【南雲つぐみ】温泉かれい ～北陸～

　北陸のお土産に「温泉かれい」をいただいた。温泉まんじゅうや温泉卵といえば、温泉の湯気で蒸したものをいう。しかしこちらは、手のひらに乗るほどの小ぶりなカレイの一夜干し。北陸の温泉旅館での朝食に並ぶ一品なので、この名前が付いたのだそうだ。
　小さくて骨が抜いてあるので、少しあぶったら頭からまるごと食べることができる。カレイはくせのない白身で、ゼラチン質を多く含み、煮たり焼いたりしても身が固くならないのが特徴。魚を食べさせたいが、小骨が気になる子どもや高齢者のタンパク質の補給にもちょうどいい。酒のさかなとしてもおいしい。
　北陸は海産物の宝庫だが、冬に旬を迎えるカレイは格別だ。福井県越前地方と若狭地方では気候や自然分布が違うため取れる魚も違う。温泉かれいには、福井県で「越前かれい」と呼ばれるアカガレイの小ぶりのものを使うという。越前よりも南に位置する若狭では、ヤナギムシカレイを塩蒸ししてから一夜干しした「若狭かれい」が名物【注】。きれいな桜色の姿が特徴で、古くから皇室への献上品になっている。

　【注】若狭には仏多くて蒸鰈　（森澄雄『鯉素』）

□南雲つぐみ（医学ライター）「温泉かれい　～歳々元気～」（「日本海新聞」　２０１７年１月２２日）を引用
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