娠しづらくなり、その不妊によってさらにストレスが溜まると言う悪循環になります。

不妊症の改善に、ストレス解消が欠かせないのはその様な理由があるからです。

鍼灸治療は気・血・水の流れ・陰陽バランスを調える治療であり、また自律神経の興奮を鎮静化させる効果があります。

東洋医学では肝は血を蓄え、体の血量を調節する働きをしています。東洋医学では「肝は血を蔵する」と言われています。

肝は過度の怒り(怒る・イライラするということ)が起きると、精神上の激しい刺激を受けてその正常な働きができなくなり、酷いときは吐血まで引き起こすことがあるといわれ肝はストレスが影響を与えやすい臓腑であると考えられます。

肝経の血の流れ、特に、骨盤内の流れが悪くなることにより、冷え症・お血が出現します。

女性の場合、骨盤内に子宮という血液を集めたり、出したりを繰り返す臓器があるために、月経がスムーズに繰り返さなければ、血という形で滞った悪い血が溜まってきます。

このお血の状態が進むと、軽い症状としては頭痛・肩凝り・月経前のイライラ・めまい・足の冷えとして現れます。

鍼灸を用いて、経脈上のツボを刺激することによって女性が本来持っている力を引出し、卵巣と子宮の機能が高まると、妊娠し易い体質へと改善されていきます。

また黄体機能不全、卵巣過剰刺激症候群などのホルモンのバランスの崩れには、東洋医学が非常に効果的です。


当院では東洋医学だけに全てを頼るのではなく、症状によっては現代医学との併用が有効と考えます。

当治療院では鍼灸治療により不足している五臓の気を補い、「ストレス」「お血」「体の冷え」を治療し妊娠し易い体を造ることを目標とし治療をしております。


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