自衛隊の安全を考えている以上に安倍政権の安泰を守る様相の安保法制新任務と国会質疑の行方

2016-10-13 12:05:18 | 政治

 日本政府は「戦闘行為」を「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為を言い、国際的な武力紛争とは、国家又は国家に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争いを言う」と定義付けている。

 ブログに書いたが、2016年9月30日の衆議院予算委員会で民進党の後藤祐一が防衛相の右翼稲田朋美に対して現在自衛隊をPKO派遣している南スーダンでの大統領派の政府軍と副大統領派の反政府軍の武力衝突は「戦闘行為の状況にあるのか」と問い、稲田朋美は「戦闘行為」に関わる日本政府の定義を持ち出して、両派の衝突は国内の勢力間の争いで、国家又は国家に準ずる組織の間の争いではないから、戦闘行為に当たらないと答弁、その答弁に納得しない後藤祐一の間で同じ遣り取りを繰返す不毛な堂々巡りを演じることになった。

 要するに安倍政権は南スーダンでの紛争は国際的な性格のものではない、国内勢力間の争いだから、例えお互いに兵器を使用していても、そこで行われている争いは「戦闘行為」に当たらないとすることによって治安が危険な状況にあるわけでもなく、当然、リスクが高まっているわけでもないと南スーダンの現況を野党議員と共に国民に認識させようとしていることになる。

 と言うことは、国内勢力間の武力衝突は国際間の「戦闘行為」よりも危険は小さいし、治安への影響も少ない、自衛隊がそこで活動してもリスクは少ないと論理づけていることになる。

 だが、イラクでのイラク政府と在留米軍に対する過激派武装集団の反政府・反米テロは国内勢力間の争いに当たるが、なまじっかな国際的な武力紛争よりも激しい戦闘が行われ、且つ不特定多数を狙った大規模テロによって多人数の命が奪われる危険な治安状況にあるのだから、上記論理は必ずしも合理性を有しているとは言えない。

 もし在留米軍が関与しているから、イラクでの戦闘は国際的な武力紛争に相当するとするなら、南スーダンに於いても日本のみならずインド、ルワンダ、ネパール、エチオピア、中国、モンゴル、ケニア、ガーナ、バングラデシュ等がPKOとして関与していて、中国PKOに対する攻撃があり、中国軍は応戦しているのだから、国内勢力間の争いから外して、国際的な武力紛争としなけれがならなくなって、安倍晋三や稲田朋美が南スーダンでの衝突は国際紛争ではないから「戦闘行為」に当たらないとする論理そのものが破綻することになる。

 2016年10月11日の参院予算委員会での内政・外交の諸問題に関する集中審議でも民進党の大野元裕が稲田朋美に対して少し違った方向から南スーダンでの衝突は「戦闘行為」かどうか追及していたが、9月30日の衆議院予算委員会と同様、政府軍と反政府軍の衝突は政府の定義で言う「戦闘行為」に当たらないと、いわば危険な治安状況にはないという趣旨の同じ答弁を引き出すことしかできない不毛な質疑となっていた。

 その中で大野元裕は従来のPKOは緊急退避もしくは正当防衛のみ武器使用が認められたが、自衛隊が駆けつけ警護と宿営地が襲撃された場合に他の国の部隊と共に守る共同防護という新たしい任務を付与された場合、任務遂行型の武器使用となるから、リスクが上がるのではないのかと質問した。

 緊急退避もしくは正当防衛を目的とした武器使用は相手の攻撃を受けた後の受動的な武器使用を意味していて、任務遂行型武器使用は自己防衛のみならず、こちらから能動的に仕掛ける攻撃型の武器使用を意味することになる。

 稲田朋美「新たな任務を付与するかどうかは今後政府全体で決めることになります。今仮定のご質問だが、新平和安全法制、PKO駆けつけ警護ですが、緊急止むを得ない場合に情勢に応じて人道的観点から派遣している部隊が対応可能な限度に於いて行うものです。

 そういった意味で新たなリスクが高まるというのではなく、しっかりと安全を確保した上で派遣をすることになります。自衛隊の任務の実施に当たっては隊員の安全確保は重要です。そのためにしっかりと訓練をし、さらには新たな任務を付与するかどうかもしっかりと検討しているわけでございます」――

 要するに新たな任務に関わる訓練をしっかりと行った上で「対応可能な限度に於いて」駆けつけ警護や宿営地共同防護を行うからリスクは高まるわけではないとの趣旨の答弁である。

 だが、基地外でのパトロール中の襲撃や国連職員や民間NGOの職員、他国軍の兵士等が武装集団や反政府軍に襲撃されている最中の駆けつけ警護が「対応可能な限度」かどうか、どう判断するのだろうか。瞬時に判断できるのだろうか。

 判断に手間取ることになる場合、あるいは「対応可能な限度」を超えていると判断する場合は、その襲撃がより大規模で激しいときであろう。

 そういった場合、自分たちの安全だけを考えて、いわば襲撃を受けている国連職員や民間NGOの職員、他国軍の兵士等の安全を無視して、そのまま撤退するのだろうか。果たしてそのまま撤退できるのだろうか。

 もしそのように厳しく行動基準が決められているとしたら、自衛隊員の身の安全を守ることになって、結果的にリスクは高まらないと繰返していた国会答弁にウソはなかったことになり、ウソがあった場合の安倍政権に対する批判を免れることができるから、自衛隊員の身の安全を守ると同時に安倍政権の安泰を守るための行動基準でもあることになる。

 このことは安倍政権の安泰を守るために自衛隊員の身の安全を守るという逆もまた真なりの関係を築いていることになる。

 南スーダンの治安状況を各マスコミ記事から見てみる。

 南スーダンで活動する日本人47人が7月13日に民間チャーター機で隣国のケニアの首都ナイロビに退避している。

 南スーダンにとどまっている日本大使会員の治安状況が最悪化した場合の南スーダンからの脱出に備えて小牧基地を出発した航空自衛隊の3機のC130輸送機が南スーダンの首都ジュバの空港での駐機が難しいために日本時間の7月14日未明、ジブチ共和国に到着、待機して、治安状況の推移を見極めるとしている。

 南スーダンの首都ジュバの空港での駐機は襲撃される危険性を考慮して避けたということであろう。

 ジブチ共和国の空港に駐機していたうちの輸送機1機が7月14日に南スーダンの首都ジュバの空港に入り、日本大使館員4人をジブチに輸送、退避させている。

 国連安保理は8月12日、東アフリカ・南スーダンの治安回復に向けて現地の国連平和維持活動(PKO)への4000人規模の部隊増派を認める決議を採択した。

 追加派遣で陸上自衛隊の部隊約350人も参加、総勢1万7000人規模となるという。

 〈決議は周辺国で構成される「地域防護部隊」が首都ジュバや空港などの主要施設を守るため「すべての必要な措置」を取ることを認めた。現地でPKOを行う国連南スーダン派遣団(UNMISS)の指揮下で、国連要員や人道関係者、市民らへの攻撃に「積極的に対処」する。国連要員などへの攻撃が準備されているとの信頼できる情報がある場合は、先制攻撃も可能だ。 〉と毎日新聞が伝えている。 

 南スーダンでの治安状況は現在沈静化していると言うものの、7、8月の時点では国連安保理がPKO要員の増派を決めなければならなかった程にも悪化していた。

 沈静化が恒久的なものである保証はどこにもないのだが、日本の国会で現在発信されている政府答弁は7、8月の時点での南スーダンの治安状況さえも法的な定義で言う「戦闘行為」には当たらないから悪化状況にあるとは言えないとしている。

 このように政府が答弁している治安状況に即してのことだろう、防衛省は8月24日、今年3月に施行された安全保障法制に基づく駆けつけ警護や宿営地が襲撃された場合に他の国の部隊と共に守る共同防護の新任務の訓練を開始すると発表、自衛隊は翌8月25日から、訓練を開始している。

 8月25日の記者会見。

 河野統合幕僚長「活動の範囲や武器使用の範囲が広がるので、絶対に間違いがあってはならない。武器使用の規定などを徹底的に教育することをいちばん重視している」(NHK NEWS WEB

 いわば自衛隊の新任務の準備を着々と進めていた。

 ところがである。2016年10月12日付の「時事ドットコム」記事は自衛隊の駆けつけ警護や宿営地共同防護の新任務は10月中に決定するとしていた判断を見送る方向で調整に入ったと伝えている。  

 〈不安定な現地の治安情勢を慎重に見極める必要があるとの判断に加え、国会審議の停滞を回避する狙いがある。〉と記事は解説している。

 具体的には〈政府は当初、派遣部隊の交代時期に合わせ、月内に派遣期間の延長と新任務付与を判断する考えだった。現地では偶発的な衝突が続いており、政府は首都ジュバは落ち着いているとの認識だが、野党は自衛隊のリスクが高まっているとして追及を強めている。このため政府は派遣期間の延長を決めるにとどめ、新任務付与については来月以降に改めて判断する。〉と書いている。

 この新任務決定を見送る方向での調整は安倍晋三や稲田朋美の「戦闘行為」ではないから治安状況は悪化していない、自衛隊のリスクは高まっているわけではないとしている国会答弁に反する調整であろう。

 なぜ国会答弁に反してまでも見送る方向での調整に入らなければならなかったのだろうか。現況に於ける治安状況の沈静化が恒久的なものである保証はどこにもないからだろう。

 その保証が絶対的なら、新任務をいつ付与したとしても自衛隊のリスクは高まらないことになるし、そのリスク回避の保証は安倍政権安泰の保証ともなる。

 要するに国会答弁で南スーダンでの大統領派と副大統領派の武力闘争は「戦闘行為」に当たらないから、治安が最悪の状況ではない、自衛隊のリスクも高まっているわけではないとしていたことも安倍政権を守るためであり、これまでの国会答弁に反して現在の治安状況の沈静化が絶対的な保証はないことに留意しなければならなかったことも同じく安倍政権安泰を考えてのことと言うことになる。

 安倍晋三は長期政権を狙っている。長期政権を日本の政治史に記録させようと願っているはずだ。PKO派遣で長期政権が崩れることは我慢ならないだろう。

 当然、自衛隊の安全を考えている以上に安倍政権の安泰を考えていることになるし、そのような考えに沿った国会答弁であり、自衛隊の新任務であるはずである。

 安倍晋三は軍事的にも世界的規模での日本の関与を望んで自衛隊の海外派遣を推し進めながら、そのことによって自身の政権が危うくなることを恐れるジレンマに囚われることになった。


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