カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
講演依頼等連絡先は、tenki@air.ocn.ne.jpへどうぞ

改めて合掌!!東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)から12年 東京都内では山の手台地地区と下町低地地区では揺れ方にこんな差が。

2023-03-11 17:59:02 | 日記
本日11日で、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)から12年過ぎました。

改めて、今回も、この東北地方太平洋沖地震、どのように引き起こされたのか振り返ってみましょう。

一昨年、昨年同日の本ブログ記事の一部を再度引用しますが

①㍻23年東北地方太平洋沖地震発生させた地殻変動の時系列図 防災科学技術研究所HPより引用


◇引用図①より、

宮城県牡鹿半島東約130㌔東で発生した変動(震源)は、発生後90秒までは、プレート間内陸部に近い部分で一部発生するものの、
殆どの変動は、震源より東側、宮城県沖でのプレート間の海底の近い部分(比較的軟らかい地層)主体に変動しており、この変動のずれは、一部で50㍍以上に
及んでおります。



◇変動発生後90秒後になりますと、これまでとは異なり、プレート間でも、陸地に近い部分での変動が発生、比較的古い堅固な地層が変動したことで、比較的
周期の短かい地震波を発生させて、



◇発生100秒後になりますと、福島県沖でも変動が発生、この変動も、プレート間の陸地に近い部分での
変動が広がり、やはりこの地域特有な比較的古い堅固な地層が変動したことで、これまた比較的周期の短かい地震波を形成させながら、プレート間での変動は次第に
茨城県沖へと広がった。

というシナリオを描きました。

②平成3年東北地方太平洋沖地震での宮城県築館、塩竃、茨城県日立 と、平成7年兵庫県南部地震での、兵庫県鷹取と葺合での地震波速度応答スペクトル図
(東京大学地震研究所HPより引用)



引用図②より東北地方太平洋沖地震、前記のように、比較的周期の短い地震波が多く発生したことで、
建造物の深刻な被害を与える地震波は多くなかったことがわかります。

しかしながら、前記のように、プレート間の海底に近い地層の変動が甚大であったことで、未曽有の大津波を引き起こす結果
となりました。

③平成23年東北地方太平洋沖地震で、いずれも震度7を観測(防災科学技術研究所観測)した、
ⅰ:宮城県築館 ⅱ:茨城県日立 ⅲ:栃木県芳賀 での地震波形図(防災科学技術研究所HPより引用

ⅰ:


ⅱ:


ⅲ:


④平成23年東北地方太平洋沖地震での最大加速度観測分布図 防災科学技術研究所HPより引用





引用図③ⅰより、築館では、変動発生後およそ90秒後発生した、宮城県沖での陸地に近いプレート間が変動したことでの
比較的周期が短かい地震波が最大の揺れを引き起こしましたが、周期が短い地震波のため、最大の揺れはすぐにおさまっています。

引用図④より、最大加速度1000GAL以上を観測した、マゼンダ色の観測地点が、宮城県内、福島県内と、関東地方の広範囲にまで
及んでおりますが、今回の地震が、宮城県から福島県、そして、茨城県沖でのプレート間の変動が、陸地に近い比較的深い地域の境界部分で発生したため、
変動した地殻が比較的固く、地下の比較的深い箇所であったため、内陸部の広範囲にまで、比較的周期の短い地震波が発生拡散していったといえる証左ですね。


日立では、変動発生凡そ110秒に最大の揺れを観測、これは、当初発生した宮城県沖の変動に伴う地震波と、福島県沖から茨城県沖に変動が及んで発生した地震波との収束の賜物で、
芳賀(栃木県)での最大の揺れは110秒から120秒にかけて発生しております。


最大の揺れの発生時刻が、ⅰ→ⅱ→ⅲと時系列で変化していることがわかりますが、これは、福島県沖から茨城県沖での変動の伴う地震波と、最初に発生した
宮城県沖での変動で発生した地震波が、福島県中通り地域に広がる、地形的鞍部を伝播して、収束した結果と思われます。

さらに、気象庁HP内、強震観測データの項目をひも解くと、東北地方太平洋沖地震発生時の、各観測地点の波形や、加速度、震度などが閲覧できますが、と以外強震観測データより、地震波の加速度(瞬間的な揺れの強さ)に地域性があり、総じて、加速度が高かった地震といえそうです。

地震波は、加速度は高くなるほど、当該地震波の周期は小さくなり(比較的がたがたと揺れる)加速度が低くなるほど、当該地震波の加速度は大きくなる(比較的ゆさゆさと揺れる)ようになる性質があります。

一つの地震の中には、様々な周期加速度の地震波が含まれてはいるものの、おおまかに地震波の加速度と周期の間には次のような関係があります。(引用画像は気象庁HPより)


東北地方太平洋沖地震では、震度7を観測した宮城県栗原市(栗原市築館)での最大加速度(南北、東西、上下3成分合成)で、2933ガルなのに対し、20年前の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)発生時の、
震度7と推定される地域の最大加速度(3成分)は、おおむね700ガル〜800ガルでした(気象庁等調べより)同じ震度7でも、栗原市は、周期0・1秒程度だったのに対し、兵庫県南部地震での震度7観測地域では、
地震波の周期は0.8秒~0.9秒程度だったことになります。

地震波とその周期との関係として(筆者調べ)

◆地震波の周期が1秒程度であると、建造物と共振して揺れが大きくなり、建造物にかかるダメージは大きくなってしまいますが、周期0・1秒~0.4秒の短周期の地震波は、山がけ崩れや、
建造物の外壁破損や屋根瓦のずれ・落下などは発生しやすくなるものです。

◆地形的に、台地や丘陵などの比較的固い地盤では、周期の短い地震波(周期0・3秒以下)が共振しやすく、三角州や埋め立て地などの軟弱地盤では、
比較的周期に長い地震波(周期0・6秒以上)が共振しやすくなります。

◆さらに、周期の短い地震波ほど、崖の周辺や硬軟が不均一な地質を伝番する際に、地震波が屈折、反射して、より周期な短く、加速度が高い地震波を
発生しやすくなります。


まさに、東北地方太平洋沖地震、比較的周期の短い地震波が多かった地震といえますね。東京都内でも、山の手地域の観各観測地点が、下町地域の観測地点よりも加速度は高く観測されております、

山の手地域の属する、杉並区や中野区、千代田区の一部では、加速度が、300ガル台〜400ガル台を観測しており、被害状況(総務省消防庁)見ましても、一部破損家屋の戸数は山の手地域でもまんべんなく発生しており、杉並区で956棟も発生していることからも、このことが伺えられますね


続いて、全被害のおよそ90%をもたらしたといえる 津波 ですが

◇プレート間の変動と、変動に伴う地殻変動との双方で津波を発生させ、双方が合体し、大津波を引き起こした!!⑤岩手県沖~宮城県沖~福島県沖のかけてのGPS波浪計の観測結果(港湾航空技術研究所HPより引用)
※引用図内メートル表示数字は、観測地点の水深です。


引用図⑤より、地震発生直後から、プレート間の変動に伴う海面の変動が見られ、引用図内矢印で示す第1波の峰は岩手南部沖と宮城北部沖で比較的大きくプレート間の変動が、これらの地域の沖合で大きかった所作ですが、
岩手中部沖や岩手北部沖、それに、福島県沖には、第1波の峰のあと、それ以上に極めて短時間に急な海面の変動が見られます。

この急な海面の変動ですが、
岩手北部沖では15時19分に約4・0㍍上昇、岩手中部沖では、15時12分に約6・3㍍上昇、岩手南部で、ほぼ同時刻の15時12分に、約6・7㍍上昇福島県沖でも、15時15分頃、約2・6㍍上昇 となっており、
各々の地点で、ほぼ同じ時刻頃に、急な海面の上昇が見られます。

なお、宮城北部沖と宮城中部沖でも、津波の第一波の峰自体高いところへ、前記の各地点と同様な短時間での海面の上昇が見られるものの、測定機材が津波の影響で測定不能となってしまい、正確な値は測定不能です。

これら、第1波の峰の後の、短時間の急な海面の上昇は?それは、地震を引き越したプレート間の変動の後、岩手県沖から福島県沖にかけて、プレート間変動とは別の地殻の変動があったといえ、当該地殻変動は、引用図④より、岩手県沖と、もう一つ、福島県沖でも発生したものといえますね。

そして、この地殻変動が発生した原因ですが、引用図➀より、今回の東北地方太平洋沖地震、岩手県沖から茨城県沖にかけて、プレート間の変動は、陸側の直下に近い箇所からプレート間の境界の日本海溝の海底に近い箇所まで広範囲に変動が生じましたが、とりわけ変動した面積が大きい箇所は、岩手県沖から宮城北部沖の部分と、もう一つ、福島県沖沖にもみられます。
どうも、この、変動の面積が大きい ア:岩手県沖から宮城県北部沖 と イ:福島県沖で、海溝側に堆積している比較的柔らかい地層が、プレート間変動に触発されて、大規模にかつ、急激に崩壊移動したためではなかろうかと私は考えております。

今回の東北地方太平洋沖地震のように地震を起こすプレート間の変動が、海底近くの箇所が広範囲に大きくなった場合、2次的な地殻変動が海底で発生しやすく、大津波をひこ起こす。このことは今後の教訓となるでしょう!!

◆東京都内山の手台地地区と下町低地地区とでは揺れ方にこんな明瞭な差が!

さて、震源からおよそ350キロ余り離れた東京都内23区山の手台地地区と下町低地地区とでは、揺れ方にこんな明瞭な差がありました。

⑥東京都内23区山の手台地地区 新宿(新宿区上落合2丁目)※防災科研観測 の地震波形図 防災科研HPより引用



⑦東京都内23区下町低地地区 辰巳(江東区辰巳 辰巳水門そば)※防災科研観測 の地震波形図 防災科研HPより引用



引用図⑥⑦より、新宿と辰巳は地震波到達時刻はほぼ同じ時刻でありますが、辰巳が東西南北上下成分の大きなピークが新宿とほぼ同時刻であるものの、東西成分と南北成分の継続時間が長く,当該ピークからおよそ20秒経過して最大震度(計測震度5.4 震度6弱にほぼ近い)を観測して、地震波形も新宿と比較して周期の長い地震波が卓越しています。

これは、辰巳が位置する下町低地が関東平野を形成する鍋底状の基盤上に位置すること、山の手台地端を地震が反射して比較的周期が長い表面波を多く形成して、辰巳周辺の軟弱地盤と当該周期長い地震波と固有周期が合って,さらに地震波を増幅させたため と思われます。

地盤がより軟弱になる程、地震波は増幅しますが、より周期の長い地震波が増幅して地震継続時間も長くばる。この特性により、建造物被害が増大するわけです、