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「金融が支える日本経済(櫻川昌哉 宿輪純一)」という本はとてもオススメ!

2015年07月03日 01時00分00秒 | 
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 「金融が支える日本経済」という本は、慶應義塾大学教授の櫻川昌哉氏と帝京大学教授で慶應義塾大学非常勤講師の宿輪純一氏の共著で、現在の日本の経済政策が短期的で市場機能・競争原理・新陳代謝が低下する内容で問題であること、また長期的な経済成長のために何が必要かについて分かりやすく説明があります。

 そのほかドイツ・米国・北欧の事例、日本の政治制度の問題やAIIB、また日本の何が悪いのか、ROE向上、法人税の課題、円国際化などについても分かりやすく説明があり、日本や国際経済について理解を深める内容となっています。

 特にAIIBの問題など、最新の情報に触れられているのは素晴らしいと思いましたね。

 現状の日本経済や今後の日本のあるべき姿について考えさせられ、「金融が支える日本経済」という本は、とてもオススメです!

以下はこの本のポイント等です。

・日本の政府総債務残高(政府の累積赤字)約1200兆円の約4割はこの10年で増加したものである。もちろん年金や医療の社会保障の穴埋めもあるが、公共投資もその一因であり、それでも景気はよくならなかった。つまり、公共投資で経済に本当に効果があるのは、新興国・途上国の段階である。公共投資で新たにつくられたインフラが使われ、それによって経済がさらに発展する場合である。日本でも昭和30年代後半から40年代後半ぐらいまでの高度成長期は、オリンピックを契機として、新幹線や高速道路といったインフラが初めてつくられていった。新幹線は国内の資金では足らず、現在の新興国と同様世界銀行から資金を借りて1964年に開業した。日本ではインフラがほぼ整備されていることもあり、結果として中長期的な効果が低い。また効果が高ければ景気回復しているはずである。つまり、新興国と比べて、先進国の公共投資は短期間で効き目が少ないのである。オリンピックも新興国が行うべきではないか。2020年の東京オリンピックも日本国民とすると、お祭りであり、楽しみではあるが、その経済効果には不安を持つ。最近ではオリンピックを行った国の経済はよくならず借金が残る展開が多く、オリンピック開催希望に対する人気が落ちてきている。先進国とオリンピックとの関係では、株価でみると、オリンピック開催の半年前にピークを迎え、その後は下落するパターンがあるといわれている。これはサッカーのワールドカップでも一緒である。新興国のブラジルですら、2014年のワールドカップの後は、財政悪化と不景気に喘いでいる。2016年のリオデジャデネイロ・オリンピックに対しては、その反省を踏まえ波及効果の信憑性が疑われている。しかも、残ったインフラの問題がありさらに景気を悪化させる可能性がある。

・今回の量的金融緩和によって、米国ドルの量は約8000億ドルから約4兆ドルと、”5倍”に増えている。これは米国のGDPの約2割に当たる(日本円の量はGDPの7割にもなっている)。これだけ入れて、インフレ率が上がらない理由は、そもそも基軸通貨ドルが海外に流れていること、インフレ・ターゲットの目標は、実体経済の一部をなしているCPIで、そもそも実体経済は成熟しており資金を必要としていないことなどによる。さらにトマ・ピケティ教授もいっているように、実体経済ではなく、金融資産市場に資金が流れ込んで資産価格を上昇させている。つまり、先進国では実体経済は成熟しているため、そもそも物価(CPI)は上がりにくい傾向がある。

・米国は資産効果が効きやすい。それは株式等の資産を国民が広く保有しているからである。日本ではそもそも米国より消費性向が低い。さらに「貯蓄から投資へ」とのかけ声もあるように、資産の保有が富裕層に傾いており、たとえば株式の保有が少ない。そのため資産価格の上昇が消費の増加に結びつきにくいのである。

・アベノミクス前の日本銀行は長期金利のコントロールのため、市中から国債を買い取っておカネを供給する「国債買い取り(買いオペ)」を実施していた。その額の上限を定めたのが「日銀券(銀行券)」ルール」である。日銀(日本銀行)券とは、いわゆるお札のこと。日銀の内部ルールとして、保有する長期国債の額を市中に出回るお札の発行残高以下に抑えるよう定めていた。中央銀行が無尽蔵に国債を買い増すと、財政赤字の穴埋め、いわゆる「財政ファイナンス」となる。日本の量的金融緩和は、状況的にそう判断できる可能性が高い。中央銀行の信任が落ち、市場参加者が急激なインフレや財政破綻に対する警戒感を強めれば、長期金利は急上昇しかねない。そのため日銀は、保有する長期国債の残高は、世間に流通するお札の総額である日銀券発行残高を上限とする、という内部ルールを掲げていたのである。この規律もアベノミクスで一時適用停止された。これも過去の学習を断ち切ったわけである。

・実は、インフレになって嬉しいのは資産を保有している人だけではない。「負の資産」を保有している人も恩恵を受ける。インフレになると、いわゆる「借金」の価格は、物価に対して相対的に目減りすることになる。物価が上がるとお米の価格と同じで目減りしていく訳である。つまり「借金を保有する人」がインフレの利益を享受することができるのである。借金の額が大きい人ほどその利益は大きい。そして、日本で最も借金をしているのは、他ならぬ、日本どころか世界一の借金をしている「日本政府」なのである。経済問題の検討をするときに、過去の事例や歴史を解析することは非常に大事である。実際、財政赤字の問題も、歳出制限と増税は当然行わなければならないが、最も効果があったのはインフレ誘導なのである。たとえば、現在、日本のGDP対比の累積財政赤字(政府総債務残高)は200%を超え、約250%となっている。実はこのような高い比率になった国は過去にも結構あった。他ならぬ英国やフランスもそうであった。第二次世界大戦後の英国とフランスは200%以上の借金を抱えていたが、戦後の5%を超えるインフレによりみるみる目減りしていった。特にフランスは主たる戦場であったただけに、混乱の中のインフレ率は高かった。たとえば、5%で物価上昇をしていく場合、10年で借金は約6割に目減りする。これで借金返済は随分楽になる。今回の量的金融緩和の目標である2%でも10年で約8割に目減りする。それでも随分返済は楽になる。インフレで持たざる国民の生活が楽にならない以上、これがインフレ・ターゲットの主たる目的ではないかとも考えられる。

・現在、一番、中央銀行らしいのはECB(欧州中央銀行)である。ECBの金融政策に関する考え方や法律は、基本的にはドイツの中央銀行であるブンデスバンクのものを引き継いでいる。その中央銀行法に書いてあるECBの目的は唯一、物価の安定=物価上昇率を2%に保つことのみである。この2%という数字も中央銀行法に書いてある。そもそもは、欧州でも、他の先進国でもそうであるが、以前は発展途上で、インフレ率が高く、インフレを抑えるための目標だった。最近では、状況としてそもそものベースのインフレ率が下がってきており、逆にインフレを促進する目標となっている。ECBの目的は、物価安定だけなので、本来は景気には配慮することはない。しかし、現在は政治的な圧力で、景気に対する配慮として、”対応”せざるを得なくなっている。

・FRBはずいぶん違う。FRBとは正確には、米国の中央銀行制度であるFRSの最高意思決定機関のことである。ちなみに、FRBの下に位置するのが12の地区連邦準備銀行である。米国はそもそもは地区連邦準備銀行が設立され、その後、統合されていったのである。そのため、日本などと比べてそれぞれの地区連銀の力が強い。ちなみに金融政策(公開市場操作)を決定するのが「FMOC」である。さて、そのFRBであるが、その目的として、中央銀行の基本である「物価の安定」はもちろん、同格として「雇用の最大化」の二つがある。これは中央銀行としてはきわめて珍しい。FRBのトップである議長は現在、ジャネット・イエレン博士でニューヨーク・ブルックリン生まれの労働経済学の専門家である。博士論文は失業・賃金と景気の関係であった。FRBの金融政策は世界の金融市場への影響力がきわめて大きい、というか、その主体である。そのトップが金融の専門家ではなくて、労働経済学の専門家であるところがいかにもFRBというか、米国らしい。大恐慌のトラウマの影響もあり、それだけ景気指標である雇用を重視しているのである。雇用は、政治への影響も大きい指標である。

・日本銀行であるが、日本銀行法では、当然のことながら、目的に物価の安定がある。それに加え「政府の経済政策の基本方針と整合的なもの」であるという、半分だけ景気に配慮するような表現になっている。最近の阿倍政権の経済政策では、整合的というか、日銀の金融政策がメインの景気対策となっているような感もある。

・ECBであるが、出資は各国の中央銀行から募っている。それは人口とGDPのEU全体に占めるシェアを、半々に勘案して決められている。FRBは実は私企業であり、政府は”一切”出資していない。金融機関が出資者(株式の所有者)となっている。つまり、日本でいうと全国銀行協会のようなものであろうか。これはかなり特徴的である。日本銀行の資本金は55%が政府から、45%が民間からの出資となっている。また、日本銀行に対する出資の持ち分を表す有価証券のことを、「出資証券」といい、日本銀行の出資の権利は、議決権がないなど会社法の株式会社における株主の権利と異なっている。

・1932年の予算で、日本は初の赤字国債を、日銀引き受けにより発行した。第二次世界大戦後の46年まで継続し、戦後のハイパーインフレの原因となった。第二次世界大戦終戦を迎え、戦時公債の残高は現在の価値で約500兆円となった。46年に政府は預金を封鎖し、国債が紙くずとなり、旧円は使用禁止となって、引き出しを制限された。また、財産強制を申告させ、財産税を徴収し、国民財産を没収したのである。国家の累積債務の処理とすると、ハイパーインフレで吸収するか、増税するか、デフォルトで支払不能にするしかない。もちろん経済成長で税収が大幅に増加すれば話は別である。

・リスクが高まると、安全で信用度の高い金融商品に投資マネーは動くことになる。通貨の中では、新興国通貨から先進国通貨で、先進国通貨の中でも日本円となっている。金融商品では株式よりも国債で、また通貨かた金や商品(原油)などに流れる。

・ドイツにとっての一番の悲劇は、なんといっても国土も国民も荒廃した第二次世界大戦であり、その原因はナチスの台頭であった。ナチスの台頭の原因となったのは、1兆%ともいわれてたハイパーインフレによって社会が乱れたことであるので、インフレを起こさないことが、社会の安定をもたらす最も大事な経済政策であるとのことであった。インフレとは通貨の価値を落とすことであり、それを最も忌み嫌った。ドイツの経済政策には特徴がある。経済学でいうとフライブルク学派がベースになる。その特徴的な考え方は、通貨価値の維持(通貨の大量発行によるインフレと通貨安をしない)、国債を発行することにもなる財政政策は景気対策としてして使わない(景気対策は規制緩和によって企業中心に行う=構造改革)、”その場しのぎをせず”将来の成長を考える、というもの。この”その場しのぎをせず”というのが、最も大事ではないか。ドイツは連邦制国家であるせいもあるが、国土全般に工場を分散させて持っており、国内の生産体制を海外に安易に持っていくことなく堅持し、先進国の中でも珍しく製造業を主力産業としている。財政赤字も政府総債務残高(対GDP比)は約80%と先進国では低い。これは財政赤字、すなわち国債の安易な発行とそれとセットになった中央銀行の買い入れは、インフレをもたらすとの基本的な方針によるものである。2015年には財政黒字となる。産業にしても、ドイツの製品は以前より品質の良さで知られる。さらに当時のゲアハルト・シュレーダー首相が2003年に構造改革を実行した効果が出てきている。ドイツは90年に国家的事業として東西ドイツ統合を行った。結果的に財政赤字は莫大な額となり、景気の低迷が追い打ちをかけ、当時「欧州の病人」とまで呼ばれていた。彼は政治家としてのリスクを取って構造改革を進め、経済が欧州最強となる基盤をつくった。シュレーダー改革は痛みを伴う改革のため2005年の選挙で敗北、成果はアンゲラ・メルケル首相時代に花開き、強いドイツ企業が復活した。シュレーダー改革の柱は「アジェンダ2010」と名付けられた政策パッケージで雇用制度と社会保障改革、そして、職能訓練の拡充が中心だった。その後、ヨーロッパ域内で分業体制が進み、「製造業はドイツ」ということになった。さらに、最近では、「第4の産業革命」といわれる「インダストリー4.0」が進行中である。これはトヨタ方式の広域版ともいえる。「考える工場」といわれる工業のデジタル化を進めることにより、国家的に製造業を根本的に変え、製造コストを大幅に削減するプロジェクトである。これに成功すればさらに製造業は強くなる。

・米国は先進国でありながら、現在GDP(2014年)は、約2.4%増と高い。雇用の状況も失業率(2015年4月)が5.4%と改善が著しく、株価も好調であり、世界経済を引っ張っている。実は、先進国でありながら、人口が増加している。いわゆる白人の出生率は他の先進国と同じレベルであるが、ヒスパニック系出生率が高い。つまり、国内に新興国を持っているようなものである。さらに米国はヒスパニック系やアジア系の移民が毎年100万人もある。おカネの面でも、通貨ドルは基軸通貨であり、ニューヨークをはじめとした金融市場を保有している。つまり、世界から資金が集まる構造になっている。さらに、知識の面でも、以前でも、iPhoneなお、最近でも3Dプリンターやインターネット関係も含め、イノベーションの力は強い。経済的な特徴としては、そもそも消費性向が高い。GDPの構成は政府・法人・個人と分けて構成される。日本は政府:法人:個人が2:2:6であるが、米国はその個人が7割もある。さらに、米国民は株式のような運用型資産を保有している人が多く、それも関連して、資産価格が上昇すると消費等が活性化する資産効果も強い。米国にもトラウマがある。米国のFRBの政策担当者と話してみてわかったのは、米国の経済的なトラウマは「大恐慌」があった。大恐慌は株が大きく下落するバブル崩壊であった。そのため、米国は株価を落とさない=株価を上げる政策をベースとしている。株式は景気との関連が深く、FRBの使命(目標)に景気指標である雇用も入っている。

・北欧は、高福祉・高負担という印象が強いが、実際にはトータルでみた場合には、大学までの高等教育は無料であるし、年金制度がしっかりしているため、逆に預金は少なく(蓄える必要がない)、育児や福祉も進んでおり、国が使う教育費も上位で、国民の幸福度も上位を占める。産業政策のポイントは”市場原理”に基づいている。競争力のなくなった企業は淘汰され、政府は日本のように競争力を失った企業(ゾンビ企業)を救済し続けることはせず、「新産業」の育成に注力する。しかも、失業対策が充実しており、失業者も不安なく、新産業に移動できるのである。これは大変大事なことであり、実力ある人は安心し、また産業界も彼らを生かすことができるのである。

・構造改革を実行したとしよう。一般的に構造改革の成果が、たとえば実際に経済成長率が上がってくるのに、約3~4年かかる。しかも、構造改革を実行するときは、痛みを伴うものである。中央や地方でも政治は「政治家」によって行われる。彼らは「選挙」によって選抜される。政治家は落選した場合には、ただの人というか、無職になってしまう。これは避けたいのが、本音であろう。選挙の間隔(議員の任期)は、衆議院が4年(解散も結構ある)、参議院は6年、地方議員も4年である。とすると、構造改革を実施したとして、経済が強くなって、景気がよくなったとしても、辛い思いをする選挙人(住民)もいる。その場合、辛い目にあった人の方の声の方が社会的に大きい。とすると、頑張って構造改革を実施して経済構造が強くなり、景気がよくなったとしても、進めた議員は落選する確率も高くなる。しかも、その選挙までに、構造改革の効き目が出てこない場合には目も当てられない。ということならば、頑張って構造改革をする動機を失う可能性もある。それよりは、量的金融緩和政策のように、その場しのぎ・現状維持の政策を行う動機が強まる可能性がある。このような政策の特徴は、経済構造を変えずに”量的”に拡大させる。つまり、日本で構造改革が進まない要因は、このような政治的な”制度”の問題である可能性が高い。これは、個々の政治家の問題ではない。このような制度では、損失も考えてみると「行動経済学」的にも仕方ない、ということになる。制度設計の問題なのである。また、このような経済的に必要な原理を止める動きを「政治的配慮」という。つまり、現在の制度では、基本的に現状維持にならざるを得ないのである。ドイツのシュレーダー前首相が2003年から始めた構造改革「アジェンダ2010」は、「改革を断行することの方が、首相に再選されることよりも重要」とした。結果、彼は落選する。一般の政治家にこのようなことを求めるのは酷であろう。

・中国は世界第一位の貿易黒字国で、人民元の固定相場制の維持のために、大量に人民元売り・ドル買いの介入を継続し、外貨準備が約4兆ドルにもなっている。こちらも世界一位である(二位は日本で約2兆ドル)。米国はサブプライム危機、リーマン・ショックと立て続けに金融危機を起こし、量的金融緩和を始め、オバマ大統領の貿易倍増計画によって、ドル安への誘導政策を採用した。中国は自国の資産の防衛のために、米国にドル安政策の中止を求めたが却下された。世界経済の平均として使える通貨は、人工通貨であるがIMFのSDRしかない。SDRはドルとユーロとポンドと円から構成されるバスケット通貨というまさに象徴的な構成である。中国は人民元も入れるように求めたが、米国の強硬な反対(拒否権)で却下された。中国は中国人民銀行の周小川総裁の論文にもあったが、為替の安定を求めた。そのときに、中国は自分で組織をつくること、そして人民元を国際通貨・基軸通貨にすることを決心した模様である。基軸通貨になる時間を30年とした。AIIBは、「現代版マーシャルプラン」に当たる。アジアをはじめとして新興国ではインフラ資金は足りないのでニーズは強い。マーシャルプランでは米国主導の金融の仕組みと米ドルの基軸通貨をもたらした。中国はいままで弱かった国際金融の分野での発言権の拡大を求めている。中国は、親密国には、人民元の決済銀行としての中国の銀行(国営銀行)を置き、人民元の国際化も副次的に可能となる。

・日本銀行は、2013年以降、「デフレ克服」を目的に目標インフレ率を2%に定めて、量的緩和を実施している。前回(2001~2006年)に実施された量的緩和と異なり、短期国債だけでなく長期国債の購入に踏み切り、また規模も拡大していることから、「異次元緩和」あるいは「質的・量的緩和」と呼ばれている。ベースマネーは、緩和開始前の2013年の3月の段階の146兆円から、2015年2月には278兆円とほぼ倍増した。名目GDPは488兆円程度だから、GDP比で換算すれば、約57%にも達する。この値が尋常ではないことは、今回参考にしたとされるアメリカの経験と照らし合わせるとわかりやすい。アメリカでは、リーマン危機を受けて、2008年7月以降、大恐慌の再来を回避するために、3度にわたる大規模な量的緩和を実施している。ベースマネーは8000億ドルから3兆ドル強へと4倍弱に増加した。ベースマネーの大きさを4倍にしたといえば、大規模な量的緩和であったようにみえるが、元来がベースマネーの発行額が少ない国とあって、GDP比で換算すれば20%程度にすぎない。正常な経済における値はだいたい5~10%程度とされてきたから、50%を超える数字に、人々はいずれどこかでハイパーインフレが起きて、日本銀行券は紙くずになってしまうのではないかと恐れるのである。

・成長戦略の一環として、法人税減税が浮上している。国税と地方税を合算して計算された法人税率は、約35%で、アメリカと並んで世界で最も高い。欧州の各国は軒並み20%台に向けて法人税の現在を進めており、日本の企業は、これまで以上に、国際競争上不利な立場に立たされている。少なくとも20%台に引き下げるべきだという議論がもっと盛り上がってもいいものだが、残念なことに、伝え聞くところによると、現在、2年間で3.2%程度の規模の減税が議論されているらしい。たとえ35%が32%になったとしても、設備投資へのプラスの効果は微々たるものであろう。

・そもそも法人税とはいくつかの点で存在意義をみつけるのが難しい税である。まず、所得税、消費税、法人税の三大課税の中で、経済効率性の立場から最も望ましくないのが法人税である。特に、経済成長に対して大きな阻害要因となることが確認されている。法人税は資本所得への課税であり、企業の投資意欲を阻害するので、一国の資本蓄積と技術進歩を抑圧して、長期的な経済成長を阻害する。次に二重課税の問題がある。配当を支払う前の段階で法人税を課し、配当所得の段階でもう一度課税することになり、同じ所得に二度課税される。

・貿易の決済通貨として円が伸び悩んでいる以上、円の国際化は到底無理であると思うかもしれない。しかし、対外資産世界一という事実にも示されるように、海外に供給可能な資産は潤沢に保有している。昨今の国際取引では、1年間における世界の貿易総取引額は、1日の金融取引額にも満たないといわれる。つまり、貿易における決済比率の低さは、通貨の国際化を進めるうえではさして障害にならない。かつてのアメリカドルのような基軸通貨国を目指す必要はなく、為替リスクの軽減、金融業の生産性の向上、東京市場の国際金融センターとしての活性化を実現することを最終的なゴールとして、円の国際化を位置づければいい。そのためには、外国人にとって魅力的な円建て金融資産を供給できるかがカギを握っている。

・中国がアジア太平洋地域で経済の覇権を握るには、金融市場が脆弱であるという致命的な欠点をかかえているのである。中国は、脆弱な金融市場を抱えながらも、高貯蓄を牽引力として急速な成長を成し遂げた。言い換えれば、たとえGDPの高成長を実現したとしても、金融市場の弱さを克服しない限り、国際金融市場で主導的な立場になることは難しい。日本としては、中国の弱さを冷静に見極めることである。中国の急成長に恐れをなして、アジア太平洋地域は人民元の支配する日も遠くないと尻込みする意見もあるが、事態はそれほど単純ではないのである。日本は人民元を過度に恐れることなく、円の国際化を着実に進めていくべきなのである。近い将来、円と人民元の間で国際通貨競争を繰り広げる可能性は高いが、ガチンコの競争をすればいい。競争の結果、いずれの通貨が勝ち残るかもしれないし、円と元の間で共通通貨の話が持ち上がるかもしれない。中国は対外政策に慎重な態度をとる国であり、現実主義的な立場から長い時間をかけて勝負を挑んでくる。中国の外交方針は、「冷静に観察し」「足場を固めて」「沈着に対応し」「能力を隠して好機を待ち」「控えめさを保ち」「指導的地位を求めない」と述べられている。背景にはアヘン戦争に始まる2世紀にわたる屈辱の歴史を二度と繰り返したくないという強い思いがある。国際通貨の興亡は息の長い話である。アメリカのイギリスに対する経済的優位は、第一次世界大戦の直後にはすでに明らかであったが、アメリカが基軸通貨国の地位を確立するまでには、さらにもう一度の世界大戦を経る必要があった。中国との競争の中で、日本はゲームメーカーとしての真価が問われている。


良かった本まとめ(2015年上半期)

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