コラム2024/3/14 04:00保存 山陰道大田・静間道路と静間・仁摩道路の開通を祝い、テープカットとくす玉割りをする関係者=9日、大田市静間町の大田静間インターチェンジ付近
島根県東部の「出雲の国」と西部の「石見の国」。土地柄の違いを表す一つが、国道9号のトンネルの数だ。東から進むとバイパスを除いて安来、松江や出雲市内のトンネルはゼロ。
これが仙山峠を越えて大田市に入ると、五十猛町の「湊隧道(ずいどう)」に始まり五十猛、宅野、仁万、馬路、神畑…と同市内だけで11個のトンネルを抜ける。トンネルを抜けると、そこは次のトンネルの前。沿線の7市1町で最多になる。山が海岸に迫る交通の難所だったことを意味する。
市内計12・9キロの山陰道大田・静間、静間・仁摩道路が9日に開通した。市街地の固まりを遠望しながら通り過ぎ、東と西がさらに近づいたことを実感する。これから1年の間には出雲・湖陵、湖陵・多伎道路計9・9キロも全通し、その感覚は加速するだろう。
道路を血管に例えるならば、高速道路は、ヒトやモノを効率よく、迅速に運ぶ動脈だ。物流や公共交通を支えるドライバーの働き方改革の鍵も握る。
一方、従来の国道9号は雑多なモノが通る印象で、動脈に再び新鮮な血液を流すために欠かせない静脈といったところか。末端の部分で、歴史や文化と密接に結び付いている。交通の難所であれば多様性も増す。かつて石見銀山と最短距離で結ばれ、銀や鉄鉱石の積み出し港だった鞆ケ浦(大田市仁摩町馬路)は、もっと注目されても良い。国道9号周辺の立ち寄りスポットは少なくない。(万)