「昨日は、『月と海と太陽の神話』という展示会に行ってきたんじゃ」
「何それ?」
「神話をモチーフに、切り絵とアニメーションの展示されとってんよ」
「切り絵いうたら、お父さんがむかしやっとったよね」
「切り絵はふつう、額に入れて飾ってあって、それを鑑賞するんじゃが、この展示はちょっと違うんよの。懐中電灯を手に、作品を鑑賞するんじゃ」
「懐中電灯って…。えぇ!? こんな薄暗い中で展示しとってん?」
旧日本銀行広島支店 地下金庫入口
「まず、入口で懐中電灯を渡されるんよ。切り絵に懐中電灯の光をあてることで、壁に切り絵の影が映って影絵にすることができるというわけじゃ。しかも懐中電灯を上下左右に動かせば、影絵も一緒に動くんじゃの」
「お客さん自身が楽しみ方を選べるというわけじゃね。こりゃ面白そうじゃん」
「じゃろ? 今ままで考えもつかんかった見せ方じゃったのう」
「切り絵って平面じゃけど、光を当てると立体的な感じがするよね」
「切り絵をこんな風に楽しんだのは、わしゃ初めてじゃったで」
壁に映ってできた影絵
「この切り絵を作られたのは、誰?」
「グラフィックデザイナーの山本理子(やまもと りこ)さんという方なんじゃ。神奈川の方なんじゃが、広島でやりたいということで、旧日銀広島支店の地下金庫で展示会を開かれとってんよ。隣の部屋では、映像ディレクターの早川貴泰(はやかわ たかひろ)さんが、アニメーション作品を上映しとってんじゃの」
「へぇ」
山本理子さん
「最初に「神話をモチーフにした」と言うたんじゃが、お2人とも日本神話の「天の岩戸(あまのいわと)」の話をモチーフに制作されとってんじゃ」
「天の岩戸って、スサノヲの乱暴に怒ったアマテラスが天の岩戸に篭(こも)って入口を大きな岩で塞(ふさ)いでしもうたけぇ、この世が真っ暗になったという話よね?」
「そのおかげで、世の中にはいろいろな禍(わざわ)いが生まれるんじゃ。そこで、天の岩戸の前でアメノウズメが胸をはだけて舞い踊ると、八百万(やおよろず)の神がそれを楽しんで笑うたんよの」
「この笑い声を聞いたアマテラスが、「うちが隠れたけぇ、みんな困っとるはずじゃろ。それなのに、なんであんたらはそんな楽しそうに笑うとれるん?」と思うて、入口を塞いどった岩を少し開けてみるんよね」
「天の岩戸の横でひかえとったタヂカラオが、岩を取りのぞいてアマテラスを引き出すんじゃ。こうして世の中は以前のような明るさを取り戻し、禍いもおこらなくなって、めでたしめでたし、という話じゃの」
「ということは、天の岩戸の前でアメノウズメが踊って、八百万の神たちが笑っているところを切り絵で表現しとってん?」
「全員が天の岩戸の前で踊っとる、という設定なんじゃ。しかも、踊っとるのは神様だけじゃのうて、鳥や魚、虫を含めた生き物が100種類。しかも1種類で踊りのパターンが3つあるけぇ、全部で300個あるんじゃ」
「300も!?」
「生き物たちの踊りがパターン化されとらんのには、驚かされたのう」
「似た形の踊りが少ないということ?」
「どの生き物も心の底から楽しそうに踊っとるけぇ、似た形の踊りが少ないんじゃろうの」
踊る!
踊る!!
踊る!!!
「ところで、なんで「天の岩戸」をモチーフにしちゃったんかね?」
(略)
このお話もとても好きです。
力ずくでもなく、呪文でもなく、アマテラスが自ら出てこられるようにするため、笑いの力を借りるのです。
ただ、笑いが必要だったのは八百万の神々ではなかったのかとも思います。
「困った、どうしよう!」と焦り、余裕を失うと身体が緊張してしまいます。
身体が硬くなると受け止める力がなくなってかえってはねのけてしまうこともあります。
傷ついたアマテラスをしっかり受け止め、ちゃんと繋(つな)がるためにも踊り、大きな声で笑い身体も心も開き、力を抜いてアマテラスを柔軟に受け止める必要が神々にあったのではないかと思えてくるのです。
傷ついた人をしっかり受け止め、新たな扉を開く。
戦争で、災害で、そして日常の中でも傷つき、つらい思いをしている方が多くいらっしゃいます。
しかし人は前に進む力を持っています。
そして受け止める力も持っています。
その力を信じ、今回神話の中でも「天の岩戸」を主軸にしました。
大きな声で笑い、踊り、目の前の岩戸を開き、豊かな力が生まれることを願って。
山本理子
(チラシより)
「そういう思いを込めて作られた切り絵が、それぞれ高さ70センチから150センチの柱状の台座に乗せて飾ってあるんじゃ。この台座は1個1個、紙を折って作っとってんよ」
「へぇ~。切り絵だけじゃのうて、台座も300個作っとってんじゃ」
「台座もそうじゃが、床に置いてある照明具の飾りも紙を折って作っとられるんよの」
台座
照明具と飾り
「ところで、これらを作るのにどのくらいの期間かかったんかね?」
「6月末に広島に来られて制作を始められたそうじゃけぇ、1ヶ月半くらいじゃそうな」
「1ヶ月半で、これだけの量を作っちゃったんじゃ。すごいね!」
「あと、山本さんのホームページも必見じゃ!」
「おぉ、トップページで切り絵が動くんじゃね。NHK教育テレビの「プチプチ・アニメ」のような動きじゃね」
「コマ撮りされたクレイ(粘土)アニメのような動きじゃのう。動く切り絵というのも、わしゃ初めて見たで」
月と海と太陽の神話
■場所/旧日本銀行広島支店 地下1階
広島市中区袋町5-16
■会期/2011年(平成23)8月15日(月)~27日(土)
■時間/11:00~19:00
↓山本理子さんについては、こちら↓
Riko
↓早川貴泰さんについては、こちら↓
TakahiroHayakawa
↓旧日本銀行広島支店については、こちら↓
建築マップ 日本銀行旧広島支店
↓切り絵についての関連記事は、こちら↓
広島市中区在住の切り絵作家は誰?
「今日は、旧日本銀行広島支店の地下金庫で開かれている「月と海と太陽の神話」について話をさせてもらいました」
「ほいじゃあ、またの」
「何それ?」
「神話をモチーフに、切り絵とアニメーションの展示されとってんよ」
「切り絵いうたら、お父さんがむかしやっとったよね」
「切り絵はふつう、額に入れて飾ってあって、それを鑑賞するんじゃが、この展示はちょっと違うんよの。懐中電灯を手に、作品を鑑賞するんじゃ」
「懐中電灯って…。えぇ!? こんな薄暗い中で展示しとってん?」
旧日本銀行広島支店 地下金庫入口
「まず、入口で懐中電灯を渡されるんよ。切り絵に懐中電灯の光をあてることで、壁に切り絵の影が映って影絵にすることができるというわけじゃ。しかも懐中電灯を上下左右に動かせば、影絵も一緒に動くんじゃの」
「お客さん自身が楽しみ方を選べるというわけじゃね。こりゃ面白そうじゃん」
「じゃろ? 今ままで考えもつかんかった見せ方じゃったのう」
「切り絵って平面じゃけど、光を当てると立体的な感じがするよね」
「切り絵をこんな風に楽しんだのは、わしゃ初めてじゃったで」
壁に映ってできた影絵
「この切り絵を作られたのは、誰?」
「グラフィックデザイナーの山本理子(やまもと りこ)さんという方なんじゃ。神奈川の方なんじゃが、広島でやりたいということで、旧日銀広島支店の地下金庫で展示会を開かれとってんよ。隣の部屋では、映像ディレクターの早川貴泰(はやかわ たかひろ)さんが、アニメーション作品を上映しとってんじゃの」
「へぇ」
山本理子さん
「最初に「神話をモチーフにした」と言うたんじゃが、お2人とも日本神話の「天の岩戸(あまのいわと)」の話をモチーフに制作されとってんじゃ」
「天の岩戸って、スサノヲの乱暴に怒ったアマテラスが天の岩戸に篭(こも)って入口を大きな岩で塞(ふさ)いでしもうたけぇ、この世が真っ暗になったという話よね?」
「そのおかげで、世の中にはいろいろな禍(わざわ)いが生まれるんじゃ。そこで、天の岩戸の前でアメノウズメが胸をはだけて舞い踊ると、八百万(やおよろず)の神がそれを楽しんで笑うたんよの」
「この笑い声を聞いたアマテラスが、「うちが隠れたけぇ、みんな困っとるはずじゃろ。それなのに、なんであんたらはそんな楽しそうに笑うとれるん?」と思うて、入口を塞いどった岩を少し開けてみるんよね」
「天の岩戸の横でひかえとったタヂカラオが、岩を取りのぞいてアマテラスを引き出すんじゃ。こうして世の中は以前のような明るさを取り戻し、禍いもおこらなくなって、めでたしめでたし、という話じゃの」
「ということは、天の岩戸の前でアメノウズメが踊って、八百万の神たちが笑っているところを切り絵で表現しとってん?」
「全員が天の岩戸の前で踊っとる、という設定なんじゃ。しかも、踊っとるのは神様だけじゃのうて、鳥や魚、虫を含めた生き物が100種類。しかも1種類で踊りのパターンが3つあるけぇ、全部で300個あるんじゃ」
「300も!?」
「生き物たちの踊りがパターン化されとらんのには、驚かされたのう」
「似た形の踊りが少ないということ?」
「どの生き物も心の底から楽しそうに踊っとるけぇ、似た形の踊りが少ないんじゃろうの」
踊る!
踊る!!
踊る!!!
「ところで、なんで「天の岩戸」をモチーフにしちゃったんかね?」
(略)
このお話もとても好きです。
力ずくでもなく、呪文でもなく、アマテラスが自ら出てこられるようにするため、笑いの力を借りるのです。
ただ、笑いが必要だったのは八百万の神々ではなかったのかとも思います。
「困った、どうしよう!」と焦り、余裕を失うと身体が緊張してしまいます。
身体が硬くなると受け止める力がなくなってかえってはねのけてしまうこともあります。
傷ついたアマテラスをしっかり受け止め、ちゃんと繋(つな)がるためにも踊り、大きな声で笑い身体も心も開き、力を抜いてアマテラスを柔軟に受け止める必要が神々にあったのではないかと思えてくるのです。
傷ついた人をしっかり受け止め、新たな扉を開く。
戦争で、災害で、そして日常の中でも傷つき、つらい思いをしている方が多くいらっしゃいます。
しかし人は前に進む力を持っています。
そして受け止める力も持っています。
その力を信じ、今回神話の中でも「天の岩戸」を主軸にしました。
大きな声で笑い、踊り、目の前の岩戸を開き、豊かな力が生まれることを願って。
山本理子
(チラシより)
「そういう思いを込めて作られた切り絵が、それぞれ高さ70センチから150センチの柱状の台座に乗せて飾ってあるんじゃ。この台座は1個1個、紙を折って作っとってんよ」
「へぇ~。切り絵だけじゃのうて、台座も300個作っとってんじゃ」
「台座もそうじゃが、床に置いてある照明具の飾りも紙を折って作っとられるんよの」
台座
照明具と飾り
「ところで、これらを作るのにどのくらいの期間かかったんかね?」
「6月末に広島に来られて制作を始められたそうじゃけぇ、1ヶ月半くらいじゃそうな」
「1ヶ月半で、これだけの量を作っちゃったんじゃ。すごいね!」
「あと、山本さんのホームページも必見じゃ!」
「おぉ、トップページで切り絵が動くんじゃね。NHK教育テレビの「プチプチ・アニメ」のような動きじゃね」
「コマ撮りされたクレイ(粘土)アニメのような動きじゃのう。動く切り絵というのも、わしゃ初めて見たで」
月と海と太陽の神話
■場所/旧日本銀行広島支店 地下1階
広島市中区袋町5-16
■会期/2011年(平成23)8月15日(月)~27日(土)
■時間/11:00~19:00
↓山本理子さんについては、こちら↓
Riko
↓早川貴泰さんについては、こちら↓
TakahiroHayakawa
↓旧日本銀行広島支店については、こちら↓
建築マップ 日本銀行旧広島支店
↓切り絵についての関連記事は、こちら↓
広島市中区在住の切り絵作家は誰?
「今日は、旧日本銀行広島支店の地下金庫で開かれている「月と海と太陽の神話」について話をさせてもらいました」
「ほいじゃあ、またの」
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