ID物語

書きなぐりSF小説

第17話。銀将登場。27. 水族館、4日目午後、暗殺隊

2009-11-10 | Weblog
 (4カ月前からID社情報収集部に押しかけている学生、原田桂(ケイマ)。その姉、原田銀(ギン)は、志摩と同じ学部学科の同級生。卒論のテーマを探していたところ、自動人形の水中での動作に興味を持ち、志摩と鈴鹿と、そしてケイマまで共同研究者にして調査することに。準備しているうちに話が大きくなり、亜有と虎之介が合流。大学の付属水族館で予備調査をする。でも今は大学から要請された、自動人形のショーの真っ最中。)

 (午後もイルカのショーのあとに自動人形のショーがある。それを2回。明日も同じだ。観客は、スーツ姿はまばらになり、スパイどもは消えた。親子連れが多いのだが、高校生や大学生も来ている。ロボットを見るためだ。しかし、イルカも大好き。今度はまともに歓声が沸く。飼育係も乗ってきた。演技に力が入る。休憩に入った。観客の一部が入れ替わる。)

原田。イルカも観客が乗ってきているのが分かるみたい。

原田銀。飼育係の様子で分かるんでしょう。頭がいいから。

鈴鹿。あら、あそこ、久保田教授かな。

原田銀。うあ、あれでお忍びのつもり。派手なアロハシャツ着て。

鈴鹿(通信機)。奈良さん、久保田教授がいらっしゃってるみたい。

奈良。そうか。行ってみる。

鈴鹿。さっき要人のいた付近で、アロハシャツ着ている。

奈良。分かった。知らせてくれて、ありがとう。

志摩。観測用飛行船とか、まだ飛んでいたっけ。

伊勢。交代させましょう。

原田。もう要人は帰りました。

志摩。相手方が帰ったと分かっているかどうかは分からない。

原田。腹いせに攻撃してくるとか。何よそれ、意味のない殺傷。そんなことあり得るの?。

志摩。念のためさ。たしかに考えすぎかもしれない。

原田。念のためって。

伊勢。まあ、仮定よ。相手がいたとして、攻撃用武器は持っているでしょ?。

原田。当然。

伊勢。ところが、午前の警備は厳重で蟻の這い入る隙もない。

原田。這い出るじゃなかったっけ。

伊勢。同じ意味よ。で、お昼のためか、警備が薄くなった。

原田。なによそれ。A国軍がそんな間抜けなことするわけないじゃない。

伊勢。その常識が通じればいいんだけど。

原田。無駄足でも、特にこちらとしては負担が増えるわけではない。

伊勢。そう。それだけ。

芦屋。その間抜けが来たみたいだ。

原田。え、どこどこ。

 (虎之介、鈴鹿、志摩はすっと会場に向かう。伊勢は舞台に出てまともに分子シンセサイザーを構えている。志摩らの制止が失敗したら、容赦なく発動させるつもりだ。A31はとててとやってきた。久保田教授を取り囲む算段だ。)

奈良。久保田教授、ようこそおいでくださいました。

久保田。奈良さん。何かあったのですか。

奈良。今のところはまだ。

 (私は久保田教授の隣に座る。逆の隣にはアンが、後ろにはタロとジロ。クロは教授の膝に乗って甘える動作をする。)

久保田。こちらのロボットはアンでしたか。

アン。はい。そうです。アンです。おじゃまします。

久保田。不思議だ。遠くから見ると絶世の美女なのに、寄り添われると安心感の方が高くなる。

アン。そのように設計されているようです。成功。

 (で、要注意人物は2人。左右からさりげなくこちらにやってくる。何でかは知らぬが、久保田教授を要人と勘違いしているらしい。武器は、拳銃と手榴弾。横から虎之介と志摩が、前から鈴鹿が近づく。虎之介が手を出した。)

芦屋。もしもし、背中に白い物が付いていますよ。

 (まるでちんけなスリみたいなこと言っている。もちろん、相手はプロ。そんなのに引っかかるわけない。なので、虎之介はわざとらしく演技。)

芦屋。もしもーし。

 (と左腕を強烈につかむ。さすがに振り向いた。)

男1。何しやがる。この野郎。

芦屋。だから、背中に白い物が。

男1。離さんか。

芦屋。何を。

男1。とぼけやがってこのー。

 (男は懐に腕を突っ込む。とたんに閃光があたりを包む。鈴鹿と私とアンがLS砲を発動させたのだ。虎之介と志摩は男を殴り倒す。タロとジロは念のために鎮静剤を打つ。わざとらしく、介抱する。)

芦屋。どうしました。いけない、気を失っている。タロ、医務室に運ぶんだ。

タロ。了解。

 (虎之介とタロで男を抱えて退場。こちらでは志摩とジロが同じことをしている。退場。)

久保田。今、何か光った。物がよく見えない。

奈良。ええ、そのようです。

 (周りの人間も目をこすっている。しばらくして、パトカーのサイレンが鳴ったのだが、だれも気付かなかったようだ。ぎりぎり出演には間に合った。)

原田。何だったの、今の。何か光った。まだ目が見えにくい。

伊勢。そうね。光ったみたい。

原田。何か仕掛けた。

伊勢。仕掛けたって、言うわけないじゃない。さあさ、演技ですよ。

原田。もう、すっとぼけて。ふーむ、会場には異常はなさそう。まあ、いいか。

 (館長のあいさつから。さっきの光では異常はなかったことを説明。って、説明になっていないが、強引に押し通してしまった。志摩が解説。今度は高校生らがしっかり聞いている。そして、演技。やはり自動人形のジャンプでは拍手喝采。久保田教授まで感心している。)

久保田。大変な制御だ。素人の私でも分かる。それに、推進器の出力の高いこと。さすがにプロ用だ。うーん、何かに活用したい。

奈良。外洋でですか?。

久保田。そう。母船が必要だ。我が大学には実習船はあるけど、本格的な調査は無理。どうするかな。

奈良。もしご関心があるのなら、ID社で揃えられるかどうか見てみます。

久保田。信じ難い価格のおまけ付き。

奈良。調べるだけです。志摩たちに見積もらせれば、とことん調べて無料。

久保田。そうしてみますか。あとで彼らと相談します。

 (第二幕の始まり。そして、チャリティー。高校生らは行列して絵を買っている。つられて、親子連れも。)

久保田。ああ、良かった。私は帰ります。解説、ありがとうございました。

奈良。駐車場まで送ります。

久保田。いえいえ、大丈夫ですよ。

奈良(通信機)。ケイコ、来てくれ。

ケイコ。来ました。ご用件をうかがいます。

奈良。教授を自家用車までお送りしろ。

ケイコ。ハイ分かりました。教授、お供します。

久保田。まあいいか。お言葉に甘えるよ。

 (久保田教授を無事に送り出しておしまい。)

芦屋。もう来ないだろうな。

鈴鹿。一応、観測機は飛ばしておく。

原田銀。久保田教授なら、ほっとかれても大丈夫よ。お構いなく。

芦屋。いやそういう話では…。

鈴鹿。とにかく無事にすんだんだからいいじゃない。

原田銀。何の話よ。

志摩。要人の警護の件。もうこりごり。

原田銀。武器を持ち込んでいたみたいね。

志摩。当然、そうだよ。シークレットサービスの目つきなんか、尋常ではなかった。

原田銀。肩透かし。

志摩。うん。

原田銀。万一の場合は、ここでどんぱちしたのかしら。

志摩。当然、そうなる。けが人続出。

原田銀。あなおそろし。シークレットサービスも役立ったのかな。

志摩。そもそも来ない方がいい。

原田銀。そういう意味か。たしかにね。なんでわざわざ親子連れで賑わう水族館なんかに来たのかな。

原田。ケイコを見に来たみたい。

原田銀。それだけ?。

原田。スカウトされた。さっき、ケイコから聞いた。

原田銀。スカウトって、連れて行くの?。

原田。そう。明日の夕方。最後の演技が終わってからケイコはA国へ。あの要人が、すっかり気に入ったみたい。

芦屋。それじゃあ、また要人が来るのか?。

原田。来そうな気がする。

志摩。今度はどうやってくるのかな。

芦屋。調べておくか。

原田。調べるってどうするのよ。

芦屋。ID社の情報網が何かつかんでいるかどうか、確認するってこと。

鈴鹿。あと、永田さんにも。

原田銀。みなさん、よく平気。ケイコとは当分会えないかも。

志摩。今夜だけか。お別れ会の機会は。

原田銀。やっておきましょう。

 (3回目の公演も無事に終了。親子連れも高校生もいた。満足してもらったようだ。)


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