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好き嫌い (中)

2010-06-15 13:27:29 | Weblog
 慌てて近寄ってくる落合先生を見て、
私は安堵のため息を漏らした。


小学生にとって、一度口に入れたものを
吐き出してしまうなんて、

とても精神的に傷ついてしまうことであり、
ブルーな気分で教室に戻らなければならないと
思っていたところなので、
この先生の助け舟的行動はとても有難かった。


が、近づいてくる先生の顔をよく見てみると、
つり上がった眼鏡以上の
つり上がった目で私を睨んでいる。


「何吐き出しての!!!」


私はそのまま教室に再度引きずりこまれ、
机の前に乱暴に座らされた。


「好き嫌いは許しません。最後まで残さず食べるように。」


鬼の審判がここで下った。


私は「(嫌い)はまあいいけど、(好き)は許せよ。おい!」
と心の中で突っ込みを入れながら、

どうせ食べないで、じっとしていたらそのうち
許してくれるだろうと高をくくっていた。


しかし落合先生の断固とした主義はついに揺らぐことがなかった。


机に海老の入った皿だけが残った状態で、
給食の時間が終わり、昼休みを過ぎ、5時間目となっていた。

他の生徒も落合先生の目を恐れ、海老付きとなった私に
触れようとすることもなく、

明朗快活に

「よろしいーー。」

を相変わらず変なイントネーションで連呼していた。

遂に5時間目も終わり、帰りの掃除が始まった。
小学2年生がする履き掃除は乱暴で、
舞い上がったほこりが、3個半残っている私の海老に
バンバン降りかかった。

私の精神状態とあわせ、
もう決して食べ物と呼べる代物ではなくなっていた。

やがて、他の生徒は帰宅の時間になり、
一斉に親の元へと笑顔で帰りだした。

いつも一緒に帰っていた浅沼君でさえ、
余裕で立ち去っていた。




続く‥‥







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