はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part142 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第41譜

2020年01月04日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第41譜 指始図≫ 9七玉まで


    [あんたどこにもいなくなっちまうんだぜ]

「夢見ているとこだ、どんな夢だと思う?」とソックリディー。
「そんなこと、わかるもんですか」
「え、だってあんたの夢だよ」ソックリディーがしてやったりとばかり手をたたき、「もし王さまがあんたの夢見るのやめちゃったら、あんたはどこに行っちゃうんだろう?」
「そりゃここにいるでしょうよ、もちろん」
「いるかって」ソックリディーはふふんとせせらわらって、「あんたどこにもいなくなっちまうんだぜ。だって王さまの夢の中にしか存在してないじゃないか」
「そこの王さまが目をさましたがさいご。あんたは消えちゃうんだぜ」ソックリダムもいいだす。

     (『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 ソックリダムとソックリディーは、アリスに、おまえは「赤の王さま」の夢の中の存在だ、だから王さまが夢見ることをやめたらアリスは消えてしまうのだと言う。




<第41譜 天空の2五飛が隠れていた>


≪最終一番勝負 第41譜 指始図≫

 この図を一手戻した図、「6七と図」を、我々は目下、研究調査中である。



6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 形勢不明(後手寄り)
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉




[調査研究:2六香]

 我々終盤探検隊の、〔桃〕2六香についての研究が、アップデートされたのでまずその内容を報告する。 “新手” が発見され、前回の結論が書き替えられる可能性が出てきたのだ。

2六香基本図
 〔桃〕2六香 は、前譜(第40譜)で調査研究を行い、結論は「形勢不明(後手寄り)」だった。
 その手順は、次の通りである。
 〔桃〕2六香 に、7六歩、7八歩、6六銀、9七玉、7七歩成、同歩、同銀成、2五飛、2四桂という手順である(次の図)

研究2六香図X1(2四桂図)
 先手の2五飛に、2四桂(図)と受けられて、以下難解な(つまり互角に近い)勝負となるが、どうやら最善を尽くしても先手が苦戦するようである(ここで8五歩は同金、同飛、8四銀で先手悪い)

 しかし、(研究上の話ではあるが)先手側にその状況を変えるかもしれない “新手” が見つかった。 その研究報告をしておきたい。
 この図を、「2手」戻す。つまり、2五飛を打つ前の局面に。

研究2六香図X2(7七同銀成図)
 2手戻した「7七同銀成図」。 もう一度ここで考え直す。
 2五飛 は、2四桂と受けられて先手苦戦とわかった。 
 だから、それ以外の手がないか――――というところ‥‥
 しかし3七桂は、7五桂、9八金、7六歩が“詰めろ”で、先手負けだ。
 他に、何かないのか――――(次の図)

研究2六香図X3
 あった!!!
 2三香成(図)が、 “新発見の研究手” である。
 同玉に、1一飛と打つのである。 これで、どうか(次の図)

研究2六香図X4
 1一飛(図)と打って、この飛車打ちに期待する。 この場面、「dolphin1/orqha1018」評価値は -286 なので、「だめなのか」と思ってしまうが‥‥
 1一飛に、2二玉なら、3二角成、同玉、1二飛成で後手玉詰みだ。だから後手は3四玉と上部へ逃げる。
 以下、2一飛成、7五桂、7九桂、4五玉、2六竜(次の図)

研究2六香図X5
 こう進んで、先手は「金」を手に持っているのが大きい。7五桂にも金をつかわず7九桂で受けることができた。
 後手は受けに「桂」を使うために7五桂を打つことを保留した指し方を選んできたので(先手の2五飛に2四桂の手を用意)、先手のほうも「金」を(受けに使うことなく)手に持っている。そのことが、ここにきて生きた。
 どうやらこの図に進んでみると、「先手良し」のようだ。 良いタイミングで5二や8四の金の質駒を取って、後手玉を寄せる形に持っていきたい。
 ただし、最新ソフト「dolphin1/orqha1018」の評価値は -721 で、なぜかはっきり「後手有利」と出ているが‥

 もう少し進めてみよう。 7八歩(「dolphin1/orqha1018」の推奨手)なら、4六金、5四玉、3五竜(5五金以下詰めろ)、4四銀、7五竜(次の図)

研究2六香図X6
 こう進んで、先手優勢。
 (どうやら「dolphin1/orqha1018」は4六金、5四玉、3五竜と進んだ局面で、後手によい受けがないということに、前の図の局面では気づいていなかったようだ)

研究2六香図X7
 2六竜に、 5五玉(図)とした場合(7八歩でだめならこれしかなさそう)
 これには、7八歩、7六成銀、6一竜と指すのが良い。

研究2六香図X8
 6一竜(図)として、後手玉は “4六金以下の詰めろ” になっている。 6二歩と受けるのは7二竜が継続手で先手優勢がはっきりする。
 なので4四香として頑張る手を指してどうか(代えて4五香には 6七桂、同成銀、3七桂で4五香を取りにいく)
 それには、6七桂、同成銀、5七歩、6六成銀、6七歩、同桂成、8五歩、同金、8三馬のように指す(次の図)

研究2六香図X9
 先手優勢。 盤上の四つの大駒が中央の後手玉を包囲している。

 ということで――――

研究2六香図X2(再掲7七同銀成図)
 この図は、どうやら、「2三香成、同玉、1一飛」で、先手が勝てそうだ。
 この2三香成~1一飛(この時に「金」を持駒にしていることが先手の条件)の攻めを後手が避けるには、〔桃〕2六香に対し、「7五桂、9七玉、7七と、9八金」とすぐに7五桂と打って、「金」を受けに使わせるしかない。 しかしそれは、前回(第40譜)の研究発表で、「先手良し」の結論を出している。

 だから、「新しい結論」は、次のように変わる。


2六香基本図(再掲)
  〔桃〕2六香 は先手良し。 
 

6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 形勢不明(後手寄り) → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉

 「6七と図」の調査結果はこう書き換えられた。





 今回は、以下、〔楓〕2五飛 という新しい手についての研究内容を報告したい。

[調査研究:2五飛]

2五飛基本図
 〔楓〕2五飛
 この手のメリットは5五の銀取りになっているところ。そして2五飛の形は後手玉が3三から中段に出てきたときに(持駒によるが)詰ませやすいということがある。
 そして、「香車」を打つことを保留して手に持っているので、この香の使い道が複数ある。具体的に言うと、3三香、または2六香という攻め。そして8九香と受けに使うこともできる。
 〔楓〕2五飛 のデメリットは、2筋を攻めるのに2六香と打った形が“逆形”になっているということである。

 ここで考えられる後手の手は、次の3つ。
 【1】7五桂【2】6六銀【3】7六歩
 ここは後手にとって重要な“分岐点”である。 後手の考え方のポイントは「持駒の桂馬をどこに使うか」である。
 「桂」を攻めに使うなら、【1】7五桂 だ。

研究2五飛図01(7五桂図)
【1】7五桂(図)、9七玉に、7七とで、先手玉に、“詰めろ”をかける(次の図)

研究2五飛図02(9八金図)
 先手は、9八金(図)と受ける。
 代えて8九香と受ける手も考えられるが、6六銀で形勢不明。 ここは香車を攻めのためにとっておくほうが優る。
 さて、9八金に、後手はどうするか。
 「6六銀」はどうか(次の図)

研究2五飛図03
 しかし、ここで2六香と打って、先手が勝てる。 後手は桂馬を使ってしまっているので、受ける駒がない。
 だから、2六香に、8七桂成、同金、同と、同玉で、金を手に入れ、2四金と打つ。受けはこれしかない。
 しかし、2四同飛、同歩、1五桂で――――(次の図)

研究2五飛図04
 先手勝勢。

研究2五飛図05(6二金図)
 戻って、先手の2六香の攻めを未然に防ぐには、「6二金」(図)しかない。
 5五飛で銀が取れるが、それでは、3一玉で後手優勢になる。 5二歩は考えられるが、6一歩以下形勢不明の戦いになるようだ。
 もっと良い手がある―――(次の図)

研究2五飛図06(3三香図)
 3三香(図)があった。
 この手が成立するのが「2六飛」ではなく「2五飛」の利点である。 3三香、同桂、同歩成、同玉(同銀は後述)のときに、5五飛と、ここで「銀」を補充できるのが「2五飛」の強みなのだ(次の図)

研究2五飛図07
 どうやらこの図は、「先手優勢」である。 以下、もう少し先まで進めて先手良しを確認しよう。
 ここで4四銀なら、5九飛(金を取る)として、次の2一銀をねらう。
 6九金なら、先手2五桂で後手玉は寄る。2五桂、2二玉、3三歩、同銀、5一竜の要領だ。
 ここから、後手9五歩が気になる手だ。これは同歩と取るが、同金、9六歩に、8七桂成と攻めをつなげてくる(次の図)

研究2五飛図08
 8七同金、同と、同玉、7六金に、7八玉と右方向に逃げていく。
 以下、8六金右に、2五桂(次の図)

研究2五飛図09
 2五桂に、2二玉なら、6八玉、5四香、3三歩、同銀、5一竜、5五香、3四桂(次の図)

研究2五飛図10
 後手玉が詰んで、先手勝ち。

研究2五飛図11
 ということで、2五桂に、4四玉(図)の場合。
 5九飛、7七金右、6九玉、6八歩、5八玉、5五香(代えて4五香なら4七桂で先手勝ち)、4七玉(次の図)

研究2五飛図12
 5九香成は、4五歩以下、後手玉詰み。
 5四銀としても、3六桂、5三玉、5五飛で、先手勝ち。 二枚の角が良く利いている。

研究2五飛図13
 3三香、同桂、同歩成に、同銀(図)の変化。
 これには、5一竜。 以下、8七桂成、同金、同と、同玉、6一金打。
 6一金打で、先手の竜を捕獲して焦らせようともくろむが、1五桂がある。以下、3四銀に、3五桂(次の図)

研究2五飛図14
 2四歩(同飛なら3三玉で後手良しになる)には、8四馬と金を入手して先手勝ち。
 また2四香なら、2三桂左成、同銀、同桂成、同玉、3五飛、3四桂、2一銀、2七香成、8四馬で、先手勝ち。
 だから、後手は3三玉と上部脱出に賭ける。 以下3二角成、4四玉、4三桂成、同銀、4一竜、4二歩、2三角成(次の図)

研究2五飛図15
 先手優勢である。 図では詰みを防いで3四歩か3五歩が予想されるが、8四馬と金を取って、その手が“詰めろ”になる。

【1】7五桂 は先手良し。


研究2五飛図16(6六銀図)
 〔楓〕2五飛 に、【2】6六銀(図)の場合。
 次に後手からは、「7七銀成」、「7七と」、「7五桂」などの攻めが考えられる。
 それをふまえて、先手は何の手を指すのが良いのか。2六香と打つのは2四桂で攻めあぐむ、3三香は3一銀で後手良し。
 そして5二角成は(7七と、9七玉、7五桂以下)形勢不明の戦いのなりそう。

 “正解”は、9七玉である(次の図)

研究2五飛図17(9七玉図)
 9七玉(図)が最善手。
 この手には、後手が7七銀成と来るのか、7七とと来るのか、あるいはその他の手なのか、敵の指し手を見て、次の手を決めることができる、という意味がある。
 (い)7七銀成 なら5二角成、(ろ)7七とには3三香と攻めて、どちらも先手良しになるのである。(7五桂は2六香で先手勝ち)
 その他の手としては、(は)3一桂、(に)1一桂、(ほ)2四桂、(へ)3一銀もある。
 (い)7七銀成から、順に見ていこう。

研究2五飛図18(5二角成図)
 (い)7七銀成 には、「5二角成」(図)
 以下 “7五桂” には、8九香と受ける(次の図)

研究2五飛図19(8九香図)
 このとき、先手は「金金」の持駒があるので、後手が 5二歩 なら―――(次の図)

研究2五飛図20
 3三金(図)と打って、後手玉が詰む、という仕組みである。
 3三同歩なら、2一竜、同玉、2三飛成以下詰むし、3三同銀なら、同歩成、同玉、3四歩、同玉、3五金、3三玉、2三飛成(次の図)

研究2五飛図21
 2三同玉に、2一竜以下の“詰み”。 先手勝ち。

研究2五飛図22
 5二歩 に代えて、8七成銀(図)と攻める手がある。これは、同香に、7七ととする。
 対して、9八金と受けても先手が良いが、ここは3三歩成がより鮮やかな勝ち方である(次の図)

研究2五飛図23
 先手は「金金銀」と持駒がある。なので、3三歩成(図)を“同玉”なら、3四銀、同玉、3五金、3三玉、3四金打以下詰み。
 “3三同桂”は、7五飛とした手が、3四桂以下の、"詰めろ逃れの詰めろ"である。
 “3三同銀”なら、3一銀(次の図)

研究2五飛図24
 3一銀(図)以下、“詰み”。 3一同玉なら、5三馬から。
 1一玉には、2二金、同銀、同銀成、同玉、3一銀(次の図)

研究2五飛図25
 もう一度、3一銀(図)と打って、3三玉に、5一馬として、4二に金か銀を合駒することになり、3四歩、同玉、3五金、3三玉、4二馬からその合駒を取って、詰ますことができる。
 ここでも、2五飛が後手玉を詰ますためによく働いている。

研究2五飛図26
 3三歩成に、“同歩” が最も粘れる手になるが、その手には、7五飛(図)と指す。
 先手玉にかかっていた詰めろを解除した。 そして同金、同馬となれば、持駒に「金金銀銀」とあるので、後手玉に逆に“詰めろ”が掛かっている。
 よって後手はここで5二歩と馬のほうを取る。先手玉に7九角以下の“詰めろ”がかかった。
 以下、7七飛、7六歩、8四馬(次の図)

研究2五飛図27
 8四馬(図)と金を補充して、後手玉に“詰めろ”をかけた。 先手勝勢である。
 図で3一銀には、3二歩がある。 3二角には、6六馬が“詰めろ”だ。

研究2五飛図19(再掲 8九香図)
 「8九香図」まで戻って、ここで後手に、5二歩と、8七成銀 以外の手がないか、考えてみる。
 ここで後手9五歩 とか 7八と なら、先手は3三歩成とし、同歩なら4一馬、同銀なら5三馬、同桂なら7五飛が、いずれも“詰めろ”になる。 そして、3三同玉には、5一竜(同銀は同馬以下詰み)がやはり“詰めろ”になる。 先手勝ちだ。
 なので、他に考えられる手としては、ここで1四歩 くらいしかない(今度は3三歩成といくと同桂で後手良しになる)
 それには、4一馬入っておく(次の図)

研究2五飛図28
 受ける手段のない後手は攻めるしかないが、7八とか9五歩くらいしかない。 しかしそれは詰めろではないので、先手は3三歩成として、先手が勝ちになる。 3三同銀は3一金でよい。3三同玉には3五飛以下詰みがある。3三同桂には、2一金(次の図)

研究2五飛図29
 1三玉に、4二馬と銀を取って、先手の勝ち。

研究2五飛図30
 先手の「5二角成」に、“7五桂” と打たず、“7六桂”(図)という攻めはどうか。
 これには[8九香]と手堅く受けても先手良しだが、ここでは[3七桂]で勝つ手順を見ておこう。
 この[3七桂]は、2三飛成、同玉、2四金、同玉、2五金、2三玉、2四香までの“詰めろ”である。
 なので後手は3一桂と受ける(2四桂と受けるのは同飛、同歩に、2三香、同玉、3五桂以下詰み)
 先手は2六香。 以下、8八桂成に、2三飛成(次の図)

研究2五飛図31
 やはり、後手玉は、“詰み”。 同桂、同香成、同玉、3五桂以下。
 なお、この手順中、後手8八桂成の手に代えて1一玉なら、8四馬と「金」を補充すればよい。

研究2五飛図32(7七と図)
 (ろ)7七と(図)。
 (い)7七銀成 のときと同じように「5二角成」は、以下7五桂、8九香、8七と、同香、7七銀成と進み―――(次の図)

研究2五飛図33
 (い)7七銀成 のときは「成銀を捨てて7七と」としたが、この場合は「と金を捨てて7七銀成」なので、先手に「銀」が手に入ったかどうかの大きな違いがある(この場合は入っていないので先手たいへん)
 この図からの変化を調べてみたが、結論が出ない。つまり、形勢不明である。

研究2五飛図34
 それよりも、(ろ)7七とには、「3三香」(図)があり、これが明快な先手の勝ち筋となる(ここでも現れた3三香打ちである)
 これを 同桂 と取るのは、同歩成、同銀、8四馬で、この手が2一金以下の“詰めろ”になっていて、先手勝勢。
 同銀 は、同歩成、同玉、5二角成で、これも先手勝勢。
 よってこの3三香には、後手は 3一銀 しかない。 しかしそれも、8四馬、同銀に、3二香成、同銀、同馬、同玉、3三銀、同桂、同歩成、同玉、3四歩(次の図)

研究2五飛図35
 3四同玉に、4六桂以下、後手玉は“詰み”。
 このように、(ろ)7七とには、「3三香」で、先手が勝ちになる。

研究2五飛図36
 今の手順で、先手8四馬のときに、後手4二金(図)とする手がある。
 このときに、6六馬と銀を取りながら、後手玉をにらむ筋に行く絶好手があるために、この後手の4二金は無効である
 これが重要な変化で、もしもこれが「後手(い)7七銀成 の場合」だったら、6六馬の手がないので、その場合は逆に「後手良し」となるのである。
 つまりこの「3三香以下の攻め」は、(ろ)7七との場合に有効となるわけである。
 (7七と→3三香、7七銀成→5二角成、と攻め筋を使い分けて、先手良しに導けるという仕組みである)

研究2五飛図17(再掲 9七玉図)
 (い)7七銀成、(ろ)7七とについては片付いた。
 (は)3一桂、(に)1一桂、(ほ)2四桂、(へ)3一銀が残っている。いずれも、受けに回る手だ。
 先手がそれをどう攻略するか、という問題になる。

研究2五飛図37
 (は)3一桂(図)と、「2三」を先受けした。
 先手は3七桂と跳ね、7七銀成に、4五桂(次の図)

研究2五飛図38
 4四銀なら、5三歩、6二金、3三香で、先手勝ち。 1四歩にも3三香が有効。 つまりここはもう後手に受けがない。
 後手9五歩の攻めには、8四馬が“決め手”になる。 同銀に、3二馬(次の図)

研究2五飛図39
 3二馬(図)から、勝ちにいく。 同玉に、3三銀、同桂、同歩成、同玉、3四歩、同玉、3六香(次の図)

研究2五飛図40
 これで、詰んだ。

研究2五飛図41
 (に)1一桂は、6二金~3一玉や、3一銀~4二金のような手段があるのが、(は)3一桂との違い。
 ここでも、3七桂~4五桂は有効だが、ここではより勝ちやすい「3三歩成」以下の攻めを紹介しておこう(次の図)

研究2五飛図42
 「3三歩成」(図)を、同玉 は3五飛以下詰みだし、同歩 も3二金で詰む(3一桂と打っていれば3二金に1一玉と逃げられたが)
 なので、後手は 3三同銀3三同桂 の2択となる。
 3三同銀 には、5二角成、同歩、3一金でよい(次の図)

研究2五飛図43 
 この攻め形は、「後手1一桂型」(3一が空いていて1一がつまっている)だから成立した。
 図では 1四歩しかないが、2一金、1三玉、1五歩、2四歩、4五飛(ここに逃げるのがベスト)、7九角、9八玉、7七と、1四歩、2三玉、3五桂(次の図)

研究2五飛図44
 先手勝ちがはっきりした。 3五同馬、同飛となった形が、1三金以下の“詰めろ”になっている。 3五桂に3四玉なら、もちろん4三飛成以下“詰み”である。

研究2五飛図45
 3三同桂 なら、3五飛(図)
 次に5二角成があるので、後手は6二金とするが、3四歩、3一玉、5二金(次の図)

研究2五飛図46
 5二同金、同角成、7七銀成、8九香(次の図)

研究2五飛図47
 後手の手番だが、7八と では5三馬、同銀、5一竜がきびしい。 それを防ぐ 6二銀右 は、4一金、2二玉、4二金、同銀、同馬で先手勝ち(後手の手に金二枚あるが先手玉は詰まない)
 4一金 としても、5三馬、同銀、3三歩成で、やはり先手勝ちになる。
 とうことで、後手は 2二玉 とする。 それには、3三歩成、同歩、5一竜と決めにいく。
 5一同銀に、4三馬(次の図)

研究2五飛図48
 "詰めろ逃れの詰めろ"の4三馬(図)で、先手勝勢。 3二金と受けても、3三飛成、同金、2一金で“詰み”。

研究2五飛図49
 (ほ)2四桂には、「3三歩成」。
 これを 同銀 は、5二角成、同歩、3一金の攻めがある。 同玉 には3五飛、3四香、2五桂、2二玉、3四飛で先手良し。
 よって、3三同桂。 先手は、3九香と打つ(次の図)

研究2五飛図50
 以下、7七銀成に、3三香成、同銀、5二角成(次の図)

研究2五飛図51
 先手勝ち。

研究2五飛図52
 (へ)3一銀(図)は、どう攻略するか。
 一つの案としては、2六香と打って、1一桂、3七桂、7七銀成、6一竜と進めば、これは前譜(第40譜)で出てきた図に合流し、先手良しである。
 ただし、ここでは、もっと速く、そして鮮やかに攻略する手段があるので、それを紹介する。

研究2五飛図53
 (へ)3一銀に、「3三金」(図)とすぐに打ちこんでいく。
 同桂、同歩成、同玉、5二角成、同歩、3六香(次の図)

研究2五飛図54
 3四に、角、金、桂のいずれを合駒しても、同香と取って詰む。たとえば3四桂には、同香、同玉、3五金、3三玉、4五桂、2二玉、3四桂以下。
 3六香に、2二玉なら、2一金、同玉、2三飛成以下詰み。

研究2五飛図17(再掲 9七玉図)
 「6七と図」より、〔楓〕2五飛に、【2】6六銀、9七玉(図)と進めて―――
 そこで、(い)7七銀成、(ろ)7七と、(は)3一桂、(に)1一桂、(ほ)2四桂、(へ)3一銀、いずれも「先手良し」が明らかとなった。

 よって、 【2】6六銀 は先手良し、と結論する。


研究2五飛図55(7六歩図)
 残るは、【3】7六歩(図)
 この手 には、7八歩と受ける(代えて2六香はうまくいかないようだ)
 以下、6六銀に、9七玉。
 この時に、後手が「7六歩、7八歩」の手交換を生かす順があるかどうかの問題になる。
 (7五桂や7七歩成ではこれまでの変化に合流する →先手良し)

研究2五飛図56
 すなわち、ここで「7八と」(図)は、どうか。
 その手にも、やはり先手は―――(次の図)

研究2五飛図57
 3三香(図)と打ちこむ。 3一銀に、8四馬、同銀、3二香成(次の図)

研究2五飛図58
 3二同銀、同角成、同玉、3三銀、同桂、同歩成、同玉、3四歩、同玉、4六桂(次の図) 

研究2五飛図59
 後手玉が詰んで、先手勝ち。

研究2五飛図60
 【3】7六歩、7八歩、6六銀、9七玉に、「3一桂」(図)の変化。
 先手3七桂に、ここで「7八と」とするのはどうか。先手は2六香と打つ。
 これで次に8四馬と金を取れば、2三飛成以下の“詰めろ”になる。すなわち2三飛成、同桂、同香成、同玉、3五桂、3四玉、4五金、3三玉、2三金まで。
 その詰み筋を防ぐのが難しく、5四銀(4五に利かせ5三に玉を逃げるスペースを空けた)としても、5二角成がある。以下5二同歩に、2三飛成、同桂、同香成、同玉、2一竜以下、これも“詰み”。
 このように後手はもう受けがないが、7七銀不成で勝負するのはどうか(次の図)

研究2五飛図63
 この7七銀不成(図)はこれまでに出てこなかった攻めの形。 まだ詰めろではないが、8八銀不成からの攻めを狙う。
 8四馬と金を取る。上で述べた通り、2三飛成以下、後手玉への“詰めろ”。
 そこで8八銀不成、9八玉、9九銀成(次の図)

研究2五飛図64
 9九同玉と取る。
 そこで後手9七香は、9八銀と受けて後手の攻めは続かない。
 だから、2四香と受けに回ってどうか。9九の香車を銀で取ってそれを受けに使うというのが、これまでに出なかった指し回しだ。
 先手が焦るところだが、正確に指せば先手が勝てる。 3三銀と攻める手が成立した(次の図)

研究2五飛図65
 3三銀(図)と打ちこんだ。 銀を渡すのは恐いが、銀だけなら先手玉はまだ詰まない。
 3三同桂、同歩成、同銀、3四歩(詰めろ)、同銀、3二角成、同玉、3三歩、同玉、6六馬(次の図)

研究2五飛図66
 これで後手玉が詰んでいる。 4四歩(4四銀)に、4五桂打以下。

 【3】7六歩 も先手良しがはっきりしたようだ。



2五飛基本図(再掲)
 〔楓〕2五飛 は先手良し、が以上の調査研究で明らかになった。 

 相手の手を見て、攻め方を変幻自在に変えて、勝つ。
 なんとかっこいい勝ち方であろう。
 なお、コンピューターソフト「激指14」も「dolphin1/orqha1018」も、この〔楓〕2五飛は、それぞれの10コの候補手の中に挙げていない。 我々(終盤探検隊)がこれを戦後調査する気になったのは、2六香や2六飛が有力なら、では2五飛はどうなるだろうと、好奇心が湧いたからだった。



「6七と図」の最新の結論は、こうなっている。

6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 形勢不明(後手寄り) → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉
  〔楓〕2五飛 → 先手良し



第42譜につづく








[調査研究(補足):2六香]

 〔桃〕2六香についての研究の補足。

2六香基本図(再掲)
  〔桃〕2六香 に対し、「7六歩、7八歩、6六銀、9七玉、7七歩成、同歩、同銀成」と進めると、「2三香成、同玉、1一飛」で先手良し、というのが上の調査結果だった。
 そして、その筋を避けるためには「7五桂、9七玉、7七と、9八金」として金を先手に使わせるしかないが、それは前譜で「先手良し」の結論を出している。
 
 ――――ということを、上で書いたが、これは正確ではなかった。
 というのは、ここで 3一桂 と受ける手もあったからである(次の図)

研究2六香図Y1
  3一桂 と打っても、「先手良し」の結論は変わらない。しかしこの手に対してどう攻略するのがよいかという、“勉強”のために、その研究手順を以下に示しておく。
 なお、 3一桂に代えて、1一桂や2四桂の受けなら、5二角成、同歩、4一飛で、いっきに先手勝勢になる。
 この 3一桂 に5二角成は先手不利になる。 ならばどう攻めるか、というのがここでのテーマである。

研究2六香図Y2
 2三香成(図)と攻めていく手があり、この攻めを紹介する。
 これを同桂は2四金と打って、次に2五飛と打つ手が受からないので、はっきり先手良し。
 したがって後手は2三同玉。以下、2五飛、2四歩、5五飛。
 そこで6九金では1一銀と打たれて、2二香と受けることになり、それでは後手が勝ち目がない。
 だから後手は2二玉が必然手となるが、そこで1五歩(次の図)

研究2六香図Y3
 1筋に目をつけて、ここからの攻めをめざす。後手が桂馬を受けに使ったので、7五桂という手がなく、だから1筋の攻めが間に合うという計算だ。
 7六歩には、7八歩と受けておく。
 以下、6九金に、1四歩、同歩、1三歩、同香、1二歩(次の図)

研究2六香図Y4
 1二同玉なら3二角成があるし、次に8四馬と金を取った手が1一銀からの“詰めろ”になる。
 このとき、5五にいる飛車が後手玉の上部脱出を押さえている。
 だからここで後手4四銀が考えられる。しかしここでの4四銀はもう遅い。1一銀、2三玉、3二角成、同玉、2二金、4一玉に、8四馬(次の図)

研究2六香図Y5
 角香の持駒では先手玉は詰まない。
 後手3二歩の受けに、7三馬で先手勝ち。5二飛成と3二金の2種類の詰み筋があるので、受けがない。
 よって、先手勝ち。

研究2六香図Y6
 先手1五歩に、4四銀(図)とした場合。先手の飛車を引かせる意味だ。
 対して6五飛とがんばるのは、6六歩で形勢不明になる。
 素直に5九飛が正着。
 5九飛、7四香、1四歩、同歩、1三歩、同香、1二歩(次の図) 

研究2六香図Y7
 予定通り1筋を攻めたが、1二歩はまだ“詰めろ”にはなっていない。
 なので後手は7八と。
 先手は、3九飛(次の図)

研究2六香図Y8
 3九飛(図)で、“詰めろ”をかけることができた。
 そして、1一銀以下の詰めろだが、後手はもう受けがない。 2五歩には2四金があるし、1二玉は3二角成だ。
 先手勝ち。

研究2六香図Y9
 今の手順の途中、先手が1四歩としたときに、同歩 と取らず、7八と(図)を選択した場合。
 1三歩成、同香、同香成、同桂、1四歩(次の図)

研究2六香図Y10
 この1四歩(図)は、1三歩成、同玉、1四銀、同玉、3二角成以下の“詰めろ”になっている。
 なので、後手は、7七歩成、9七玉に、ここで1二歩と受ける。
 以下、1三歩成、同歩、1五桂(2三香、同桂、同桂成、1五桂以下詰めろ)、1四歩、5二飛成(次の図)

研究2六香図Y11
 この図は、2三香以下、“詰めろ”になっている。 5二同歩も、2三香、同桂、3二角成以下の詰み。
 先手勝ちがはっきりした。

研究2六香図Y1(再掲)
 これで、「3一桂 には、2三香成で先手が勝てる」と示すことができた。
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