(4カ月前からID社情報収集部に押しかけている学生、原田桂(ケイマ)。その姉、原田銀(ギン)は、志摩と同じ学部学科の同級生。卒論のテーマを探していたところ、自動人形の水中での動作に興味を持ち、志摩と鈴鹿と、そしてケイマまで共同研究者にして調査することに。準備しているうちに話が大きくなり、亜有と虎之介が合流。大学の付属水族館で予備調査をする。でも今は大学から要請された、自動人形のショーの真っ最中。)
(午後もイルカのショーのあとに自動人形のショーがある。それを2回。明日も同じだ。観客は、スーツ姿はまばらになり、スパイどもは消えた。親子連れが多いのだが、高校生や大学生も来ている。ロボットを見るためだ。しかし、イルカも大好き。今度はまともに歓声が沸く。飼育係も乗ってきた。演技に力が入る。休憩に入った。観客の一部が入れ替わる。)
原田。イルカも観客が乗ってきているのが分かるみたい。
原田銀。飼育係の様子で分かるんでしょう。頭がいいから。
鈴鹿。あら、あそこ、久保田教授かな。
原田銀。うあ、あれでお忍びのつもり。派手なアロハシャツ着て。
鈴鹿(通信機)。奈良さん、久保田教授がいらっしゃってるみたい。
奈良。そうか。行ってみる。
鈴鹿。さっき要人のいた付近で、アロハシャツ着ている。
奈良。分かった。知らせてくれて、ありがとう。
志摩。観測用飛行船とか、まだ飛んでいたっけ。
伊勢。交代させましょう。
原田。もう要人は帰りました。
志摩。相手方が帰ったと分かっているかどうかは分からない。
原田。腹いせに攻撃してくるとか。何よそれ、意味のない殺傷。そんなことあり得るの?。
志摩。念のためさ。たしかに考えすぎかもしれない。
原田。念のためって。
伊勢。まあ、仮定よ。相手がいたとして、攻撃用武器は持っているでしょ?。
原田。当然。
伊勢。ところが、午前の警備は厳重で蟻の這い入る隙もない。
原田。這い出るじゃなかったっけ。
伊勢。同じ意味よ。で、お昼のためか、警備が薄くなった。
原田。なによそれ。A国軍がそんな間抜けなことするわけないじゃない。
伊勢。その常識が通じればいいんだけど。
原田。無駄足でも、特にこちらとしては負担が増えるわけではない。
伊勢。そう。それだけ。
芦屋。その間抜けが来たみたいだ。
原田。え、どこどこ。
(虎之介、鈴鹿、志摩はすっと会場に向かう。伊勢は舞台に出てまともに分子シンセサイザーを構えている。志摩らの制止が失敗したら、容赦なく発動させるつもりだ。A31はとててとやってきた。久保田教授を取り囲む算段だ。)
奈良。久保田教授、ようこそおいでくださいました。
久保田。奈良さん。何かあったのですか。
奈良。今のところはまだ。
(私は久保田教授の隣に座る。逆の隣にはアンが、後ろにはタロとジロ。クロは教授の膝に乗って甘える動作をする。)
久保田。こちらのロボットはアンでしたか。
アン。はい。そうです。アンです。おじゃまします。
久保田。不思議だ。遠くから見ると絶世の美女なのに、寄り添われると安心感の方が高くなる。
アン。そのように設計されているようです。成功。
(で、要注意人物は2人。左右からさりげなくこちらにやってくる。何でかは知らぬが、久保田教授を要人と勘違いしているらしい。武器は、拳銃と手榴弾。横から虎之介と志摩が、前から鈴鹿が近づく。虎之介が手を出した。)
芦屋。もしもし、背中に白い物が付いていますよ。
(まるでちんけなスリみたいなこと言っている。もちろん、相手はプロ。そんなのに引っかかるわけない。なので、虎之介はわざとらしく演技。)
芦屋。もしもーし。
(と左腕を強烈につかむ。さすがに振り向いた。)
男1。何しやがる。この野郎。
芦屋。だから、背中に白い物が。
男1。離さんか。
芦屋。何を。
男1。とぼけやがってこのー。
(男は懐に腕を突っ込む。とたんに閃光があたりを包む。鈴鹿と私とアンがLS砲を発動させたのだ。虎之介と志摩は男を殴り倒す。タロとジロは念のために鎮静剤を打つ。わざとらしく、介抱する。)
芦屋。どうしました。いけない、気を失っている。タロ、医務室に運ぶんだ。
タロ。了解。
(虎之介とタロで男を抱えて退場。こちらでは志摩とジロが同じことをしている。退場。)
久保田。今、何か光った。物がよく見えない。
奈良。ええ、そのようです。
(周りの人間も目をこすっている。しばらくして、パトカーのサイレンが鳴ったのだが、だれも気付かなかったようだ。ぎりぎり出演には間に合った。)
原田。何だったの、今の。何か光った。まだ目が見えにくい。
伊勢。そうね。光ったみたい。
原田。何か仕掛けた。
伊勢。仕掛けたって、言うわけないじゃない。さあさ、演技ですよ。
原田。もう、すっとぼけて。ふーむ、会場には異常はなさそう。まあ、いいか。
(館長のあいさつから。さっきの光では異常はなかったことを説明。って、説明になっていないが、強引に押し通してしまった。志摩が解説。今度は高校生らがしっかり聞いている。そして、演技。やはり自動人形のジャンプでは拍手喝采。久保田教授まで感心している。)
久保田。大変な制御だ。素人の私でも分かる。それに、推進器の出力の高いこと。さすがにプロ用だ。うーん、何かに活用したい。
奈良。外洋でですか?。
久保田。そう。母船が必要だ。我が大学には実習船はあるけど、本格的な調査は無理。どうするかな。
奈良。もしご関心があるのなら、ID社で揃えられるかどうか見てみます。
久保田。信じ難い価格のおまけ付き。
奈良。調べるだけです。志摩たちに見積もらせれば、とことん調べて無料。
久保田。そうしてみますか。あとで彼らと相談します。
(第二幕の始まり。そして、チャリティー。高校生らは行列して絵を買っている。つられて、親子連れも。)
久保田。ああ、良かった。私は帰ります。解説、ありがとうございました。
奈良。駐車場まで送ります。
久保田。いえいえ、大丈夫ですよ。
奈良(通信機)。ケイコ、来てくれ。
ケイコ。来ました。ご用件をうかがいます。
奈良。教授を自家用車までお送りしろ。
ケイコ。ハイ分かりました。教授、お供します。
久保田。まあいいか。お言葉に甘えるよ。
(久保田教授を無事に送り出しておしまい。)
芦屋。もう来ないだろうな。
鈴鹿。一応、観測機は飛ばしておく。
原田銀。久保田教授なら、ほっとかれても大丈夫よ。お構いなく。
芦屋。いやそういう話では…。
鈴鹿。とにかく無事にすんだんだからいいじゃない。
原田銀。何の話よ。
志摩。要人の警護の件。もうこりごり。
原田銀。武器を持ち込んでいたみたいね。
志摩。当然、そうだよ。シークレットサービスの目つきなんか、尋常ではなかった。
原田銀。肩透かし。
志摩。うん。
原田銀。万一の場合は、ここでどんぱちしたのかしら。
志摩。当然、そうなる。けが人続出。
原田銀。あなおそろし。シークレットサービスも役立ったのかな。
志摩。そもそも来ない方がいい。
原田銀。そういう意味か。たしかにね。なんでわざわざ親子連れで賑わう水族館なんかに来たのかな。
原田。ケイコを見に来たみたい。
原田銀。それだけ?。
原田。スカウトされた。さっき、ケイコから聞いた。
原田銀。スカウトって、連れて行くの?。
原田。そう。明日の夕方。最後の演技が終わってからケイコはA国へ。あの要人が、すっかり気に入ったみたい。
芦屋。それじゃあ、また要人が来るのか?。
原田。来そうな気がする。
志摩。今度はどうやってくるのかな。
芦屋。調べておくか。
原田。調べるってどうするのよ。
芦屋。ID社の情報網が何かつかんでいるかどうか、確認するってこと。
鈴鹿。あと、永田さんにも。
原田銀。みなさん、よく平気。ケイコとは当分会えないかも。
志摩。今夜だけか。お別れ会の機会は。
原田銀。やっておきましょう。
(3回目の公演も無事に終了。親子連れも高校生もいた。満足してもらったようだ。)
(午後もイルカのショーのあとに自動人形のショーがある。それを2回。明日も同じだ。観客は、スーツ姿はまばらになり、スパイどもは消えた。親子連れが多いのだが、高校生や大学生も来ている。ロボットを見るためだ。しかし、イルカも大好き。今度はまともに歓声が沸く。飼育係も乗ってきた。演技に力が入る。休憩に入った。観客の一部が入れ替わる。)
原田。イルカも観客が乗ってきているのが分かるみたい。
原田銀。飼育係の様子で分かるんでしょう。頭がいいから。
鈴鹿。あら、あそこ、久保田教授かな。
原田銀。うあ、あれでお忍びのつもり。派手なアロハシャツ着て。
鈴鹿(通信機)。奈良さん、久保田教授がいらっしゃってるみたい。
奈良。そうか。行ってみる。
鈴鹿。さっき要人のいた付近で、アロハシャツ着ている。
奈良。分かった。知らせてくれて、ありがとう。
志摩。観測用飛行船とか、まだ飛んでいたっけ。
伊勢。交代させましょう。
原田。もう要人は帰りました。
志摩。相手方が帰ったと分かっているかどうかは分からない。
原田。腹いせに攻撃してくるとか。何よそれ、意味のない殺傷。そんなことあり得るの?。
志摩。念のためさ。たしかに考えすぎかもしれない。
原田。念のためって。
伊勢。まあ、仮定よ。相手がいたとして、攻撃用武器は持っているでしょ?。
原田。当然。
伊勢。ところが、午前の警備は厳重で蟻の這い入る隙もない。
原田。這い出るじゃなかったっけ。
伊勢。同じ意味よ。で、お昼のためか、警備が薄くなった。
原田。なによそれ。A国軍がそんな間抜けなことするわけないじゃない。
伊勢。その常識が通じればいいんだけど。
原田。無駄足でも、特にこちらとしては負担が増えるわけではない。
伊勢。そう。それだけ。
芦屋。その間抜けが来たみたいだ。
原田。え、どこどこ。
(虎之介、鈴鹿、志摩はすっと会場に向かう。伊勢は舞台に出てまともに分子シンセサイザーを構えている。志摩らの制止が失敗したら、容赦なく発動させるつもりだ。A31はとててとやってきた。久保田教授を取り囲む算段だ。)
奈良。久保田教授、ようこそおいでくださいました。
久保田。奈良さん。何かあったのですか。
奈良。今のところはまだ。
(私は久保田教授の隣に座る。逆の隣にはアンが、後ろにはタロとジロ。クロは教授の膝に乗って甘える動作をする。)
久保田。こちらのロボットはアンでしたか。
アン。はい。そうです。アンです。おじゃまします。
久保田。不思議だ。遠くから見ると絶世の美女なのに、寄り添われると安心感の方が高くなる。
アン。そのように設計されているようです。成功。
(で、要注意人物は2人。左右からさりげなくこちらにやってくる。何でかは知らぬが、久保田教授を要人と勘違いしているらしい。武器は、拳銃と手榴弾。横から虎之介と志摩が、前から鈴鹿が近づく。虎之介が手を出した。)
芦屋。もしもし、背中に白い物が付いていますよ。
(まるでちんけなスリみたいなこと言っている。もちろん、相手はプロ。そんなのに引っかかるわけない。なので、虎之介はわざとらしく演技。)
芦屋。もしもーし。
(と左腕を強烈につかむ。さすがに振り向いた。)
男1。何しやがる。この野郎。
芦屋。だから、背中に白い物が。
男1。離さんか。
芦屋。何を。
男1。とぼけやがってこのー。
(男は懐に腕を突っ込む。とたんに閃光があたりを包む。鈴鹿と私とアンがLS砲を発動させたのだ。虎之介と志摩は男を殴り倒す。タロとジロは念のために鎮静剤を打つ。わざとらしく、介抱する。)
芦屋。どうしました。いけない、気を失っている。タロ、医務室に運ぶんだ。
タロ。了解。
(虎之介とタロで男を抱えて退場。こちらでは志摩とジロが同じことをしている。退場。)
久保田。今、何か光った。物がよく見えない。
奈良。ええ、そのようです。
(周りの人間も目をこすっている。しばらくして、パトカーのサイレンが鳴ったのだが、だれも気付かなかったようだ。ぎりぎり出演には間に合った。)
原田。何だったの、今の。何か光った。まだ目が見えにくい。
伊勢。そうね。光ったみたい。
原田。何か仕掛けた。
伊勢。仕掛けたって、言うわけないじゃない。さあさ、演技ですよ。
原田。もう、すっとぼけて。ふーむ、会場には異常はなさそう。まあ、いいか。
(館長のあいさつから。さっきの光では異常はなかったことを説明。って、説明になっていないが、強引に押し通してしまった。志摩が解説。今度は高校生らがしっかり聞いている。そして、演技。やはり自動人形のジャンプでは拍手喝采。久保田教授まで感心している。)
久保田。大変な制御だ。素人の私でも分かる。それに、推進器の出力の高いこと。さすがにプロ用だ。うーん、何かに活用したい。
奈良。外洋でですか?。
久保田。そう。母船が必要だ。我が大学には実習船はあるけど、本格的な調査は無理。どうするかな。
奈良。もしご関心があるのなら、ID社で揃えられるかどうか見てみます。
久保田。信じ難い価格のおまけ付き。
奈良。調べるだけです。志摩たちに見積もらせれば、とことん調べて無料。
久保田。そうしてみますか。あとで彼らと相談します。
(第二幕の始まり。そして、チャリティー。高校生らは行列して絵を買っている。つられて、親子連れも。)
久保田。ああ、良かった。私は帰ります。解説、ありがとうございました。
奈良。駐車場まで送ります。
久保田。いえいえ、大丈夫ですよ。
奈良(通信機)。ケイコ、来てくれ。
ケイコ。来ました。ご用件をうかがいます。
奈良。教授を自家用車までお送りしろ。
ケイコ。ハイ分かりました。教授、お供します。
久保田。まあいいか。お言葉に甘えるよ。
(久保田教授を無事に送り出しておしまい。)
芦屋。もう来ないだろうな。
鈴鹿。一応、観測機は飛ばしておく。
原田銀。久保田教授なら、ほっとかれても大丈夫よ。お構いなく。
芦屋。いやそういう話では…。
鈴鹿。とにかく無事にすんだんだからいいじゃない。
原田銀。何の話よ。
志摩。要人の警護の件。もうこりごり。
原田銀。武器を持ち込んでいたみたいね。
志摩。当然、そうだよ。シークレットサービスの目つきなんか、尋常ではなかった。
原田銀。肩透かし。
志摩。うん。
原田銀。万一の場合は、ここでどんぱちしたのかしら。
志摩。当然、そうなる。けが人続出。
原田銀。あなおそろし。シークレットサービスも役立ったのかな。
志摩。そもそも来ない方がいい。
原田銀。そういう意味か。たしかにね。なんでわざわざ親子連れで賑わう水族館なんかに来たのかな。
原田。ケイコを見に来たみたい。
原田銀。それだけ?。
原田。スカウトされた。さっき、ケイコから聞いた。
原田銀。スカウトって、連れて行くの?。
原田。そう。明日の夕方。最後の演技が終わってからケイコはA国へ。あの要人が、すっかり気に入ったみたい。
芦屋。それじゃあ、また要人が来るのか?。
原田。来そうな気がする。
志摩。今度はどうやってくるのかな。
芦屋。調べておくか。
原田。調べるってどうするのよ。
芦屋。ID社の情報網が何かつかんでいるかどうか、確認するってこと。
鈴鹿。あと、永田さんにも。
原田銀。みなさん、よく平気。ケイコとは当分会えないかも。
志摩。今夜だけか。お別れ会の機会は。
原田銀。やっておきましょう。
(3回目の公演も無事に終了。親子連れも高校生もいた。満足してもらったようだ。)