北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上自衛隊 第三師団記念行事 千僧駐屯地祭

2006-05-14 22:42:56 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■師団駐屯地祭展開

 有岡城を臨む兵庫県伊丹市は、陸上自衛隊中部方面総監部、そして第三師団司令部がおかれた京阪神防衛の要衝である。本日、伊丹市の千僧駐屯地において駐屯地創設55周年、第三師団創設45周年記念行事が実施された。

 しかし、新聞報道によれば昨日の時点で日曜日の降水確率は60%、岐阜基地での厳しい経験を活かすべく、各種カメラ用防水器材やポンチョを補完するフランス製レインコートを調達した。不覚にも朝寝過ごしつつあった今朝0630時、小生は明るい日差しで目覚めた・・・、天佑!晴れ!天晴れ!こうして、小生は意気揚々と伊丹へ向け阪急電車に乗り込んだ。

■第三師団

 本日実施された駐屯地祭は、2005年3月、政経中枢師団型即応近代化師団という言わば市街戦重視の編成に移行した第三師団にとり、初の師団駐屯地祭である。

Img_1703_1  第三師団長による訓示、指揮官巡閲に続いて、第三師団警備管区自治体を代表し、京都府知事による訓示が行われ、部隊の一層の近代化精強化や南海東南海地震への自治体との協同対処などについて言及した。

 師団改編の概要は、朝雲ニュースによれば、普通科連隊に対する対戦車中隊・対人狙撃班新設、特科連隊(45門)の特科隊(20門)への縮減、化学防護小隊の化学防護隊への増強といった改編が実施された。なお、現状では第三戦車大隊は中隊数が戦車定数は縮減されていないとのことである(三戦隊員談)。

■観閲行進

 式典は訓示に引き続き、音楽隊の演奏する軽快なマーチと共に観閲行進、祝賀飛行と、空砲を用いた訓練展示というかたちですすめられた。雲量が多く、十五分おきに天候が曇りから快晴へと変わる中、式典会場左側から続々と部隊が集結し、各自治体旗に引き続き、82式指揮通信車と先頭に徒歩部隊が観閲官段前を行進し、観閲を受けた。

Img_2006  観閲行進は徒歩行進と車輌行進に区分して実施される。しかし、千僧駐屯地は面積的に限界があり、師団司令部敷地とグラウンド区域の間に国道171号線が走っている程である為、車輌行進には数的限界があり、第十師団のような対戦車中隊や重迫撃砲中隊の行進は実施されなかったのが残念であった。

 なお、徒歩行進は二個普通科中隊が行進し、車輌行進には90輌の各種車輌と航空機が参加した。各普通科連隊の連隊長、司令部幕僚が行進する際に、第七普通科連隊の行進に挙動不審者が観閲行進に飛び込もうとしたり(警衛の隊員が阻止)、駐屯地が伊丹空港の管制区域にある為、祝賀飛行のヘリコプターが中々到達しなかったりと様々なトラブルがあったものの、概ね順調に実施された。

Img_2016_1  普通科部隊は、第七普通科連隊、第三十六普通科連隊に続き、第三十七普通科連隊に軽装甲機動車が配備された事は北大路機関の信太山駐屯地祭の記事にて既報だが、これによりかつて、師団輸送隊の大型トラックや連隊の中型トラックにより辛うじて車輌化されていた普通科部隊は、今や高機動車や軽装甲機動車といった軽快な車輌によって自動車化された機械化部隊となった。この他、第三高射特科大隊は従来の35㍉高射機関砲L-90に代わり93式近距離地対空誘導弾へ、第三戦車大隊に約10輌配備されていた60式装甲車は73式装甲車にそれぞれ更新されていた。なお、普通化を始め機械化が充実した事により、各連隊・大隊には後方支援連隊第二大隊の直接支援中隊が配属され、緊密な整備支援を実施しているということだ(四科の幹部談)。

Img_2045_1  第三師団は三個普通科連隊、そして特科隊一個(指揮官1佐)、一個戦車大隊、一個施設大隊と、偵察隊、後方支援連隊、飛行隊により構成されており、観閲行進もやはり普通科が主体となって実施される。この式典に参加するため、伊丹、信太山、福知山、今津、姫路などといった駐屯地から駆けつけた部隊が参加したが、観閲行進のフィナーレとなる祝賀飛行だけは9機の内、方面隊直轄の対戦車ヘリ隊から対戦車ヘリ一機が参加していた。

 なお、観閲行進は部隊を観閲台側から撮ると真横からしか写らず、反対側から撮っても閑散とした写真となるため、行進を斜め横から撮影すると圧縮効果で多く見栄えのある写真となる。祝賀飛行はヘリだけでは動きが無い為、地上部隊か、若しくは地上構造物を収めると画面が賑やかになる。前者はポジション次第だが、後者(写真)は屈めば何かが入るのでこちらの方法が容易である。

■訓練展示

 観閲行進が終了すると訓練展示に向けた準備が行われ、トラックの荷台に演奏台を置いての太鼓演奏や音楽隊の演奏に引き続き、訓練展示が実施されるのだが、何故か伊福部昭作曲の“ゴジラマーチ”にのせて状況開始となった。ううむ、一般ピープル的には自衛隊=ゴジラなのかなあ。

Img_2111  訓練展示(模擬戦闘)は、最近の流行である近接戦闘ではなく、従来型の地上戦闘の展示が行われた。

 従来型とは、捻りは利いていないものの、一番見応えのあるものである。その内容は、偵察隊が目標を発見し、特科が砲撃を加え戦車が支援し、ヘリが飛んできて、普通科が突撃をするというものだ。

 千僧駐屯地の訓練展示最大の難点は、グラウンドが狭い為、仮想敵陣地の方向から我が部隊が進出してくるという点である。実戦なら側射火器で攻撃され壊滅的打撃を受けることになるやもしれない。偵察隊は64式小銃や87式偵察警戒車の機関砲が射撃したが、敵部隊は戦車を有しており、激しい攻撃を加えてきた。

Img_2131  偵察隊の情報収集に基づき、特科部隊が砲撃を開始する。アナウンスでは、実際には数キロから十数キロ離れて戦闘が行われるといわれていた。また、普通科部隊の81㍉迫撃砲も展開していたが、更に120㍉重迫撃砲が加わり、直接掩護火力たる迫撃砲と、全般支援・間接支援火力としての榴弾砲が濃密な火制網を形成する。しかし、今日の砲撃戦闘では対砲レーダーにより砲弾を察知され反撃を受ける為、1~2斉射の後移動しなければ反撃を受けることとなる。

 判明した目標に対して、FH-70榴弾砲が火を噴く!しかし悲しいかなタイミングが合わず砲焔を撮影するには至らなかった。

Img_2178  戦車前進ッ!対戦車戦闘用意ッ!

 我が砲撃により大きな損害を被りつつも、敵は更に戦車を動員し果敢な反撃に出てきた。グランドの関係から対戦車ミサイルは展開していない為、我が戦車の出動である。敵は74式戦車一両、丁寧にも敵も第三戦車大隊のマーク付である。これに対し 二両の戦車を以て砲撃を加えるが、空包発射の瞬間、砲口がこちらを向いていた為、ジィィィィンと鼓膜に振動が来た。空気の衝撃というべきか。両手をカメラで塞いでいた為耳を塞げなかったのだが、衝撃に備えて口をあけておいたのが幸いであった。次回は耳栓を買っておこう(次回は次週、買う時間あるかな?)。

Img_2169_1  敵戦車撃破!油気圧サスペンションを作動させ行動不能となった(故障ではない)。

 地域占領を行うべく軽装甲機動車から普通科隊員が降車する。軽装甲機動車は乗車戦闘に用いられる装備で、降車戦闘の普通科隊員は高機動車から降車するはずだが、今回は面積的制約からの配慮であろう。

 戦車、特科の火力により壊滅的な打撃を受けた敵陣地は銃剣突撃により占領、状況終了となった。

■装備品展示

 こうして訓練展示は終了し、式典は全て終了となった。装備品展示は国道171号の反対側の師団司令部近辺で実施されており、車輌、火砲、火器などの装備品展示と並び、防護マスクや個人用防護衣の体験試着や、個人用暗視装置(両眼式のV3)の暗天幕内部での体験装着も実施されていた(一瞬、防護衣試着の隣に天幕があるのを見て、ガス天幕の体験かと思った)。

 以上が第三師団記念行事の詳報である。以上のように、手狭ながら創意工夫に溢れた駐屯地祭であり、一見の価値はあろう。十月には第十師団記念行事が実施されるので、皆さんも一度、足を運ばれては如何であろうか。

HARUNA

(本ブログの写真及び本文は北大路機関の著作物であり無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする