彦根の歴史ブログ(『どんつき瓦版』記者ブログ)

2007年彦根城は築城400年祭を開催し無事に終了しました。
これを機に滋賀県や彦根市周辺を再発見します。

10月2日、望遠鏡の日

2008年10月02日 | 何の日?
1608年10月2日、オランダのメガネ職人だったリッペルスハイはオランダの国会に書類一式を提示し望遠鏡の特許を申請しました。


リッペルスハイはレンズを磨いている最中に、偶然凹レンズと凸レンズを一定の間隔で重ねてのぞき込むと、遠くにある風景が近く見えると言うことを発見したそうです。
これがヒントとなって、凹凸のレンズを組み合わせた望遠鏡を発明したのでした。
オランダ国会はこの特許申請に対し、「原理があまりにも単純で誰でも作れそうだ」と言う理由で受理しませんでした。

それにもめげなかったリッペルスハイは同年12月には双眼鏡も完成させています。


さてそんな望遠鏡が日本に入ったのは江戸時代のこと(発明自体が江戸時代初期なんですから当たり前なんですが・笑)。
そして、この望遠鏡を使って近江では偉人が誕生します。


“国友一貫斎”または“国友藤兵衛重恭”と言う人物です。

世界史的には“東洋のエジソン”と呼ばれ、死後160年以上経った今でも一級資料として現役で活躍する記録を残した近江の偉人・国友一貫斎を紹介してみましょう。

一貫斎は、その名前の示す通り、現在の長浜市国友町の出身。
歴史上、“国友”といえば“鉄砲”と連想されるくらいに有名な土地ですが、戦国期以前は刀鍛冶の村でした。
1543年、中国人・王直が鉄砲という新しい武器の売り込みの為にポルトガル人を乗せて種子島に上陸します。そしてその翌年には国友で鉄砲作りが始まります。
余談ですが鉄砲伝来はポルトガル人が偶然種子島に漂着した事が以前の定説となっていましたが、今は倭寇の元締め王直が必然的にやった事になっています。

刀鍛冶で行なわれる鋼を強固にする技術を組み込んで作られる鉄砲は、当時の世界基準を簡単に追い抜いて、世界一の精度を誇りました、また、生産力も尋常ではなく、鉄砲伝来の約40年後には全世界の鉄砲保有量の3分の2が日本にあったと言われています、実は日本は火器だけを限定するなら戦国末期と江戸末期に世界最強の兵器を保有していたという歴史があります。


そんな国友の鉄砲も。江戸時代に平和な世の中が訪れると無用の長物となってしまいます、国友では鉄砲で培った技術を生かして花火や芸術・科学の面で活躍を見せますが、戦国期のような繁栄はありませんでした。
そんな太平の時代、多くの人の努力から鎖国中の日本に外国の文化も入りつつある時代の転換期に国友で生まれ育ったのが国友一貫斎でした。

一貫斎は有能な鉄砲鍛冶師で、彦根藩から指名で大筒製造の依頼を受ける事もありました。
40歳を過ぎた頃に江戸でオランダから伝わった空気銃を見て、構造を理解し模倣・改良します、これは空気が圧縮できる事を理解した最初の日本人と言う事です。

さらに、オランダ製の反射望遠鏡を見た一貫斎はこれも模倣します、そして改良された反射望遠鏡を使って天体観測を始めたのです。


最初は月と木星の観測で、その記録は写真を見るかのように忠実に残されています、望遠鏡を改良して詳しく見える所は紙を貼って修正するほどの細かさで、月のクレーターの位置などは今の写真と比べても大差はないんですよ。
また、木星の衛星タイタンも記録に残っていますが、江戸時代の日本人でタイタンを見た記録を残しているのは一貫斎しか居ません。

他にも、土星の輪なども明確な記録として残っていて、その全てが学術的価値を評価されています。

しかし、そんな中で特に注目されるのが太陽暦1835年2月3日~1836年3月24日まで158日216回行なわれた太陽の黒点観測です。
その記録方法は、黒点の数・位置・大きさを明確に記録し、気が付いた事を覚書としてメモに残すやり方でした。
この観測で一貫斎は、
・黒点は温度が低い所である事。
・同じ形の黒点は無い事。
・黒点は左下から右上へ移動し10日前後で消える事。
などを証明しています。

ちなみに世界天文学史上においてこのような長期の黒点観測の最初は一貫斎より9年前にドイツのシュワーベが行なっていますが、その正確さは一貫斎には及びません。

また、1854年からはスイスのウオルフの提唱で黒点の国際共同観測がプロ・アマを問わず多くの天文愛好家によって今も行なわれていますが、それ以前の記録としては最高の物で、特にこの時期が黒点の数が段々増えていく重要な時期でもあったため、今でも天文学の世界では一級資料として活躍しています。


改良を加えられた反射望遠鏡は4機製作されましたが、どれも当時の世界水準を大きく上回った物で、160年以上経過した現在でも鏡に曇りがなかったそうですよ。


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