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ストロンチウムの移行

2012-04-09 12:33:26 | 未分類

ストロンチウムの移行

転載元:http://blade1024.blog.fc2.com/blog-entry-48.html

福島県から「土壌の放射線モニタリング(放射性ストロンチウム、プルトニウム)調査結果(PDF:3,458KB)」が報告された。
これは昨年11月に報告されたプルトニウム検査結果に、新たにストロンチウムの検査結果を加え総合評価を加えた内容である。

これらは県独自に調査を行ってきた内容で、文科省が行っている国の調査結果とは大きく異なる内容の部分がある。
特に注目点はストロンチウム(Sr-90)の土壌汚染データである。

福島県の調査結果
sr.jpg

文科省の調査結果
sr2.jpg

例えば相馬市の数値を見てみると、文科省の調査では2400Bq/m2、これに対し福島県の調査では130Bq/m2であった。
その比は実に「19分の1」になる。その他の地点でも大幅に減衰した数値結果となっている。
何故これほど数値が異なってくるのか、報告書では言及していない。

この点について、少し考察してみる。

検査方法に異なる点は無く、まずは土壌採取日に着目した。

<文科省>
第1 期6 月6 日~6 月14 日、第2 期6 月27 日~7 月8 日

<福島県>
発電所周辺地点(7地点) :7月13日~14日採取
県内全域調査地点(48地点) :8月10日~10月13日採取


文科省のデータは「6月14日に補正した数値」であると明記されている。
福島県の報告書には補正などについては言及はされていない。

福島県の調査では、相馬市中村北町(中村城跡)の採取日は8月14日である。
文科省の調査データと、ちょうど2ヶ月遅れとなっている。
Sr-90の半減期は28.8年であることから、僅か2ヶ月で減衰したとは考えられない。

では次に、ストロンチウムの性質について考察してみる。
ストロンチウムはセシウムに比べ環境移行性が高い性質がある。

チェルノブイリ原発事故による土壌中放射能の物理・化学的性状とその移行性(ベラルーシ国立大学)

これらのことから、梅雨時期の降雨によりストロンチウムが大幅に移染したと考えるべきである。
河川に流出もしくは地下に浸透した結果、大幅な地表面での減衰が起こっていると考えられる。

また福島県の調査で気になるのは、半減期50日となるSr-89を除外している点である。
文科省はSr-89の降下検出を指標として「原発事故由来」と評価を下している。
福島県の調査の場合、土壌採取が遅れたことによりSr-89の評価は困難と判断したのかも知れない。
そのため事故前2005年の調査データを比較対象として評価を行っているのだが、過小評価とも受け取れる内容となっている。

ストロンチウムについては、相変わらず食品放射能基準にも適用されていない。
また、根菜類への移行係数はセシウムに比べても飛躍的に高い。
ストロンチウムが地下へ浸透が進んでいるのならば、セシウムに比べ絶対量は少ないながらも根菜類への移行も注視しなければならない。
もちろん地下水への影響も長期的に監視するべきである。

チェルノブイリ放射能による牧草汚染(ベラルーシ実験植物学研究所)

原発事故関連情報(3):放射性ストロンチウム(Sr)の土壌-作物系での動きに関する基礎的知見(日本土壌肥料学会)

sr3.jpg
放射性物質の農地等における移動・循環問題より(PDF)放射線医学総合研究所


チェルノブイリ高濃度汚染地区での地下水汚染データ
”Environmental consequences of the Chernobyl accident and their remediation,” IAEA, Vienna (2006 pub-1239)
IAEA報告書(2006)抄訳: チェルノブイリ原発事故による環境への影響とその修復より


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