北大路機関

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【くらま】日本DDH物語 《第三〇回》はるな型護衛艦と大型ヘリコプター艦載への課題

2017-11-18 20:00:18 | 先端軍事テクノロジー
■HSS-2艦載運用実現への課題
 はるな型はるな、ひえい、しらね型しらね、くらま、海上自衛隊では続く、はつゆき型、あさぎり型でもHSS-2を艦載運用していますが、当初はその大型機体が運用に制約を課すものと考えられていました。

 海上自衛隊の対潜哨戒ヘリコプターはHSS-2、アメリカ海軍が対潜空母用対潜ヘリコプターとして愛用した同型機を運用しています。このHSS-2は改良型のHSS-2A、そして最終発展型のHSS-2Bへと発展し、冷戦末期になり現用機に繋がるSH-60J,そして対潜哨戒ヘリコプターから哨戒ヘリコプターとなり、最新のSH-60Kへと発展していったわけです。

 HU-1B,陸上自衛隊が1961年より採用した現在のUH-1J多用途ヘリコプターに繋がる中型ヘリコプターを対潜哨戒用へ改修する等の措置をとれば、はるな型護衛艦にも5機程度の多数を搭載出来たでしょうし、みねぐも型護衛艦と同程度の護衛艦にも搭載出来たかもしれません。海上自衛隊でも小型機の研究はあったようですがHSS-2の搭載で決定しました。

 しかし、世界の海軍を見ればHSS-2のような大型ヘリコプターを艦上運用する事例は非常に稀有といえました、発着甲板を準備し、搭載せず露天に係留しておくだけならば中型艦にも積載や係留は可能ですが、具体的にはHSS-2を搭載し、そして艦砲や対潜機材等を搭載した場合、如何に小型化しても満載排水量では4000tちかくの船体が必要となります。

 HSS-2は全長16.69m、回転翼直径18.9m、全備重量9.52tという規模です。SH-60Jと比較すれば全長19.8m、回転翼直径16.4m、全備重量9.7tとほぼ同水準ですが、アメリカ海軍がHSS-2と同時期に駆逐艦等へLAMPSとして搭載していた対潜ヘリコプターはSH-2という一回り小型の機種でしたし、各国海軍にはより小型の機種が採用されていました。

 SH-2は水上戦闘艦のセンサーをヘリコプターで延伸運用する発想の機体ですが全長16.0m、回転翼直径13.4m、全備重量6.12tと小型の機体です。イタリア海軍はHU-1Bのライセンス生産型AB-204 ASWを巡洋艦に搭載、こちらはソナーと対潜レーダーも搭載した自己完結型の対潜航空機で全長17.43m、回転翼直径14.6m、全備重量5.08tとやはり小型です。

 イギリスは水上戦闘艦用に全長12.3m、回転翼直径9.9m、全備重量2.5tのワスプ対潜ヘリを運用しており、フランスのSA 319対潜ヘリコプターは、同型機の陸軍型が輸送能力で僅か3名という連絡用に限られている程の搭載量であり、潜水艦探知器材と魚雷を同時運用する事も難しく、いわば、最小限のセンサーを搭載するか、または魚雷を運搬するか、と。

 草創期の対潜ヘリコプターの性能が限られていた最大の理由は繰り返す通り、揺れる水上戦闘艦上にヘリコプターを発着させる事が非常に難しかった為です、水上戦闘艦でも3000tや4000tの規模の物は基地で見上げる限り確かに巨大ではありますが、大洋の波浪に揉まれる状態では残念ながら着艦の瞬間に横滑りや、また上下する飛行甲板に叩かれかねない。

 着艦を如何に行うか、ソ連海軍のモスクワ級ヘリコプター巡洋艦は飛行甲板に網を張る事でヘリコプターの車輪を絡ませ、横滑りを防止しました。欧州の艦艇ではハープーンと呼ばれる蜂の巣状鋼板を甲板に張り、ヘリコプター下部に突起物を装着し着艦時に差し込み連結する事で横滑りを防止しましたが、この方法は大型ヘリコプターの運用に耐えません。

 荒天時にヘリコプターを運用しない、という方式もありますが、地中海や南大西洋ならば兎も角、北大西洋や太平洋では荒天が多く運用に現実味がない。ここで、着艦拘束装置の発達が解決しました。世界には大型ヘリコプターを水上戦闘艦での運用への一定の需要があり、この新技術が、はるな型護衛艦を完成に至らせる原動力ともなったといえましょう。

北大路機関:はるな くらま
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