**『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から何度かに分けて紹介します。7回目の紹介
現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!
「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」
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(カスタマーレビュー)から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)
読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。
そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。
「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。
この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。
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【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(47) ※7回目の紹介
-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「終章 爆弾低気圧」 (47)を分けて紹介-
前回の話:【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(47) ※6回目の紹介
新崎原発でメルトダウンが始まっていると思うと、心臓がせり上がってきて、口から飛び出すような恐怖感を覚える。原発に向かう反対車線には、まったく車が通っていない。皆、原発から少しでも遠くに逃げようとしているのだ。
後方から一台のバイクが反対車線を平然と逆走し、国道のほうへ走り抜けていった。後ろに子供を二人も乗せた3人乗りだ。ヘルメットもかぶっていない。生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。
釣られるように、2、3台の軽自動車が、バイクのあとに飛び出していく。その直後、一斉に他の自動車も反対車線を走り始め、一気に車列は前進した。今は、交通法規にこだわっている場合ではない。
そのまま国道に着くと、県道から来た車の列は、そのままの勢いで、国道の反対車線を逆走して突っ込んでいった。反対車線を走る車が急ブレーキをかけ、スリップを起こし、そのまま逆走した車に激突する。ツルツルに鏡面化した路面では、スタッドレス・タイヤはほとんど制動力を発揮しない。両方向から、次々と後続の車が衝突していった。
衝突を避けようとしてハンドルをとられた車が、高速につながる車線に突っ込んだ。運悪く、衝突された車のガソリンタンクに着火し炎上する・・・・その後ろでは、次々と玉突き衝突が起きていく・・・。
性善説に基づいて策定された周辺住民の避難計画には想定されていない事態である。
新崎原発に最も近いインターチェンジでも、事故が起きていた。
雪が踏み固められ路面が鏡面化したインターチェンジの出口付近で、官邸の指示を受け、首都圏から向かったタンクローリーが滑り、横転した。漏れた燃料に引火し、インターチェンジの出入口一帯が火の海となった。
地元自治体の消防がインターチェンジに向かおうとしたが、周辺道路は原発から避難する車で一杯で、まったく動かない。消防車がサイレンを鳴らしても、塞がった道路をインターチェンジに向かうことはできなかった。
高速道路の本線でも、インターチェンジ付近で下りられないことに気づいた車両が速度を落とし、後続に追突される事故が起こった。こうして上下線とも、全面的に通行止めとなってしまった。
警察から連絡を受けた除雪車も渋滞に嵌っていた。
いくら電力会社とのあいだで除雪作業の契約があるとはいえ、メルトダウンを起こしている原発に向かうのには、勇気が必要だった。連絡を受けた除雪車の運転手の中には、除雪車を路肩に乗り捨てて、原発から反対の方向に走り去る者もいた。
単なる民事上の契約しか締結していない民間の除雪業者の従業員に、高い職業論理や決死の覚悟を求めることは酷であった。
そもそも除雪業者にも、その従業員にも、原発事故に対する心構えができていなかった。国によって「安全」と宣言されて再稼動されているはずだったからだ。
続き>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(48) ※8回目の紹介