くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「黒武御神火御殿」宮部みゆき

2020-01-01 14:54:54 | 時代小説
あけましておめでとうございます

 「黒武御神火御殿」(毎日新聞出版)。「三島屋変調百物語」の六冊目です。
 聞き手を「小旦那」の富次郎に替えての幕が開きます。
 「泣きぼくろ」は、富次郎の幼なじみだった豆腐屋の一家に起きた惨劇。
 わたしも、あります。泣きぼくろ。複雑。
 次の「姑の墓」は、禁忌を破る悲劇が描かれています。なぜ、この家の女たちは花見に行けないのか。
 近づいてくる展開が想像できるだけに、不安が高まります。
 姑になるのは怖い気がします。
 「同行二人」は、病で妻子を失った飛脚についてくる幽霊。のっぺらぼうです。でも、嘆き悲しんでいるのは分かる。
 何故彼は泣くのか。雷で焼け落ちた茶店との関係はあるのか。
 そして、表題作「黒武御神火御殿」です。
 ご禁制の耶蘇教に関わるらしき半纏が持ち込まれ、大金を払ってでも聞いてほしいとやってきた札差しの息子。
 神隠しにあった女中とその男とは、見知らぬ屋敷に捕らわれていたことがあるというのです。
 重くて、怖い物語でした。彼らの背負う過去と、座敷で燃え続ける火山。逆恨みに近い執念。
 そこに捕らわれた六人のうち、助かって現世に帰れるのはたった一人。意地の悪い嫌がらせをしてくる屋敷と、陰に隠れているらしき甲冑姿の主人。
 恐ろしい家のモチーフ、宮部さんよく描かれますよね。「おそろし」も、そうだった。
 怖い中にも軽妙な短編を差し込むようにしている、と以前おっしゃってましたが、今回は今までと毛色が違う気がしました。
 やはり聞き手が変わったからか。おちかのところでは話さないような内容でしたね。

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