心の風景 認知的体験

癌闘病記
認知的体験
わかりやすい表現
ヒューマンエラー、安全
ポジティブマインド
大学教育
老人心理

規約違反で、掲載不可となりましたが、どうしてかなー

2019-07-05 | 心の体験的日記
「理由」

下記の通り、goo blogサービス利用規約に抵触するおそれがあると判断致しました。

○goo blogサービス利用規約
第11条(禁止事項)
1.会員は、本サービスを利用するにあたり、以下に該当し又はその恐れがある行為を行ってはなりません。
(3)他の会員又は第三者の知的財産権(著作権・意匠権・特許権・実用新案権・商標権・ノウハウが含まれますがこれらに限定されません)を侵害する行為
@@@@@@@

家庭があるから仕事でもがんばれる。


仕事があるから家庭でもがんばれる。


(海保博之)


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


家庭と仕事。私と公。


なかなか両立も難しい。バランスもとりにくい。


だから、仕事と家庭を切り離す人が多い。


家庭では仕事の話をしない。


職場に私を持ち込まない。


これが普通。


しかし、心の中では、公私混同が普通。


家庭の問題に悩めば、仕事もおろそかになる。


家庭が円満なら、仕事も張り切れる。


仕事がうまくいかなければ、家庭のぎこちなくなる。


仕事が充実していれば、家庭も明るくなる。


せめて形だけでも、仕事と家庭を分けておけば、


両者が連動してネガティブ状態になるるリスクは防げるが、


倍化するポジティブ状態を味わえるリターンはない。


さて、どうする。


「ミスに強くなる心の訓練」 5章 行為をスマートに

2019-07-05 | 安全、安心、

5章 行為をスマートに  30p

5ー1)行為を分類する
●行為を3階層に分ける
●認知と行為のそご3態
●認知と行為と状況との時間オーダーのギャップ
●インタフェース問題 

5-2)とっさに動く
●危険を避ける
●とっさの行為を体験を通して学ぶ

5ー3)規則に従って動く
●手順、規則に従う
●手順を学びはじめる
●学びが軌道にのる
●上達が一時的に止まる

5ー4)熟慮してから動く
●4つの代表的なエラー
●不適切な状況認識による思い込みエラー
●思い込みエラーに対処する 


章扉
「ミスこそ生きてる証」

「身体で覚えるのが一番。理屈をこねていないでやってみな。」

概要***
 認知活動は最終的にはしかるべき状況で行為として実行される。しかし、認知と行為と状況との間には微妙なズレが出てしまうことがある。そのズレがミスにつながる。これには構造的なものがあるのでやっかいである。また、行為そのものも、機械ほどの信頼性はないので、思わぬ実行ミスが起こってしまう。行為は目に見えるので、認知活動よりも自己管理が容易に思えるが、それを支えている認知活動と一体であるので事は簡単ではない。行為だけでなく認知活動、そして状況にも思いをはせての行為の最適管理が必要である。
**********************

5ー1)行為を分類する

●行為を3階層に分ける
 大規模プラントにおけるヒューマンエラーについての指導的な研究者であるラスムッセンは人の行為を図に示すような3階層に分けている。見事な分類なので、本章でも、この分類に準拠して話を進めてみる。

図5-1 行為の3階層モデル(ラスムッセンに基づく)

 最下層は、技能ベースの行為。
 所定の刺激(シグナル)があると所定の行為が反射的に起こる。赤信号で停止するのが、この例。
 最上層は、知識ベースの行為。
 状況の解釈のために頭の中の知識が動員され、解釈のためのモデル(メンタルモデル)が構築されて、それに従って作り出された計画がトップダウン的に実行される。
 地図から得られる情報に基づいて構築された頭の中の地図(認知地図)に従ったナビゲーションや、初対面の人物ついて名刺の肩書きなどから描くイメージと対応などが、この例。
 中間層が、規則ベースの行為。
 規則や手順に従って、一つ一つの行為が実行される。入社したてにさまざまなしきたりや仕事の手順を覚えはじめるようなときの行為が、この例。
 なお、図中のシグナル、サイン、シンボルについて一言。
 たとえば、赤信号がただちに車を止める行為を引き出せば、それはシグナル。
 赤信号が交通ルールを思い出させて意図的に車を止める行為をさせれば、それはサイン。
 そして、赤信号は危険を「意味する」から車を止めたほうがよいと解釈されれば、それはシンボル。
 同じもの/状況でも、このように、人の認知や行為との関係で、シグナルになったり、サインになったり、シンボルになったりするところに注意されたい。
 さらに、同じ状況で長く仕事をしているベテランは、見るもの聞くものほとんどがシグナルであるのに対して、初心者は、そのすべてが知識や規則書や手順書と対応づけなければならないサインである。つまり、同じものでも、人によっても、シグナルになったり、サインになったり、シンボルになったりするから、ややこしい。
 これは、次章のコミュニケーションエラーとかかわっていくる。
●認知と行為のそご3態
 認知と行為の齟齬は、いろいろの形で発生する。
 その一つは、メタ認知不全によるものである。
「頭ではわかっていても、できない」「できると思ってやったら、できなかった」というようないらだたしい体験は、誰もが何度かしているはずである。高齢者になると、こうした体験はかなり頻繁になる。
 背景には、みずからの行為能力へのメタ認知がうまく働かなかったことがある。

図5ー2 認知(心)と身体のそごの発達的変化

 行為能力が急速に変化する青年期や高齢期には、メタ認知がついていけないために、青年期ではスピード違反のような行為過剰によるミス、高齢者ではつまずきのようなメタ認知不全として、ミスが発生することになる。
 おもしろいことに、青年期も高齢期も、他の時期よりも、メタ認知を働かせることは多いのだが、それを上回る身体的な変化が起きてしまうのである。

図5ー2 認知的発達と身体的発達のギャップ ppt済み

 認知と行為の齟齬の2つ目は、「具体性ギャップ」によるものがある。
 知識ベースの認知の世界は、具体的世界をシンボルにして貯蔵する(表象化する)ので、抽象化への強い志向性がある。目の前にある金槌も、道具箱の金槌も、「かなずち」としてシンボル化されてしまう。
 一方、ミスは行為という具体的な世界で発生する。その時その場での具体的な状況の中で発生する。
 一つの例を挙げてみる。
 「安全第一」という標語はかなり抽象的である。具体的な状況でどのようにすれば、安全なのかについては、何も言っていないに等しい。「あれほど、安全には注意するように言っていたのに」との嘆きの背景には、こうした具体性ギャップがある。
 最後に、認知と行為のそごに関してもう一つ。それは、認知と行為の時間オーダーのギャップである。
 これについては、状況の側の時間オーダーとの間での3つどもえのギャップを考えたほうがよさそうなので、項を改めるこことにする。

●認知と行為と状況との時間オーダーのギャップ
 状況(機械、媒体、組織)の時間オーダーとは、たとえば、インターネットでの検索を考えてみてほしい。
 「海保博之」と打ち込むと6千件余が瞬時に検索される。最初はびっくり仰天した。この検索速度はコンピュータという機械の速度(ナノ秒;10億分の1秒単位)であるが、これ以外にも、状況に特有の時間オーダーがある。しかも、技術の進歩によって、そのオーダーは人のそれとどんどんかけはなれていく。そこに、ミスの新たな種がまかれてしまう。
 なお、ここで時間オーダーと言う時には、変化への即応(時定数)についてのオーダーと、速度についてのオーダーとがある。ピストルがなってスタートする時の違いは前者、ゴールに到達するまでの違いは後者。微妙に違う。
 前者は、タイミングミス(早すぎる/遅すぎる)として、後者は手後れミスとして出現する。
○タイミングミスの例。
 ・カーブでハンドルを早く切りすぎて縁石に乗り上げてしま  った
 ・突然の飛び出しで急ブレーキをかけたが間に合わなかった
 ・2回フライング(flying)をして失格してしまった
 ・自動ドアが開くより先に通り抜けようとしてドアに激突
○手後れミスの例
 ・ETCをスピードをゆるめないで通過しようとして、バー  にぶつかってしまった。
 ・ゆっくり電車に乗ろうとしたら、ドアが閉まってしまった
 ・治療が間に合わなくて死んでしまった

 心は基本的に時間オーダーの制約はない。一つのことを10時間考え続けてもよいし、一瞬で世の中をひっくり返すような発見をすることもある。
 しかし、行為を心でコントロールする時には、そうはいかない。行為と状況の時間オーダーと同期するようにしないと、やることなすことがミスになってしまう。
 ここのところで一番苦労しているのは、スポーツ選手であろう。スタートなどここ一番での一瞬のタイミング・ミスが致命的になってしまう。
 さらに最近では、動く人工物が増えてきた。車はもとより、エスカレーター、自動ドアなど建築物の中に作り込まれるものを多い。
 速ければよいというものではない。いずれも人にとって最適な時間オーダーが作り込まれなければならない。子供や高齢者の認知と行為の時間オーダーにまで配慮した設計が必要なことを言うまでもない。

●インタフェース問題
 言うまでもないが、状況と認知と行為の三つどもえのギャップは、時間オーダーだけではない。
 たとえば、作業現場に最新の機械が導入された時のことを考えてみてほしい。時間オーダーのギャップに加えて、パワーギャップ(例;ちょっとレバーを曵くだけで100キロの鉄骨が移動できる)、同型性ギャップ(例;ボタンを押すだけで物を簡単に移動できる)の問題もある。
 大きくは、すべてのミスに、こうしたギャップがかかわっているとも言える。
 これらの問題は、インタフェース問題として、とりわけ、コンピュータ技術の世界で研究されてきた。これが生かされて、高齢者でも小学生でも、その気になればコンピュータが使えるようになったのである。
 人工呼吸器の操作が機種によってばらばらなため操作ミスとか、点滴装置の操作ミスが投薬ミスを招いたケースなどを新聞で読むたびに、なぜインタフェースの科学が30年にわたり蓄積してきた知識が生かされないかとの思いを強く持すことしきりであった。知識の領域間移転の問題は、日本ではかなり深刻といってよい。
 本書では、人に限定してミスの防止を考えているが、人も含めた状況の最適設計にこそ、ミス防止の鍵があることを、何度目かの繰り返しになるが、ここでも指摘しておきたい。

5-2)とっさに動く

●危険を避ける
 ラスムッセンの3階層モデルの最下層に位置する技能ベースの行為は、反射的行為と長期間の訓練(学習)によって獲得されたものとの2種類がある。後者については、手続き的知識に基づいた自動的な行為として2章で述べたので、繰り返さない。ここでは、反射的行為とミスとの関係についてのみ取り上げてみる。
 物が目の前に飛んでくれば、さっと避ける。火の熱さはさっと避ける。これらは、生まれつき人に備わった反射(生得的反射)である。身を守るために神が与えてくれたものであろう。
 こうした緊急回避行動をさせるシグナルは、急速に近づくもの、大きな音、強烈な刺激など、状況の中で際立っているものである。
 緊急回避行動は、誰もが身につけている行動ではあるが、行動のほうの敏捷さには個人差がある。スポーツに親しんでいる人や若者は緊急回避行動に優れている。
 安全教育の一つとして、緊急回避行動の力を養う、というより知るために、正田亘氏は「五感の体操」(学文社)を提案しているが、レクレーションも兼ねての導入があってもよい。そのいくつか。
 ・ドッジボールを通してどちらに逃げるかを知る
 ・棒が落ちる前にすばやくつかみ敏捷性を知る
 ・二人三脚で走ってみて人との共同動作ができるかを知る
 反射も使わないとなまる。こうした遊びを継続的にすれば、多少は磨きがかかる。とっさの行為が身を救うことがあるから、馬鹿にはできない。
 なお、反射的行為については、前項で述べたような、認知と行為のそごはない。そうしなければならない状況(刺激)があれば黙っていても身体が動くことになる。自然環境でならこうした反射的行為だけで生きられるかもしれないが、人工物環境の中では、反射的行為だけでは生きられない。

●とっさの行為を体験を通して学ぶ
 生得的反射は、刺激と反応とが一対一に対応している。それを支えているのは、反射弓と呼ばれる神経回路である。
 これに対して、同じ反射でも、過去の体験によって形成されたものもある。それが、条件反射である。
 ・高いところに登ると恐怖感にかられてしまう
 ・蛇が嫌い
 ・モーツアルトを聞くとリラックスできる
 こうした行為は、生得的反射とは違って、体験によって学習されたものである。
 たとえば、蛇嫌い。
 母親に抱かれて散歩していた。突然、蛇が目の前を横切る。母親はびっくりして抱いているあなたをぎゅっと抱き締める。これで、あなたは、蛇と怖さを結びつけてしまう。
 条件反射は、過去の自然の体験によって学習されたものなので、その学習をしていない人は、身につけていない。あるいは、同じ対象に対して別の学習をした人もいる。かくして、蛇を怖がる人もいれば、蛇をペットにする人もいる。人さまざまなのは、条件づけの学習が異なっているのである。
 さて、安全と条件反射との関係について。
 言うまでもなく、安全を保証する条件反射的な行為のレパートリーを豊富にすればよい。たとえば、
 ・ストップサインでは、必ず止まる
 ・警報が鳴ったら、ただちに機械の停止ボタンを押す
 ・赤色を見たら、止まる
 条件反射的な行為の形成には、生得的反射と対にして新しい状況(刺激)と行為との連合を体験することが必須である。ストップサインで止まらないと危険が及ぶことを体験させる必要がある。そこが難しいのだが、恐怖体験なら一回の体験で条件反射が形成できる。
 
図5ー3 条件づけの図式 ppt 済み

 なお、条件反射的なとっさの行為は、状況や刺激依存的なので、職場が変わったり、新しいシステムに変更されたりした時にその状況や刺激の一部が残っていると、やらずもがなのことをしてしまうミス(実行エラー)が起こる可能性があるので注意が必要である。
 
5ー3)規則ベースの行為とミス

●手順、規則に従う
 仕事には一定の手順(マニュアル)や決まりがある。手順や規則に従っておこなう行為が、規則ベースの行為である。
 まずは、手順、規則にまつわる心理から。
 手順や規則には、強制の意味合いがある。人はロボットではない。言われた通り、決められた通りを嫌う。とりわけ、仕事に慣れてくると、自分なりの創意工夫をしたがる。ましてやそれが仕事の効率化につながるなら、手順無視、規則無視に大義名分さえ感じとってしまう。
 人に内在するこうした積極性をむげに抑え込んでしまうわけにはいかないが、しかし、それが手順違反、規則違反によるミスを誘発してしまうとなると、さてどうするか。
 一つは、「領域分け」の考えを採用することである。
 ここのところは、ミスが起こると大変なことになるので、手順、規則に従ってやらなければならないことを自覚する。創意工夫がむしろ期待されているところでは、ミスを恐れず、思いもままにやってみる。
 領域に応じた仕事への取り組み、心構えをするのである。これが領域分けの考えである。
 もう一つは、手順、規則に従うと、なぜ良いのかをしっかりと理解することである。
 人は強制も嫌うが、無意味なことをするのも嫌う。自分のすることの意味を知りたがるのである。そこで、ただ手順や規則に従うのではなく、そうすることがどういう意味があるのかを自得するようにする。「手順主義より意味主義で」仕事をするのである。
 そして、最後は、安全が何よりも優先するとの使命を折に触れて確認することである。納期の厳守や競争に勝つことやサービス精神や善意の発揮は、安全あってのものであることの自覚である。安全というパンドラの箱は、絶対に開けてはいけないのである。

図5ー4 安全というパンドラの箱を開けさせるもの PPT済み
 
●手順を学びはじめる
 手順通りに仕事をするには、それなりの訓練が必要である。
 訓練の主体になるのは、現場である。指導者からの手取り足取りの指導からはじまって、ベテランが実際に仕事をしている現場で見よう見真似で覚えるOJT(on the job training)で力を付けていくことになる。
 OJT訓練の初期段階では、一つ一つの手順を、「計画ー実行ー確認(PDS)」に従ってゆっくりと着実におこなう。技量未熟によるミスが多く発生するが、仕事をゆっくりやるし、まだ未熟なのでミスをするという強い自覚があるので、確認段階で、ほとんどのうっかりミスは検出・訂正ができる。
 この段階でのミスは次の段階への習熟のための貴重な体験学習になる。ミスから学ぶ姿勢が必要である。
 ・どういうミスなのか
 ・なぜミスをしてしまったのか
 ・どうすればミスを防げるか
 この3点についての内省・反省をきちんとおこなうことが必須である。不明な点があれば、どんどん先輩や指導者に尋ねて助言を求めるのが良い。
 町工場での長年の経験を生かして発言している小関智弘氏は言う。「若い人はことさら失敗を怖がりますね。”マニュアルどおりにやったのに”と言う。教えている先輩たちが”あれじゃ育ちようがないよ”と嘆く」(朝日新聞、05年1月12日朝刊)
 ここで、初心者の情報処理の一般的な特徴とそれに対する処方箋を挙げておく。
「短期記憶での処理」
○チャンキングする(まとまりをつくる)ために必要な知識が充分でないために、わずかな情報しか一度に処理できない
ー>できるだけ、ノートにとって、自分なりのまとめをしてみる
○過緊張状態にあるため、深みのある情報処理、複眼的な情報処理ができない
ー>マニュアルなどを活用して復習を充分にする
○目に見える動作のほうに注意がとられてしまいがち
ー>動作をしながら、その動作に関連する知識を口に出してみる
「長期記憶での処理」
○新しい情報を既有の知識と関連づけることができない
ー>復習するときに、関連する知識も調べるようにする
○大事な知識とそうでない知識の区別がつかない
ー>指導者の言動や資料のメリハリの付け方から何が大事なことかを推測する

●学びが軌道にのる
 初期段階を過ぎると、次第に動作がスムーズになり、スピードも上がってくる。上達しているという感覚が味わえるようになってくる。手順についての宣言的知識がどんどんどん手続き的知識になり、簡単な動作は、無意識的に実行できるようになってくる。比較的ミスの少ない段階である。
 ここで、この上達過程について少し認知心理学的な解説をしておくが、興味のない人は飛ばしていただいてもよい。。
 動作をガイドする手続き的知識は、ノードとリンクからなる運動スキーマとして組織化されている。
 車の始動を例にとれば、キーを差す、強く押し込んでまわす(フールプルーフ機構になっているので)、各種メーターなどが正常かをチェックする、シートベルトをつける、といった一連の要素動作が、一つひとつのノードになる。それが、この記述通りの順番にリンクでつながれば、スキーマとして機能する。
 そして、この始動スキーマは、より上位の「車庫出しスキーマ」の中に統合されていくことになる。これが、果てしなく続くのが上達過程ということになる。

図5−4 運動スキーマのイメージ PPTすみ

 練度が上がってくるにつれて、スキーマの組織化は、一方ではより抽象的に、また一方では、より精細になっていく。そして、意識化できるレベルも、より抽象的なレベルになっていく。これが、序章で述べたマクロ化(図2ー2参照)の内部でのメカニズムに他ならない。
 具体例を一つ挙げておく。
 野球のベテラン解説者の解説を聞いていると、実に細かい動作を指摘することがある。手首が返っているとか、フォロースルーができているとか。素人には、VTRの高速度撮影を見ないと気がつかないようなことを指摘する。これがスキーマが精細化されていることの証拠である。
 さらに、空振りをすると、「レフト方向をねらってますね」とか「一発ねらってます」というような解説をする。マクロな動作(のねらい)もまたきちんと見えているのである。これがスキーマのマクロ化(抽象化)の例である。

●上達が一時的に止まる
 なお、この段階で、いわゆるスランプの状態を経験することもある。いくら練習してもいっこうに上達しないのである。とりわけ、手順の中に細かい技能が入っていると、スランプに悩まされることになる。
 しかし、スランプはもう一つ上の段階へと行くための必須の経験とされている。この時期に、それまでの学習によって作り出した運動スキーマを新しい運動スキーマに組み換えているのである。
 新しい運動スキーマとは、下位スキーマをまとめ直して(チャンキングし直して)作り出される高次のスキーマである。動作の上ではいっこうに上達しないが、頭の中では盛んに手続き的知識の更新が起こっているのである。
 あきらめずに練習していると、あるとき突然、すんなりとやりたいことができてしまう。これがスランプの脱出である。
 スランプ時期は、認知と動作がばらばらになることが多い時期であるため、ミスも発生しやすい。
 スキーマの組織化は認知の世界で起こる。そしてスキーマを意識化できるのはそのごく一部に過ぎない。しかし、要素動作のほうは、必ずそのすべてを順序通りしなければならない。
 つまり、意識していない要素動作でもきちんと実行しなければならない。この意識化できない要素動作の部分でついうっかり動作の一つを飛ばしてしまうミス(省略ミス)が起こってしまう。
 ここで起こるうっかりミスには、もう一つ知り過ぎていたために起こってしまうミス(スキーマ依存ミス)もあるので、やっかいである。
 たとえば、向かいからくる車がパッシングしたので右折したら相手の車がつっこんできたようなケース。
 パッシングには「どうぞ」の意味があることだけしか知らなかっために起こったミスである。むしろ知らないほうが(スキーマがないほうが)安全だった。
 こうしたミスは、上達のための払わなければならない痛いコストという面もある。仲間や指導者の支援を仰ぎながら謙虚に学ぶ姿勢が必要である。
 そして、認知と動作がしっくりと馴染んだ状態になってはじめてより一段上の域に達したと言えるのである。
 このあたりについては、岡本浩一著「上達の法則」「スランプ克服の法則」(いずれもPHP新書)が参考になる。

5ー4)熟慮してから動く

●4つの代表的なエラー
 ここで、やや唐突であるが、ヒューマンエラーの代表的な分類の一つを紹介してみる。
 およそどんな仕事でも、それをする理由がある。人を助けるため、給料をもらうため、会社のため、家族のためなどなど。
それをやや大げさな言い方になるが、使命(mission)と呼ぶ。
 その使命のもとで、計画(plan)をたてて、それに従って実行し(do)、それが計画通りになっているかを確認する(see)。
 この一連の流れを、「MーPDSサイクル」と呼んでおく。
 ヒューマンエラーをこの一連の流れの中で分類してみると、図のようになる。

図5ー5 MーPDSと4つのヒューマンエラー pptすみ

 使命の取り違えエラーは、安全の使命より乗客サービスの使命を優先してしまって、事故を起こしてしまった、というような例。図5ー4には、安全という使命をつい忘れさせてしまう(パンドラの箱を開けさせる)要因のいくつかを挙げたので参照されたい。
 思い込みエラーは、火災報知機が鳴っても、いつもの誤動作と思い込んで何もしないで火災が拡大してしまったというような例。火災報知機は誤動作しがちという経験的な知識が判断を誤らせてしまった。
 うっかりミスは、コーヒーに砂糖の代わりに塩を入れてしまった、というような例。計画とは違った行為をしてしまう。
 確認ミスは、ワープロでの打ち間違いをそのままにしてしまった、というような例。急いだりすると、つい行為のほうが先走ってしまい、確認を忘れる。
 ここで、ヒューマンエラーの分類を紹介したのは、次項で取り上げる、知識ベースの行為で発生する思い込みエラーの位置づけをはっきりさせたかったからである。
 なお、4つのミスの型のそれぞれを自分でどれくらいする傾向があるかどうかをチェックするリストをつくってみたので、自己チェックをしてみてほしい。

********
 表5−1 ミスの自己診断チェックリスト
 
 各項目について、
「自分によくあてはまる時に3」
「まーあてはまる時は2」
「あてはまらない時1」
のいずれかを入れて、4つのリストごとに数値を合計する。判断は直感的でよい。*10点以上なら、それぞれの傾向が強いほうと言える。

●目標の取り違え傾向度チェックリスト(得点; 点)
1)人に喜んでもらうのが好き( )
2)決まりや手順より、その場にふさわしいやり方でやる( )
3)人に自慢をすることが多い( )
4)競争では負けるのが嫌い(  )
5)何よりも時間厳守が大事(  )

●思い込み傾向度チェックリスト(得点;  点)
1)直感的判断に頼ることが多い( )
2)理詰めで考えるのは嫌い( )
3)判断に迷うことはあまりない( )
4)人と相談することはあまりない( )
5)何ごとも自分なりに納得しないと我慢ならない( )

●うっかり傾向度チェックリスト(得点; 点)
1)一日一回くらいはうっかりミスをする( )
2)見落としや聞き間違いが多い( )
3)計算ミスをよくする( )
4)注意が散漫で持続しない( )
5)感情的になることが多い( )

●確認ミス傾向度チェックリスト(得点;  点)
1)寝る前に火の消し忘れや施錠忘れがないかを気にすることはほとんどない( )
2)確認よりもやれべき事をしっかりやるようにしている( )
3)メモや貼紙はあまりしない( )
4)複数の手段で複数の人から確認をとるようなことはあまりない( )
5)人に、確認したかと言問うことはあまりない( )
***********************

●不適切な状況認識による思い込みエラー
 知識ベースの行為は、状況の中にある手がかりを解釈して(シンボル化して)状況認識をおこない、それに基づいて計画を作り出し実行する。 
 ところが、その状況認識を誤ってしまうと、誤った計画が作られてしまい、それを忠実に実行し、確認段階でのチェックも妥当(計画通り)と判断されてしまう。
 ・事態がいつもと違っている時
 ・事態が切迫している時
 ・状況が何が何やらわけがわからないような時
 状況の中にある顕著な手がかりだけに駆動された既有知識に基づいた妥当でない状況認識をしてしまい、結局は、状況への働きかけを誤ってしまう。これが思い込みエラーである。
 たとえば、軽いものでは、勘違い。
 ・「内助の功」を/うちすけのこう/と読んでいた
   (既有知識の誤用による勘違い)
 ・「渓子」を/けいこく/の/けい/と言ったら、「警子」  となっていた
   (類似知識の使用による勘違い)
 あるいは、もっと規模が大きくなると、いわゆる思い込みエラーになる。たとえば、
 ・入社したての頃、上司をつい「先生」と呼んでしまった
   (不適切な知識の活性化による思い込みエラー)
 ・頭の中に描いた地図に従って運転していたら、目的地と反  対方向だった
   (既有知識駆動による思い込みエラー)
 ・名刺の肩書きからイメージされるのとはかなり違った言動  をしたので、びっくりした
   (ステレオタイプによる思い込みエラー)
 ・TVのスイッチをつけたら画像が出なかった。修理に出し  たら、VTRモードになっていただけだった
   (モード認識エラーによる思い込みエラー)
 いずれも、状況の中にある限定的だが自分の知識と関連づけられる手がかりだけに依存して、状況を解釈するためのメンタルモデルを構築して、誤った状況認識をしてしまったために起こったものである。
 
図5ー6 思い込みエラーの発生まで ppt済み

 なお、図にある「メンタルモデル」について一言。
 メンタルモデルとは、その時その場で活性化している知識を使って頭の中に作られる、状況を解釈するためのモデルである。メンタルモデルが妥当な状況認識をもたらすなら何も問題は起こらない。納得づくで仕事が実行できる。
 しかし、メンタルモデルの構築に使う手がかりが不充分だったり、不適切なものだったりすると、誤った状況認識をさせてしまう。これが思い込みエラーをさせることになる。
 余談だが、関連した深刻な話をここで一つ。
 最近お騒がせの「おれおれ詐欺ーー「振り込ませ詐欺」と警察は命名し直したーー。これには、見事なまでの思い込ませテクニックが使われている。
 電話という相手が見えないホットなメディアを使って、しかも、警察や弁護士といった法律的権威を演出する。これは、相手の作り出した仮構の世界へと誘導する強力な仕掛けになっている。さらにこれに加えて、家族のトラブル物語りで頭真っ白にさせてまっとうな状況認識ができないようにさせてしまう。
後は思い込みの世界から脱出できないうちに金銭を払い込ませてしまえば終わり。

●思い込みエラーに対処する 
 思い込みエラーは、その世界に入り込んでしまうと、自力で抜け出ることができない。払り込ませ詐欺で、一度払い込んでしまうと、2度も3度も払い込む例をみても、思い込みエラーの怖さがわかる。
 となると、思い込む前の入口での心のガードが唯一の対策となる。
 ・何が何やらわけがわからないような時は判断や行動をしな  い(エポケー)
 ・もう一つのルートからの情報を手に入れるようにする
 ・即断即決をしない
 ・自分の思いを口に出してみる
 ・相談相手を用意しておく
 さらには、自分が思い込みやすいタイプがどうか知ることも必要である。独善的な人、人の意見を聞かない人、自分に自信のある人、一人で何でもする人などは、要注意である。





解散ニュースばかり]10年前の今日の記事

2019-07-05 | 社会
解散ニュースばかり
実は、ほとんどニュースバリューはない
だって、時期がここまで狭まってしまったのだから

報道すべきは、解散時期ではなく、
選挙の内容のほう
マスコミさん、本筋のほうに目を向けてがんばってください
歴史的な選挙になるのですから

華やかさ 「見るだけでも心うきうき」

2019-07-05 | ポジティブ心理学
華やかさ 「見るだけでも心うきうき」

●ヘンデルの音楽に触発された
 1時間の通勤ドライブの途中、雑多なCDをとっかえひっかえ聞いています。そんなある日、心が自然にうきうきするようなクラシックに出くわしました。Handel(ヘンデル)の音楽でした。
 広辞苑によると、ヘンデルの音楽は、和声的で単純明快とのこと。和声的の意味は音楽音痴の自分には不明ですが、単純明快な曲の醸し出す雰囲気の華やかさは十分に感じとることができました。これが、華やかさを取り上げた理由です。
ところで、音楽と気分の関係はよく知られています。どういう音楽が心を元気にしてくれるかもかなりわかっています。
 こうした研究は、音楽心理学の分野で行われています。ここでは、音楽と気分、華やかさの話は、これくらいにして、一般的に、華やかさと心の元気について考えてみたいと思います。

● 華やかさの心理
何が華やかさを醸し出しているのでしょうか。分野によって違うところがありますが、一般的なものを思いつくままにあげてみます。
・ 明るい
・ 美しい
・ 積極的
・ 動きがある
・ 快活
・ 緊張感がある
・ 豊か
・ 周りから際立っている
音楽、人、環境の分野でそれぞれ具体的に考えてみてください。
 いずれも、それを目にする、あるいは、ふれることで気持ちうきうき、ポジティブになれます。

● 華やかさを活かすコツ
① 華やかな人間になる
 自分自身、華やかになれたら、言うことなしです。しかし、これには、氏と育ちがありますから、さて、これから華やか人間に、と決断してもそう簡単にはいきません。
 それでも、さきほど挙げた華やかさの特性を身につける努力をしてみるのは、無駄ではないかもしれません。結果は出なくとも、その努力している姿が華やかさを醸し出すかもしれません(笑い)。
② 華やかのものにふれる機会を増やす
 もう一つは、華やかなものに触れる機会を増やすのもありです。一流どころ、本物、ハレ舞台に積極的に出かけてみることで、そこにある華やかさで心を元気にしてみるのです。それによって、その華やかさを少しでも自分のものにできれば言うことなしです。
 余談になりますが、女4人姉妹兄ひとりで育ってきた妻と結婚していろいろびっくりしたことがありますが、その中でも、家のあれこれの色彩の華やかさがあります。それまで、女は母一人。あとは男ばかり。家の中に色がありませんでした。灰色一色という感じでした。それが、衣類だけでなく食器からカーテン、カーペットまで実に色彩豊かな新婚家庭になりました。昔昔の話です。笑い
 色は、華やかさの演出には欠かせませんね。
③ 華やかさもほどほどに
いつもいつも華やかも疲れます。
頻度で言うなら、1月に1度くらいの華やかさがちょうどよいところかもしれません。その華やかさを目指して1月を頑張るくらいのところですね。
さらに、程度で言うなら、お祭りやハレの舞台や都会の華やかさを最大級の華やかさだとするなら、お化粧やおしゃれあたりが普通の華やかさでしょうか。
 頻度と程度を掛け合わせたところに「ほどほどの」華やかさを求めるのがよさそうです。