日本人の行動様式権威主義の上が下に強いていて、下が上に当然の使用とする丁寧語が日本人の労働生産性を低くしている(1)

2022-04-30 07:10:46 | 政治
 《労働生産性の国際比較2021》(公益財団法人日本生産性本部)

 [要約]

 1. 日本の時間当たり労働生産性は、49.5ドル。OECD加盟38カ国中23位。

・OECDデータに基づく2020年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、49.5ドル(5,086円/購買力平価(PPP)換算)。米国(80.5ドル/8,282円)の6割の水準に相当し、OECD加盟38カ国中23位だった(2019年は21位)。経済が落ち込んだものの、労働時間の短縮が労働生産性を押し上げたことから、 前年より実質ベースで1.1%上昇した。

ただし、 順位でみるとデータが取得可能な1970年以降、 最も低い順位になっている。

2. 日本の1人当たり労働生産性は、 78,655 ドル。 OECD加盟38カ国中28位。

2020年の日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たり付加価値)は、78,655ドル(809万円)。ポーランド(79,418ドル/817万円)やエストニア(76,882ドル/791万円)といった東欧諸国と同水準となっており、 西欧諸国と比較すると、 労働生産性水準が比較的低い英国(94,763ドル/974万円)やスペイン(94,552ドル/972万円)にも水を開けられている。前年から実質ベースで3.9%落ち込んだこともあり、OECD加盟38カ国でみると28位(2019年は26位)と、 1970年以降最も低い順位になっている。

3. 日本の製造業の労働生産性は、 95,852 ドル。 OECDに加盟する主要31カ国中18位。

2019年の日本の製造業の労働生産性水準(就業者1人当たり付加価値)は、95,852ドル(1,054万円/為替レート換算)。これは米国の65%に相当し、ドイツ(99,007ドル)をやや下回る水準であり、OECDに加盟する主要31カ国の中でみると18位となっている。

 報告書題名は「労働生産性の国際比較2021」となっているが、「2021」は発表年で、内容は2020年の統計である。日本の時間当たり労働生産性も、1人当たり労働生産性も、下から数えた方が早いという名誉を担っている。但し2019年の日本の製造業労働生産性水準(就業者1人当たり付加価値)は、OECD加盟主要31カ国中18位と少しマシな位置。

 なぜマシなのか、10年以上も前にブログで取り上げたことがある。的確な解釈となっているかどうかは分からないが、自分の考えが変わっているわけではないから、製造業の労働生産性に関する個所をここに取り上げてみる。

 労働生産性から見る公務員削減(2006年4月9日)<

 小泉首相は国家公務員の総人件費削減に関して、「平均して5%の定員純減を5年間でという目標を掲げている」が、「各省一律に公務員を減らせと言うことではなく、国民の安全に関する部門以外で定員純減に取組む」方針を示した。

 「国民の安全に関する部門」とは、「警察官、入国管理局の公務員は増やしている。必要な点は増やす」ということらしい。

 定員純減に関して各省との交渉役の中馬行革担当相は、「能力主義の人事・給与制度導入の公務員制度改革でなくては定員純減は難しい」と言う考えを示している。
 
 「能力主義」をムチに尻を叩くことで一人一人の能率を上げ、全体の仕事量の底上げを図って少数精鋭の形を取り、そこから余剰人員を弾き出して定員削減を可能とすると同時に、そうしない場合の弊害を取り除こういうことなのだろうが、小泉改革のこれまでを見ると、どうせ中途半端に終わる運命にあるのではないか。少数精鋭が可能なら、既にそういう態勢を取っただろうからである。小泉首相本人はこれまた今までのように、実を結ばないうちから成果を誇るだろうが、一旦は削減したものの、この人数では満足に仕事が消化できないからと、後からこっそりと採用して元の状態に戻るといった後退はよくあることである。

 「能力主義」と小泉首相の「警察官、入国管理局の公務員は増やしている」は矛盾していないだろうか。警察や入国管理局にも中馬某の言う「能力主義」を導入して仕事量の底上げを図り、少数精鋭態勢を取ったなら、「増や」す必要はなくなる。そうせずに増やすのは、小泉首相がひそかに日本を警察国家にしようと企んでいるからだろうか。安倍晋三が教育基本法に愛国心の涵養を盛り込もうと企んでいることと考え併せると、どうもそういうふうに勘繰りたくなる。

 入国管理局の職員の収容外国人に対する暴力・暴行もそうだが、日本の警察は特に悪名高い。捜査協力費の流用・不正経理・警察官でありながらのワイセツ・強姦・盗み・万引き、そして怠慢捜査・調書改竄・事件揉消し・裏ガネ・移送中囚人逃亡等々。

 当り前のような状態で新聞・テレビを賑わすこういった姿は真面目で勤勉で仕事を能率よくこなす日本人を想像させるだろうか。すべてではないと言うだろうが、決して一人や二人ではない跡を絶たない状況が構造的な欠陥であり、日本の警察の体質となっていることを証明している。

 少なくとも管理の不行き届きが招いている醜態以外の何ものでもないはずである。醜態が常態化している状況は、管理側(いわば上層部側)の管理能力がいつまでも未熟で隙だらけ、下の無規律についていけない状況にあることを示している。言い換えれば、上が上なら、下も下と言うことであろう。組織の全体的な構造不全そのもので、その結果として警察の場合は検挙率の低さという機能不全に象徴的に現れている非能率なのではないだろうか。

 構造不全に陥っている組織に人員をいくら注ぎ込もうが、税金のムダ遣いと頭数を増やすだけで終わるのは目に見えている。「能力主義」を言うなら、警察官の職務怠慢、公金での飲み食い、犯罪、私腹肥やし等の体質を一掃して、逆に仕事が能率よくできる体質への転換を図る意識改革を強力に推し進めて、検挙率の高さに反映できるよう持って行く。体質のそういった改革によって、逆に人員削減につなげていくことこそ本質を把えた公務員改革と言えるのではないだろうか。

 小泉首相がその逆を行くのは、この男の力量と言ってしまえばそれまでだが、「公務員制度改革」に反する措置のように思える。

 「能力主義の人事・給与制度導入」がここにきて言われるのは、業務が能率的に発揮できていない状況が公務員の全体的問題として存在していることの裏返しで、その是正に向けた施策であろう。公務員業務が全体的に非能率であるということは、広く言えば当然のこととして、日本の労働生産性にも関わっているはずである。そこまで視点を広げて対策を講じないと、絵に描いた餅の運命をたどらないとも限らない。

 どれ程の余剰人員を弾き出せるか。元々日本のホワイトカラーの労働生産性は現場労働者と比較して低いと言われている。いわば、能率の点で劣っている。日本人は勤勉で真面目だという評価が労働生産性に成果となって現れていない。これは表面的にただ単に「勤勉で真面目」であるというだけのことで、評価自体が幻想に過ぎないということだろうか。

 警察官や社保庁、防衛施設庁、かつては大蔵省や外務省といった官公庁や特殊法人の不正行為を見たら、「勤勉で真面目」と言う評価は見せかけでしかなく、幻想に軍配を上げなければならなくなる。

 「勤勉で真面目」が事実であったとしても、労働生産性で見た能率の悪さはこれまた事実としてある数字であって、それが日本人の本質的な力量だとすると、「能力主義の人事・給与制度導入」を行ったからといって、本質を改善する力となりうるかということが問題となってくる。

 社会経済生産性本部が発表した2005年版「労働生産性の国際比較」によると、「購買力平価で換算した2003年の日本の労働生産性は5万6608ドルで、OECD加盟30カ国中第19位であった。先進主要7カ国の比較では、日本の労働生産性水準は最下位で、米国の7割の水準にとどまっている。日本の労働生産性の水準は国際的に見て決して高いとはいえない」とある。

 しかし「日本の2003年の製造業の労働生産性水準は24カ国中第4位であった」。「なお主要先進7カ国中で見ると、米国に次ぐ第2位であった」

 製造業の労働生産性水準が「24カ国中第4位」、「先進7カ国中で見ると、米国に次ぐ第2位」であるにも関わらず、全体に均すと、「OECD加盟30カ国中第19位」、「先進主要7カ国」中「最下位」というのは、サービス業やホワイトカラーの生産性がより低いことを物語っている。勿論、その生産性の低さに警察に限ったことではない官公庁、地方自治体の公務員のコスト意識の欠如、職務怠慢、非能率、放漫経営が大きく寄与し、足を引っ張っているのは間違いない。

 確かに農業部門の生産性が特に低いことが全体の生産性を低くしている側面もあるだろうが、日本は技術が優れているという評価を裏切って、知恵の出し具合が不足しているということもあるだろう。

 いずれにしても、部門に応じた不均衡は何が原因でもたらされているのだろうか。

 日本人の労働生産性とは詰まるところ、日本人の一般的行動性が労働の場に於いてどう対応するか、その姿勢がつくり出す仕事の能率のことであろう。ホワイトカラーであろうとブルーカラーであろうと、一般的行動性は本質的には同じである。となれば、部門ごとの労働環境での一般的行動性の対応とそれぞれの違いを見ることで、労働生産性のありようを解き明かせないことはない。

 解く明かす一つの鍵が、「2001~2002年の労働生産性上昇率のトップは金融保険の7・3%」であるとする同じ社会経済生産性本部の報告ではないだろうか。同じ報告で「全産業、製造業とも、1・0%の改善率であった」というから、製造業以外の一般的に低いとされている労働生産性に対して、「金融保険」の突出した「上昇率」「7・3%」は特別の理由付けなくして説明できない事柄であるはずである。
 
 日本人は一般的に主体的・自律的に行動するのではなく、権威主義を行動様式としている。権威主義とは言うまでもなく上は下を従わせ、下は上に従う行動傾向を言う。従わせ・従う行動を成立させる条件は命令・指示のシグナルによってである。命令・指示を発して従わせ、命令・指示に応じて従う。そのような従属が極端化した場合、命令・指示の範囲内で行動することとなる。例えばマニュアルに書いてある規則どおりにしか行動できない人間がそれに当てはまる。児童相談所等が子どもの虐待を事前に把握していながら虐待死に至らしめてしまうのは、規則(=マニュアル)に従うことでしか対応できない人間ばかりだからではないかと疑いたくなる。
 
 上は下を従わせ、下は上に従う行動は命令・指示が有効であることによって、より活動的とし得る。当然能率は上がる。

 「金融保険」業務に於ける就業者の業務行動は何によって条件付けられているか考えると、景気・不景気の動向とか、不良債権処理の進行といったことに左右されるものの、一般的にノルマが数値で示され、成果に対する相対評価にしても絶対評価にしても、これ以上明確なものはない数値で表され、誰もがそのノルマ達成に向けて邁進しなければならないシステムとなっている。特に組織間の競争が激しくなれば、ノルマもより厳しく設定される。

 ノルマとは言うまでもなく達成を目標に割り当てられた仕事量のことであって、ノルマに従って行動するよう仕向けられる。達成を目標に割り当てられること自体が既に命令・指示の形を取っていて、ノルマそのものが命令・指示の役目を本来的に体現していることを示している。

 いわば命令・指示が常にスイッチオンの状態になっていて、それが心理的な監視の役目を果たし、一方でノルマの達成度を見ることで、仕事量が一目瞭然と分かる仕組となっている。

 このような状況は日本人の一般的な行動性に於ける命令・指示に従って行動する構図と符合する上に、ノルマが命令・指示を監視する役目を果たしていることと、ノルマとして表されている命令・指示への忠実な従属が各自の業績に関係してきて、それに刃向かうことができない強迫行為(=従属一辺倒)が可能とした「7・3%」ではないだろうか。

 もしこの分析が妥当であるとしたら、製造業に於ける労働生産性の国際比較値の高さも、命令・指示の有効性をキーワードに説明できなければならない。

 製造現場では1日の生産量がノルマとして決められていて、なおかつ流れ作業に常に追いついていかなければならない命令・指示に当る強制が常に働いている。その上製造現場では上司の監視の目が行き届いていて、無言・有言の命令・指示の役目を果たしている。そういった二重三重の命令・指示の強制力学が日本人の一般的な行動性となっている下の上に従う従属性を否応もなしに活性化させて、そのことが製造業の労働生産性水準を「24カ国中第4位」、「先進7カ国中で見ると、米国に次ぐ第2位」という地位を与えているとする分析でなければならない。

 そういった強制力学の影響が少ない場所が公務員や一般企業サラリーマンのホワイトカラーの労働現場であろう。労働を促す命令・指示への従属を監視する制度の希薄さが、比較対照的に労働生産性の低さとなって現れているということである。
 
 以上のことの傍証となる日本人の一般的な行動を例示することができる。川の草刈といった地域活動は、地域が年に1度とかの決めた日に決められた人数で行うことが一般的となっているが、地域の役員と駆り出された人間との間に本人の生活に関係してくる雇用上の給与評価といった直接的な利害関係が存在しないから、遅刻や中途退出は当たり前の現象となっているし、集団が大きいほど、誰がどれ程の仕事をしたか判断しにくいために適当に仕事をする人間が現れる。少し手を動かしては、すぐに手を休めて、他人の仕事を眺めてばかりの人間もいる。どれもが自己の生活と様々な利害関係で結ばれている雇用先では許されない手抜きであろう。当然、草刈といった集団で行う地域活動の労働生産性は決して高いはずはない。

 そういった手抜き=労働生産性の低さを許しているのは、地域の役員の駆り出した人間に対する命令・指示が双方の生活上の利害が直接的に関係していないことも手伝って、彼らを従属させるまでの力を有していないことが原因しているのは言うまでもない。

 また、年に1度の草刈では、その間雑草が伸び放題となるために、誰かが本人の意志のみで一人で草刈でも始めようものなら、「決められてもいないことをやるべきじゃない。一人がやれば、みんなもやらなければならなくなる」と、それが新たな決まり事となって駆り出されることを嫌い、地域の決まりごとへの従属を最小限にとどめようとすべく拒絶反応を示す人間もいる。
 
 いわば決められたことはやるが、決められていないことはやらないという命令・指示の範囲内で従属することを行動に於ける習性とした、他との関係で自己の行動を決定する他律性としてある権威主義的行動様式そのものの現れは元々日本人の一般的傾向としてある姿だが、命令・指示が自己の利害に影響しない場合は、従属を最小限にとどめたり無視したりすることも、他律性(=権威主義的行動様式)に則った行動であろう。

 ホワイトカラーの労働生産性が地域活動の草刈といった労働生産性よりも低いものであるとしたなら、組織管理が無規律・無計画・無成熟であることを証明するだけのこととなるから、ホワイトカラーの一般的な労働生産性にも劣る地域活動の消極的・非能率な態様と見なさなければならない。日本人が事実勤勉であるとするなら、組織活動に於いても地域活動に於いても同等の勤勉さが発揮され、同等の労働生産性を上げるべきであるが、そのことを裏切るあってはならない両者の落差は命令・指示の監視の有無、及び従属に向けたその効力の度合いを条件として初めて説明し得る。

 このことは製造業とホワイトカラーの労働生産性の格差にも応用しうる説明であろう。

 最初の方に、〈警察に限ったことではない官公庁、地方自治体の公務員のコスト意識の欠如〉云々と書いたことの意味は当時の首相小泉純一郎が国家公務員総人件費削減のために5年間平均5%定員純減の目標を掲げる一方で国民の安全に関する部門の警察官や入国管理局公務員は増員するとしたことに関係させている。公務員定員純減の代替療法は「能力主義」の導入としている以上、警察官や入国管理局公務員にも「能力主義」を適用すれば、その増員は矛盾することなるし、「能力主義」がここにきて言われるのは、業務が能率的に発揮できていない状況が公務員の全体的問題として存在していることの裏返しだということを書いたことからの全体的な「コスト意識の欠如」と指摘した。そして、〈公務員業務が全体的に非能率であるということは、広く言えば当然のこととして、日本の労働生産性にも関わっているはずである。〉と関連付けた。

 要するに日本人が行動様式としている上が下に命令・指示して従わせ、下が上の命令・指示に従って行動する権威主義は他律性を基本原理としていて、このことに反して例え命令・指示が常にスイッチオンの状態になっていなくても、相互に自分から考えて行動する自律性を行動様式としていたなら、能力主義だ何だと尻を叩かれることもなく、労働生産性は欧米先進国と比して継続的に見劣りすることはないはずであり、労働生産性の劣りの原因の一つに本質のところで日本人の行動様式となっている権威主義が関係していると見ないわけにはいかない。

 このことと関連することになる2007年1月11日エントリーの当ブログ記事を紹介する。2007年1月9日付の「朝日新聞」朝刊が、「字体を15日から一部変更します」という知らせを載せた。2000年の国語審議会が書籍等に残っている伝統的な康熙(こうき)字典体に基づいて「表外漢字体表」を答申。このことを踏まえて、900字を「表外漢字体表」内にある康熙事典体を使用するというもので、例として、「鴎→鷗」「涛→濤」を挙げている。

 この知らせに触れて、字画が細かくなることから弱視者や目の遠くなった高齢者に読みづらく、優しくないといったことを書き、難しい漢字が情報処理に少なからず影響することと、このことに関連付けて国会質疑や記者会見で丁寧語を用いることで長くなっている質疑応答のムダな部分を用いずに省き、逆に実質的な情報を増やして、情報処理能力の向上に資することになる、読み返してみると、少し説明足らずな部分もあるが、そういったことを書き連ねた。

 《復古的字体変更と情報処理の関係 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》(2007年1月11日)

 日本の政治家や官僚の情報処理能力の見劣りは国会審議での言葉の遣り取りを見れば一目瞭然で分かる。以前ブログ記事で引用したものであるが、06年11月22日の「教育基本法参議院特別委質疑」での蓮舫議員の質問とそれに答えた安倍首相の答弁を使って説明してみる。

 蓮舫「安倍総理にお伺いします。小泉前総理大臣の時代から私ども与野党で共通認識で持っていたのは、もうムダ遣いはやめようと、行政改革を進める上でムダを省いて、そしておカネを、税金を、戴いた保険料を、預かった保険料を大切に使っていこうという意識は共有させていると思うんですが、足元の内閣府で行われているタウンミーティングでさえも、殆どデタラメな値段付けが当たり前に使われていて、通常の恐らくタウンミーティングの額よりも膨らんでいると思うんですね。そういうおカネの使われ方はよしとされるんでしょうか」

 安倍総理「競争入札で行ってきたところでありますが、えー、先程来議論を窺っておりました。この明細を拝見させていただきました。やはりこれは節約できるところはもっともっとあるんだろうと、このように思うわけでございました。私共政治家も、よく地元で色んな会を開いて、色々と地元の方々とご意見の交換を行うわけでありますが、それは勿論パイプ椅子等をみんなで運びながらですね、最小限の経費で賄っていく中に於いて、意見交換も活発なものが当然できるわけでありますが、そういう精神でもう一つのタウンミーティングの先程申し上げましたように運営を行うよう、見直してまいります」

 安倍首相の発言を文字に起こすと、現在形を用いる箇所を「このように思うわけでございました」と過去形で用いたのは単なる間違いだろうから、無視するとして、政府主催のそれなりに大掛かりなタウンミーティングを地元の個人的な会合と比較したりするピント外れな客観的合理性、さらに蓮舫議員の「殆どデタラメな値段付け」の「おカネの使われ方はよしとされるんでしょうか」という質問の中にヤラセ問題が含まれていなくても、関連事項として踏まえた答弁をしなければならないのだが、「節約できる」とか、「最小限の経費で賄っていく中に於いて、意見交換も活発なものが当然できるわけでありますが」とか、「節約」も「活発」もヤラセがあったなら無意化することも考慮せず、「経費」との関係でのみ活発な議論の可能性を云々する判断能力のズレはそのまま情報処理能力の程度の問題に関係していく事柄であろう。

 さらに安倍首相だけではなく国家議員・官僚が国会答弁や記者会見で結び語によく使う言葉として、「このように(かように)思うわけでございます」とか、「かように考えるわけでございます」「と言うところでございます」、「致しておるところでございます」、「しておるわけでございます」といった「ございます」語は丁寧語と言ったら聞こえはいいが、「です・ます」で簡潔に結べるにも関わらず、そのことに反して余分に付け加えて言葉数を多くする発言は、簡潔・スピード・確実・理解をモットーとする情報処理能力に密接に関係しているはずである。1日で使う「ございます」語をすべて省いて、「です・ます」で済ませたなら、かなりの時間短縮が可能となり、その時間分、実質的な質疑応答に回すことができて、当然情報処理量をも増加させて情報処理の向上に役立つはずである。

 また、質疑応答に於ける相互的な情報伝達は政治のあるべき姿の議論を実質とすべきを、実質の議論から離れて結びをことさらに「ございます」語とするのは、伝えるべき情報の実質部分でたいしたことを言っていないからこその、そのことの逆説として、自分が言っていることを正しい・筋が通っていると思わせるダメ押しの役目を持たせた装飾補強材であろう。

 上に上げた安倍首相の答弁もまさにその通りだが、たいしたことを言っていないということも、要件の一つとしている“確実性”に反する情報伝達ということになって、情報処理に関係した能力と言える。日本語の敬語の多用も、耳に聞こえはよくても、言葉数が多くなることによって、逆に情報処理を遅くする逆説を呼び込んでいると言える。

 かくかように戦略性や危機管理能力と密接に結びつくことになる情報処理能力がただでさえ見劣りする状況にあるのに対して、例え900文字の康熙(こうき)事典体への変化が、そのことによって僅かであっても情報処理をより困難としたなら、現在以上の戦略性と危機管理能力の欠如・劣りにきっと寄与するに違いない。まさに「美しい国」日本である。

 以前のブログからの引用とは2006年11月22日記事《タウンミーティング/広告代理店の参考人招致を-『ニッポン情報解読』by手代木恕之》を指す。当ブログ記事の趣旨に関係しないが、蓮舫の追及が的確なものになっているかどうか、少し回り道をしてみる。

 蓮舫は「ヤラセ質問があった、岐阜でのタウンミーティングでの経費です。内閣府が広告代理店に指示をした最低コスト表です」と言って、「空港(又は駅)での閣僚送迎等」、「会場における送迎等」各任務と任務ごとの報酬金額を書き入れたフリップを提示する。対して政府参考人内閣府大臣官房長の山本某は「これはただ、これは業者の方で入れた額であるということをご理解いただきたいと思います」と答弁している。

 このグログを書いた当時、まだ理解が足りなかったことに遅まきながら気づいたが、この遣り取りからすると、「内閣府が広告代理店に指示をした最低コスト表」の金額を上回る金額を「単価内訳書」に「業者の方で入れた」ということになる。となると、広告代理店側の見積もりが正しかったかどうかという問題以前に内閣府が指示した最低コスト表の金額が妥当であったかどうかの問題に比重を置かなければならないことになる。

 ところが蓮舫が「その単価表適正だったんでしょうか」と質すと、山本某は「今申し上げましたように入札をするときに全体の各項目前後の項目につきまして、それぞれの業者が単価を入れまして、それで総トータルで一番安い所に落としているわけでございます」と答弁、各単価設定の権限と責任を広告代理店側に全て預けている。蓮舫はこの矛盾を追及しなければならなかった。最初に断ったようにこのブログを書くときは理解力不足でこの点に気づかなかったが、蓮舫はプロの政治家としての地位にある。相手の言葉の矛盾を捉える嗅覚を政治のプロなりに備えていなければならない。その嗅覚は言葉を張り上げることは得意だが、今以って鋭さを備えるところにまでいっていないように見える。

 回り道はこのぐらいにして、上記2007年1月11日のブログで意図している内容は「労働生産性」という言葉は使っていないが、丁寧語の廃止・普通語(=非丁寧語)の使用によって情報処理量を可能な限り凝縮することを通して情報処理の効率意識を高め、併行して情報の読み・解き・伝達の処理の速度を早めることに意を用いていけば、情報処理量能力が自ずと高まり、この能力アップは仕事の速度に影響して、労働生産性の向上にリンクしていくといったことである。

 生産性向上は新技術開発や仕事の進め方等の影響を多分に受ける。新技術開発は頻繁に日の目を見るものではない。そこで仕事の進め方を効率化の方向に様々に工夫することになるが、工夫から取り残されている一つが既に指摘済みのコミュニケーション(=意思疎通)に於ける言葉の使い方であろう。それが日本人の本質的な行動様式となっている権威主義が強いる下の地位の者が上の地位の者に対して慣習として使う必要に迫られている丁寧語の使用であり、丁寧語には勿論のこと敬語も含まれる。狭い知識からの物言いだが、日本人程丁寧語や敬語を使う国民はいないのではないだろうかと思っている。

 丁寧語や敬語を取り払って、普通語(=非丁寧語)で意思疎通を図ることができたら、行動開始までの時間短縮が可能となる。あるいは行動中の必要とされる意思疎通の時間短縮も可能となり、短縮された時間を行動に振り向けることも可能となる。前者の例で言うと、例えば下の者が上の者に対して何らかの作業開始の許可を得るのに、「取り掛かってもいいですか」とか、「取り掛かっても構いませんか」と丁寧語で尋ねる。これを目上や上司に対する敬意は気持ちだけにして普通語(=非丁寧語)で、「取り掛かります」と言うか、あるいは「取り掛かりますが」と許可を求める気持ちを込めて聞く。対して聞かれた方は「いいよ」とか、「もう少し待った方がいい」とか、イエスかノーの意味で答える。

 一見すると、丁寧語の廃止は意思疎通の言葉数のうち、数語の省略が期待できるのみで、仕事の進め具合に左程の変化がないように見えても、数語の省略が職場数に応じて増えることになり、会社全体で、しかも経営規模が大きい程、数語の倍率は無視できない言葉数となる。さらに1日8時間労働を掛ける、あるいは1カ月20日出勤を掛ける、さらには年間労働の240日を掛けていくと、従業員1人1人の1日の言葉の省略はたいした数ではなくても、全体の省略は相当量にのぼって、その分の時間を実質的な労働に回すことができる。その上、こうなることを認識して行動した場合、効率化意識が涵養される方向に向かうはずで、このことと平行して誰に対しても丁寧語や敬語を普段から使わずに日常的に普通語(=非丁寧語)を使うことが習慣化すれば、権威主義的行動様式が薄れていき、脱却するところにまで行き着くことによって自分の頭で考えて自分で行動していく自律性の獲得が自ずと可能となり、効率意識の強化と権威主義からの脱却=自律性の獲得の両方が合わさって、労働のスピードアップ、労働成果の向上、即ち労働生産性の向上に結びついていくという道筋を取ることは決して不可能ではない。

 政治は常に労働生産性の向上を掲げる。だが、日本の労働生産性に関する世界の統計は見てきたとおり芳しい順位を与えてくれない。日本の低い労働生産性の改善は日本人の行動様式である権威主義の力学が強制している地位の高低を、あるいは先輩・後輩に応じた上下関係、格式を丁寧語の廃止と普通語(=非丁寧語)の使用によって擬似的に対等な関係に持っていけば、情報処理の時間的な短縮化を図ることができる。

 情報処理そのものの本質的な部分は的確な判断能力に負うが、どのような仕事も何をどうすべきか、何をどうしたらいいかはその場、その場に応じた瞬時の情報処理で答を得て、それらの答のトータルが仕事の効率性と効率性の反映としての仕事量となって現れる。つまるところ、仕事というものを成り立たせている基本的な条件はその場のひと手間ひと手間に応じた情報処理であり、その連続が仕事全体を支えることになる。情報処理の時間的な短縮化と的確な判断能力に基づいた情報処理自体が最終的には労働生産性の向上に行き着くことになる。

 国会質疑の場では首相以下の閣僚と質問者との間の先輩後輩の関係、年令や地位に応じた上下関係の力関係とは無関係に双方共に丁寧語を、それも過剰なまでの丁寧語の数々を用いているが、このことは権威主義的な人間関係の力学から自由になっているからではなく、世間に対して紳士的な振る舞いを必要とする改まった場での一般的に生態化した姿としているからに過ぎない。もし自由になっていたなら、回りくどい言い方の丁寧語自体を上の立場の人間も下の立場の人間も、双方共に必要としないはずだが、上の立場にある人間が下の立場にあったときに丁寧語の使用を習慣として根付かせてしまっているから、改まった場では結果として双方の力関係とは無関係に双方共にバカ丁寧なまでに丁寧語を使う羽目に至っている。権威主義的な人間関係の力学に囚われていることの証明にほかならない。

 では、丁寧語の廃止と普通語(=非丁寧語)の使用によってどの程度の情報処理の時間的な短縮を図ることができるのか、2022年2月7日衆議院予算委員会での立憲民主党小川淳也の質疑応答を用いて、その全文から丁寧語を普通語に転換、全文の文字数と出した省略文字数の比率から小川淳也の質疑応答時間に対する普通語を用いた場合の節約時間を割り出し、その節約時間を情報処理の時間的短縮率と看做して、その時間的短縮率を2月7日1日の実質的な質疑開始時間から終了時間までの所要時間に掛けて、大まかな結果値となるのは避けられないが、1日分の短縮時間と短縮文字数を算出して、それを以って情報処理量の短縮と見ることにする。

 勿論、情報処理量を短縮できたからと言って、それがそのまま的確な判断能力の向上に繋がるわけではないが、既に触れているように丁寧語の廃止と普通語の使用という話し言葉に対する効率意識の芽生えが情報処理の時間的短縮や話し言葉の短縮で終わらずにこれらのことを取っ掛かりに情報を如何に処理するかに意識を集中すれば、自ずと的確な判断能力の質の獲得に向かわせて、情報処理量能力を高め、結果として労働生産性の向上へと進ませる可能性は決して否定できない。

 小川淳也の質疑時間は《国会中継 @ ウィキ》から2022年2月7日の質疑者一覧と共に記載されている持ち時間に依った。過去の記録はそのまま消去されるようである。その日は質疑開始時間が「09:00」、休憩1時間を挟んで終了時間が「17:00」、7時間の質疑となる。小川淳也は「11:06-12:00」の54分間。「国会会議録検索システム」から2022年2月7日衆議院予算委員会の質疑応答全文を「テキスト印刷用ファイル」で抽出、根本匠予算委員会委員長の「これより会議を開きます」からの全文をMicrosoft Wordに貼り付けた文字数は「135284」文字。小川淳也の質疑応答全文は「17634」文字。ここから丁寧語を普通語に直すと「16799」文字となって、「835」文字の省略。

 小川淳也の質疑応答全文「17634」文字に54分間掛かっているから、1分間に直しと、17634文字÷54分=327文字(四捨五入)。丁寧語を外して835文字省略できた16799文字÷327文字(1分間)=51分(四捨五入)。全体の54分-51分=3分間の省略となり、時間上の省略率は54分-51分=3分/54分x100=5.5%。

 小川淳也の質疑応答の場合はたったの3分間、5.5%の省略だが、質問者によって発言の早い遅いや中断時間があること、大臣席から答弁台までの往復の時間、半日の場合等があることを考慮し、控えめに見て4.0%の時間省略率に割り引いて、1日の質疑7時間の420分にかけると、16.8分、小数以下を切り捨てて1日16分間の省略時間とする。

 《令和3年衆議院の動き》に記載の2021年の「本会議、委員会等の開会回数及び公述人数等」によると、

 第204回国会(常会)(令和3. 1.18~ 6.16 150日間)本会議、委員会等の開会回数は本会議と常任委員会342回 特別委員会53回
 第205回臨時国会本会議と常任委員会10回、特別委員会9回(11日間)
 第206回特別国会本会議と常任委員会21回、特別委員会18回(3日間)
 第207回臨時国会本会議と常任委員会36回、特別委員会18回(16日)

 合計すると507日の開催日数となっている。半日開催の場合もあると思うから、これを500日として、500日x16分=8000分÷60分=133時間(四捨五入)÷8時間/1日=16.625日となるが、少なく見積もることにして、小数以下切り捨て16日とする。

 要するに1年間の国会開催で丁寧語抜きだと、衆議院だけで16日間の時間が節約できる。参議院もほぼ同程度の質疑日数があることと仮定すると、1年間で1日8時間質疑として優にひと月の日数省略ができることになる。決して小さくない情報節約量である。このことを裏返すと、政府閣僚も国会議員も丁寧語を無闇に使うことによって国会質疑の生産性を落としていることになる。ちょっとしたことを伝えるのに話が長過ぎて理解するのに苦労するという場面を作り出す人間が時折り存在するが、国会議員が全員してそういった場面を少なからず演出していることになる。

 自身が発信する情報の量的節約への意識傾注は自ずと自らが提供する情報の簡略化と情報の精度を高める作用を促すはずで、情報の受け手である国民に対しても情報理解を助けることになって、国民をも巻き込んだ国会質疑の生産性の向上に貢献していくことになる。そしてこういったことが国会の場で手始めにであっても慣習化された場合、この慣習は一般社会が生産性向上意識を持ちさえすれば、情報処理に向けた効率化意識を自ずと芽生えさせて一般社会にも受け継がれていき、上下関係が強いる丁寧語の使用の省略自体が上下関係意識を希薄化させると同時にその希薄化に応じた意思疎通の余分な時間の掛かりを省いて、仕事の効率化を促し、最終的に労働生産性の向上に行き着く可能性は否定できない。

 では、小川淳也の2022年2月7日衆議院予算委員会での質疑とその応答から丁寧語をどのように普通語に変えたかを参考までに記載してみる。変えた普通語は丸括弧内に太字で示した。既に文字数を数え上げたあとだから、「国会会議録検索システム」の行の開きもないテキストを読みやすいように改行ごとに1行ずつ開け、質疑者、答弁者の名前は太字にして、発言の始まりと終わりにカギ括弧つけ、漢数字を算用数字に変えた。

 中には丁寧語を普通語に変換することによって文字数が1、2語増えるケースがあるが、全体的な情報処理(発言数と発言時間)の短縮化が証明される限り、この短縮化と丁寧語の普通語への変換が誘発することになるだろう上下の権威主義的行動様式の希薄化を通した生産性向上の目論見を優先させるために個々のケースでの文字数の1、2語の増加は無視した。

 断っておくが、変換した普通語が最適な言葉とは限らないが、自身の判断の範囲内だと了解して貰いたい。

 《日本人の行動様式権威主義の上が下に強いていて、下が上に当然の使用とする丁寧語が日本人の労働生産性を低くしている(2)》に続く

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日本人の行動様式権威主義の上が下に強いていて、下が上に当然の使用とする丁寧語が日本人の労働生産性を低くしている(2)

2022-04-30 07:03:46 | Weblog
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 小川淳也「立憲民主党の小川淳也です。

 この第6波がもたらした全ての犠牲と、そして多大な困難に、心より哀悼とまた連帯の意を表したいと思います(表します)。

 総理におかれても御苦心(苦心)が続いておられることと思います(いることでしょう)。

 まず、先立つ質疑の中で、一日100万回の接種を表明されました(表明しました)。これは敬意を表したいと思うんですが(敬意を表しますが)、ちょっとワンテンポ、ツーテンポ遅かったんじゃないですか、遅れたんじゃないですか」

 岸田文雄「3回目の接種のタイミングということについてですが(タイミングについてですが)、我が国におけるワクチンの接種、振り返りますと、昨年の10月の段階で、1回目、2回目の接種がまだ1日75万回接種されていた、こういった状況でありました(でした)。11月の段階でも、1回目、2回目の接種が一日20万回のペースで接種が続いていた、こういった状況でありました(でした)。そして、3回目の接種…(小川委員「簡潔な御答弁をお願いします」と呼ぶ)ちょっと済みません。3回目の接種について、11月の11日、薬事承認を得て、12月から開始をしたということであります(開始しました)。

 こういった状況の中で、6か月の間隔を空けて3回目の接種を行うということでありますので(ことですので)、まさに今からが3回目の接種、本格化するタイミングであるということを申し上げています(伝えています)。そのために、1日も早く一日100万回の接種を実現していきたいということを申し上げている次第であります(実現していきたいと伝えているところです)」

 小川淳也「これは決して楽観できませんが、2月中にもピークアウトするんじゃないかという説もある。既に1日10万人単位での感染者数が増えている。3回目の前倒し接種を我が党が要請したのは去年の4月です。そして、早期に具体的な目標設定がなければ現場にだってドライブがかからないということをかなり早い時期から主張してきた。ようやくここへ至って1日100万回、これは結構なことなんですが、週末の厚生労働大臣のテレビ発言を受けて、あたかも追い込まれたように表明されたともお見受けしていますよ(表明されたとも見えます)。

 ここはまさに、岸田総理、聞く力も結構ですが、危機管理ですから、やはり決断をし、発信をし、実行していくことこそが問われていると思います(問われています)。

 重ねて週末の混乱等についてお聞きしますが(聞きますが)、2歳児へのマスク着用について。

 これは、実際に実行可能かという問題もある。そして危険性はないのかという課題もある。そして最終的には、私、これを聞いたときにどう思ったか申し上げますが(どう思ったかと言うと)、どうせすぐに引っ込めるだろうと思ったんですよ、総理は。これも、もはや慣例になりつつある朝令暮改とも言える。

 適切でなく危険があり、そして意思決定の過程含めて朝令暮改のそしりを免れないと思いますが(免れませんが)、この2歳児のマスク着用について、この点、総理、答弁を求めたいと思います(答弁を求めます)」

 後藤茂之(厚労相)「子供のマスク着用につきましては(ついては)、2月4日の新型コロナウイルス感染症対策分科会におきまして(新型コロナウイルス感染症対策分科会で)、発育状況等からマスクの着用が無理なく可能と判断される(判断できる)子供について可能な範囲で着用を推奨するという専門家の提言も出ております(提言が出ています)。

 それから、2歳未満の子供には推奨しないというような報告もなされております(推奨しないという報告も出ています)」

 小川淳也「これは元々、WHOは、5歳未満児は危険だから、有用性も低いし、そもそも推奨していないんですよ。ですから、ちょっとこれは厚生労働大臣にも責任があると思いますが、いろいろ言われるでしょう、それは、知事会、あるいは番組で。もう少し御発信前にはよく御検討いただいて(発信前にはよく検討して)、そして後に総理がひっくり返さなくて済むように、この辺りも慎重な対応を求めておきたいと思います(求めます)。

 もう一点。

 これは後ほど大串さんが厳しくやられるとお聞きしていますが(厳しく追及すると聞いてますが)、林外務大臣にお聞きしておきます(聞きます

 アメリカ軍による検査なしの入国ですね。9月に通知したと米軍は言っている。日本政府は聞いていないと言っている。しかし、この認識のそごは外務省の取組に不十分な点があったと真摯に受け止めていると、林外務大臣は発言なさっている(発言している)。これは、この意思疎通のそごは、日本側に責任があったという認識でいいですね」

 林芳正(外相)「私が申し上げた答弁(私の答弁)を今引用していただきましたが(引用しましたが)、我々の方にもそうした足らない部分があったということは申し上げたわけですが(伝えましたが)、我々だけというふうに申し上げたわけではないわけでございます(我々だけというふうに伝えたわけではありません)」

 小川淳也「ちょっと、この点、大串さんが後ほど質問させていただくと思いますが(質問しますが)、一事が万事こういう状態ですから、岸田政権のリーダーシップ、判断力、決断力、実行力、大きく問われつつある局面だと思いますよ(局面です)。

 私は、こうなった以上、どうしていくかというのが一番大事な議論ではある、しかし、なぜこうなったのかという議論は、決してなおざりにはできないと思っています(なおざりにはできません)。

 その意味でお尋ねしますが(尋ねますが)、私、去年の国会で総理が、コロナ対策は最悪を想定することが大事だとおっしゃった(発言した)。いい御発言(いい発言)だと思って聞いていました。恐らくそれは、安倍政権や菅政権で必ずしもそれが十分でなかったという反省の下におっしゃったとも(発言したとも)受け止めていました。

 しかし、これは誰がやっても難しかったことは認めます。認めますが、ちょっと資料を御覧いただきたいんですが(ちょっと資料を見てください)、岸田政権発足後、11月の12日に、第6波に向けた安心確保のための取組全体像を決定し、発表しておられる(発表している)。

 そこには、第6波の最悪の事態を想定し、今後感染力が2倍になった場合にも対応するとおっしゃる(言っている)。しかし、これは1日当たりの感染者数でいえば、第5波のピークは1日2万5千人ですから、そして今、1日10万人ですから。2倍としても5万、更にその倍、実際には4倍を超えたわけです、1日の感染者数という意味では。

 それから、今後の感染ピーク時における自宅、宿泊療養者数は最大で23万人と想定している。しかし、実際には先週段階で既に40万人を超えた。

 これは、総理、いろいろ御事情もある(事情もある)、誰がやっても難しいことは認める。しかし、現実に、結果責任という意味において、最悪を想定すると口ではおっしゃったが(口では言ったが)、実際には最悪を想定し切れなかった、想定が十分ではなかった、このことをまずお認めいただきたいと思いますが(認めるべきですが)、総理」

 岸田文雄「まず、昨年11月の全体像と銘打った計画においては(では)、よく見ていただければ分かりますように(よく見れば分かるように)、2倍を想定しながらも、3倍以上もしっかりと……(小川委員「4倍じゃないですか」と呼ぶ)いや、3倍以上もしっかり対応できる、こういった全体像を掲げて準備を進めたということであります(準備を進めました)。

 だからこそ、例えば、東京の例を見るならば、昨年の夏、ピーク時、新規感染者は5千900名ほどでありました(ほどであった)。しかし、その段階で、昨年8月、病床は満床状態でありましたし(でしたし)、そして重症病床も満床という状況でありました(状況でした)。

 しかし、今申し上げた11月における全体像に基づいて計画を進め、そして病床を確保し、稼働率を引き上げ、そして病床の見える化も行ったから、今現在、昨年のピーク時の、おっしゃるように(言うように)4倍の新規感染者が生じているわけですが、それでも、去年の夏は満床状態でありました(でした)。今年の、今の病床使用率は55%にとどまっている。そういった準備を進めていたからこそ、今現在、病床の使用率は55%。そして、重症の病床については、現在、東京は40%、東京基準では8%、こうしたことになっています。

 そういったことのために、11月、全体像を示して準備を進めてきた、こういったことであります(こういったことです)」(発言する者あり)

 根本委員長「恐縮ですが、簡潔にお願いします」

 小川淳也「お言葉ですが、病床使用率が5割台にとどまっているのは、入院できていない人がたくさんいるからですよ。感染爆発後に入院基準を緩めたじゃないですか、元々、全員入院とおっしゃっていたんだから(いっていたんだから)、総理は、オミクロン株については。後追い後追いで、現実に追従し続けているわけですよ。

 それじゃ、お聞きしますよ(聞きます

 11月に決定された(決定した)本部決定ですが、資料の3行目、全ての自宅療養者にパルスオキシメーターを配付、できているんですか。状況に応じて機動的に強い行動制限を伴う要請、しているんですか。ワクチン、検査、治療薬の普及による予防、発見から早期治療までの流れを更に加速、できていますか。検査もできていないから、みなし陽性なんということになっているじゃないですか。変異株の状況を踏まえ、緊急事態措置の前提となる感染状況について、速やかに基本的対処方針を改正、していないじゃないですか。2か月半ぶりだ、この間の専門家会議の開催は。全て後手後手に回って、現実の追従、追認に追い回されている。その一方で、被害が拡大していると言わざるを得ないと思いますよ(言わざるを得ない)。

 もう一点。時間に限りがありますから(あるから)先へ進ませていただきますが(先に進みますが)、私……(発言する者あり)いや、ちょっと後で答弁してください。

 問題は、これは、病床使用率が限られているのは、入院できていない人がたくさんいるからですよ。それはお認めいただかなきゃいけない(認めなければいけない)。それで、反論があればおっしゃってください(反論があるならしてください)。

 もう一つ、私が問題にしたいのは、つまり、この対処方針が11月にできたこと、岸田政権の発足は9月ですから、2か月何していたんだということなんですよ。この2か月が、結果的にですが、物すごく重大な影響を及ぼしている。

 つまり、あえて私は空白の2か月と資料に明記しました、空白の2か月。

 まさに岸田総理がおっしゃったように(発言したように)、去年の春先から、まず医療従事者、その後高齢者、そして一般成人にワクチン接種を開始しているんです。しかし、もうここで何度も議論されたと思いますが(議論しましたが)、これを御覧いただければ分かるとおり(見ればわかるとおり)、6か月間隔でスタートしていれば、10月、遅くとも11月から高齢者の接種を始めることができた。そして、ワクチンの薬事承認は6か月間隔で承認していますからね、にもかかわらず、実際に打つのは8か月以降だとおっしゃった(言った)。

 この6か月を8か月とした2か月と、10月から打つべきを12月から開始した2か月と、そして、もっと言えば、9月に政権が発足したのに11月まで大方針を定めなかったこの2か月と、何重もの2か月が、結果的に、これは資料を見てください、下。たらればの話をするのは非常に切ないが、もし10月から3回目接種を開始し、6か月間隔でやれていれば(やっていれば)、先月末、1月末に、少なくとも高齢者は9割方ワクチン接種を3回目終えていた可能性が高い。それをやっていれば、今頃、デンマークやイギリスやフランスや、既に規制解除しているじゃないですか、こういうことだってあり得た。

 この2か月の遅れがどこから来たか。最後に議論して、答弁を求めましょう(求めます)。なぜ、9月、10月にしかるべき対応を取れなかったのか。9月は何をやりましたか。

 私、ここで初めて言いますが、ある行事で退任された菅前総理とお目にかかったんですよ(顔を合わせた)。そのときに、当時、もうオリンピック後でしたが、東京で1日5千人の感染者が出た頃は死ぬかと思うほど苦しかったと前菅総理はおっしゃっていました(言ってました)。私どもも厳しく検証する立場ですが、その言葉には、総理大臣たるものの大きな使命感、責任感、重圧を、想像に余りありますが、感じました。

 しかし、9月にあなた方がやったことは、その菅総理に、総裁選再立候補困難、いわば引きずり降ろした。そして、自民党総裁選に、あえて言いますが、かまけ、そして、任期をまたいで、10月いっぱいかけて総選挙をやった。

 まさに、この2か月の空白、2か月の遅れは、党内事情の優先、政局優先がもたらした致命的な2か月なんじゃないですか。それを含めて御答弁いただきたい(それを含めて答弁ください)」

 岸田文雄「まず、2か月何をしていたかということでありますが、それは、まさに先ほど、11月、お示しさせていただいた全体像(提示した全体像)、これを取りまとめ、しっかりと次の体制の準備に充ててきたということだと思っています(充ててきたということです)。

 そして、先ほど、ワクチン接種、遅いではないか、9月にはできたのではないか、こういった御指摘がありました(こういった指摘がありました)。

 しかし、それについては是非昨年の状況を振り返っていただきたいと思います(昨年の状況を振り返ってください)。全世界的に、11月頃、オミクロン株の感染拡大が注視される中にあって、多くの国々が最新のエビデンス等を踏まえて最初は8か月接種という議論から議論を始めていた、こういったことであったわけです。

 その中にあって、我が国においては、昨年、先ほど申し上げたように、10月、11月、まだ1回目の接種、これを続けていた、そして11月に薬事承認を得た、そして11月に開始をしたということであります(開始したということです)。

 2回目との間隔を空けなければいけない、こういった事情の中で、いよいよ今本格的に第3回目の接種がスタートする、進んでいくということでありますので(ことですので)、1日100万回という目標を掲げて、しっかりと進めていくということを申し上げています(発言しています)。

 ワクチンは確保できました。体制も整ってきました。是非、本格的に3回目の接種を進めていく時期が来ていると認識をしております(認識しています)」

 小川淳也「総理、これは私も厳しく質問する立場なんですが、誰がやっても難しかったことは認めているんですよ。しかし、日本で、この過酷なコロナ禍で、1年以上もった政権はまだありませんから(ないですから)。そこに共通しているのは、言い逃れと強弁なんです。

 総理、それは岸田総理には似合わない。きちんと事実は事実として認めて、謙虚に。そして、事によっては柔軟に方針変更も受け入れ、更にその批判も受け止めというのが岸田総理のスタイルだと思ってお聞きしているんです(聞いているんです)。

 欧米は早かったんですよ、8か月を6か月に短縮するのは。

 そして、日本の場合、さっきも申し上げましたが、薬事承認そのものが6か月間隔ですからね。これを8か月にしたことには何らかの政策的判断があったんでしょう。 
そして、それを前倒すことは確実に遅れている。そして、この遅れの2か月が、致命的な2か月になった可能性があるということを指摘しているわけです。

 さらに、我が党は、コロナ対策に関して言うと、それに限らずですが、積極的に議員立法の提案をしています、昨年来。

 例えば、困窮された大学生の支援一人10万円。ありがたいことに補正予算で実施をいただきました(実施を受けました)。これは、全部自分たちの手柄だと言うつもりは全くありません。もちろん、与党・政府におかれていろいろな検討をされた(検討をした)。そして、国民からいろいろな声があってのことでしょう。しかし、我が党に関して言えば、そういうことです。

 そして、ガソリン価格の値下げ法案。補助金の創設につながっています、不十分ですが。

 そして、文書交通費の透明化法案。これは私、維新の皆さんに率直に敬意を表していますよ。そして、自民党にも重い腰を上げてもらわなきゃいけない。早くこの政治と金をめぐる問題は、さっさとけりをつけなきゃいけないんですよ。

 そして、子供給付金の現金化法案。これは総理には半分反省いただきたいんですが(これには総理は半分反省すべきですが)、クーポンか現金かで一定の混乱がありましたが、後に、もちろん朝令暮改とはいえ、現金容認に方針転換をいただいた(方針転換した)。

 今、ワーキングプアの世帯支援法案を提出しています。そして、先般、離婚世帯に対する子供給付金は適正化すべきだ、これも御決定いただきました(これも決定を受けた)。そして、事業復活支援金倍増法案、これも今提出中です。

 そして、本日午後3時、感染症法の改正案を国会に提出いたします(提出します)。

 これは、さっきの基本方針との関係でいえば、変異株の状況を踏まえ、緊急事態措置の前提となる感染状況、ステージについては、速やかに基本的対処方針を改正するとおっしゃった(改正すると言った)。病床や医療人材の確保について、国や自治体が要請、指示をできるように法的措置を速やかに検討するとおっしゃった(検討すると言った)、去年の11月です。感染有事における備え、取組について、法的措置を速やかに検討するとおっしゃった(検討すると言った)、これも11月。司令塔の強化により危機管理の抜本的な強化をするともおっしゃった(するとも言った)、これも11月。全て6月だと今になっておっしゃる(今になって言っている)。もう提出しますよ、今日午後3時に、感染症法の改正案。

 これは、かねてからの課題である、やはり日本は開業も自由化されていますから、しかし、医療経済は、医療費40兆円は、9割方税金と保険料によって賄われている、この矛盾が一気に噴き出したのがこのコロナ禍の重圧でした。したがって、それは直ちに変えられないにしても、民間病院に対して今まで以上の協力を要請する法的根拠を速やかに設けなければならない。それが今日午後3時に提出する感染症法の対策案です。

 総理にお願いいたします(総理に求めます)。

 これも半分感謝なんですが、政府・与野党協議会を1年ぶりに再設定していただきました(再設定となりました)。今週木曜日、再度関係者が集まる予定です。これにも感謝しています。私は、先々週、一回目の会合で、この感染症法に関する議論、政府・与党で御検討いただいていることは(検討していることは)大事なことなんですが、与野党で、最終的には法律ですから、前広に、早めに御議論いただくことを(早めに議論することを)提案しています。

 是非、部下たる、その場に出席しておられる木原副長官に、この件は与野党で事前によく話し合えということを御指示いただきたいと思いますが(指示すべきですが)、お願いできませんか(お願いできますか)」

 岸田文雄「御質問の趣旨は(質問の趣旨は)、この法案についてそこで話し合えということでしょうか。(小川委員「まあ、それに限らず中身を広く」と呼ぶ)はい。

 いずれにせよ、これは国会において、法案の取扱い、そしてどのような議論を進めていくのか、これは国会のそうした協議会等の場でしっかりお決めいただくことだと思います(決めることです)。政府の立場から具体的に何か申し上げることは控えなければならないと思いますが(政府の立場から具体的に何か口にすることは控えなければなりませんが)、是非、与野党で議論を深めていただくことを期待いたします(議論を深めることを期待します)」

 小川淳也「これは、正確に伝わっているかどうか。政府・与野党連絡協議会でして、政府代表で木原副長官がお見えなんです(出席しています)。そして、与党の責任者では西村先生がいらっしゃる(います)。野党は私どもがおります(います)。ですから、政府の立場から、ちゃんとこれは前広に、幅広に早期の議論を開始しろとおっしゃっていただいた方がいいんですよ(言ってくれた方がいいんですよ)。

 もう一度お願いします(もう一度願います)」

 岸田文雄「法案の取扱いということでありますので(法案の取扱いですので)、これは国会でお決めいただかなければならないということです(これは国会で決めることになります)。議論については、政府としてしっかり、申し上げること、説明すべきことはしっかり責任を果たしていきたいと存じます(いきたいと思います)」

 小川淳也「ちょっと私も職責上厳しく申し上げていますが(職責上厳しく言ってますが)、まさにそういうところのリーダーシップなんですよ。誰かに任せる、どこかに任せるじゃなくて、総理はどうされたいか(どうしたいのか)、総理は何を指示しているのか、何を決めているのか、何を発信しているのかが問われているということだから申し上げているんですが(発言しているんですが)、御答弁は不十分だと思います(答弁は不十分です)。

 関連して……(発言する者あり)」

 根本委員長「やじは控えてください」

 小川淳也「関連して、今回の対処方針の見直しなんですが、私、ちょっと切ないと思っていることがもう一つありまして、子供たちに、やれ部活動の制限だ、まあ確かにそうなんですよ、学校と保育園で感染が広がっていることは事実。しかし、部活動の制限、それから練習試合をするな、体育も気をつけろ、給食は向かい合って食べちゃいけない、合唱するな、管弦楽を吹くな。非常に私、つまり、私たち大人にとってもこの二年、三年、極めて重圧がかかっていますが、子供たちは私たちの想像以上だと思うんですね。

 この大事な発達段階にある子供たちにこれだけ厳しいことを言い、そして、これは後々どの程度影響を及ぼすのか、誰にも分かりません。そして、現にこの世代の子育てをしておられる保護者の皆様の心労(保護者たちの心労)、心配たるや、切々たるものが伝わってきます。

 これが、ちょっと私もここではっきり言い切れないんですが、必要ないとも言い切れない。しかし、大人社会に対するメッセージは経済優先でしょう。

 そして、ちょっとうがった見方と言われるかもしれませんが、子供たちには投票権もない。最も弱い立場ですよ、この社会において。そこには、部活やめろ、練習試合するな、体育も気をつけろ、給食は向かい合うな、合唱はやめろ、管弦楽は吹くなと言いながら、今、病床使用率、そうはいっても、都内、5割から6割に迫ろうとしています。毎日100人近い人が死んでいる。そして重症者は千名を超えた。

 でも、今なお大人社会全体に対する緊急事態宣言は、総理、今、念頭にないんですか」

 岸田文雄「前半の部分については、感染症対策をしっかり進めるということ、そして、社会経済活動をできるだけ継続していくということ、この二つのバランスを取っていくことが大事であるということで、様々な対策を取っています。

 そして、最後の質問、緊急事態宣言、考えていないのかという質問についてですが(質問ですが)、これは今、緊急事態宣言については、病床の逼迫度に重点を置いたレベル分類を参考にしつつ、総合的に判断するということになっております(なっています)。先ほど言いましたそのバランス等もしっかり考える中で、現時点では緊急事態宣言の発出は検討しておりませんが(検討していませんが)、こうした対策、今、蔓延防止等重点措置等を行っているわけですが(行っていますが)、こうした対策等の効果等も含め、今後の事態の推移を注意深く見極めて、必要な対応を考えていきたいと思っております(考えていくことにします

 小川淳也「この点、尾身先生にも率直にお聞きしたいんです(率直に尋ねます)。尾身先生、今日はありがとうございます。

 2点お聞きします(聞きます)。一つは、緊急事態宣言についてどう考えるか。もう一つは、週末に、ファイザー、ファイザー、モデルナの交互接種をされましたね。その後、御自身の体調変化を含めて、国民の皆様に説明できることがあれば。2点御質問申し上げます(2点質問します)」

 尾身茂「まず、緊急事態宣言のことですけれども(ことですが)、私は、緊急事態宣言の出す基準というのは、これまでどおり、単に病床使用率だけでなくて、入院患者の重症度など医療の逼迫を中心に、と同時に、もちろん感染者の数も踏まえて総合的に判断すべきだと思っています。

 それで、今出すべきかどうかという話は、蔓延防止重点措置の効果、及び、先週我々が出したいろいろな提案、そうした効果を踏まえて、重症者の増加も含め、医療機能の不全が想定されれば、実際に機能不全となる前に緊急事態宣言を出すオプションもあると思いますが、前回のここでも申し上げたように(発言したように)、その場合には、一体これから社会経済活動をどこまで制限をするのか、それから、オミクロン株に特徴的な対策はどんなものかというものの国民的なコンセンサスが必要だと思います(必要です)。

 二つ目の御質問(質問)は、先週、私は、ファイザー、ファイザー、それでモデルナを打たせてもらいましたけれども(打ちましたが)、その反応は、もう二日たちましたけれども(二日たちましたが)、打ったときの感覚も、腕の感じ、私は熱とかはありませんでした、ここのやや重だるい感じは、これは正直に申し上げて、ファイザーのときよりも軽かったです。と同時に、今日も打った副反応というのは全くございません(全くありません)」

小川淳也「ありがとうございました。個人的なことも含めて御答弁いただいたことに感謝申し上げます(個人的なことも含めた答弁に感謝します)。

 それで、確かに、総理、これは本当に簡単ではない。私もお聞きするのが仕事ですからやっていますが(私も聞くのが仕事だからやっているが)、これは簡単でないことは私も認めます。認めますが、さっき申し上げたのは(さっき発言したのは)、子供たちに大変な制限がかかっている。人生のすごく大事な発達段階。しかし、大人社会全体を見ると、経済優先だ、経済は止められないと。何か、難しいことは認めるんですが、しかし、やはり大人たち挙げて、本当に一刻も早い感染収束に向けて努力しているんだということは一方にないと、これは子供たちだって納得できないし、非常に心理的負担も大きいと思うんですね。

 ましてや、今日ちょっと、同じようなメッセージと受け止めていいのかどうか分かりませんが、非常に消極的な総理と、あり得るとおっしゃる尾身さんと、そして、与党の政調会長なんかはもうちょっと踏み込んでおっしゃっていましたから(踏み込んで発言していたから)、この辺の発信が乱れることについても、私は適切だとは思わない。

 そういうことも含めて、司令塔機能も、またこれも6月なんでしょう、遅いと思いますよ。早く結論を出して、方向性を示していただかないと(方向性を示さないと)ということを重ねて指摘したいと思います(重ねて指摘しておきます)。

 関連して、瑣末なことだと思われるでしょうが、大事なことなのでお聞きします(質問します)。いわゆるアベノマスクの配付、処分について。

 これは、37万件の応募があった、2億8千万枚の配付希望がある、しかし在庫は8千万枚しかない。どうやって2億8千万枚を、8千万枚に査定する必要があると思いますが、これは誰が担い、どのようにコストを負担するんですか」

 後藤茂之「今、小川委員の指摘がありましたとおり(指摘どおり)、昨年12月24日から本年1月28日までの間に合計37万件という多数の申出をいただいたのはそのとおりでございます(多数の申出があったのはそのとおりです)。

 現在、厚生労働省において、まずはこの多数の希望について具体的な集計作業を進めているところでございまして(ところでして)、今後おおむね1か月程度で、個々の希望者への配付枚数等を決定しまして(決定して)、その状況を公表する予定としております(予定です)。

 配付希望者の内訳や配送費用については、こうした作業の結果明らかになるものであり(明らかになりますから)、現時点でお示しすることは(示すことは)厳しい状況です。

 小川淳也「これは総理にも御承知おきいただきたいんですが(これは総理も承知しておくべきですが)、担当課たる厚生労働省医政局経済課には約30名の職員がいます。37万件の応募を精査するんです、これから1か月かけて。1人1万件を超えるんですよ、みんなでやったとして、毎日やったとして。このマスクの配付に大事な医政局の30名を、1人1万件、1か月かけて精査させることにどれほど国政上の意味がありますか。どういう意味があるんですか。

 お聞きしますが(聞きますが)、厚生労働大臣、厚生労働省は、基本的対処方針において、1月25日の変更かな、不織布マスクを感染症対策としては推奨し、布マスクは推奨していませんね、この事実だけ」

 後藤茂之「不織布マスクの方が布製マスクよりも効果があり、基本的に対処方針で不織布マスクが推奨されている(不織布マスクを推奨している)というのは事実で、これは国民の皆さんによく分かっていただきたいと思っております(これは国民のみなさんはよく理解しておいてください)。

 ただ、要するに、飛沫を出す側と吸い込む側の双方がマスクを装着することでマスクの効果というのは高まりますし、それから、不織布マスクの内側にガーゼを当てていただくことで(当てることで)マスクの着用が心地よくなるとか、いろいろな工夫はあるだろうというふうに思っております(思います)。

 小川淳也「だったら、それを厚生労働大臣、率先してやってください。布マスクして、その上から不織布マスクして、率先してやってください。そんな人見たことありませんよ。

 不織布マスクと書いてあるんだから、マスク着用は、厚生労働省の、コロナ対策本部の本部決定で。その感染症対策に使えない布マスクを、もう一回申し上げますが、30名の職員で37万件を精査して、配送する。愚策にもほどがあるでしょう(ほどがあります)、総理。

 それで、じゃ、もう一つお聞きしますね(もう一つ聞きます)。感染症対策に使えないんだから。

 ちまたでは言われているわけです(ちまたで言われています)、御存じだと思いますが(承知しているはずですが)、使い捨ての雑巾にしたらいいじゃないかとか、野菜の栽培の苗床にしたらいいじゃないかとか、野菜の乾燥防止だとか、赤ちゃんの暑さ防止に保冷剤を入れたらどうかとか。いや、それは、知恵を働かせてこういう提案があることはいいことですが、問題は、こういう用途のために税金でマスクを調達し、それを査定して配送することは政策判断として適切かどうかという問いに真っすぐ答えなきゃいけない。総理、いかがですか」

 後藤茂之「在庫となっている布製マスクは、そもそも、国民の皆様にマスクとして活用いただくという目的で、配付することを目的に調達したものでございます(マスクとして活用する目的で、配布すべく調達したものです)。本来の事業目的を踏まえれば、今般配付する布製マスクも、マスクとして御活用いただくことを優先して配付するべきだというふうに思いますけれども(マスクとしての活用を優先して配布すべきですが)、具体的な利用法については、有効に活用していくということで考えております(考えています)」

小川淳也「いや、厚生労働大臣、せっかくお出ましいただいたので(せっかく出席しているのだから)、これは有効な使い方ですかと聞いています。雑巾、野菜の苗床、乾燥防止、赤ちゃんの保冷剤、これは有効な使い方ですかと聞いています」

 後藤茂之「今、具体的な事例についてそれぞれ申し上げるということではありませんけれども(申し上げはしませんが)、少なくとも、使い捨て雑巾やいわゆる栽培に使われるような話ですか(使うという話ですか)、そういうことも含めて、それが適切な用法であるかということからいうと(それが適切な用法であるかというと)、有用とは少し違うように思います」

 小川淳也「今、否定なさいました。

 総理、もう申し上げたことは伝わっていると期待したいと思うんですが(私が言おうとしたことは伝わっていると思いますが)、私もちょっといろいろな声も受けていまして、これは、一件審査して全部配送って、ちょっと、どこまで親切なんだということですわね。税金ですから、元手は全部。

 これも私、いいとは思えないんですが、せめて最悪じゃないかもしれないのは、もう本当に迷惑千万ですが、都道府県や市町村や国の出先機関に一定量を配送して、御入り用の方は取りに来てくださいという方がまだましじゃありませんか(まだましじゃないですか)、総理。処分するか、使うのであればそういうもうちょっとましな配送方法を考えるか、もうちょっと改善が必要じゃありませんか」

 岸田文雄「まず、御指摘の布製マスクですが(指摘の布マスクですが)、これは、かつて日本の国においてマスクが不足をし、国民の中で、マスクが不足をしている、そしてマスクが高騰していく、大きな不安が社会の中で広がっていた、こうした事態に対して、少しでも国民の不安を和らげるために何か施策がないか、こういったことで打ち出された施策であったと認識をしています(認識しています)。しかし、その後、マスクの流通は回復しました。そして、不足に対する心配、これは払拭されました。

 こういったことを踏まえて、昨年末、私の方から厚生労働省に対して、希望をされている方に配付をし、有効活用を図った上で、年度内をめどに廃棄をするよう指示をした、こうしたことであります(こうしたことです)。

 そして、それを受けて、今、多くの方々がこのマスクを利用したいということで希望を寄せられている(利用したいと希望している)、これが、先ほど委員も御指摘になられた(指摘した)、この多くの希望者が殺到している状況であると認識をしています(状況だと認識しています)。希望をされる方があるのであるならば(希望者があるならば)、これは是非有効利用はしていただきたいと思っています(これは是非有効利用を願いたいと思っています)。

 そして、廃棄なのか、それから、それを配送するのか、このコストのこともおっしゃいましたが(言いましたが)、有効利用していただけるのであるならば(有効利用できるのであれば)、当初からこの布製マスクについては配送の予算というのは想定していたわけでありますから、これは配送した上で有効利用していただく(有効利用をお願いする)、こうしたことを考えていただくのは(こうしたことを考えるのは)意味があるのではないかと考えています(考えます)」  

 小川淳也「ちょっと受け止め切れない御答弁ですよ(答弁ですよ)。

 そもそも、あの感染が流行していたときに、第一波、そしてマスクが手に入らない状況下で、布マスクがどれほど国民の安心につながったのかというそもそもの問題があります。しかし、そのときに調達したものだから、苗床にしましょう、雑巾にしましょうと言っていることも含めて有効活用してもらえばいいという話にはならないでしょうとお聞きしているんです(聞いているのです)。配送費用だって、今回その安心のためじゃありませんからね、そこに何億もかけるんですかという話なんですよ。考えにくい。

 これはまたやらせてください、改めて。もう、ちょっとこればかりはあれだから。

 この国会で一つのテーマたる統計について聞きます。

 まず、資料を見てほしいんですが、総理、ちょっと率直なところをお聞きします(率直なところを聞きます)。

 建設総合統計、不正があったのは建設受注統計です。しかし、そこから数字を取る建設総合統計、これはGDPに直結しています。この直ちに不正があったものではない建設総合統計の、不正二重計上が開始された2013年、極めて数字がバブル期ほどに伸び上がる異常値を示していますが、これは不正統計の影響ですか。それとも、実際にこんなに建設需要がよかったと判断すべきですか。

 ちょっと、総理、これも通告していますから、お答えいただきたいと思います(答弁願います)。

 斉藤鉄夫(国交省)「建設総合統計の出来高は、平成24年、2012年から平成25年、先ほどおっしゃった(先ほど言及された)2013年にかけて、42・8兆円から48・0兆円に上がっておりまして(いまして)、おっしゃるとおり(言及どおり)、12・1%の増となっております(います)。

 このような伸びとなったのは、東日本大震災からの復旧復興事業や防災・減災対策、それから老朽化対策等を盛り込んだ平成24年度補正予算の執行が本格化したことにより、公共部門の建築、土木投資額が押し上げられたことや、景気の改善により民間部門の建築、土木投資額が押し上げられたことなどによるものと考えております(考えています)。

 なお、実績ベースの数字、これは受注統計と関係のない、実績の建設投資額の実績値ですが、これを見ましても(見ても)、平成24年度の42・4兆円に対して、平成25年度は48・3兆円と13・8%の増となっております(います)。

 また、それとはまた独立した、受注とは関係のない統計で表しました(表した)元請完成工事高、施工統計調査ですけれども(ですが)、11・0%の増となっております(なっています)」

 小川淳也「総理、今の御答弁をお聞きいただいて(今の答弁を聞いて)、それからこの数字を見ていただいて(この数字を見て)、私、当初はにわかに信じ難いと思ったんです(信じ難かった)。しかし、よく調べ、そして話を聞けば聞くほど、不正統計の影響だとはやはり断定できないと思うに至りました。  

 今おっしゃったように(発言したように)、当時、第2次安倍政権発足直後、公共事業にアクセルを踏んだ、そして、景気回復とおっしゃったが(景気回復を打ち出したが)、まあ、震災のこともある。それ以上に、私は、翌14年が消費増税の年でしたから、恐らく、民間の住宅などを中心に駆け込み需要が相当程度あったということも影響していると。

 したがって、何が言いたいかというと、これが直ちに統計不正の影響とは断定できない。しかし、私どもは、なぜこんなに政府の統計に対して不信の目を持っているかということに改めて思いが至るんです。

 それで、総理、建設関連だけで申し上げますが(説明しますが)、2013年にまさにこの二重計上の罪が生じました、それ以降。2015年、まさに国交大臣がおっしゃいましたが(まさに国交大臣が言いましたが)、建設投資額に、突如として、その年から補修費や改修費を計上したんですよ。これによって、建設投資額は当時の47兆円から57兆円、22%増大しました。まさにこの2015年はGDPの計算方法を一斉に見直した年で、僅か一夜にして、国民の懐は全く暖まっていないにもかかわらず、僅か一夜にして31兆円GDPが増大したその年です。このときに、建設投資に、47兆から57兆まで、突如として補修、改修を乗せているんですね。

 さらに、2020年、21年、今度は、これは受注統計ですが、調査票に回答してくれない事業所があるんです。それが大体3割ぐらいある。その3割の事業所の数字を、回答していないのに回答したものと擬制し、3割数字を積み増す統計操作をやっているんですよ、21年。このときに、受注統計は54兆から67兆、一気に24%増えているんです。

 それで、私は何を問題にしたいかというと、これは、それぞれに理屈があることは認めます。しかし、統計は、やれ正確性を期せ、精度を高めろというかけ声の下に、3年前にさんざんこの議論をしましたが、統計に政治あるいは行政の手が当然入るわけですね。それで、連続性が失われるんですよ。連続性が断絶されるんです。もう比較のしようがなくなる。

 統計にとって重要なのは、正確性も精度もそうでしょうが、統計にとっての命は連続性なんです。これは、例えて言うと、人が毎日体重計に乗り、血圧を測り、心拍数を数えているようなことに類する話です。民のかまどが本当に暖まっているかどうかは、この推移を見ないと分からない。しかし、ある日突然、いい数字が欲しいから、体重計に乗るときには下着も着けろ、セーターも着たままでいい、上着も羽織れ、コートも着用だ、ついでにマフラーも手袋もだとやることで、いや、それは人前に出るときはふだんそうだからという理屈なんでしょうが、人体の繊細な変化を追えなくなるんですね。

 しかも、この大幅に統計を触ったときに、旧方式で例えば10年、接続統計を別途作成し、経年変化を追って、統計変更の説明責任、影響についての説明責任を果たしますならまだ分かる(果たすならまだ分かる)。それも不可能な形で断絶してきたのが、第2次安倍政権以降の統計操作なんですよ。

 総理、こういうことが背景にあるから、疑いの目を持って見られる。ちょっとお願いします。統計手法を変えたときは、せめて前後10年、旧方式による接続統計を別途作成し、経年変化を正確に追えるように説明責任を果たしてほしいと思いますが、その点、答弁を求めたいと思います(答弁を求めます)」

 斉藤鉄夫「まず、建設総合統計についてお話をさせていただきます(説明します)。

 まさに今……(発言する者あり)

 根本委員長「じゃ、国交大臣の担当だけ言ってください、担当の部分だけ。今の接続の話。その後、内閣総理大臣」

 斉藤鉄夫「はい。

 建設総合統計については国土交通大臣が担当しておりますので(担当していますので)、この建設総合統計の接続性について御答弁させていただきます(答弁します)。

 この建設総合統計についても、先ほど委員おっしゃるとおり(先ほど委員の発言どおり)、接続性、連続性は極めて大事です。そのために、今回……(発言する者あり)」

 根本委員長「斉藤大臣、簡潔に」

 斉藤鉄夫「重ねてやっております(やっています)。そして、この建設総合統計は、最終的に、いわゆる……(発言する者あり)」

 根本委員長「簡潔に話してください」

 斉藤鉄夫「はい。

 この建設総合統計、3年後にいわゆる実績値で確定をいたします(確定します)。その3年間及び4年間については、このいわゆる旧来の方法と新しい方法、重ねてやって、連続性に配慮しているところでございます(連続性に配慮しています)」

 岸田文雄「まず、統計の不適切な処理によって統計の信頼が損なわれているという点については、大変遺憾なことであると思います(大変遺憾なことです)。

 その上で、委員の御質問でありますが(委員の質問ですが)、今回、国土交通省でも検証委員会の議論を行い、報告を行ったわけですが(行いましたが)、この報告も含めて、今度は政府の統計委員会、総務省にあります統計委員会、この統計の専門家において、その報告の検証も行い、なおかつ、各府省の基幹統計について集計プロセスを点検するということになっておりますし(なっていますし)、また、公的な統計の改善施策、ここで取りまとめるということになっています(取りまとめることになっています)。

 委員の御質問の点についても(委員の質門の点についても)、この統計委員会の議論においてしっかり議論をし、その成果をしっかり反映して、政府としてはこの信頼回復に努めていかなければならないと考えております」

 小川淳也「総理、本当に、もうちょっと、何というんですかね、御自身は何を決め、何を御指示なさるのか(するのか)。嫌なこと、駄目なことは、そう言っていただいていいんですよ(そう言うべきです)。しかし、これからどうなるのかが分からない、総理の答弁からは。それをもうちょっとはっきり発信いただくことに努めていただく必要があると思います(もうちょっとはっきり発信すべく努めるべきです)。

 残りの時間で、この間、私、本会議で代表質問に立たせていただきました(立ちました)、そのときに十分聞き切れなかったことを二点お聞きします(聞きます)。

 赤木裁判で、なぜ佐川氏に、1億円の賠償金を払いますからね、これは岸田総理のポケットマネーではありません、国民の税金からです。つまり、国は責任を認めたということです。しかし、その直接間接の大きな原因になったであろう佐川氏に求償権を行使すべきだということをお尋ねしましたが(尋ねましたが)、求償権があるとは考えていないと早々に即答された、その理由。

 そしてもう一点は、この質問でした。学術会議の任命拒否問題、まだ引きずっているわけですが、これは違法状態ではありませんかと聞いた。しかし、手続が終了するとお答えになった。手続の終了いかんを聞いていません。違法状態にあるのではないかと聞いています。

 この二点、明確に御答弁を求めたいと思います(明確に答弁を求めます)」

 岸田文雄「2点御質問をいただきました(2点質問ありました)。

 まず1点目につきましては(まず1点目は)、国家賠償法に基づく求償については、当事者たる財務省において、国が個々の職員に対して求償権を有するとは考えていないと判断しているということを承知しています(国は個々の職員に対して求償権を有する決まりとはなっていません。)。この判断につきましては、当事者たる財務省、すなわち財務大臣にこれを御確認をいただきたいと思っております(確認してください)。

 そして2点目。日本学術会議の件につきまして、違法状態ではないか、この点について答えろという御質問でありますが(質問ですが)、これにつきましては(これについては)、公務員の選定、罷免権が国民固有の権利であるという考え方からしますと、国家公務員である日本学術会議の会員は内閣総理大臣が任命権者であり、学術会議の推薦どおりに任命しなければならないというわけではないと考えています。

 また、これは法律を見ましても、定年による退職等は認められているわけですから、絶えず210人の人数を満たしていなければならないというものではない。すなわち、会員が常に210人でいる状態を求めているものではないと認識をしております(認識しています)。

 こういったことから、違法であるという指摘は当たらないと考えている次第であります(違法であるという指摘は当たりません)」

 根本委員長「小川淳也君。必要であれば財務大臣、よろしいですか」

小川淳也「財務大臣がおっしゃることは事務的にお聞きしました(財務大臣の発言は事務的に聞きました)。佐川氏が亡くなられた赤木氏に対して、担当を外すなども含めて、財務省全体として十分な安全配慮義務を行ったという回答でした。しかし、これは、そもそもが違法な疑いの濃い命令ですから、指示ですから。

 安全配慮義務で、これはつまり、重過失はありませんというお答えでしたが(答弁でしたが)、求償に値するのは重過失だけではなくて、違法、不法、不当な行為に対する故意が認められた場合も、当然これは法律上、求償の対象になります。ここは、私、よく研究する必要があると思うんですね、この点は。個人の裁判が続いていますから、なおさら。

 それから、学術会議、これも本当は徹底して議論しなきゃいけないんですが。学術会議法は、210名の会議員をもって組織しているという規定が7条にあります。それから、25条、26条には、内閣総理大臣は勝手に辞めさせられないという規定があるんですよ。会員から辞職の申出があったときですら、日本学術会議の同意を得なければ辞職の承認はできないという規定がある。そして、不適当な行為があったときですら、学術会議の申出に基づいてしか退職させることはできない。つまり、実質的な内閣総理大臣の任命権は、明文で拒否、否定されているということです。

 それも含めて、私は、今日いろいろお聞きしましたが(質問しましたが)、コロナ対策もそう、このアベノマスクもそう、不正統計も、あるいは、ちょっと今日、本当は改憲の議論もしたかったんですが、改憲もそう、学術会議、そして赤木裁判。結局、岸田政権は、安倍、菅前、元総理に対する忖度、この影を引きずり、その負の遺産を清算する決意と覚悟に欠け、そして、表紙を替えたおつもりでしょうが(つもりでしょうが)、十分に機能していない、このことが4か月たつ中で明らかになりつつあるということだと総じて受け止めています。

 我々野党としては、これからも厳しく対峙をし、お尋ねをし、そして、いずれ我々が受皿にならない限りこの根本と本質は変わらない、このことを申し上げ、午前中の質疑を終えたいと思います(午前中の質疑を終えます)。

 ありがとうございました」

  根本委員長「午後1時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします(休憩に入ります)」


 《日本人の行動様式権威主義の上が下に強いていて、下が上に当然の使用とする丁寧語が日本人の労働生産性を低くしている(3)》に続く

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日本人の行動様式権威主義の上が下に強いていて、下が上に当然の使用とする丁寧語が日本人の労働生産性を低くしている(3)

2022-04-30 06:53:39 | 政治
 さて、どんなものだろうか。手直し前の言葉と手直し後の言葉を比較すれば、手直しした理由の見当がつくと思う。こうして直していくと、格式張ったバカ丁寧な言い回しが如何に多いかである。2、3説明するが、小川淳也の質問ののっけから、「この第6波がもたらした全ての犠牲と、そして多大な困難に、心より哀悼とまた連帯の意を表したいと思います」を「表します」と直したが、「連帯の意を表する」という態度は小川淳也にとって個人的な心情からか、国会議員としての義務、責任からか実行しなければならない行為であって、「思います」と希望することではなく、もっと直接的な行為としなければならないからである。

 態度や行動を示す動詞に期待や希望、あるいは推測を示す動詞である「思います」をつける発言が多いが、態度や行動に対する意志を期待や希望や推測の方向に心なし引き寄せてしまい、態度や行動そのものに対する明確な意志の表明を一定程度削いでいることに気づかないでいる。大体が質疑応答は言葉の闘わせ合いである。答弁を求める際、「答弁を求めます」と単刀直入に迫るのではなく、「答弁を求めたいと思います」と「思います」をつけるのは、自分では気づいていないだけで、言葉の闘わせ合いという意識を少なからず欠いているからだろう。

 格式張ったバカ丁寧な言い回しの代表的な例として挙げると、例えば岸田文雄が「1日も早く一日100万回の接種を実現していきたいということを申し上げている次第であります」の発言を「実現していきたいと伝えているところです」と直したが、既に習慣になっているからだろう、簡潔に済ますことができるにも関わらずに殊更に装いを凝らした言い回しにしている。立派な言葉遣いに見せようとする勿体付けの意識の積み重ねがこういった言葉遣いを習性とするに至ったのだろうが、結果、「です」、「ます」で済ますことができるところまで、「~でございます」とか、「~いたします」などと余分な飾り付けを施すことになる。

 根っこのところに自分は国会議員だ、閣僚だ、総理大臣だ、日本の官僚だといった権威主義がベースの何様意識を棲まわせているから、一般的な丁寧語まで超えて、格式張ったバカ丁寧な言葉まで使うようになったのかもしれない。

 もう一つ、当事者意識を欠いた言葉の多用である。「~ということを承知しています」、「~ということを聞いています」

 例えば岸田文雄の「国家賠償法に基づく求償については、当事者たる財務省において、国が個々の職員に対して求償権を有するとは考えていないと判断しているということを承知しています」

 この場合の「承知しています」は単に求償権について判断している財務省の考えを承知していることとして述べているに過ぎない。だが、総理大臣は全ての省庁とそれぞれの省庁の所管大臣を統括する最終責任者に当たる。最終責任者として全ての省庁の政策に関わる如何なる判断・考えに対してもそれを決まり事とする段階で承認を与えていることになるから、共有する決まり事となり、同時に決まり事としたことの責任の共有と自身を最終責任の保有者と位置づける自覚を保持していなければならない。つまり各省庁のどのような決まり事も自分事として把握していなければならない。

 だが、決まり事を「承知しています」だけでは、決まり事の共有も、決まり事としたことの責任の共有も、最終責任の保有者としての自覚も感じ取れないし、伝わってもこない。当然、自分事とする意思を感じることもできない。あくまでも財務省の判断をこれこれこうだと紹介したとしか受け取れない。結果、当事者意識は置き去りにされ、他人事にしか映らない。だから、岸田文雄のこの発言箇所を、「国は個々の職員に対して求償権を有する決まりとはなっていません」と責任を共有する自分事とした言葉に変えた。

 これは小川淳也に対する答弁ではなく、次に立った大串博に対する答弁だが、在日米軍が米兵士にワクチン接種と共に米国出国時と日本入国後のPCR検査の義務付けを2021年9月に解除し、外務省に伝えたとしていたが、外務省は12月に把握と主張。この時期に沖縄ではコロナ感染が急拡大したが、日本側はこの3カ月間、急拡大と検査義務の解除を知らないこととして結びつけて考えはしなかった。大串博は外務省は米側とどういう遣り取りをしたのか質問した。

 林芳正「実務レベルでやり取りを行った結果、在日米軍からは、在日米軍として新型コロナ対策に関して日本側と緊密に連携する中、出国前検査の免除について外務省に通知していたとの認識であるとの説明がありましたが、これに対し、日本側としてはそのような認識は持っていなかった旨、改めて明確にしたところでございます。

 その上で、両者の認識にそごがあったことを踏まえて、今後はそうした状況が生じないように、検疫・保健分科委員会の場を含めて、より一層緊密に連携していくことで米側と一致したものと承知しております」

 この場合も米側との取り決めを「承知している」こととのみ位置づけて、外務省を所管する外務大臣の立場上、自身の責任事項として引き受ける意識を欠いている。話し合い、取り決めたのが担当部署の職員であったとしても、決定事項の報告を受けているだろうから、受けていなければ、「承知しております」という言葉は出てこない、あくまでも「より一層緊密に連携していくことで米側と一致しました」と所管大臣としての責任を関与させるべきだろう。

 例え自身が直接的に関わって取り決めたことではなくても、組織の最終責任者である以上、全ての責任を引き受ける意識は持たなければならない。でなければ、最終責任者と言えない。にも関わらず、「~ということを承知しています」、「~ということを聞いています」といった発言が多いのは下手なことで足を引っ張られて、経歴に傷をつけたくないといった責任回避意識をどこかに根付かせていているからなのだろうか。

 責任意識が強ければ、回りくどいバカ丁寧な発言や格式張った発言、持って回った発言は影を潜めて、「です」、「ます」の断定口調の多用が見られることになり、この面からも情報処理の効率化が図られて、ゆくゆくは労働生産性の向上という究極の目的達成の一助になるかもしれない。

 丁寧語からの普通語への転換が権威主義的行動様式からの脱却と情報伝達の効率化へといざない、最終的に労働生産性の向上という姿を取っていくことになるというこの目論見の実現性はどう判断されるだろうか。

 最後に小川淳也の質疑を取り上げた序にアベノマスクの配付について追及した箇所での情報処理の程度を見てみたいと思う。一部には小川淳也を論客と評価する声もある。勿論、情報処理の程度は仕事の生産性に関係していくことになり、広く捉えた場合、労働生産性にも影響する。

 小川淳也「関連して、瑣末なことだと思われるでしょうが、大事なことなのでお聞きします(質問します)。いわゆるアベノマスクの配付、処分について。

 これは、37万件の応募があった、2億8千万枚の配付希望がある、しかし在庫は8千万枚しかない。どうやって2億8千万枚を、8千万枚に査定する必要があると思いますが、これは誰が担い、どのようにコストを負担するんですか」

 後藤茂之「今、小川委員の指摘がありましたとおり(指摘どおり)、昨年12月24日から本年1月28日までの間に合計37万件という多数の申出をいただいたのはそのとおりでございます(多数の申出があったのはそのとおりです)。

 現在、厚生労働省において、まずはこの多数の希望について具体的な集計作業を進めているところでございまして(ところでして)、今後おおむね1か月程度で、個々の希望者への配付枚数等を決定しまして(決定して)、その状況を公表する予定としております(予定です)。

 配付希望者の内訳や配送費用については、こうした作業の結果明らかになるものであり(明らかになりますから)、現時点でお示しすることは(示すことは)厳しい状況です。

 小川淳也「これは総理にも御承知おきいただきたいんですが(これは総理も承知しておくべきですが)、担当課たる厚生労働省医政局経済課には約30名の職員がいます。37万件の応募を精査するんです、これから1か月かけて。1人1万件を超えるんですよ、みんなでやったとして、毎日やったとして。このマスクの配付に大事な医政局の30名を、1人1万件、1か月かけて精査させることにどれほど国政上の意味がありますか。どういう意味があるんですか。

 お聞きしますが(聞きますが)、厚生労働大臣、厚生労働省は、基本的対処方針において、1月25日の変更かな、不織布マスクを感染症対策としては推奨し、布マスクは推奨していませんね、この事実だけ」

 後藤茂之「不織布マスクの方が布製マスクよりも効果があり、基本的に対処方針で不織布マスクが推奨されている(不織布マスクを推奨している)というのは事実で、これは国民の皆さんによく分かっていただきたいと思っております(これは国民のみなさんはよく理解しておいてください)。

 ただ、要するに、飛沫を出す側と吸い込む側の双方がマスクを装着することでマスクの効果というのは高まりますし、それから、不織布マスクの内側にガーゼを当てていただくことで(当てることで)マスクの着用が心地よくなるとか、いろいろな工夫はあるだろうというふうに思っております(思います)。

 小川淳也「だったら、それを厚生労働大臣、率先してやってください。布マスクして、その上から不織布マスクして、率先してやってください。そんな人見たことありませんよ。

 不織布マスクと書いてあるんだから、マスク着用は、厚生労働省の、コロナ対策本部の本部決定で。その感染症対策に使えない布マスクを、もう一回申し上げますが、30名の職員で37万件を精査して、配送する。愚策にもほどがあるでしょう(ほどがあります)、総理。

 それで、じゃ、もう一つお聞きしますね(もう一つ聞きます)。感染症対策に使えないんだから。

 ちまたでは言われているわけです(ちまたで言われています)、御存じだと思いますが(承知しているはずですが)、使い捨ての雑巾にしたらいいじゃないかとか、野菜の栽培の苗床にしたらいいじゃないかとか、野菜の乾燥防止だとか、赤ちゃんの暑さ防止に保冷剤を入れたらどうかとか。いや、それは、知恵を働かせてこういう提案があることはいいことですが、問題は、こういう用途のために税金でマスクを調達し、それを査定して配送することは政策判断として適切かどうかという問いに真っすぐ答えなきゃいけない。総理、いかがですか」

 後藤茂之「在庫となっている布製マスクは、そもそも、国民の皆様にマスクとして活用いただくという目的で、配付することを目的に調達したものでございます(マスクとして活用する目的で、配布すべく調達したものです)。本来の事業目的を踏まえれば、今般配付する布製マスクも、マスクとして御活用いただくことを優先して配付するべきだというふうに思いますけれども(マスクとしての活用を優先して配布すべきですが)、具体的な利用法については、有効に活用していくということで考えております(考えています)」

小川淳也「いや、厚生労働大臣、せっかくお出ましいただいたので(せっかく出席しているのだから)、これは有効な使い方ですかと聞いています。雑巾、野菜の苗床、乾燥防止、赤ちゃんの保冷剤、これは有効な使い方ですかと聞いています」

 後藤茂之「今、具体的な事例についてそれぞれ申し上げるということではありませんけれども(申し上げはしませんが)、少なくとも、使い捨て雑巾やいわゆる栽培に使われるような話ですか(使うという話ですか)、そういうことも含めて、それが適切な用法であるかということからいうと(それが適切な用法であるかというと)、有用とは少し違うように思います」

 小川淳也「今、否定なさいました。

 総理、もう申し上げたことは伝わっていると期待したいと思うんですが(私が言おうとしたことは伝わっていると思いますが)、私もちょっといろいろな声も受けていまして、これは、一件審査して全部配送って、ちょっと、どこまで親切なんだということですわね。税金ですから、元手は全部。

 これも私、いいとは思えないんですが、せめて最悪じゃないかもしれないのは、もう本当に迷惑千万ですが、都道府県や市町村や国の出先機関に一定量を配送して、御入り用の方は取りに来てくださいという方がまだましじゃありませんか(まだましじゃないですか)、総理。処分するか、使うのであればそういうもうちょっとましな配送方法を考えるか、もうちょっと改善が必要じゃありませんか」

 岸田文雄「まず、御指摘の布製マスクですが(指摘の布マスクですが)、これは、かつて日本の国においてマスクが不足をし、国民の中で、マスクが不足をしている、そしてマスクが高騰していく、大きな不安が社会の中で広がっていた、こうした事態に対して、少しでも国民の不安を和らげるために何か施策がないか、こういったことで打ち出された施策であったと認識をしています(認識しています)。しかし、その後、マスクの流通は回復しました。そして、不足に対する心配、これは払拭されました。

 こういったことを踏まえて、昨年末、私の方から厚生労働省に対して、希望をされている方に配付をし、有効活用を図った上で、年度内をめどに廃棄をするよう指示をした、こうしたことであります(こうしたことです)。

 そして、それを受けて、今、多くの方々がこのマスクを利用したいということで希望を寄せられている(利用したいと希望している)、これが、先ほど委員も御指摘になられた(指摘した)、この多くの希望者が殺到している状況であると認識をしています(状況だと認識しています)。希望をされる方があるのであるならば(希望者があるならば)、これは是非有効利用はしていただきたいと思っています(これは是非有効利用を願いたいと思っています)。

 そして、廃棄なのか、それから、それを配送するのか、このコストのこともおっしゃいましたが(言いましたが)、有効利用していただけるのであるならば(有効利用できるのであれば)、当初からこの布製マスクについては配送の予算というのは想定していたわけでありますから、これは配送した上で有効利用していただく(有効利用をお願いする)、こうしたことを考えていただくのは(こうしたことを考えるのは)意味があるのではないかと考えています(考えます)」  

 小川淳也「ちょっと受け止め切れない御答弁ですよ(答弁ですよ)。

 そもそも、あの感染が流行していたときに、第一波、そしてマスクが手に入らない状況下で、布マスクがどれほど国民の安心につながったのかというそもそもの問題があります。しかし、そのときに調達したものだから、苗床にしましょう、雑巾にしましょうと言っていることも含めて有効活用してもらえばいいという話にはならないでしょうとお聞きしているんです(聞いているのです)。配送費用だって、今回その安心のためじゃありませんからね、そこに何億もかけるんですかという話なんですよ。考えにくい。

 これはまたやらせてください、改めて。もう、ちょっとこればかりはあれだから」

 アベノマスクについてネットで調べつつ簡単にお浚いしておく。安倍晋三の音頭取りで約260億円をかけて約2億8700万枚の布マスクを調達、2020年4月17日から全世帯各2枚ずつと介護施設等への配布が始まり、配布完了は2020年6月20日。2億8700万枚のうち、3割近い約8200万枚(約115億円相当)が残り、未配布のまま倉庫に保管されていることと、2020年8月から2021年3月にかけての保管費が約6億円に上ることが2021年10月報道の会計検査院2020年度決算検査報告で明らかにされ、マスコミと共に国会で取り上げられることになった。1カ月当たり約7500万円の保管費の計算となり、アベノマスク1枚平均単価約140円で計算すると、約8200万枚は総額約115億円相当分を眠らせたままでいた。

 岸田文雄は2021年12月21日の記者会見で「希望者に配布、有効活用を図った上で年度内を目途に廃棄を指示」した旨を発言。希望者を募ったところ、上記質疑にあるように37万件の応募、枚数で言うと、2億8千万枚。在庫約8200万枚に2億8千万枚、37万件の応募は単純計算で1件当たり756枚。大体がこの応募数自体を怪しいと見なければならないが、怪しい理由をあとで述べる。

 厚労省職員が精査して、配布先を決定。後藤茂之の発言のように「配付希望者の内訳や配送費用については、こうした作業(配布希望者が配布先決定)の結果明らかになる」は当然だとしても、費用対効果の問題は避けて通ることはできない。小川淳也は「マスク配付に大事な医政局の30名を、1人1万件、1か月かけて精査させることにどれほど国政上の意味があるのか」問い質し、対して後藤茂之は「不織布マスクの内側にガーゼを当てていただくことで(当てることで)マスクの着用が心地よくなるとか、いろいろな工夫はあるだろうというふうに思う」とあくまでも有効活用をの方針を捨てないでいる。アベノマスクはガーゼ生地を12~16枚重ねて縫製してあるそうで、アベノマスクを下地に不織布マスクと重ねて二重マスクとしての利用価値を主張している。

 この主張に対して小川淳也は二重マスクしている人は見たことがない、使い捨ての雑巾、野菜の栽培の苗床、赤ちゃんの暑さ防止の保冷剤入れ等の利用方法が街で噂されているが、「問題は、こういう用途のために税金でマスクを調達し、それを査定して配送することは政策判断として適切かどうかという問いに真っすぐ答えなきゃいけない。総理、いかがですか」とあくまでも費用対効果の問題に拘っているが、逸(そ)れなくてもいい脇道に自分から逸れている。

 後藤茂之の言う二重マスクとしての利用提供に同じ内容の質問をぶつけて、費用対効果を問い質すべきだったろう。ガーゼは現在は100円ショップで薬局製品と品質の変わらない物を扱っている。税込み110円の30㎝×35㎝のサイズなら、縦横3つ折りにすれば、9枚重ね。もう一組用意すれば、220円で18枚重ねとなって、アベノマスクは12~16枚重ねの縫製だそうだから、不織布マスクの下地として十分に使える。2枚重ねを必要とする者だけが百均で用意すれば、わざわざ余分な税金を使わずに済む。

 100円ショップのダイソーでは43cm×100cmサイズで2枚重ね柄物の『ダブルガーゼはぎれ』を税込みで220円で扱っていて、これでマスクを作ることがはやっていると言う。
 アベノマスクをガーゼとして利用することを提案したのは日本維新の会の市村浩一郎で、この予算委の4日前の2022年2月3日の衆院予算委で行っている。市村浩一郎はニュースで見て知ったという産着(生まれたての赤ん坊に着せる着物)の写真を示した上で地元の支持者も産着を作っていた、アベノマスクを5枚とか、6枚とかばらして作ったといったことを有効活用の例として挙げて、「アベノマスクを廃棄せずに、やはりしっかりと生かしていったらいいんじゃないか、活用したらいいんじゃないかということで、(支持者からか)御提案があったわけであります」と紹介していた。

 多分、後藤茂之は市村浩一郎のこの提案からアベノマスクを不織布マスクと二重にして活用する工夫を思いつき、配布の必要性の一つの例にしたと思われる。だから、「不織布マスクの内側にガーゼを当てていただくことで」とガーゼとして扱ったのだろう。尤も小川淳也はこの日の予算委員会に出席していなかった。だとしても、知らなかったでは済ますことはできない。2月7日の予算委でアベノマスクに関しての追及を予定していたなら、出席していない2月3日の予算委でアベノマスクに関する質疑応答があったかどうか、あったなら、どのような応答だったのか、参考のために目を通しておかなければならないからだ。

 国会会議録は速記者の作成後、一次校閲、最終校閲、編集を経て、会議録として発行、保存するそうだが、公開まで20日から1カ月かかる。ところが現在参議院副議長就任に伴い立憲を離党している小川敏夫は民進党時代の2017年2月28日に参議院予算委員会の質疑に立ち、翌日の2017年3月1日には「議事録(未定稿)」として「オフィシャルサイト」に自身の分の質疑内容を紹介している。国会議員の特権として未定稿の段階で目を通すことができることが分かる。当然、小川淳也も2月3日の質疑内容に目を通してから、2月7日の質疑に臨んだはずで、アベノマスクのガーゼとしての再利用の費用対効果に目を向けることになったはずだ。だが、それができなかった。

 2月3日のアベノマスクに関する質疑に目を通していなかったとしても、費用対効果の点から配布に反対しているのだから、アベノマスクを利用してマスクを二重にする場合と市販のガーゼを購入して二重にするのと、どちらが安価に済むのか、機転を利かせた追及を試みなければならなかっただろう。

 市村浩一郎はアベノマスクの産着への仕立直しを立派な活用例の如く得々と発言していたが、アベノマスクが5枚も6枚も使わずに残っていたから仕立直しが可能になったのであって(何回か洗いながら使ったあとのマスクなら、戦後のモノのない時代ならいざ知らず、モノが溢れている今日、晴れ着の意味合いもある産着を古着で仕立てることになる)、使わずに残っていたということは全然褒められたことではないし、新たに産着なりが必要になったなら、100円ショッピなり、薬局からガーゼを購入して新規に作ればいいことで、配送費用や希望者を受け付ける経費、多過ぎる希望者を篩い分ける経費等と比較した国民の税金を原資とする効果を厳密に計算して決めるべきだが、後藤茂之も、岸田文雄もそういった答弁とはなっていないし、小川淳也の追及も、厳密にはそういった答弁を求めるものとはなっていない。

 岸田文雄は「廃棄なのか、それから、それを配送するのか、このコストのこともおっしゃいましたが(言いましたが)、有効利用していただけるのであるならば(有効利用できるのであれば)、当初からこの布製マスクについては配送の予算というのは想定していたわけでありますから、これは配送した上で有効利用していただく(有効利用をお願いする)、こうしたことを考えていただくのは(こうしたことを考えるのは)意味があるのではないかと考えています(考えます)」と意味もない回りくどい言い回しで、在庫分の約8200万枚についても配送予算は既に想定していたから、配送に使うのは問題ないという発言をしているが、予算というものは想定していたから、あるいは計上したから、使わなければならないというものではない。費用対効果の点で生じることになった疑義を無視して予算執行を押し通した場合、内閣の国民の税金に対する金銭感覚が疑われることになる。予算を計上した事業について事業そのものの必要性や費用対効果の点で疑義がないかを点検するために、いわば疑義を疑義のまま放置して税金の無駄遣いに行き着くことがないように民主党政権が用意したのが「事業仕分け」であって、自民党政権になってから、「行政事業レビュー」と名を変えて登場することになったはずだ。小川淳也は岸田文雄が「有効利用していただけるのであるならば、有効利用していただく」と仮定を前提とするのみで、有効利用の実質的な費用対効果を説明しないままに想定した予算は想定どおりに執行とするといった無茶な発言に食いつかなければならなかったが、「ちょっと受け止め切れない御答弁ですよ(答弁ですよ)」としか切り返すことができなかった。

 追及の不手際は情報処理の不手際に起因する。情報処理の不手際は追及の不手際で終わらずに国会質疑にムダな時間を費やしたり、堂々巡りを繰り返すといった生産性の問題に行き着く。このことは様々な行政運営の手際の良し悪しに直結する可能性は否定できない。

 2022年4月1日付「時事ドットコム」記事が厚生労働省は在庫として大量に残っている「アベノマスク」を4月1日から希望者への配送を始めると発表したと伝えていた。配送費用は約3億5000万円に上る見込みで、申請を受け付けていたコールセンター費用が約1億4000万円に上る見通しだと伝えていたが、配送費用約3億5000万円が倉庫料込なのかどうか分からないから、約3億5000万円のみで合計すると、第2次配布経費は約4億9000万円の費用がかかることになる。

 ここに倉庫保管費用をプラスしなければならない。在庫約8200万枚の2020年8月から2021年3月にかけての倉庫保管費用が約6億円。2020年10月に佐川急便と月額約2000万円で契約。それ以前は日本郵便と契約していたそうだが、佐川契約の2020年10月から第2次配布開始の2022年4月1の前の月3月までの6ヶ月間の倉庫保管量は2000万円×6カ月=1億2千万円。これを合計すると、7億2千万円。4月1日から希望者への配送が始まったとしても、在庫がゼロになるまで保管個数や保管面積の減少に応じた保管料が発生し続けるそうだから、これもプラスしなければならない。この金額を+αとする。


小川淳也が指摘していた37万件の応募を精査する厚生労働省医政局経済課職員の人件費も計算する必要がある。時間内労働だから、計算外だという論理は成り立たない。これらの金額を+βとする。

 厚労相後藤茂之は2021年12月24日の記者会見で「仮に在庫約8000万枚の全てを廃棄した場合の費用についてだけ申し上げておくと、大まかな目安としては6000万円程度と考えております。この量については、今後希望の方に配付し、また、買っていただく方等もあるかとかいうことも進めますのでその後の数字になりますが、8000万枚なら6000万円程度と承知しています」と発言しているから、2次配布せずに遅くとも2020年8月の時点で全廃棄していたなら、倉庫保管料合計7億2千万円+第2次配布経費約4億9000万円+(4月1日以降の倉庫保管料+α)+(厚労省職員人件費+β)-廃棄金額6千万円=(11億5千万円+α+β)の税金が浮くことになる。

 政府は「有効活用、有効活用」と言うだけで、在庫8200万枚第2次配布に掛かる経費計上(11億5千万円+α+β)の費用対効果を証明できなければ、有効活用に供したとは言えないことになる。

 アベノマスクが大量に残ったから、配布希望者を募集したところ、在庫数約8200万枚に対して2億8千万枚、37万件の応募があった。単純計算で1件当たり756枚も希望した。大体がこの応募数自体を怪しいと見なければならないと先に述べ、その理由を後で述べるとしたが、勿論、推測の範囲内となるが、その理由を説明してみる。

 岸田文雄は2021年12月21日の記者会見で「財政資金効率化の観点から、布製マスクの政府の在庫について、御希望の方に配布し、有効活用を図った上で、年度内をめどに廃棄を行うよう、指示をいたしました」と発言している。要するに岸田文雄自身、8200万枚もさばけるとは思っていなかった。財政資金とは国家資金のことで、その効率化を優先させる、これ以上保管のために税金を投入してはいられないということだから、発言のニュアンスから言っても、かなりの枚数の廃棄を見込んでいたはずだ。見込んでいなかったとしたら、アベノマスクに対する世間の受け止めに疎いことになる。例え口外することはなくても、一国の首相として状況についての情報収集に努めていなければ、自身の政策の教訓とすることもできなくなって、下手をすると、裸の王様になりかねない。岸田文雄はまた、それなりの枚数の2次配布を試みることで、一応手を尽くしたところを見せて安倍晋三のメンツを立て、納得して貰ったところで不人気の幕引きを図るつもりだったはずだ。

 アベノマスクの1次配布が終えた時期と重なる2020年6月20、21日実施の朝日新聞の世論調査。

 ◆あなたのお宅では、政府が配っている布製のマスクが役に立ったと思いますか。役に立たなかったと思いますか。

 役に立った 15
 役に立たなかった 81
 その他・答えない 4

 朝日新聞世論調査から約50日後、「マスクに関する意識調査」(株式会社プラネット/2020.08.11) 

 ◇マスクに関する意識調査(2020年7月17日~20日、インターネットで4,000人から回答)

 〈一方、さまざまな物議を醸した政府配布の、いわゆる「アベノマスク」は、現在使っている人は3%あまり。今後使いたい人も2%にとどまりました。〉
 
 アベノマスクがこれ程の不人気であったにも関わらず、配布希望者を募り、いざ蓋を開けてみると、在庫数約8200万枚に対して2億8千万枚、37万件の応募があった、この超人気ぶりは何を物語るのだろうか。過疎化と移動手段の自動車シフトによって乗客が極端に少なくなり、事業撤退に追い込まれることになった鉄道の廃線を惜しんで運行最終日のセレモニーに大勢の人間が記念に集まって、始発駅にかつてない賑わいを見せるのと、数の点から言っても訳が違う大賑わいであろう。考えられる答は安倍晋三の政策に一点の曇りも与えるわけにはいかない、経歴にキズをつけるわけにはいかない、顔に泥を塗るわけにはいかないと、その証明のためには少しぐらいの応募数では追いつかないからと、安倍晋三支持の介護施設経営者や病院経営者やその他の経営者、個人、あるいは自民党支持者である各経営者や個人に配布希望の申出を行うよう電話やメールで自民党国会議員や県会市会議員、自民党員が声掛けを念には念を入れて熱心に行った結果、念が行き過ぎて、思ってもみない枚数と件数の応募が出てしまったという可能性は考えられる。

 安倍晋三自身が声掛けの音頭取りの一人となったことも考えられないことはない。勿論、自身は直接には関わらずに秘書にやらせるだろう。税金のムダ遣いだと散々に叩かれたアベノマスクの不人気を抹消し、名誉を挽回するための主導権を握ろうとして。でなければ、世論調査に現れている不人気ぶりと桁違いの人気ぶりの説明がつかない。尤もこういった声掛けが世間に知れたら、アベノマスクの不人気ぶりを自分たちで証明することになって、安倍晋三に恥をかかせ、その名誉に関わってくる。安倍晋三主催の「桜を見る会」では国会、県市会議員がそれぞれに自身のブログに何年続けて招待された、地元後援会会員を何名招待した、「10メートル歩いたら、(安倍晋三の地元の)山口県の人に出会う」といったことを書いて自分たちから世間に知らせることをして、税金の私物化、公費での支持者獲得、政治資金規正法違反と批判を受け、国会で散々に追及を受けたことを学び、反省から、隠密理に慎重に事を運んだとしたら、声掛けをしたという噂が出てこないとしても不思議はない。

 最後の最後まで声掛けをしたという噂は出てこずじまいで終わり、単なるゲスの勘ぐりで片付けられるかもしれないが、声掛けなければ、2億8千万枚、37万件もの応募はとてものこと考えることはできない以上、こういった情報処理を施して国会で追及するのも(既に追及しているのかもしれないが)、情報処理の選択肢を広げて、丁寧語の廃止と普通語への転換と同様に国会追及の生産性(発言数にに対する成果)を高める訓練としうる可能性は否定できない。

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