カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)から27年!改めて合掌!!

2022-01-17 12:35:08 | 日記
兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)から、本日で27年が経ちました。

この地震、神戸という大都市のほぼ直下で発生した直下型大地震で、神戸や淡路島を中心にした阪神地区に未曽有の大被害をもたらしました。が、いつまでも、防災上の観点から、この地震の特徴・教訓は語り継がなければなりません。

本日は、この立場から、本ブログで記した記事を抜粋し、兵庫県南部地震というものを語っていこうと思います。

以前、本ブログにて記述したように、この兵庫県南部地震、建造物にダメージを及ぼしやすい周期の地震波が卓越した地震ということでした。
今一度、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震での速度応答スペクトル図(任意の固有周期を持つ建造物が地震でどのようは速度を観測したかを図示したもの)
を引用図①(東京大学地震研究所HPより引用)をご覧ください 。




周期1秒以上の地震波が、木造家屋への影響が大きくなるもので、鉄筋や鉄骨建造物も同様です。それに、建造物の階数がより高くなると、影響を受けやすい地震波の周期は大きくなります。
さらに、速度応答スペクトルが周期1秒以上で200㌢毎秒以上になると、建造物に壊滅的な被害が生じるようになります。

ご覧のように、東北地方太平洋沖地震での築館、塩竃、日立では、応答速度が100㌢毎秒以上の固有周期は1秒以下なのに対して、兵庫県南部地震でも、神戸市中央区葺合と須磨区鷹取の速度応答スぺクトル値を見ると、
周期1秒以上で200㌢毎秒以上をなっております。故に、兵庫県南部地震では、建造物にダメージを及ぼしやすい地震波が卓越したといえるわけです。

さらに、平成28年に発生した熊本地震での、熊本県益城と熊本での速度応答スペクトル図(防災科学技術HPより引用)を引用図②で紹介しでみました。


◇4月14日21時26分発生

益城


熊本



◇4月16日1時25分発生

益城


熊本


ご覧のように、昨年の熊本地震(4月14日21時26分と 4月16日1時25分)においては、益城、熊本いずれも、周期1秒以上で速度100㌢毎秒以上、益城では、4月14日、4月16日双方発生の地震でも、
速度200㌢毎秒を観測した周期が1秒以上の周期に見受けられます。


よって、昨年の熊本地震でも、兵庫県南部地震ほどではないにせよ、建造物のダメージを及ぼしやすい地震波が卓越した地震であるといえるでしょう。


兵庫県南部地震や熊本地震のように、建造物にダメージを及ぼしやすい地震波はどのような地形やメカニズムにして発生するか?ですが、

Ⅰ:基盤の上に表土層が堆積している箇所(火山の近隣など)

Ⅱ:地震発生する地殻の破壊が、ドミノ崩しのごとく、連鎖的になっていた。

ことがあげられますね。



④兵庫県南部地震発生させた断層破壊プロセス図 国土地理院HPより引用


⑤兵庫県南部地震時の神戸海洋気象台(当時は神戸市中区山手)の地震波形・スペクトル図 気象庁HPより引用


引用図④より、兵庫県南部地震発生させた断層破壊プロセスは、大きな破壊は3つ※3つを細分して5つという説もあります。で、明石海峡→神戸市中央区沿岸→神戸市東部 と推定されて、これに対応して、
当時の神戸海洋気象台の地震波形。プロセス図より、大きな揺れの部分が3つあることがわかります。

さらに、⑤より、大きな揺れの部分は、地震波のS波到達とともに発生しており、さらに、当該大きな揺れの到達時に、東西方向、南北方向、上下方向とも顕著なっており、かつ、東西方向、南北方向の地震波成分の継続時間が上下方向よりも長くなっております。
これは、表面波が顕著になっていて、神戸市周辺の地形的特性(基盤が地震波が進んで来る方向に開いていて、斜面状になった基盤の上に相対的に柔らかい表土層が堆積している.震源から地中を地表に進んできた来た地震波(実体波)と地表に到達後地表を進む地震波および基盤に跳ね返って地表をそれまでとは逆に進んできた地震波相互が合流し増幅するものである。))を反映して、実体波S波の部分が上下方向に変化したことと、表面波のラヴ波が顕著になったことですが、まさに、前記、Ⅰ、Ⅱを如実に反映しているといえますね。
同様な特性を醸し出す地形として、断層周辺 もそうです。基盤が水平ではなく不連続に分布しているからです。事実、当地震で、大阪府内豊中市内で局地的にかなりの倒壊家屋が出た要因がこれです。


※大阪府や京都府も甚大な被害であった!!最後に未曾有の大被害をもたらした兵庫県南部地震ですが、京阪神地域(兵庫県、大阪府、京都府の被害状況について記しました、ご参考にしてください!(気象庁発刊、㍻9年兵庫県南部地震報告より、震度分布は気象庁、JR,各自治体、阪神高速道路公団発表地震加速度値より筆者が推定したもの)

<兵庫県>
※神戸市、淡路島北淡町、津名町、一宮町、宝塚市、芦屋市、西宮市の一部で震度7を観測

死者:6394名 行方不明:2名

負傷者 :(重傷)857名 (軽傷)31497名

全壊家屋:103934棟 半壊家屋:136096棟 一部損壊家屋:240030棟


<大阪府>
※大阪では公式発表震度は4であったが、現行の震度算出方式では計測震度4・55(現行では震度5弱)であった。大阪市、豊中市、池田市、吹田市の一部地域では、震度6弱以上を観測したものと推定される。

死者:30名 

負傷者:(重傷)175名 (軽傷)3414名

全壊家屋:895棟※このうち豊中市657棟 半壊家屋:7221棟※このうち豊中市4263棟 一部損壊家屋:87879棟※このうち豊中市35176棟

<京都府>
※京都市の公式発表震度は5 現行では震度5強、京都市一部や亀岡市などの一部地域では局地的に、現行震度では震度6弱程度の揺れがあったものと推定される。

死者:1名

負傷者:(重傷)3名 (軽傷)46名

全壊・全焼家屋:3棟 半壊・半焼家屋:6棟 一部損壊家屋:2741棟







6日の関東大雪について、冬型気圧配置の置き土産

2022-01-17 12:15:08 | 日記
①1月6日21時までの12時間降雪量日最大値一覧画像 気象庁HPより引用



去る1月6日、関東地方は南部東部中心に予想反して大雪となりました。降雪量最大は東京都心で4年ぶりに10㎝、
横浜、つくばで8㎝、千葉や水戸で7㎝を観測、鉄道ダイヤ乱れや首都高速道路の入り口閉鎖など、都心部のインフラ
は大混乱となりました。

気象庁さんには悪いですが、当初、前日5日の予報では、降雪は予想されるものの、関東南部で3㎝程度、都心辺りまで1㎝程度の降雪とされていたものの、前記のような大雪となってしまい、東京23区や千葉県、茨城県南部には大雪警報も出されたほどの結果となってしまいましたが、
それはなぜか?といいますと。

まず、5日から6日にかけて、引用図にはありませんが、本州付近、九州南部辺りまで上空-3℃以下の寒気に覆われて、関東地方では、降水あれば雪となるような状況でした。

②1月5日21時と9時の雲画像図(赤外)ⅰ;21時 ⅱ:15時と ア:21時の全国ウインドプロファイラー風向風速上空1000メートル画像
雲画像は高知大学HPより引用 ウインドプロファイラー風向風速画像は気象庁HPより引用 ※画像内 低 は地上天気図上の低気圧の位置
を示します。
ⅰ:

ⅱ:

ア:

引用図②より、前日5日は、北日本東日本は冬型気圧配置画が続いていたため、関東~東海沖にまで冬型気圧配置に伴う筋状雲が分布していたところ、東海沖の筋状雲aが当該筋状雲の南から下層の南寄りの暖気の補給受けて擾乱として発達し、伊豆諸島近海から東海道沖でナマコ状の形になっております。筋状雲からナマコ状雲になったこと、これは、擾乱として発達途中で、低気圧としてまとまりつつある証左なのです。
また東シナ海から日本海西部の広範囲にわたり、お椀をかぶせた形の雲集団(中層といわれる上空3000㍍~4000㍍の上昇流が3つほど見られ、本州は深い気圧の谷に入りつつある
様子です。



1月5日21時、1月6日9時、15時の日本付近レーダー画像図 日本気象協会HPより引用
ⅰ;5日21時 

ⅱ;6日9時 

ⅲ;6日15時 

画像内には、地上天気図の低気圧位置を 低 別の低気圧とまとまっている降水域 a としていますが、降水域の様子、地上天気図上の低気圧の北東側の、aで、お椀を逆様にしたような形まとまり、関東南部や東部に広がり、当該降水域内には一部発達した部分もあります。
反対に地上天気図上の低気圧周辺では、次第に降水域が減少しつつあり、a に 降水域を明け渡すような格好ですね。


以上、6日の関東地方南部や東部、東海道沖周辺の冬型筋状雲が南からの暖気の補給受けつつまとまった a の影響で時ならぬ大雪になったわけですね。

勿論、前記 a は、低気圧として解析するべき ですが、気象庁発表の地上天気図には、低圧部 として表現されておりません。
と言いましても、前記したように、雲画像図の形状から、本州付近が深い気圧の谷内に入りつつあるときは特に、前記したような、地上天気図の低気圧とは別に、スケールの小さい低気圧
が発生することを肝に銘じてください。

令和3年12月3日山梨県東部地震での山梨県大月市での揺れ方について

2022-01-03 17:16:16 | 日記
①令和3年12月3日発生山梨県東部の地震の震源地,各地震度分布図(山梨県東部周辺中心)※気象庁
HPより引用。


令和3年12月3日早朝、山梨県東部でM4.9の地震が発生、山梨県大月市内で震度5弱、東京都町田市、神奈川県相模原市、厚木市、松田町で震度4、他、関東~山梨県、静岡県東部の広範囲で震度3を観測しました。

②山梨県東部で発生した地震の各震源と、その断面図※気象庁HPより引用





震度5弱を観測した大月市内では、一部の建造物に天井版の落下等の微被害がありましたが、隣接するJR中央本線、中央自動車道には、一部区間で速度規制がしかれたものの、通行止め規制はなく、大きな混乱はなかった様子です。

通常、震度5弱以上の地震を観測しますと、鉄道や高速道路では、運転中止や通行止めをなるケースが殆どですが。

実は、引用図①より、今回の地震、震度5弱を観測した大月市内でも、震度5弱観測(計測震度4.5)の地点(大月短大敷地内,防災科研設置)より、直線距離でわずか1キロも離れていない大月市役所隣接敷地内の地震計(気象庁設置)では、計測震度3.5(震度4)どまりでしたし、JR大月駅構内、ネクスコ中日本大月管理事務所内では、震度4相当以下、だった模様で、JRも中央道も、通行止め規制は免れたわけです。

では、なぜ。わずか1㌔未満の近隣地点同士で、このような震度の差異が生じたのでしょうか?

引用図②より、今回の地震、地殻(プレート)の一部が北側に沈み込んでいてその沈み込み境界のような痕跡の箇所で発生しています。
実は、当該震源地周辺では、およそ600万年前〜400万年前までの、南海トラフの沈み込み痕跡の部分であり、当該沈み込み境界痕跡で発生した地震は、おもに北側を東西方向に地震波エネルギーを発散させた様子です。

ちなみに、今回の地震では、前記およそ900万年前の南海トラフ沈み込み箇所は桂川、相模川沿いの地形的鞍部と推定されますが、この地形的鞍部沈み込み境界にそって地震波エネルギーが主に発散されていったため、神奈川県津久井町、相模原町、厚木市、などで震度4を観測し、今回の地震の震源地の南側、箱根山の北縁に沿って、およそ200万年前〜100万年前に後続で発生した南海トラフの沈み込み境界痕跡周辺で、地震波エネルギーが増幅したと推定されるためと、私は考えています。(一方、大月、都留より南西側では、富士火山の活動のため、境界痕跡がはっきりしなくなってしまった様子ですね。


さて、地震が発生しますと、震源から前後方向に地殻を変形させつつ伝搬するP波と、震源から直交方向に地殻を変形させつつ伝搬するS波が生じ、双方が地表に達して縦波成分、横波成分の表面波として伝搬させるわけですが、大月市周辺のような、比較的狭隘な地形的鞍部では、鞍部周辺の地殻基盤に地震波が衝突し屈折しやすいこともあり、鞍部走行に沿って直交しながら伝搬してくる成分の地震波が卓越するといえます。(大月周辺では、南北方向ですね。)

③大月市内各観測地点地震波形と3方向加速度成分(1Galは加速度1㎝毎秒毎秒 A:市内大月短大敷地内 防災科研設置 防災科研HPより引用 B:市立大月東小学校敷地内設置気象庁HPより引用 
双方比較は波形開始時刻に注意!!

A:計測震度4.5(震度5弱)合成320.4Gal 南北195.7Gal 東西319.1Gal 上下52.1Gal



B:計測震度3.5(震度4)合成112.0Gal 南北54.4Gal 東西96.5Gal 上下69.9Gal



A,Bともに、地震動継続時間にほとんど差異はありませんが、AはBと比較して、東西方向、南北方向成分が高くなっております。


④大月市内各観測地点位置図 国土地理院HP引用・加工



通常、地震波は、大月市周辺のような谷間地形では、地震波が伝搬する方向に直交方向の南北成分が卓越するもので、基盤の傾斜急な箇所に差し掛かるとで反射する如く屈折し、進行方向斜め谷間側方向に顕著になりやすい特性があります。これは、平成7年1月兵庫県南部地震の神戸市内や、平成26年11月長野県北部地震での長野市内 でも出現しておりました。

一方、地震波が局地的に屈折などして顕著のなった地域の、隣接地域では、逆に、地震波が弱まり、揺れは減少する傾向にあります。これも、平成26年11月長野県北部地震で長野市内で見られました。(長野市役所 震度4計測震度4.4なのが、直線距離で北へ500㍍しか離れていない長野地方気象台では、震度5強計測震度5.3 となりました。)

大月市内周辺におきましても、引用図④より、震源から西寄りに伝搬してきた地震波は、ご覧のように、大月市周辺、谷間地形でも南北に蛇行しており、丁度、▽型と△型に延びる峰の先端を地震波が伝搬した、△型の峰のすぐ西側に 観測地点A(震度5弱観測)が位置しております。桂川沿いに谷間地形で顕著になった地震波南北成分は、さらに、▽型や△型の峰先端で屈折をかさねて、斜め方向にも成分を増幅させた結果、東西方向成分は一層顕著に増幅した。この結果、震度が大きくなったわけです。

逆に、観測地点Bでは、隣接するA周辺で地震波が屈折し増幅してしまったために、Bに到達する地震波は減少してしまい、揺れが抑えられたため。と私は考えております。

地震波と地形、以上見てみますと、地震波は地形に至極敏感で、地震波が引き起こす被害も、至極局地性が強いといえますね!