不妊治療で「胚移植」を予定されるている患者さんから『胚移植」の直前と移植後に鍼灸治療を受けると妊娠率や出産に至る確率が高まるのはなぜですか?。』質問を受けました。
「胚移植」の直前と移植後に鍼灸治療を受けると妊娠率や出産に至る確率が高まる事はよく知られており「胚移植」前後に治療を受けられる患者さんは多いのです。
この元になった研究の一番古い物はアメリカのメリーランド大学医学部統合医療センターの研究員らの調査で「体外受精時の胚移植の前後に鍼治療を受けることで、その後の妊娠率や出産に至る確率が高まることが明らかになった。」と報告されています。
こ の報告は欧米4ヶ国で実施された1366名の女性を対象に、体外受精時の胚移植の前後に、伝統的な鍼治療を受けた女性のグループ、にせの鍼治療を受けた女 性のグループ、そして、何も施されなかった女性のグループのその後の成績を比較したところ、伝統的な鍼治療を受けたグループは他のグループに比べて、妊娠 した割合が65%、そして、出産に至った割合が2倍であることが分かったそうです。
体外受精時の胚移植の前後の鍼治療は、その後の妊娠率や出産率を向上させることがデータで裏づけたられた訳ですね。
鍼灸治療が不妊治療に有効であることを示す各国の論文としてはその他に代表的なものとして
・胚移植日にはり治療を行うと体外受精、顕微受精の妊娠率を上昇させる。
273例を研究対象とし、はりを行わない群では22%の妊娠、はり治療群では36%の妊娠率であり、はり治療群が妊娠率が高かった。(アメリカ生殖医学学会誌2006年 デンマークでの研究結果)
・体外受精と顕微授精例の黄体期には、はり治療を行うと、はり治療群に妊娠率が高かった。
225例を対象とした、はりを行わなかった群では13.8%、行った群では28.4%の妊娠率ではり治療群に妊娠率が高かった。
(アメリカ生殖医学学会誌2006年 ドイツでの研究結果)
・体外受精例にハリ治療を3回行い、ハリ治療群に妊娠率が高かった。
228例を対象に、HMG(排卵誘発剤)注射時、採卵前、採卵直後にハリを行い。行わない群では23%、ハリ治療群では31%の妊娠率で、ハリ治療群に妊娠率は高かった。
(アメリカ生殖医学学会誌2006年 オーストラリアから研究結果)
などがあります。国内でも以下の同様な研究成果が報告されています。
・体外受精を5回以上行っても妊娠できなかった不妊症の女性114人に針治療を行ったところ、約4割にあたる49人が妊娠に至ったと、名古屋市の明生鍼灸院と明治鍼灸大の研究グループが2006年(平成18年)11月10日、大阪市内で開かれている日本生殖医学会で報告されました。
49人のうち4人は自然妊娠だったほか、30人は治療後1回目の体外受精で妊娠に成功したそうで。
報告された114人の治療実績は、1998年2月~2006年6月に、同鍼灸院を訪ねた不妊患者のうち体外受精を5回以上行っても妊娠しなかった女性のもので、治療は、週1~2回のペースで行われ、腹部や足などにある婦人科疾患に効果があるとされるツボを針で刺激したそうです。
(2006年(平成18年)11月10日 日本生殖医学会)
鍼治療がどのようなメカニズムで不妊治療の成功率を高めるのかはよく分からないとしていますが、ストレス緩和の効果も大きいのではないかとされています。
ストレスを受けることで、人の気血水の流れが変調します。
胚移植の前後の気血の流れの変調は、胚が着床し、妊娠が継続することに、何らかの影響を及ぼしていると考えられます。
体外受精を受ける女性にとって、胚移植の前後に鍼灸治療を受けて、気血の流れを調え、ストレスを緩和することはとても大切です。
当院では体外受精の胚を戻す前と後に鍼灸治療を受けることをお勧めしております。