くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「洗脳の楽園」と「でっちあげ」

2009-01-03 06:37:15 | エッセイ・ルポルタージュ
2008年、ルポルタージュをよく読みました。まずは、米本和広「洗脳の楽園 ヤマギシ会という悲劇」。
これは、その前に同じ筆者による「カルトの子」を読んで、このテーマをもっと追求してみたいと思ったのですね。
親が自分の信仰に熱中するのはいたしかたないとしても、巻き込まれた子供はどうなるのか。唯々諾々として、自分もその教えを守るのか、疑問を感じることはないのか。
ここではヤマギシ会という団体に連れていかれて、何とかそこから脱しようとあがく子供たちが描かれます。祖父母を頼りに逃げ出しても、そこが理想郷だと信じる両親に連れ戻される。彼らにとって、こんなに素晴らしい場所を否定する子供の考えは、若いがゆえの誤りとしか写らないのでしょう。
読んでいてびっくりしたのは、なんと宮城県にもその農場があるという事実。こういう組織って自分とは隔たった遠いところに存在すると思っていたことに気づきました。
で、わたしの知人はそこに行ったことがあると言うんです。
「結構いい人たちだよ」
あっけらかんと言われました。

もう一冊、福田ますみ 「でっちあげ 福岡『殺人教師』事件の真相」をご紹介します。借りて帰って一気に132ページまで読み、頭が飽和状態になりましたよ。
アメリカ人の曾祖父がいることを家庭訪問で話したときから、息子が担任教師にいじめられている、そんな主張をうけて学校を追放された小学校教師。校長は信じてくれないし、自分にとって身に覚えのない「事実」を次々提示されるし、ジェットコースタードラマもかくやと思うほどの展開なのです。
今でいう「モンスターペアレンツ」の走りなのかもしれません。
時は平成15年、福岡県の小学校で教師をしていた川上(仮名)がどんな経緯で事件に巻き込まれ、弁解の余地もないままに休職に追い込まれていくかが、本人のインタビューをもとに描かれています。
当初この事件について掲載した「週刊文春」や、被害にあった少年を救おうと結成された弁護団が、どういうツールで事件について調べたのか疑問が残りますよね。
誰も事件の真実を語ることはできない、語ることができるのはその側面だけ。とくにマスコミ報道については、一定のフィルターをかけることで「編集」されたものになってしまうものです。
だから、この事件の決着がついても、この教師が嘘を言っていて少年は被害者だと考えている人もいると思うのです。

ルポルタージュは現実を切り取ったもの。切れ味鋭い作品を読むと、多面体のほかの面に気づかされます。あー、わたしはいつも同じ面ばかり見ていたのだなあ、と。

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1 コメント

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Unknown (ミリオン)
2024-04-16 14:34:59
こんにちは。
嬉しいです。頑張って下さい。今日は、京町の山本花店に行って、「虎に翼」の第12回を見てきました。

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