来年に向けて送風機の設置を検討しましょう
今年の夏は、記録的な暑さに見舞われました。
牛の荒い息づかいは、今となっても記憶に新しいのではないでしょうか。
こんな年だからこそ、「今年だけ」と楽観せずに、来年の営農に向けて、今から十分に検討しておく必要があります。
◆今年の暑熱ストレスによる影響
今年のある地区の出荷乳量を図1に示しました。
7月以降の出荷乳量が大きく減少し、未だ回復の兆しが見えません。
猛烈な暑熱下では、牛は少しでも暑さを緩和させようと、エサを食うよりも、呼吸やベットに寝ずに立ち尽くすことを優先させるので、採食量が著しく減少します。
そのため、乳量の減少や乳房炎により廃棄乳が増加したことが大きく影響しています。
今後は受胎の遅延や、発情の再発なども懸念されます。
経済的な損失も図りしれません。
今年の反省から、牛の暑熱ストレス軽減策は急務といえます。
◆暑熱対策の切り札「送風機」
牛から暑熱ストレスを取り除くためには、強い風を牛体に直接当てることが特に有効です。
今年のような暑さでは、自然風ではどうしても不足するので、送風機の設置が必要となります。
つなぎ飼いでは、送風機を通路に吊るしたり、トンネル換気を検討します。
フリーストールなどでは、パーラー待機室、飼槽に牛が並ぶところ、ベットの上部への設置を検討します。
〈今年の夏でも、送風機を活用し乳量を減少させなかった事例〉
図二には七月から九月までの平均乳量の推移を、牛体に風を直接あてているかどうかで区分し、グラフにしています。
風を牛体に直接あてている農場は、そうでない農場と比較すると、暑熱期であっても日乳量の変動が少ないことが分かります。
この事例から、送風機設置や電気代などのコストがかかっても、牛の体調を維持し、乳量を減らさないことで、それを上回る利益が得られることが分かりました。
もちろん暑熱対策は、送風機を設置することだけではありませんが、有効な手段でありますので、来年に向け是非ご検討ください。
(平成二十二年十月作成)