チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

ブックハンター「北極がなくなる日」

2019-01-07 19:03:29 | 独学

 181. 北極がなくなる日  (ピーター・ワダムズ著 武藤崇恵訳 2017年11月)

  A  Farewell  to  ice  [ A  Report  from  the  Arctic ] by Peter Wadhams  CopyrightⒸ2016

 著者は、1948年生まれ21歳のときから、一貫して北極海と海氷テーマとして、ケンブリッジ大学スコット極地研究所で研究してきた。

 北極の海氷は、毎年減少し続けて、2030年代の夏には、北極の海氷は消えると考えらせます。(現在の減少速度でいくと) まず、キリマンジャロの氷河が消えました。

 アンデス山脈の氷河は、後退し、アルプスの氷河が後退し、ヒマラヤの夏の雪は雨に変わり、氷河は後退しています。つぎにグリーンランドの氷河が融け始め、海水の水位が上昇しています。

 今、読んでいる「地下水は語る」守田優著によると、今世紀になって、地球の貴重な資源である地下水をくみ上げすぎて、世界中で地盤沈下をまねいています。

 世界の都市は、扇状地にあり、地盤沈下が進んでいます。特にアジアの都市、東京、大阪、上海、天津、バンコック、ハノイ、ジャカルタなどで、地盤沈下が進行しています。

 さらに、海水温の上昇により、台風やハリケーンが大型化し、高潮に災害が増加し、南洋の島々は、沈みつつあります。

 地球の温暖化の最大の原因は、化石燃料(石油、石炭、天然ガス)の大量使用(人口の増加)による炭酸ガスの増大です。さらには、森林火災、泥炭火災、による炭酸ガスの増加による温室効果です。

 二つ目は、本書でのべられている、北極のツンドラの永久凍土の解凍によるメタンガスの増大による温室効果です。

 私の考えでは、三つ目の理由は、熱帯雨林の減少と消滅です。熱帯雨林は、五層にもなる森林によって、太陽光の多くの部分を葉の光合成によって、CO₂と水(H₂O)と太陽光によって、酸素(O₂)とデンプンを生成します。

 それと同時に、葉から多量の水分を蒸発させます。この水蒸気が上空で冷やされ、スコールとなって、熱帯雨林に大量の雨を降らせます。

 熱帯雨林は、赤道直下の地域の冷房装置として働いています。北極の海氷が消えると、北極の「アルベド(albedo)(反射能)が、60%から、10%に減少します。

 北極の海氷が消えると、地球規模の熱塩循環(海洋大循環=グレート・オーシャン・コンベアベルト(千年の旅))が、止まることです。

 海洋大循環は、グリーランド沖と南極沖で発生する海氷を生成するとき、残った塩分の濃い重い海水が深海に沈むことを起動力としてます。深海を巡回して、マダガスカル沖とベーリング海で、海表面に出ます。

 この二つの海域は、栄養豊富な深海水を伴いますので、豊かな漁場を形成します。

 本書でも、この地球の危機に私たちは、何をすべきかを述べていますが、私のあまり効果は期待できませが、省エネと木を植えることを実行します。

 私が考える夢のプランは、コストの計算はしていませんが、サハラ砂漠の近くの深海水をくみ上げ、池を作りサケの養殖後、砂漠に蒔いて、塩をつくり、水蒸気を近くの山(なければ作る)導き、雨を降らせて、その雨を利用して、砂漠で温室(日差しをやわらげ)を作り果樹を育てるというプランです。

 しかしながら、人類は緑の地球のキャパシティー(包容力)を超えて、元に戻れないところに私たちは、来ているように感じます。 では、本書を読んでいきましょう。


 『 わたしが極地の研究をはじめたのは1970年だった。キャリアのほとんどの期間ケンブリッジ大学スコット極地研究所に所属し、後年は所長を務めるという栄誉に恵まれたのは幸運だった。

 ロバート・ファルコン・スコット船長の名を冠したこの研究所は、極地研究者にとっては安全な港であり、あらゆる分野の極地研究者との出会いの場でもある。

 多くの研究者たちは、所属する研究機関を離れ、この比類なき研究所へ集まって研究を進めているのだ。1970年から80年代にかけて、わたしは毎年極地(たいていは北極)を訪れており、ときには複数回におよぶ年もあった。

 そしてヨーロッパ、米国、ロシア、日本の研究者同様、海氷を理解するため、増大、減少、移動といった物理的変化を観測した。

 氷のフィールド調査は困難であるだけでなく、危険をともなうこともめずらしくはないが、当時は我々の調査対象である北極海に、目に見える変化が訪れることはないと考える研究者が大多数を占めていた。そもそも北極が変化すると予想することすら難しかったのだ。しかし、実際は変化していた。

 1976年と1987年におこなわれた潜水艦での遠征調査の計測結果を比較し,氷の厚さが平均して15パーセント減少している明確な証拠を初めて入手したひとりになれたのは幸運だった。

 その調査結果は1990年のネイチャー誌で発表している。それに衝撃を受けて、それから10年徹底的な調査を行ったところ、氷が薄くなったのが事実であるばかりか、1970年代と比較すると、実に40パーセント以上薄くなったことが明らかになった。

 劇的な変化が起こっているのは間違いなかった。極地研究者たちは特化された研究対象から顔を上げ、より大きな問題を考察しはじめた。彼らはすでに気候変動の専門家となっていた。地球上でいちばん急速かつ激烈な変化が起こるのは極地なので、必然的に気候変動のパイオニアとなるのだ。

 わたしが北極海への興味に目覚めたのは、1970年の夏カナダの海洋調査船〈ハドソン〉号で初めて極地を訪れたときだった。

 これは〈ハドソン〉号初の南北アメリカ大陸周航で、1969年の冷え込む秋にカナダのノヴァスコシアを出発し、南極半島、南極海、チリのフィヨルド海岸を通過、広大なる太平洋へと航海を進めた。

 そしてこれまで成功した船はたった9隻だけの、北西航路という難関に挑んだ。〈ハドソン〉号は耐氷船で、そうでなければ航海は不可能だった。

 アラスカの北海岸からノースウエスト準州、北極海にかけては、陸地近くまで海氷が迫っていて、調査をおこなうことができる開水域はわずか数海里にすぎない。

 ときおり氷が海岸線まで達していることもあり、その場合は重くて分厚い多年氷を粉砕して進まなければならなかった。結局、北西航路の半ばまで来たところで、我々は頼もしい砕氷船〈ジョン・A・マクドナルド〉号に救出されることとなった。

 当時、カナダ北方の北極海では、海氷との闘いは普通の出来事とされていた。そもそも北西航路の横断航海に初めて成功したのはアムンゼンだが、1903年から1906年と3年の歳月が必要だった。

 つぎに成功したのは王立カナダ騎馬警察のスクーナー〈セント・ロック〉号で。1942年から1944年と2シーズンを要した。

 現在では、夏にベーリング海峡から北極海に向かう船は、広大な大海原を目にすることだろう。その青い海ははるか北へとつながっているが、北極点の直前で行く手を阻まれる。

 だが本書が出版されるころには—―多くの人が予想しているとおり―—長い歴史において初めて氷に覆われてない北極が出現するかもしれない。北西航路の横断もずいぶんと容易になり、2015年には合計238隻の船が通航した。

 1970年代には800万平方キロメートルにわたって広がっていた北極海の海氷が、2012年の9月にはわずか340万平方キロメートルへと減少した。この地球の変化の意味を、誇張して伝えるのは難しい。

 我々の地球はすでに色が変わっている。アポロ8号の宇宙飛行士が撮影した、黒い宇宙を背景に、月の地平線からのぼる青い球体の優美な姿を初めて目にしたときの感激は、だれもが鮮明に記憶しているだろう。

 あれは生命を包含している美しさだった。そして球体の両端は純白だった。現在、北半球が夏の季節だと、宇宙から地球のてっぺんは白ではなく青に見える。かっては一面氷で覆われていた場所を、人類は大海原へと変えてしまったのだ。

 人類は初めて地球の外観を大きく変化させた。もちろん意図した結果ではないが、これはおそらく破滅的な結果へとつながっていくだろう。事態は一見して与える印象よりもさらに悪化している。

 ソナーの測定結果によると、1976年と1999年では氷の厚さの平均値が43パーセントも低下した。そしてこの数値はべつの事実を示唆している。かって北極圏では、形成されてから複数年を経た「多年氷」と呼ばれる氷が主流だった。

 ごつごつとした堂々たる外観で、高圧的に探検隊の行く手を阻む巨大な隆起を持ち、海中では50メートル以上もの突起が飛びだしていた。しかしここ10年の環境の変化で、こうした氷のほとんどは北極海の外へ流されるようになった。

 かわりに現れたのが一年氷だ。ひと冬のあいだに形成された氷なので、厚さは最大でも1.5メートルしかなく、のっぺりとした氷にわずかにいくつか低い隆起が見られるだけだ。

 ひと冬で形成された薄い氷は、現在の高い気温と水温の上昇では、ひと夏のあいだに跡形もなく融けてしまう可能性が高い。

 そのうち北極海の至るところで、冬期に形成される氷よりも夏期に融解する氷のほうが多くなり、夏期の海氷は姿を消すだろう。英国の気象学者マーク・セレズが命名したところの、”北極海の死のスパイラル”をたどっていくのだ。

 ごく近い将来、北極海は存在しない9月を迎えることだろう。そしてそれから数年のうちに、氷の存在しない時期は年に4,5ヵ月となるはずだ。

 北極海の夏期に氷が存在しないというのは大変な意味を持つ。壊滅的な影響がふたつ出ることは間違いない。

 第一に、夏の北極海から氷が姿を消したら、「アルベド」――太陽の入射エネルギーが宇宙へ反射される率――が現状の60パーセントから10パーセントへ低下し、今後の北極海および地球全体の温暖化を加速することは必至だ。

 400万平方キロメートルの氷が消滅することでアルベドが変化すれば、ここ四半世紀の二酸化炭素排出による温暖化と同等の効果を地球にもたらすだろう。

 第二に、夏期の海氷の崩壊により、地球にとって不可欠な北極海の空気調節機能が失われてしまう。これまでは夏でも氷に覆われていたため、以前よりも薄くなろうとも、海面水温が零度以上に上がる懸念はなかった。

 温かい海水が流れてきた場合も、海面の氷を融かすことで熱を失うからだ。海面の氷がなくなれば、夏期は海面水温が数度上昇し(人工衛星の観測によるとすでに7度を記録している)、水深の浅い大陸棚では風の影響で温かい海水が海底まで達するだろう。

 それにより沿岸永久凍土の融解が進み、最終氷期からずっと凍結していた海底の堆積物に固着するメタンハイドレートの分解を引き起こし、その結果、大量のメタンガスが噴出するだろう。

 メタンガスは二酸化炭素の23倍もの温室効果を有する。ロシアと米国が毎年おこなっている東シベリア海での調査では、すでに海底のメタンガスの噴出が確認した。

 またべつの調査では、ラプテフ海およびカラ海でもメタンガス噴出を確認した。こうした噴出によって大気中の温室効果ガス濃度が上昇すると、地球温暖化に拍車がかかるだろう。

 本書を執筆することを決心した理由は、こうした劇的な変化を伝え、北極海の氷が減少する過程とその原因は、、世界の遠いどこかで起こっている興味深い変化などではなく、我々人類にとって脅威なのだと警告するためである。

 わたしは科学者として研究を始めた21歳のときから、一貫して北極海と海氷をテーマとしてきた。こうした地球の変化は、魅惑的な風景に個人的に別れを告げるときが来たと知らせているのだろうか。

 なによりも強く感じるのは、地球が本来持つ力が低下していることと、人類は事実上の滅亡を迎えるしか道はないということだ。

 我々人類の強欲さと愚かさが、これまで極端な気候変動から人類を保護してきた北極海の美しい海氷を奪い去ったのだ。破滅を避けたいのであれば、いますぐに行動を起こす必要がある。 』(はじめに――青い北極海)より


 上記の第1章 はじめに――青い北極海から、第2章 水、驚異の結晶、第3章 地球の氷の歴史、第4章 現代の氷期のサイクル、第5章 温室効果、第6章 海氷融解がまた始まった、第7章 北極海の未来――死のスパイラル、第8章 北極のフィードバック促進効果、

 第9章 北極のメタンガス—―現在進行中の大惨事、第10章 異様な気象、第11章 チムニーの知られざる性質、第12章 南極では何が起こっているのか、第13章 地球の現状、第14章 戦闘準備だ と続きます。

 はじめにでほぼ言い尽くされていて、これを防ぐ、素晴らしい方法は、現在のところありません。(第180回)

 






 



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