くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「緋い川」大村友貴美

2020-05-19 20:43:11 | 文芸・エンターテイメント
 あのー、十月に灯籠流しはないと思うんですよ。
 しかも、半月後には雪が降る地域ですよ?
 別に、秋祭りのときに男の手足が川から流れてきた、で充分ではないかと。
 しかも、その遺体を捜索するために、火を焚くように指示されるほど震える季節。
 祭りの翌日に、例年川を塞き止めて燃え尽きた灯籠をさらうのは、常識的にあり得ないと思うのです。寒いと思うよ、山間部。
 紅葉、べんがら、緋い川、血、ちんぐるま(植物)と、赤のイメージを連ねたいのは分かりますが、疑問しか感じません。
 だいたい、この主人公おかしいですよ。横浜の実家の近くで医師として働きたいと恩師に依頼に行ったのに、腕のいい外科医の下で学ぶといいのではと提案されて、宮城の「触別村」の鉱山病院に赴任します。
 先輩医師殿村は歓迎してくれないし、鉱山に特有の眼病や結核、更に殺人事件。鉱山会社のお嬢さんは縁談よりも医師になるための勉強がしたいと言い、囚人やら噂話やらあれこれ絡んできます。
 仕事以上に村をふらふらしているし、殿村が死体を病院の裏手の山に埋めたと聞けば鋤を持って行って穴を掘るし、彼の荷物を探ったこともあるし、いや、こういう同僚、勘弁してほしい。(眼科の人に来てほしかったという話だし)

 全体的にいろんな要素を詰め込みすぎです。
 お嬢さんの自立問題がなくとも、成立するストーリーではある、と申しますか。
 地元が舞台と聞いて読んだのですが、うーん、地名は馴染みがあるのです。でも、気候(空気感?)は違う。
 ちなみに、鉱山の住宅はまだ残っているそうで、映画「東京タワー」で社宅に利用されたとかなんとか、です。

「歌舞伎座の怪紳士」近藤史恵

2020-05-06 15:59:28 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 やっぱり銀弥さんだった!
 最初の公演のときから、そうじゃないかなーと思っていました。
 「胡蝶殺し」の二人も登場し、近藤さんワールド堪能です。
 元になった舞台の知識があったら、もっともっと楽しめるのではないでしょうか。
 近藤史恵「歌舞伎座の怪紳士」(徳間書店)。
 近藤さんで、歌舞伎で、連作。
 もう、絶対おもしろいでしょう?
 
 祖母のしのぶさんから、観劇のアルバイトをするように頼まれた「わたし」(岩居久澄)は、歌舞伎座で「ペットボトルのすり替え」を目撃します。
 隣に座った紳士(堀口さん)の協力でその謎は解けますが、次のお芝居に出かけたときに再び彼と出会うことに。
 一体、堀口さんとは何者?
 そして、しのぶさんがこんな風変わりなアルバイトを続けさせる意味とは?
 自己評価が低い久澄が、謎を通して自分を見つめ直していく姿が素敵です!

 誤植あります。
 名誉棄損にあたるマンガ家について(117ページ)「そのマンガの知人でもないのに」。(「マンガ家の」)
 それから、194ページ「ちょうど久澄が風呂から」は「わたし」の間違いだと思います。文庫では直してほしい。

「Re:ゼロから始める異世界生活」

2020-05-05 19:53:22 | コミック
 娘が、もう読まないから古本屋にでも売って、とこのシリーズごっそり持ってきまして。
 うん? 学校図書館にでも並べようかな、と思った訳です。
 娘が集めていたくらいだから大丈夫だろうとは思ったのですが、以前ラノベでは嫌な思いをしたこともあるので、漫画版で手っ取り早くあらすじをつかもう、と。
 第3章ですか。単行本十巻まで読みました。

 マツセダイチ「Re:ゼロから始める異世界生活」(メディアファクトリー)。原作長月達平。ちなみに第2章は楓月誠氏が作画担当しています。
 不登校気味の高校三年生菜月昴は、コンビニに買い物に行ったはずなのに、なぜか異世界に召喚されてしまいます。
 そこで出会ったのが、銀髪のハーフエルフ「エミリア」。
 彼女に引かれた昴は、盗まれた記章を取り返そうと奮闘しますが、凄腕の刺客に殺されてしまいます。
 ……ところが、気がつくと、この世界に来てすぐの果物屋の前に立っていたのです。
 「死に戻り」。
 まあ、ゲームオーバー後のやり直しができる訳ですね。昴はその間の記憶を持ったまま戻ってしまうので、失敗を繰り返さないように考えて行動します。
 そのため、少しずつ結果は変化する。
 「白鯨」の回がおもしろかった。
 
 原作はかなりの巻数なので、刺客とか女王選びとかで更に続くのかと思います。
 いや、でもね、メインヒロインのエミリアよりも双子のレムとラムの方が印象的でした……。(ここも語られていない伏線がある気がする)
 あとは、「剣鬼」のエピソードが。
 2日である分は全部読みました。
 でも、伏線回収のために原作を読む体力は、わたしにはないな……。

 

「medium」相沢沙呼

2020-05-03 09:39:15 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 書影をあげた日には読み終わっていたんです。でも、まあ、ちょっと経ってからと思って。
 相沢沙呼「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」(講談社)。まさに! タイトル通りでした。
 帯がめちゃめちゃ煽っていて、一体どういうラストを迎えるのかとどきどきしていたんですが、いやもう、期待以上でした!
 ネタバレ含んで言えば、これは「主人公は探偵で犯人で『被害者』」ですよね!
(あれ? 主人公というより「視点人物」か?) 
 ホームズや「日常の謎」といったミステリへのオマージュが各所にちりばめられ、しかも「読者への挑戦状」まであります!
 そして、ミステリ作家の皆様がおっしゃるように、「翡翠が可愛い」のですわ。
 「霊媒探偵」続きが読みたいけど、そうするとこの驚きに触れられない場合も出てくるのかしら……。
 読み終えたばかりの方と、熱く語り合いたい!