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西村康稔の指摘どおりにコロナ感染は拡大と縮小の繰り返しを予定調和としているなら、「ハンマー&ダンス」は時期を選ぶべし

2021-04-26 11:50:33 | 政治
 2021年4月23日、首相の菅義偉が午後8時から緊急事態宣言発出の決定を伝える「記者会見」を首相官邸で開いた。

 対象地域は東京都、京都府、大阪府、兵庫県、期間は4月25日から5月11日まで。その他まん延防止等重点措置に期限を同じくして愛媛県を追加。既にまん延防止等重点措置対象地区としていた宮城県と沖縄県の期限を5月5日から5月11日までに延長。

 ここに来ての大都市の感染拡大の原因を従来株よりも感染力が強い変異株による感染の広がりを危惧し、その抑え込みの必要性からの緊急事態宣言の3回目の発出としている。

 菅義偉「変異株の動きです。陽性者に占める割合は、大阪、兵庫で約8割、京都で約7割、東京でも約3割に上昇するなど、強い警戒が必要であります。このまま手をこまねいていれば、大都市における感染拡大が国全体に広がることが危惧されます。

 こうした中で、再び緊急事態宣言を発出し、ゴールデンウィークという多くの人々が休みに入る機会を捉え、効果的な対策を短期間で集中して実施することにより、ウイルスの勢いを抑え込む必要がある。このように判断をいたしました。私自身、これまで、再び宣言に至らないように全力を尽くすと申し上げてきましたが、今回の事態に至り、再び多くの皆様方に御迷惑をおかけすることになります。心からお詫びを申し上げる次第でございます」

 緊急事態宣言を使った感染拡大抑制の対策は飲食店の酒類提供の停止、20時までの時間短縮、カラオケの提供停止等の要請。デパート、テーマパーク等、一定規模以上の商業施設や遊興施設等に対する休業要請、イベントやスポーツの原則無観客での開催要請、一般市民の不要不急の外出の自粛要請、感染拡大地域との往来の自粛要請、テレワークや休暇の活用による出勤者の例年並みの7割減の要請等々となっているが、相当な社会経済活動の打撃となる。

 これが止むを得ない打撃なら、補償では補いきれない損失を被る各国民はそれなりに打撃を引き受けざるを得ないが、政府の対策不足の不始末なら、不当な社会経済活動の制限ということになる。

 では、変異株に対してどのような対策を打ってきて、結果として「陽性者に占める割合は、大阪、兵庫で約8割、京都で約7割、東京でも約3割に上昇」するに至ったのだろうか。質疑で記者が質問している。 

 ジャパンタイムズ記者杉山「総理にお伺いします。昨年末には既に海外で変異株の報告がありました。そして、専門家が警告を発している中で総理は2度目の緊急事態宣言の解除に踏み切りました。結果としてまん延を許し、感染が急拡大しましたが、政権の変異株に対する認識が甘かったのではないでしょうか」

 菅義偉「先ず先般の緊急事態宣言の解除(大阪は2021年3月1日解除)については、感染者数や病床など、状況に基づいて専門家の意見を伺った上で解除しました。例えば大阪ですけれども、実際は、当時、解除したときは、新規感染者数は72名でした。私たちはステージ4からステージ3になれば、1つの目安に、解除するものとしておりました。ステージ3が315まで、ステージ2が189までです、大阪では。それが72名。そして病床も、ステージ4が50、そしてステージ2が20。そのとき病床は29.8でありましたけれども、全体としてこのような状況の中で解除をしたということであります。

 そして、今回の緊急事態宣言に至ったというのは、やはり変異株が、私、冒頭申し上げましたけれども、大阪、兵庫では8割が変異株でありますから、そうした変異株の対策を行うことが大事だというふうに思っています。ただ、その対策を講じることというのは、基本的な従来の対策をしっかりやること、そういうことの中で対策を、そちらの勢いの方が強かったということだというふうに思います。それで、今回、人流を、このゴールデンウィークを中心として、短期間の間ですけれども止めさせていただく、そういう対策を講じたということです」
 
 言っていることは「基本的な従来の対策」をしっかりと行ってきたが、変異株の感染力が強くて、結果的に「基本的な従来の対策」が用を成さなかったという意味を取る。だが、変異株の感染力が従来株以上であることは最初から海外からの報告で分かっていたはずだ。

 国民側の基本的な従来の対策とはマスクの着用、手洗い、消毒、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の維持等々であるが、国・地方自治体側の基本的な従来の対策はPCR検査、医療体制の保持、法律に基づいた社会経済活動の大なり小なりの制限その他である。

 PCR検査はコロナ感染に特有とされる症状が出て感染を疑って受診する例と陽性の判定を受けた者との濃厚接触者が主な対象者となる。このような例の場合の感染判明は受動的な把握という経緯を取る。一方、感染はしているものの症状が出なくて、自分は感染しているとは露程も疑わない無症状者(無症状病原体保有者)はPCR検査を受ける機会もなく、2次感染、3次感染の媒介者となり得ると見られている。その割合は東京都の例として、「コロナ感染 2割は陽性判明時に無症状 60代以降も高い割合 東京」(NHK NEWS WEB/2021年1月20日 19時13分)記事が題名で平均を示している。但し無症状の人数は20代、30代が多い。2020年6月10日付「NHK NEWS WEB」記事は、〈WHO=世界保健機関は、新型コロナウイルスに感染した人のおよそ40%は、無症状の感染者からうつされているとする見方を明らかにした〉と伝えている。このような無症状者に対しては受動的な把握は困難で、何らかの能動的な把握の方法を見つけなければならない。

 では、変異株の場合、どれくらいの無症状者が存在するのだろうか。「日本国内で報告された新規変異株症例の疫学的分析(第1報)」(国立感染症研究所/2021年4月5日)によると、〈新規変異株症例については従来株症例に比べてより広範囲に濃厚接触者を特定し検査が行われていることから、診断時における無症状の割合が過大評価となる可能性がある。〉との条件付きではあるが、変異株の〈VOC-202012/01症例のうち男性が49.7%、18歳未満が17.6%、65歳以上が22.4%であった。無症状の割合は21.5%であった。〉とある。変異株と従来株の無症状の割合は変異株の条件を考慮すると、ほぼ変わらないと見ることができる。

 では、両者の感染力の違いはどの程度なのだろう。〈2021年4月現在、日本国内における最初のVOC-202012/01症例の発生は2020年12月下旬にさかのぼる。以降、国内感染例は増加傾向にある。一方、501Y.V2、501Y.V3の国内感染は散発的に確認されている。本報告の解析では、VOC-202012/01と従来株症例の実効再生産数は平均でそれぞれ1.23 (95%信頼区間 1.18-1.28)と0.94 (95%信頼区間 0.90-0.97)であった。〉 

 変異株VOC-202012/01の実効再生産数は平均で1.23 。従来株の実効再生産数は平均で0.94 。実効再生産数が1人以下と1人以上では大きな差があるはずである。無症状の割合がほぼ同じで、感染力にこれだけの差があるとすると、感染者の受動的な把握という対策以上に何らかの能動的な把握を可能とする対策が必要になる。政府はそのような対策を採ってきたのだろうか。

 2020年12月23日の開催の「新型コロナウイルス感染症対策分科会(第19回)」(2020年12月23日の議事次第資料「直近の感染状況の評価等」に変異株について次のような記述がある。文飾は当方。
 
 〈英国で、最近の流行の主な系統となった変異株については、ECDC等からは、重症化を示唆するデータは認めない一方、感染性が高いとの指摘がなされており、医療への負荷が危惧される。この変異株については、これまでのところ国内では確認されていないが、流入リスクについて留意が必要である。

 さらに、国内の厳しい感染状況の中で、英国等で見られる変異株の流入による感染拡大を防ぐことが必要である。このため、関係国との往来の在り方や検査・モニタリングの在り方について、適切な対応を速やかに行うべきである。〉・・・・

 2020年12月23日時点では変異株の国内での感染は確認されていなかったが、4カ月後の2021年4月時点では「大阪、兵庫で約8割、京都で約7割、東京でも約3割」を占めるまでに至った状況から見ると、感染者の能動的な把握対策が見えてこない。〈検査・モニタリングの在り方について、適切な対応を速やかに行うべきである。〉と変異株感染抑止の方法を早急に確立するようにとの提言は「分会」自身が生かすことはなかったように見える。

 2021年1月25日衆議院予算委員会

 尾身茂「もう先生(立憲民主党今井雅人のこと)御承知のように、今、現段階でいろいろなサンプルを基に調査している限りの調査では、今のところ、国内の地域において、この変異株が地域の中で蔓延しているというふうには今のところ考えておりませんが、しかし、変異株ということの性質上、これが地域の中で感染を、これが主流になってくる可能性は否定できないので、これからそうした最悪のことに備えて様々なことを、対応を準備していくことが私は必要だと思っております。

 今井雅人「総理、最後にちょっとお願いがありまして。

 イギリス型の変異種は(2020年)9月ぐらいにはもう何かあったという話もありますけれども、実際に話題になってきたのは12月です。12月の14日だったと思いますが、イギリスの政府の方から、これはかなり大きく拡大しているといって、WHOも同時に声明を出していまして、イギリスにもう100ぐらいの症例があるというふうに言っていました。日本がイギリスから入国者を禁止したのはその10日後です。この10日間は放置状態になっていました。

 水際対策というのは、国内の感染防止とは違って、外から入れてくるのを止めるわけですから、はっきりしているわけですね。はっきりしているんですよ。だから、ここは本当に、南アフリカ、それからブラジルの由来のはワクチンが効かないかもしれないと言っています、だから、是非、水際対策として、どういう状況になったら開けていくのかとか、そういうことの基本計画をしっかり作るべきだというふうに尾身理事長もおっしゃっておられますから、そういうものをしっかり示して、変異種が日本に入ってこないような厳しい対応をしていただきたいと思いますが、いかがですか」

 菅義偉「そのように致します」

 今井雅人「と言うことは、そういうものをしっかりと作って、総理の方から国民にしっかり説明して頂けるということですね。それだけお願いしたいです」

 菅義偉変異株について、私自身は強い危機感を持っています。そして、引き続き諸外国の感染状況を注視するとともに、国内における水際対策の強化や変異株に対する監視体制の強化、こうしたものを、感染拡大防止対策、しっかりと行ってまいります」

 菅義偉は「変異株について、私自身は強い危機感を持っています」と口では言っているが、今井雅人が変異種流入防止の基本計画をしっかり作るべきだと進言しているのに対して「そのように致します」としか答えない辺りからは強い危機感は見当たらない。あるいはそんなことは言われなくても分かっていると反発したせいで、素っ気ない答弁となったのか。と言うのも、この質疑から8日後の2021年2月2日に決定した、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」で、〈政府及び都道府県は、再度の感染拡大の予兆を早期に探知するため、歓楽街等における幅広いPCR検査等(モニタリング検査)やデータ分析の実施を検討し、感染の再拡大を防ぐこと。〉と提言しているからである。

 この決定は2021年1月7日に首都圏4都府県に2回目の緊急事態宣言発出し、2021年1月13日に大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、福岡、栃木に同じく2回目の緊急事態宣言発出後のことである。東京等への発出から14日後、大阪等への発出から10日後のことである。そして実際に繁華街などで検査キッドを無料配布してPCR検査を行い、それをモニタリングする活動を開始したのは20日後の、〈栃木県が2021年2月22日から、岐阜県で3月4日(木)、大阪府、京都府、兵庫県で3月5日(金)から、愛知県、福岡県で3月6日(土)から、神奈川県で3月18日(木)から、千葉県で3月19日(金)から、東京都、埼玉県で3月20日(土)から、北海道で4月1日(木)から、沖縄県で4月2日(金)から〉(「内閣官房新型コロナウイルス感染症対策」)等となっている。

 確かに準備に時間がかかる事情は理解できるが、感染抑止は準備の時間を見込んで先手、先手で取り組むべきだと思うが、東京、大阪等の2回目の緊急事態宣言解除を経て、さらに各地へのまん延防止等重点措置適用、解除を経て、3回目の緊急事態宣言となったということと、この宣言が感染力の強い変異株の影響で感染者が急拡大し、その感染拡大を抑えることが宣言の根拠となり、そのために従来以上に強い社会経済活動の制限となったということは明らかに変異株対策に見るべき効果を打ち出すことができなかったことになる。

 となると、緊急事態宣言発出によって受ける個人商店主その他の社会経済活動の打撃は政府の対策不足が原因となって、その不当性は計り知れないものとなる。菅義偉の3回目の緊急事態宣言発出の記者会見に先立って経済再生担当相の西村康稔が発出の説明を行った2021年4月23日衆議院議院運営委員会の質疑から政府の感染対策の適否をさらに見てみる。

 盛山正仁(自由民主党)「まん延防止等重点措置、今月5日から大阪府、兵庫県、12日から東京都、京都府で講じているにも関わらず、このように発令後に2週間、3週間といった短期間で緊急事態宣言を再発出することになったことはまことに遺憾です。

 国民の間からは政府、地方自治体の対応はコロコロ変わる。国民生活への影響について十分に検討がなされているのか、措置について医学的・科学的な根拠はあるのかなどの声が上がっていませんか。

 今回の3回目の緊急事態宣言の発出に当たって、今度こそ、新型コロナウイルスに対する万全の対策を講じることはできると考えているのかお答ください」

 以下2点纏めて質問するが、この緊急事態宣言発出の効果についての質問に対する西村康稔の答弁のみを取り上げる。自民党盛山正仁としては親分の菅義偉が大阪府のまん延防止等重点措置の適用要請に対しての2021年3月31日の会見で、この措置は「緊急事態宣言に行かないような、また、感染拡大防止につながるような対応策です」と受け合ったものの、緊急事態宣言を発出せざるを得なくなった手前、いつものヨイショ質問では済まなく、少しは強く言わざるを得なかったのだろう。

 西村康稔「この新型コロナウイルスは何度も流行の波が起こるわけであります。諸外国を見ていてもそうであります。そして起こるたびに大きくなってくれば、ハンマーで叩く。つまり措置を講じて抑えていく。その繰り返しを行っていく。何度でもこれを行っていくことになります。

 今度も起こり得ると思います。そのためにまん延防止等重点措置を新たに設けて頂いて、この機動的な活用も含めて、大きくなってくれば、感染を抑えていく。こうした姿勢で臨んでいきたいと考えておりますし、このことは以前から申し上げているとおりであります。

 そのまん延防止等重点措置でありますが、宮城県では新規陽性者数がピークの4分の1まで減少してきております。また大阪府でも、確かに陽性者数は高い水準ですけども、先週、1週間前から1100人、1200人の水準で高止まっている。これはちょうど4月1日からまん延防止等重点措置を始めましたので、2週間経った頃から効果が、一定の効果が出てきていると思います。

 しかしながら、なかなか減少傾向にならない。これは変異株、感染力が極めて強いからであります。こうした状況を見る中にですね、これまで以上に強い措置を講じないと、この変異株の感染拡大を抑えられない。こうした強い実感を持っているところであります。

 そのために今回緊急事態宣言を発出させて頂いたわけであります。是非、国民の皆さんのこれまで以上に徹底した感染防止対策、特にゴールデンウイーク、大型連休を機に対策を強化しますので、これまで以上の外出自粛をやって頂いてですね、ステイホーム、お願いしたいというふうに思います」

 要するに変異株感染抑止の対策も空しく、変異株感染者を増やしてしまった。となると、政府の対策失敗ということになる。

 西村康稔は「この新型コロナウイルスは何度も流行の波が起こるわけであります。諸外国を見ていてもそうであります。そして起こるたびに大きくなってくれば、ハンマーで叩く。つまり措置を講じて抑えていく。その繰り返しを行っていく。何度でもこれを行っていくことになります」と言っている。つまり緊急事態宣言をいくら発出しても、その当座は感染者数が減るものの、宣言を解除すれば、再び感染者が増える。増えた場合はハンマーで叩くように緊急事態宣言のように強い措置を講じなければならない。その繰り返しだとしている。

 このことは政府のコロナ対策がこれまでは緊急事態宣言を使った人の移動の制限(人流阻止)以外の有効な手立てがなかったのだから、当然のことである。2021年2月1日の当ブログ《菅義偉の「個々の研究についてはコメントを差し控えています」の答弁をそのままスルーさせる野党追及の甘さ加減 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に次のように書いた。

 〈2021年2月1日の朝のNHKニュースで菅内閣は医療提供体制の逼迫状況の点から緊急事態宣言を延長する方向で調整に入ったと伝えていたが、解除に障害となる点を全てクリアして解除されて人の移動も再開された場合、緊急事態宣言再発令によって現在減少傾向にある新規陽性者は人の移動と感染が密接な相関関係にある以上、再び増加傾向を取ることになる。そしてこの繰り返しは国民の大多数がワクチンを接種するまで続くことになる。

 この繰り返しの波の頭を少しでも抑えるためには感染して、ウイルス保有者となりながら、無症状なためにPCR検査を受けないままに市中に放し飼いの状態に置くことになる、その多くが新規陽性者の半数前後を占めている感染経路不明と考えられる無症状感染者を如何に効率よくPCR検査の網にすくい取るかにかかってくることになるはずである。〉
 要するに感染者増と感染者減の波に任せるだけで、無症状感染者を効率よくPCR検査の網にすくい取って、陽性者を隔離、2次感染、3次感染を防ぐ前以っての効果的な対策を取れずにいた。勿論、今後効果的な対策を取れるかどうかは以後の取り組みにかかってくる。

 感染の大きな波が来れば、緊急事態宣言で「ハンマーで叩く」と言っていることは2020年7月3日の「記者会見」で自身が述べている。

 西村康稔「小さな波は今後も来るわけですけれども、それが大きな波にならないように我々は努力していく、ハンマー&ダンスで叩いていくわけですが。クラスター対策、そして、それより何より検知もしっかりやってクラスター対策をやっていくわけですけれども、仮に大きな波が来たとしても、それに応えていく対策を議論していただきたいと思っております。検査態勢、あるいは保健所機能、そうしたサーベランス(調査監視)のあり方、こういったことについて、是非、議論していただきたいと思っております」

 「ダンス」とは社会経済活動に関して自由にダンスするように自由な行動に任せるということなのだろう。勿論法律の範囲内の行動だが、自由な社会経済活動は許されているから、問題は政府が打ち振るうことになる、自由な社会経済活動を阻害することになる「ハンマー」と言うことになる。その阻害が公権力上妥当セ性を持ちうるかどうか。

 西村康稔は「大きな波にならないように我々は努力していく、ハンマー&ダンスで叩いていく」と言い、「何より検知もしっかりやってクラスター対策をやっていく」と大波を防ぐ対策を述べているが、大きな波と小さな波が繰り返すのは人の移動次第(人流次第)なのだから、これ以外の政府対策は効果は殆どないか、たかが知れていると見なければならない。
 松尾明弘(立憲民主党)「緊急事態宣言の解除から1ヶ月でまた宣言をしなければならないのは完全に政府、大阪府、東京都等の失敗であると言わざるを得ません。今回の緊急事態宣言が実効性を持つのかどうか、いくつか質問させて頂きます

   ・・・・・(中略)・・・・・

 総理はですね、再び宣言をしないようにするのは私の責務とまで話していたのですから、自ら(国会に出て)報告しないのはあまりにも無責任であると考えますがそこのところは如何ですか」

 西村康稔「これまでも申し上げておりますように、先程も答弁させて頂きましたとおり、様々流行は何度も起こりますので、それに対して機動的に対処していくことが必要というふうに考えておりますが、(総理も)同じ認識をされております。

 総理からも様々な場面に於きましてコロナ対策について丁寧が説明が今後もなされるものというふうに思います」・・・・・

 ここでも「流行は何度も起こります」との文言で緊急事態宣言の発出は止む無しとした上で、「機動的に対処していくことが必要」と政府の対策を正当化しているが、飲食店の酒類提供の停止、20時までの時間短縮、カラオケの提供停止等の要請。デパート、テーマパーク等、一定規模以上の商業施設や遊興施設等に対する休業要請等々、人の移動の極端な制限(人流次第の極端な制限)は機動的対処のうちに入るのだろうか。

 「機動的」という言葉は従来株無症状者だけだはなく、特に変異株無症状者をPCR検査で把握・隔離し、2次感染、3次感染を極力防いでいく活動にこそ使うべきだろう。このような活動ができず、特に変異株感染者を増やしてしまった。

 このような活動ができなかったことは次の質疑に出ている。

 清水忠史(日本共産党)「変異株ですが、既に3月中旬には兵庫県でも猛威を振るい始めておりました。政府の認識と対応はやっぱり甘かったのではないでしょうか」

 西村康稔「先ず12月19日に英国政府から変異株に関する公式公表がございました。その後厚労省のアドバイザーリポートでの評価を経て12月23日には英国からの新規入国を一時停止を私共行っております。1月23日には全ての入国者に対して誓約書の提出。反した場合には氏名の公表、あるいは退去強制手続き、これを対象とするといったような厳しい措置も講じたところであります。

 他方、国内に於きましてはスクリーニング検査ですね、40%程は拡大することにしていまして、既に3割超行っておりますが、いずれにしましても、各地域で変異株に対する危機感は非常に強いものがありますので、国と自治体と連携しながら、しっかりと監視しながら、行ってきておりますし、さらにこのことを強めていきたいと思います」

 清水忠史「日本はやはりPCR検査数が世界145位と少過ぎます。PCR検査の社会的検査について高齢者施設にとどまらず、病院、学校、保育所に拡大すべきだとお見ますが、大臣、どう思いますか」

 西村康稔「ご指摘のようにですね、PCR検査につきましては戦略的に拡充してきているところであります。3月には高齢者施設・・・・、もし検査数が必要であれば、また申し上げますが、集中的に従事者の方に実施をしてきておりますし、またこのことを4月から6月にかけて頻回で実施するということにしております。

 さらには私共はモニタリング検査でですね、特にリスクの高い無症状者の方を見つけ出していく、感染源を特定していくためにですね、大学や作業場、こういたところと連携しながら、今取り組みを勧めているいるところでございます。

 いずれにしましても、検査キッドもありますので、こういった活用も含めて、戦略的に拡充していければというふうに考えております」

 先ず「スクリーニング検査」、「40%程は拡大することにしていまして、既に3割超行っております」としているが、3回目の緊急事態宣言発出を抑えることはできなかった。

 「PCR検査」は「戦略的に拡充してきているところであります」との言葉で拡充途中であることを曝け出し、さらに「4月から6月にかけて頻回で実施するということにしております」と今後の話としている。要するに緊急事態宣言の後手に回っている。

 東徹(日本維新の会)「今回3回目の緊急事態宣言の発令ということになりました。非常に今回の新型コロナウイルス、非常に重傷者が多いという状況にあります。医療の逼迫どころかですね、溢れている状況を見ますとですね、これは出さざるを得ないというふうに思います。その中で感染拡大の要因についてお聞きしたいと思います。

 大阪の感染状況を見ますと、今年初めに行われた2回目の緊急事態宣言ですね、1月13日から2月28日だったんですけれども、宣言が出された2週間後に新規感染者の7日間平均は3割減ったんです。そのあと4月5日、まん延防止等重点措置、これではですね、午後8時までの時短要請やってたんですね。やってたんですけども、まん延防止等重点措置ですね、これ(感染者数が)、減らなかったということがあります。

 そして重症患者がどんどん増えてきた。これは今回急激に感染者の拡大が生じたのはですね、これまでは飛沫を防げば感染を抑えられるのではなく、空気感染、こういったものもあり得るということで、今回、人出自体を抑えようとしているのか、この点について伺いたいとおもいます」

 西村康稔「大阪でのまん延防止等重点措置、私共、効果がなかったとは思っていなくてですね、4月5日から始めて15日頃に1200人ぐらいまでに1日の感染者がありましたが、その後、1週間ぐらいずっと1100、1200で、これ以上伸びることを抑えている効果はあるんじゃないかと見ております。変異株の感染力の強さとまん延防止等重点措置の強さのせめぎ合いの、こう、今、1100、1200ぐらいでとどまっているのか、今後下がっていくのか、また上がるのかですね、これちゃんと見ていかなければいけないと思っておりますが、いずれにしても、何で広がったのかと。明らかに変異株でありまして、これまで感染していなかった人も感染をしておりますので、そういう意味で細かく飛沫なのか、マイクロ飛沫なのか、まだ分析はできておりませんけども、とにかく感染力は強いことは明らかだというふうに思います。

 その意味で例えばマスクをするときも、できれば不織布のマスクで、こう(指でマスクの上から鼻を抑えて)隙間なくするとかですね、これまで以上に距離を取るとかをやらなければいけませんし、ここまで来ると、大型連休中、徹底的なステイホームをお願いをしてですね、人と人との接触を減らす。

 そのために人流を減らさないと、これ、感染を抑えられない。こんな状況にまでなっているということの危機感を強く持っている次第であります。そのために緊急事態宣言、今回お願いしているということでございます」

 要するに変異株に対する感染防止対策、あるいは前以っての危機管理が不足していたために緊急事態宣言という「ハンマー」に頼らざるを得なかった。

 同日の参議院議院運営委員会から一つ。

 山下芳生(日本共産党)「衆議院の質疑を聞いていますと、西村大臣から驚くべき答弁がありました。緊急事態宣言の再発出となった今の状況について問われて、西村大臣は何度も流行の波が起こる、今後も起こり得る、と。答弁しましたのですね。
 
 耳を疑いました。政府にはコロナを封じ込める意思がないのか。何度も流行の波が起こる、今後も起こり得るというのは、そういうことですね。コロナを封じ込める立場には立たないと言うことですね。これから3度目の宣言を発出しようというときに国民の皆さん、医療従事者の皆さん、中小事業者の皆さんが不安を抱えながらも歯を食いしばって頑張っていこうというときにあまりにも酷い発言、あまりにも酷い姿勢だと言わなければなりません。

 先程、西村大臣はこの発言は総理も同じ立場だと仰いましたけども、西村発言というのは政府の公式の立場ですか」

 西村康稔「あのー、私は担当大臣として政府を代表してここに立っておりますので、私の発言は政府の認識ですございます。そのうえでこれまでも何度も説明してきておりますし、答弁をしてきております。何度も流行は起こるんです。どこの国を見ても起こっています。ただ、それをできればゼロにしたいと我々は思っています。しかしゼロにできない。

 東京でも50人、100人、できるだけ低くしたい。その思いはもう、みなさんと同じ。あるいはそれ以上の、私は責任者として持っております。ただ、これはなかなか難しい。徹底的な対策をやりながらも、どこで感染したかも分からない。そういう特に変異株はそういう状況になってきております。これをここで抑える。東京も、また医療機関も極めて厳しい状況になっておりませんけども、今の段階から、大阪は厳しい状況ですので、そうならないようにするために今の段階から緊急事態宣言を発出させて頂いて抑えていく。

 大きな波にしたくない。小さな波で叩いていく。これは感染症の専門家も、みなさん、言われていることであります。できれば低くしたいですけれども、しっかり大きな流行にしないように全力を上げていきたいと思います。

 山下芳生「何度も流行の波が起こる。今度も起こり得るというのはこれからも繰り返すということを担当大臣がこれから宣言を発出するときに発言してしまったんですよ。あまりにもこれはね、国民に対するメッセージとしてはね、誤ったメッセージにしてしまってるんだと思うんですよ。今ね、頑張っていると言ってるけども、先程からどの国でもね、繰り返すんだとおっしゃってたけども、ハンマー&ダンスって衆議院で仰いました。ただ、ハンマー&ダンスはもう破綻したんですよ。何遍偽りを繰り返すのかとみんな、疲れ切っていますよ。

 イギリス、今ワクチンの接種、これを広げること。それから徹底した検査。1軒、1軒のご家庭に検査キッドをお配りして、そして無料で配布してるんですよ。このワクチンと徹底した検査で一時、1日数万件の感染者数だったのがいまぐうーっと抑え込んで、いまお店でね、家族で食事を、友人と食事をやってるじゃありませんか。コロナを封じ込めるんだという立場に立たなかったら、何度も繰り返すんだという立場に立っちゃったなら、全く展望ないじゃないですか。

 あのね、私はそういう姿勢だからね、政府はコロナを封じ込めるための大規模検査をやらないと。日本の人口比のPCR検査数は世界146位ですよ。先進国としてあまりにも恥ずかしいという消極的姿勢になっている。中小企業への十分な補償もやらない。医療機関への減収補償もやらない。その背景には、どうせ何度も流行の波は起こる、今度も起こり得るという姿勢があると言わざるを得ません。そんな姿勢で、そんなに低い志で、一体どうやって国民の命と暮らしを守るんですか」

 西村康稔「あの、私自身、何としてもこの感染拡大を抑えたい、誰よりも強く思っています。夜中に何度も目が覚めます。ずうっと考えています(感情的に声を強める)。私は誰にも負けないくらい勉強をし、勉強というよりも研究をし、専門家の皆さんもハンマー&ダンス、これはもう感染症の常識だと言われています。そのことを私は申し上げているんです。

 勿論、ゼロにしたいです。しかしなかなか出来ない。だけれども、大きな流行にならないように強いハンマーを今回お願いをしているところでありますが、勿論、大阪では病床はもう厳しい状況になっておりますけれども、その上で検査については戦略的に拡充していきたいと考えております。

 確かに人口当たりの検査数は少ないです。ただ、色んな見方、これは尾身会長も紹介されておりますけども、日本の場合は亡くなった数も非常に、ひと工夫、先進国の中では抑えてきておりますが、亡くなった方当たりの検査件数で見ると、これは非常に少ない、いや、非常に多い件数になっておりまして、つまりしっかりと検査で死者を、亡くなる方、重症化する方を抑えてきたという効果はあるものという評価がなされております。

 いずれにしても、私も検査を広げていきたいと思います。検査キッドを、これはあの感度の問題、精度の問題、それから偽陽性の問題もありますので、陰性だから大丈夫だと。その日のうちに感染してしまうかもしれない。様々な課題がありますけども、それを乗り越えて、乗り越えて、頻回に検査をやっていくことを含めて、今、モニタリング検査も私共、拡充をしておりますので、そういったことを含めてですね、戦略的にさらに拡充していきたいと思います」

 山下芳生「いくら言ってもね、146位ですよ。言い訳できませんよ。私はコロナを封じ込める立場に立たない政府の姿勢こそ、今一番の問題だと思います。今政治が成すべきことは何か。コロナを封じ込めるための大規模検査を実行することです。中小業者のみなさんが事業を続けられる十分な補償を行う。

 そして医療機関の減収補填に踏み切る手立てを尽くすことです。そして東京オリンピック・パラリンピックは中止して、コロナの収束に全ての力を集中する。やるべきことをやって、何としてもコロナを封じ込める。感染を封じ込める。今、そのことこそ、政治の責任だということを申し上げて終ります」

 緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も感染の結果である。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に頼らずに感染者を減らすことができなければ、緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も繰り返すことになる。西村康稔が言うように大きな波と小さな波が繰り返すことになる。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に至らないように前以って感染者数を減らすには山下芳生の言うように大規模なPCR検査以外に手はない。

 それもコロナ感染に特有とされる症状が出て感染を疑って受診し、陽性と判定された患者とその濃厚接触者を主な対象者とする受動的なPCR検査だけではなく、感染はしているものの症状が出なくて、自分は感染しているとは露程も疑わ図に活動している無症状者(無症状病原体保有者)を能動的に拾い出して感染の有無を判定していくPCR検査をより広く実施しなければならない。繁華街などで検査キッドを無料配布してPCR検査を行い、それをモニタリングする活動が感染者の能動的な把握ということになるが、まだ動き出したばかりの遅さである。

 となると、今回の緊急事態宣言で相当な社会経済活動の打撃を被る個人商店主等にとって止むを得ない打撃ということではなく、政府の対策不足の不始末からの打撃に相当する。

 このような打撃を少しでも和らげるためには西村康稔が「新型コロナウイルスは何度も流行の波が起こる」と確信的に主張している以上、「ハンマー&ダンス」の時期を選ぶべきだったろう。3回目の緊急事態宣言で言うなら、4月5月の大型連休期間を避けて、3月半ばから4月半ばまでに「ハンマー」を打ち下ろして感染者を抑え、4月半ば以降、好きに「ダンス」を踊らせていたなら、社会経済活動の打撃を少なからず和らげることはできたはずだ。

 もし東京オリ・パラを開催予定でいるなら、今回の緊急事態宣言で感染者が減らないようなら、6月中を期限とした緊急事態宣言と言う「ハンマー」を前以って打ち下ろして、徹底的に感染者を減らしてから、開催すべきだろう。

 感染拡大防止にも無策、緊急事態宣言で与えることになる社会経済活動の打撃に対しての配慮をも欠いているようでは菅政権の責任は決して小さくはない。

 最後に厚労相の田村憲久が2021年4月25日のNHK「日曜討論」で「ハンマー&ダンス」を取り上げていたから、触れてみる。

 中川俊男(日本医師会長)(キャスターに今回の感染急拡大のこれまでと違う実感について尋ねられて)「今回の変異株について兵庫県の開業医の先生から声掛けを頂きまして、発熱外来をやっているのですけれども、来た患者さんにPCR検査をしますと、殆ど全員陽性だと言うんですよ。最初から結構な重篤患もありですね、全く第3波と様相が違うと。

 自分感覚ではヨーロッパのロックダウンみたいな、必要なぐらいにまで危機感、恐怖感すら持っているという状態なんです」
 
 田村憲久「ご承知の通り日本の国はヨーロッパのロックダウンできません。法律がそうなっておりまして、個人の方々ですね、家から出たら罰金を取るという、そういう制度はできないわけで、よくまあ、ハンマー&ダンスという感染症の専門家の方々が仰られて、こういう感染症は強い措置を先ず感染が拡大すると打つと。そしてある程度収まったら、もういつまでも、それ、やれませんから、人の生活を止めるということは。

 それを解除してダンスを踊っていただくと。また増えてくるとハンマーを打つ。こういう繰り返しだというのが感染症の対策だと言われるのですが、日本の場合はハンマーは強い、そういう武器はないわけで、今、私はファイヤーベルって言ってるんですが、半鐘ですよね、感染が増えているぞというそういうような危機感を感じて頂いて、感染を止めて頂く。ま、こういうことをやってきているんですけども、まあ、ヨーロッパのようなロックダウン、全てが家から出ちゃダメだというような中で、しかしそれでもですね、ワクチンをあれだけ打って抑えているイギリス、今1日新規感染者2200人だと思いますが、これと今同じレベルの人口当たりの感染者でやるということは本当に国民の皆さまの方の色んなご努力の中であると思いますので、これ以上増やさないと。これ以上ヨーロッパのようにしないという意味での今回の緊急事態宣言、これでやっていくというふうにご理解を頂きたいと思います」
 
 日本医師会長の中川俊男は現在の感染状況に対して「ロックダウンが必要なぐらいの危機感、恐怖感を持っている」と表現しただけのことで、「ロックダウン」をしろと主張したわけではない。それを田村は「日本の国はヨーロッパのロックダウンできません。法律がそうなっております」と発言趣旨を平気でねじ曲げることのできる頭の感覚は素晴らしい。

 「ハンマー&ダンス」について「日本の場合はハンマーは強い、そういう武器はない」と断言しているが、西村は緊急事態宣言自体を「ハンマー」に譬えているだけで、何の間違いもないことは、事実倒産が増えていることからも、ハンマーで打ち付けられる以上の社会経済活動の打撃と解釈する個人事業主の存在もいるだろうから、明らかである。この比喩に気づかない頭の持ち主が厚労相を努めている。答弁が達者な早口だからなかなか気づかないが、答弁を仔細に眺めると、結構出たらめな発言が多い。
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共産党一党独裁下の中国統一台湾は香港・新疆ウイグルの二の舞いとなる恐れがあり、現状の国家体制では「一つの中国」は認められないとすべき

2021-04-19 10:20:06 | 政治
 基本的人権は人類が等しく認められるべき普遍的な価値観である。ゆえに人権問題に国境を設けてはならない。一国の人権抑圧に対する他国の非難を「内政干渉」だと国境を設けることは如何なる正当性も持たないことになる。

 日本の覇気のない首相菅義偉と就任早々いやに張り切っているアメリカ大統領との初の首脳会談が2021年4月16日午後(日本時間17日未明)行われた。ネットで調べてみると、会談後に共同声明を発出し、次に共同記者会見、その次に日本記者団に対するぶら下がり会見の順で行われたようだ。バイデンとの共同記者会見前にぶら下がりを行うのは不躾と見られる可能性が生じるからである。

 日本政府が今後、中国に対してどのような外交姿勢で臨んでいこうとしているのか、その姿勢と関連する香港問題、新疆ウイグル問題と共に共同声明と共同記者会見での菅発言、ぶら下がりから関係する箇所を拾ってみた。

 先ず日米首脳共同声明「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」(外務省/2021年4月16日)

 「普遍的価値及び共通の原則」という言葉が4回出てくる。

 「海が日米両国を隔てているが、自由、民主主義、人権、法の支配、国際法、多国間主義、自由で公正な経済秩序を含む普遍的価値及び共通の原則に対するコミットメントが両国を結び付けている」

 「両国は共に先頭に立ってきた。日米両国の長年にわたる緊密な絆を祝福し、菅総理とバイデン大統領は、消え去ることのない日米同盟、普遍的価値及び共通の原則に基づく地域及びグローバルな秩序に対するルールに基づくアプローチ、さらには、これらの目標を共有する全ての人々との協力に改めてコミットする。日米両国は、新たな時代のためのこれらのコミットメントを誓う」

 「日米同盟は揺るぎないものであり、日米両国は、地域の課題に対処する備えがかつてなくできている。日米同盟は、普遍的価値及び共通の原則に対するコミットメントに基づく自由で開かれたインド太平洋、そして包摂的な経済的繁栄の推進という共通のビジョンを推進する」

 「日米同盟は揺るぎないものであり、日米両国は、地域の課題に対処する備えがかつてなくできている。日米同盟は、普遍的価値及び共通の原則に対するコミットメントに基づく自由で開かれたインド太平洋、そして包摂的な経済的繁栄の推進という共通のビジョンを推進する」

 「菅総理とバイデン大統領は、インド太平洋地域及び世界の平和と繁栄に対する中国の行動の影響について意見交換するとともに、経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した。日米両国は、普遍的価値及び共通の原則に基づき、引き続き連携していく」――

 日米は「自由、民主主義、人権、法の支配」という「普遍的価値」と、「国際法、多国間主義、自由で公正な経済秩序」という「共通の原則」の二つを国際社会に於ける基本姿勢――国際秩序とすると規定している。このように謳うのは「普遍的価値」と「共通の原則」を国際秩序としていない、特に中国を睨んだ文言なのは最後の「経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有し」、その「懸念」に対して「日米両国は、普遍的価値及び共通の原則に基づき、引き続き連携していく」との文言で中国に対して「普遍的価値及び共通の原則」のルールを以ってして対抗していくとの文意に現れている。

 では、中国の普遍的価値に基づかない行動に触れた箇所を見てみる。

 「日米両国はまた、地域の平和及び安定を維持するための抑止の重要性も認識する。日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認した。日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した」

 「普遍的価値」と「共通の原則」という土俵に中国を乗せようと心づもりしているが、「中国との率直な対話の重要性を認識する」にとどめている。日米が反対するとしている「東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試み」の「あらゆる」の中には、勿論、武力を用いた一方的な現状変更の試みが入る。台湾に対しては中国による武力統一の懸念がくすぶり続けている。中国と台湾の「両岸問題の平和的解決」を促しているが、アメリカが台湾海峡、その他で行っている「航行の自由作戦」は中国の台湾武力統一には武力を以って対抗する意思表示であろう。

 台湾有事の際は憲法解釈で集団的自衛権を認めている関連から、日本も無関係ではいられない。

 香港及び新疆ウイグル自治区に関してはその人権状況への深刻な懸念を日米は共有するとしている。間接的に中国に対して「自由、民主主義、人権、法の支配」という「普遍的価値」の両地域での履行を求めていることになるが、共産党一党独裁体制で国民を上から統治し、自治区の他民族に対してはその文化や制度までも強権的に中国と同化させようとする普遍的価値の尊重とは真逆の国家意志のもとでは簡単に求めに応じることはないだろう。

 次に「日米共同記者会見」(首相官邸/2021年4月16日)から中国向けの外交姿勢とその覚悟の程を示す菅発言を見てみる。
  
 菅義偉「米国は日本の最良の友人であり、日米は、自由、民主主義、人権などの普遍的価値を共有する同盟国であります。日米同盟は、インド太平洋地域、そして、世界の平和、安定と繁栄の礎として、その役割を果たしてきましたが、今日の地域情勢や厳しい安全保障環境を背景に、同盟の重要性はかつてなく高まっております。

 このような共通認識の下で、本日の首脳会談では、お互いの政治信条、それぞれが国内で抱える課題、そして、日米が共有するビジョンなどについて、幅広く、率直な意見交換を行うことができました。

 バイデン大統領とは、先月の日米『2+2』で一致した認識を改めて確認し、その上に立って、更に地域のために取り組むことで一致いたしました。『自由で開かれたインド太平洋』についても話し合いをしました。この地域の平和と繁栄を確保していくために、日米がこのビジョンの具体化を主導し、ASEAN(東南アジア諸国連合)、豪州、インドを始めとする他の国々、地域とも協力を進めていくことで一致いたしました。

 また、インド太平洋地域と世界全体の平和と繁栄に対して中国が及ぼす影響について、真剣に議論を行いました。東シナ海や南シナ海における力による現状変更の試み、そして地域の他者に対する威圧に反対することでも一致しました。その上で、それぞれが中国と率直な対話を行う必要もあること、そして、その際には、普遍的価値を擁護しつつ、国際関係における安定を追求すべきであることでも一致いたしました」――

 中国が画策している「東シナ海や南シナ海における力による現状変更の試み、そして地域の他者に対する威圧に反対する」としているが、「力による現状変更の試み」の対象地域として尖閣諸島の言葉も台湾という言葉も使っていない。前者の言葉が出てくるのは「バイデン大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用を含む、米国による日本の防衛へのコミットメントを改めて示していただきました」のみで、中国の「力による現状変更の試み」に反対する直接的で明確な意思表示とはなっていない。

 つまり中国が台湾に対して「力による現状変更の試み」を実行した場合は中国に対して明確に反対を示すとする直接的で明確な意思表示は見えない。

 このことは「日米首脳会談等についてのぶら下がり会見」(首相官邸/2021年4月16日)の中の台湾問題に触れた発言からも見て取れる。

 菅義偉「あと、台湾の問題ですけども、やはりこの台湾海峡、また尖閣周辺でも、厳しい状況が続いていることは事実だというふうに思います。

 その中で、やはり解決は、平和裏に解決をすると、そうしたことを最優先にしていく。そうしたこともお互いに、そういう方向で、平和と安心・安全、そうしたことを進めていこうということで合意しましたので、中国に対して、必要なことは、言うべきことははっきり言っていく中で、この地域の安定・平和に寄与していきたいと思います」――

 「尖閣周辺」も含めて「台湾の問題」、「台湾海峡」が「厳しい状況が続いていることは事実だというふうに思います」と断定を避けて、推測の範囲に置いている。「尖閣周辺」は日本の首相である以上、当事者の立場にある。「台湾の問題」にしても中国によって武力統一されて直接的な中国領土となった場合、尖閣諸島や沖縄は中国本土からよりも台湾からより近い距離となって、直接的に日本の安全保障に関わってくる。

 それを厳しい状況は「事実だというふうに思います」と腰の引けた、当事者であることをどこかに置いた発言ができる。推測するに中国に対してアメリカと共に直接的に「力による現状変更の試み」に反対姿勢を示したのはバイデンの勢いに引っ張られてしたことであって、今までのように中国が何かしたなら、犬の遠吠えにもならない、型通りの抗義で済まして現状を容認する事勿れな態度に終始したかったのかもしれない。

 日米共同声明で台湾に言及したのは日中国交正常化前の1969年の佐藤・ニクソン会談以来の約半世紀ぶりだそうだが、中国が経済及び軍事大国化する前で、安全保障環境も現在のようには厳しくなっていなかった。厳しくなった要因は中国の経済力と軍事力を背景とした海洋進出の国家意志であり、武力行使も辞さない台湾統一の国家意志である。特定の国家意志が高まっているとき、それに対して経済的軍事的に対立する大国がそれなりの大国と共に共同声明という形で中国側がルールとしていない普遍的価値と共通の原則を楯に異議申し立てに出れば、中国は当然、激しく反発する。その反発を2021年4月17日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 駐米中国大使館報道官談話(記者の質問に答えて)「台湾と香港、新疆ウイグル自治区に関わる問題は中国の内政であり、東シナ海と南シナ海は中国の領土と主権、海洋権益に関わるもので、干渉することは許さない。我々は強い不満と断固とした反対を表明する。中国は国家の主権と安全、発展の利益を断固として守る。

 2国間の関係の範囲を完全に超えており、第三者の利益や、アジア太平洋地域の平和と安定を損なうものだ。時代に逆行し、地域の人々の心に背こうとする企ては自身を傷つける結果になるだろう」

 駐日中国大使館報道官談話(記者の質問に答えて)「中国に対して謂われのない非難を行い、中国の内政に干渉し、領土と主権を侵害しており、われわれは強い不満と断固とした反対を表明する。中国側はすでに日米双方に厳正な申し入れを行った。

 台湾と新疆ウイグル自治区、香港などは純粋に中国の内政であり、いかなる外部からの干渉も許さない。(尖閣諸島は)中国固有の領土であり、日米が何を言っても、中国に属するという客観的事実を変えることはできない。

 最近、日本側は中国に関わる問題で相次いで消極的な行動をとり、政治的な相互信頼を著しく損ない、双方の関係発展の努力を妨害している。我々は日本側に対し、両国関係が振り回されず、停滞も後退もせず、大国間の対抗の渦に巻き込まれないよう忠告する」

 台湾も新疆ウイグル自治区も香港も、それぞれに純粋に中国の内政問題であり、尖閣諸島は客観的事実を変えようもない中国固有の領土だから、いわば外国の口出しは許すことはできないと猛反発している。

 中国が自らと台湾の統一に関して武力の行使を選択肢としているのは外国が中国に国交締結を求めた際に台湾は中国の一部であるという条件を承認させてきた経緯があるものの、その後50年間一国二制度の維持を謳う香港基本法が全国人民代表大会会議によって1990年4月に成立、そして香港は1997年7月1日にイギリスから返還されるが、中国が徐々に共産党一党独裁に基づいた専制主義の姿を露わにして、香港の民主主義をなし崩し的に侵食していき、その集大成が2020年6月施行の国家安全維持法であって、中国の従来からのこのような専制的な姿勢が統一した場合の台湾にも適用されるのではないのかと台湾自身だけではなく、西欧各国に懸念を持たれた結果、世界基準とは異なる中国の平和的なとしている台湾統一が困難になったからであろう。

 例えば「国家安全維持法」「第4条 香港特別行政区は、国家安全を維持するために人権を尊重し、保障するとともに、香港特別行政区基本法と《市民的及び政治的権利に関する国際規約》、《経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約》に基づいた言論・報道・出版の自由、結社・集会・行進・デモの自由などを法に基づいて保護しなければならない」云々と基本的人権の保障を全面的に認めているように見えるが、あくまでも国家安全維持の範囲内を条件とする基本的人権の保障である。中国にとっての好ましい「国家安全」とは共産党一党独裁体制の維持可能な状況を言う。この体制が少しでも脅かされた場合、国家安全を維持できないとして基本的人権の恣意的な解釈に基づいた罰則が幅広く可能になる。

 結果、台湾に於ける新疆ウイグル自治区や香港、あるいはチベットで吹き荒れている民主主義の壊滅状況への二の舞である。普遍的価値を奉じている西欧民主国家にとって簡単には看過できない中国による台湾統一に向けた懸念ということになり、このような懸念への焦りから出ている中国の台湾武力統一への欲求意志の現れということなのだろう。

 米中の正式国交正常化は1979年1月1日だが、1972年2月28日の「上海コミュニケ(ニクソン米大統領の訪中に関する米中共同声明)」によって事実上の相互承認が行われた。(一部抜粋)

 〈双方は、米中両国間に長期にわたつて存在してきた重大な紛争を検討した。中国側は、台湾問題は中国と米国との間の関係正常化を阻害しているかなめの問題であり、中華人民共和国政府は中国の唯一の合法政府であり、台湾は中国の一省であり、夙(つとに)に祖国に返還されており、台湾解放は、他のいかなる国も干渉の権利を有しない中国の国内問題であり、米国の全ての軍隊及び軍事施設は台湾から撤退ないし撤去されなければならないという立場を再確認した。中国政府は、「一つの中国、一つの台湾」、「一つの中国、二つの政府」、「二つの中国」及び「台湾独立」を作り上げることを目的とし、あるいは「台湾の地位は未確定である」と唱えるいかなる活動にも断固として反対する。

 米国側は次のように表明した。米国は、台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分であると主張していることを認識している。米国政府は、この立場に異論をとなえない。米国政府は、中国人自らによる台湾問題の平和的解決についての米国政府の関心を再確認する。かかる展望を念頭におき、米国政府は、台湾から全ての米国軍隊と軍事施設を撤退ないし撤去するという最終目標を確認する。当面、米国政府は、この地域の緊張が緩和するにしたがい、台湾の米国軍隊と軍事施設を漸進的に減少させるであろう。〉

 かくしてアメリカは台湾は中国の一部であり、台湾問題は中国の国内問題であって、そのことに口を出すことは内政干渉となるという中国の「立場に異論をとなえない」ことを誓った。

 では、日本の1972年9月29日の日中国交正常化と同日の「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」を見てみる。(一部抜粋)

 二 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
 三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する。

 ポツダム宣言第8項とは、〈カイロ宣言の条項は履行せらるべく、また、日本国の主権は、本州、北海道、九州及び四国並びに吾等が決定する諸小島に局限せらるべし。〉

 日本も「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」ことを「十分理解し、尊重」することを中国に対する約束とした。

 だとしても、チベットや新疆ウイグル自治区に於ける人権抑圧状況は米中国交正常化、日中国交正常化当時と比較にならない程に深刻化し、香港に於いても
民主化要求デモに対して一国二制度を自らが真っ向から否定して、徹底的弾圧で臨む強権姿勢は西欧民主国家が奉じる「自由、民主主義、人権、法の支配」といった普遍的価値観の中国に対する影響力の無力を突きつけている。
 
 当然、中国の「台湾と新疆ウイグル自治区、香港などは純粋に中国の内政であり、いかなる外部からの干渉も許さない」と主張する内政干渉説を打ち破らなければ、西欧民主主義国家が望む人権状況、普遍的価値観の中国への波及は期待できない。

 日米共同声明で「自由、民主主義、人権、法の支配、国際法、多国間主義、自由で公正な経済秩序を含む普遍的価値及び共通の原則」を世界共通のルールとして望んだとしても、中国やロシア、北朝鮮等の独裁国家、専制国家が壁となって立ち塞がることになる。

  人間が人間として生きるべく保障されている基本的人権は人類が等しく認められるべき普遍的な価値観である。ゆえに人権問題に国境を設けてはならない。一国の人権抑圧に対する他国の非難を「内政干渉」だと国境を設けることは如何なる正当性も持たないことになる。

 もし国境を設けたなら、人類が等しく認められるべきとする要件を破ることになる。「内政干渉だ」と国境を設けることは等しく認めることから外れて人権抑圧を正当化する口実としているに過ぎない。

 もし中国が共産党一党独裁から離れて普遍的価値観を全面的に奉ずる民主国家に変貌を遂げたなら、香港や新疆ウイグル、チベット等の人権抑圧も過去の問題となり、中国の海洋進出も国際ルールに則った行動となり、台湾を中国の不可分の領土として統一することも認めることができると、こういった道理を特に中国に向けて発信しなければならない。

 民主国家とならなければ、台湾は独立した存在としておかなければ、台湾国民の基本的人権は守ることはできないと。
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北朝鮮の独裁体制民主化を条件に核保有を認め、民主主義体制に敵対する独裁体制こそが世界を危険な状態に陥れる悪の根源とするメッセージとせよ

2021-04-12 10:29:22 | 政治
 2021年3月25日、北朝鮮が国連安保理決議違反となる弾道ミサイル2発を発射した。

 日本の首相菅義偉は北朝鮮の弾道ミサイル発射当日に首相官邸エントランスホールに集めた記者たちに対してテーブルに置いた原稿に目を落とし、落としして「先程、北朝鮮が弾道ミサイル2発、発射いたしました。昨年の3月29日以来、約1年ぶりのミサイル発射は、我が国と地域の平和・安全を脅かすものであります。また、国連決議違反でもあります。厳重に抗議し、強く非難いたします」と北朝鮮には一切通じない抗議と非難を表明した。

 アメリカ大統領バイデンも同日、ホワイトハウスでの記者会見で、「発射されたミサイルは国連安全保障理事会の決議1718号に違反する。同盟国や友好国と協議し、北朝鮮が事態をエスカレートさせることを選べば、相応の対応をする。外交を通じて対応する用意もあるが、非核化を最終目標にしたものでなければならない」(NHK NEWS WEB)とあくまでも非核化オンリーを求める姿勢を強調した。

 果たして北朝鮮に通用するのか。

 対して北朝鮮は3月27日、国営メディアである朝鮮中央通信がミサイル発射に立ち会った金正恩側近の朝鮮労働党のリ・ビョンチョル書記の談話を発表したと2021年3月27日付NHK NEWS WEBが伝えた。

 「発射は主権国家としての自衛権に基づいた行動であり、米韓合同軍事演習に対抗するための措置である。国連安保理決議違反だとするバイデンの発言は北朝鮮の自衛権に対する露骨な侵害で挑発だ。バイデン政権は始めから間違っている。我々は自分たちがすべきことを分かっており、継続して圧倒的な軍事力をつくっていく」

 言っている米韓合同軍事演習は米バイデン政権発足後初めてとなるもので、2021年3月8日から18日までの11日間行われたという。

 要するに北朝鮮は米、日、世界の抗議と非難を他処にミサイル・核開発の継続を高らかに宣言した。北朝鮮の金正恩が絶対使命としていることは実質的には北朝鮮国家の安全保障ではなく、父子三代に亘る北朝鮮独裁国家の安全保障であって、ミサイル・核開発の放棄及びその成果物の放棄は自らのに絶対使命と反して金正恩独裁体制を守るどのような安全保障にもならないからである。いわば核・ミサイルこそが金正恩独裁体制を死守できるとしている。

 この国連決議違反の北朝鮮の弾道ミサイル発射に対する経済制裁には中国もロシアも加わって経済制裁を科してきたが、依然としてミサイル開発・核開発に巨額の国家予算を注いでいる。北朝鮮の中国に頼った経済はコロナ対策の国境封鎖で中国との貿易総額が前年比80%減だと報じられているが、あくまでも表に現れた数字に過ぎないことが他の報道によって明らかになる。

 北朝鮮が2020年1月から9月までの間に不正輸入した石油精製品の量は国連安保理の制裁決議が定める年間の輸入上限のおよそ9倍にのぼる可能性があると指摘する報告書を国連安全保障理事会の専門家パネルが纏めたと2021年2月15日付の「NHK NEWS WEB」が報じている。

 同じ「NHK NEWS WEB」が2021年2月10日付で、北朝鮮がサイバー攻撃によって2020年までの2年間で3億ドル以上を不正に入手、核とミサイル開発に充てている疑いがあるとする報告書を同じく国連安全保障理事会の専門家パネルが纏めたと報じている。

 これらが国連の対北朝鮮経済制裁の抜け穴となっているということになる。

 2017年1月20日に発足したトランプ政権は大統領選挙戦期間中から中国との貿易不均衡問題を取り上げ、大統領就任後、中国製品に対する追加関税措置と中国による報復関税措置の応酬がエスカレートしていって、いわゆる米中貿易戦争へと発展していった。このような状況が中国に北朝鮮をなお一層引きつけておく必性が生じたのだろう、これまでも中朝国境の密貿易を黙認したりしていたが、人道名目に当たるために国連制裁には抵触しない、一時停止していた食糧や肥料の無償支援を再開したり、ロシアと共に国連安全保障理事会に北朝鮮への制裁一部緩和を求める決議案を提出したりして、北朝鮮擁護の姿勢を取ってきた。そして2021年3月23日付「asahi.com」記事は2021年3月23日に朝鮮中央通信が北朝鮮の金正恩と習近平が「口頭親書」を交換したと伝えていると報じた。

 金正恩「敵対勢力の挑戦に対して両国が協力を強化する」
 
 習近平「両国人民にさらに立派な生活を与える用意がある」

 習近平は北朝鮮の金正恩独裁体制の終末を臨んではいない。なぜなら、類似の独裁国家であるから、西欧の民主主義国家から批判されたり、非難を受けた場合の独裁手法に対して相互に自己正当化の味方とし得る関係を築くことができることと、中国がアメリカと決定的に事を構えそうになったときに弾道ミサイルと核を保有している北朝鮮を味方につけておけば、アメリカに対して心理的にも軍事的にも強い牽制となるからである。金正恩にしても自らの独裁体制を守るために中国を味方につけておくことは大きな安全保障となるし、北朝鮮を味方につけて置こうとする中国の思惑とは利害の一致を見る。

 北朝鮮の金正恩と習近平が「口頭親書」を交換したと朝鮮中央通信が伝えた2021年3月23日2日後の2021年3月25日に北朝鮮は弾道ミサイル2発を発射させた。中国の改めての力強い後ろ楯が金正恩を強気にさせた、2020年3月29日以来の約1年ぶりの国連安保理決議違反となる弾道ミサイル2発発射という可能性は否定できない。

 2021年3月17日、米韓の外務・国防担当閣僚協議(2プラス2)が開催された。ブリンケン米国務長官は北朝鮮に関して「専制政権が自国民に対し組織的で広範な人権侵害を続けている。我々は基本的人権と自由を求める人々を支援し、これを抑圧する者に対抗しなければならない」と述べたと2021年3月17日付「ロイター」が伝えている。

 周知のことだが、北朝鮮の人権侵害を問題視するのはバイデン政権が初めてではない。アメリカの歴代政権が批判の俎上に載せてきた。国連総会も2020年12月16日、欧州連合(EU)提出の北朝鮮人権侵害非難の決議案を16年連続で正式採択している。多分、今年も12月に入れば、同じことの繰り返しが起きるに違いない。

 国連人権理事会は2021年3月23日、北朝鮮の人権状況非難決議を14年連続で採択した。採択は投票に持ち込まない形で決定されたという。日本政府は北朝鮮との拉致解決に向けた日朝対話の必要性からこのような決議に積極的な関わりを控えていたそうだから、投票に持ち込まないことから賛否の態度が表に出ない採択は日本にとって好都合だったはずだ。

 つまり日本政府は拉致解決のためには北朝鮮の人権状況に目をつぶってもいいとする、自分の都合に応じて態度を変える機会主義を選択したことになる。だから、ミャンマー軍事政権が自らの軍事独裁を死守するために独裁反対のデモを仕掛けているミャンマー市民を何人虐殺しようとも、口では非難するが、具体的な制裁の動きを見せていないのは全て日本政府の機会主義から来ているのだろう。

 金正恩の独裁体制とその独裁体制下の北朝鮮国民に対する人権侵害は表裏一体の関係にあることは断るまでもない。独裁体制を維持するためには自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値観を無視しなければならない。国民が求めたなら、普遍的価値の要求共々、そういったことをする国民を踏みにじらなければ、独裁体制は守ることはできない。中国が香港で警察の武力を使って民主化運動を弾圧し、ほぼ成功しているのは共産党一党独裁体制を守るためであり、新疆ウイグル自治区で反中国ウイグル人を強制収容所送りとしていることも、イスラム教徒男女に強制不妊手術を施して、一種のジェノサイドとなるウイグル人口の減少を策しているのも、終局的には共産党一党独裁体制を守るためである。

 ミャンマーで軍事政権がその独裁体制に反対してデモを仕掛けているミャンマー市民を銃で無差別に殺戮する権行為も軍事政権が自らの軍事独裁を守るためである。

 かくかように独裁体制と人権侵害は表裏一体の関係にある。あるいは独裁体制と普遍的価値観の否定=民主主義の価値の否定は表裏一体の関係にある。つまり国家規模の人権侵害は独裁体制によって産出される。あるいは普遍的価値観の否定=民主主義の価値の否定は独裁体制が自らを守るための拒絶反応として現れる。人権侵害なくして独裁体制は守ることはできない。独裁体制は守るためには人権侵害が必要になる。

 そして金正恩が自らの独裁体制を守る手立ての一つが中国の後ろ楯であり、自らが開発・保有している弾道ミサイルと核であり、人権侵害である。

 ミャンマー軍事政権が自らの軍事独裁を守るために核やミサイルを保有していなくても、中国を後ろ楯にすることによってミャンマー市民の生命を無差別に殺戮できる人権侵害を世界の非難を無視して敢行できる。

 このような状況を抱えている以上、金正恩はアメリカや日本、その他の西欧世界の核放棄の求めに応じることはない。今までも応じなかったし、これからも応じることはない。中東のクウェートにある北朝鮮大使館で代理大使を務め、おととし韓国に亡命した外交官がアメリカメディアの取材に応じ、核は体制の安定に直接関わるため北朝鮮が完全に手放すことはないだろうとの見方を示したと2021年2月1日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えていたが、核やミサイルの保有を独裁体制安定の絶対的要件としているということであり、体制安定のために人権侵害を抱き合わせとしている以上、国連が北朝鮮の人権状況非難決議をいくら採択しても、その状況を変えることができないことになる。

 となると、菅義偉の北朝鮮の核・ミサイル開発についての「全ての大量破壊兵器とあらゆる射程の弾道ミサイルの完全、検証可能かつ不可逆的な廃棄、いわゆるCVIDを求めていく方針に変わりない」とした2021年3月25日参院予算委員会でのいつもと変わらない答弁(同日付「時事ドットコム」記事)は杓子定規の域を出ないことになる。

 金正恩が核とミサイルの廃棄の意志がないことは前々から分かっていたことで、2018年1月8日の当《安倍晋三の鈍感・無知な点は金正恩が独裁者ゆえに核保有を体制死守の最大国益としている点に気づかぬこと - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に次のように書いた。
 〈独裁国家は民主国家と経済上の国益を一致させることができても、国民統治に関しては基本的人権の点で国益を一致させることができない。その点で国益を一致させたなら、独裁国家はたちまち独裁国家でなくなる。

 独裁者は独裁体制を危険に陥れる国内の勢力に対しては言論の抑圧や集会の制限、あるいは禁止等の方法を用いて強権的な取締まりを行い、国外の勢力に対しては軍事的手段で独裁体制を守ろうとする。

 北朝鮮の金正恩にとっては国外の勢力からの独裁体制を死守する唯一無二の保障が核ミサイルの装備であって、そうである以上、放棄することはあり得ない。

 以前トランプが核放棄の条件として北朝鮮の国家体制の保障を口にしたことがあるが、金正恩は父子継承の金一族の独裁体制の国民統治と民主体制のそれとの国益上の利害の不一致・価値観の不一致が一度の保障によって解消されない永遠性を弁えていて、独裁体制死守の絶対的保障をアメリカ本土攻撃可能な核ミサイルの保有から変える意志を持っていないはずだ。〉・・・・

 要するに北朝鮮が民主化すれば、核を保有していたとしても、他の民主国家との経済上の国益の一致のみならず、民主化によって自ずと人権抑圧状況は改善していくことになり、人権問題で北朝鮮が世界の民主国家と対立することもなくなって、基本的人権の点でも世界の国々と国益を一致させることができるようになる。当然な結果としてアメリカや日本、その他の西欧国家との間の緊張関係は解けていく。このことはイギリスやフランスの核がアメリカや日本にとって脅威ではないことが証明する。アメリカの核が日本やイギリスやフランスの脅威とはなっていないことが証明する。

 民主化した北朝鮮がアメリカを後ろ楯にすれば、共産党一党独裁を国家体制とした中国と言えども、下手な手出しはできない。但しあくまでも仮定の話であって、現実は北朝鮮の民主化は金正恩自身の独裁体制維持という絶対使命とは相反する利害を形成する要因となり続けて、受け入れられることはない。

 この状況を変えることはできないのは目に見えているが、アメリカも日本も、「北朝鮮の完全な非核化を求める」とする効果のない杓子定規な要求を繰返すよりも、「北朝鮮の国家体制の民主化を条件に核保有を認める」とした場合、金正恩がこのような提案を飲むことはあり得ないが、世界を危険な状態に陥れる悪の根源は核やミサイルではなく、民主主義体制に敵対する独裁体制であるというメッセージとすることができる。
 このメッセージを北朝鮮だけではなく、中国やロシアが無視しても、世界の多くの国々に民主主義体制の必要性をより強く自覚させる契機とする可能性は否定できない。この必要性は独裁体制こそが国家体制として異質であるという気運を盛り上げていかない保証はない。

 世界から独裁体制国家が消滅し、民主国家ばかりとなったなら、核やミサイルの必要性は減少していく。独裁国家の出現に備えて完全な核廃絶はできなくても、その独裁国家が核兵器を保有した場合に備えて、国連が数発の核を保有し、世界の脅威を管理する世界体制とすることができれば、他の国の核は廃絶の可能性もでてくる。要は世界から独裁体制国家を消滅させることができるかどうかにかかっている。先ずは中国という巨大・凶悪な独裁国家の消滅に世界の民主国家は力を尽くさなければならない。
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PCR検査陰性を条件に飲食店・カラオケ店でのマスク無し、時短無しで感染を防ぐ

2021-04-05 10:11:07 | 政治
 コロナ感染が止まらない。緊急事態宣言発令期間のみは感染が縮小するが、宣言終了後暫くして徐々に増え始めて、再び緊急事態宣言を発令せざるを得なくなる増減サイクルを繰り返している。

 最近のこの繰り返しを振り返ってみる。2020年7始めから8月中旬までの第2波の感染者数を遥かに上回る2020年11月初旬以降のコロナ感染第3波を受けて、政府は2021年1月7日、東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏4都県を対象として期間は1月8日から2月7日までの1カ月間とした緊急事態宣言の再発令。さらに1月13日に栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県を再発令の区域に加えることになった。主な柱は飲食店に対する営業時間午後8時まで、酒類提供は午前11時から午後7時まで。午後8時以降の不要不急の外出自粛等となっている。

 この緊急事態宣言は首都圏を除く大阪、兵庫、京都の関西3府県と愛知県、岐阜県、福岡県の合わせて6府県に対して2021年2月28日に解除決定。大阪、兵庫、京都の関西3府県は3月1日から飲食店などへの時短営業要請を緩和することを決め、大阪府は対象エリアを府内全域から大阪市内に縮小、午後8時までの営業時間を午後9時まで1時間延長することにして、なおかつ無症状の人へのPCR検査を繁華街などで行い、再拡大の予兆がないか継続的に監視することにした。

 一方、特に感染者が多かった首都圏東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県1都3県の2月7日期限とした緊急事態宣言はさらに2月8日から3月7日までの1カ月の延長を決定。ところが期限とした3月7日を迎える2日前の2021年3月5日、1都3県の緊急事態宣言を2週間延長し、3月21日までにすることを決定。そして決定どおりに3月21日に解除の運びとなった。

 但し2021年2月28日に解除決定した大阪府の感染者が3月中旬頃から徐々に増加。増加を受けて大阪府の吉村知事は解除約1カ月後の2021年3月29日に緊急事態宣言が出されていなくても集中的な対策を可能にする「まん延防止等重点措置」の適用を国に要請する方針を示した。この際、適用された場合はマスク会食の義務化を実施したい考えを示した。

 そして2日後の3月31日に適用を要請した。この日の大阪府内の感染者数は報道によると、1日としては過去5番目に多い599人にのぼっている。

 こういった感染経緯は緊急事態宣言の発令以外に感染拡大阻止の手立てはないことを証明している。だから、緊急事態宣言の発令と解除の繰り返しに応じて感染者数の増減サイクルも繰り返すことになる。

 マスク会食の義務化は飲食店や飲食を伴うカラオケボックス等を対象としていることになる。つまり食べ物と飲み物を口に運ぶときだけに限ってマスクを外すことができる義務化でもある。食べたり飲んだりには会話が付き物で、そのどれもが愉快な気分を誘い、高める源泉となる。そしてそのような愉快な気分はときには興奮状態にまで達することがある。どれ程の人間が食べ物と飲み物を口に運ぶときだけマスクを外し、口に入れ終わると直ちにきちんとマスクをし、それから会話に打ち興じるといった繰返しのルールをきちんきちんと厳守することができるのだろうか。

 求めるとおりの厳守に不安を感じたのか、翌4月2日になって大阪市の松井市長は大阪府と合同で「見回り隊」を作り、市内の飲食店などへの巡回を始める方針を示した。約5万軒ある大阪市内の飲食店を4、50人の職員で個別に巡回、監視する方針だと言う。

 この「見回り隊」については2021年3月28 日付け、4月1日変更の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(新型コロナウイルス感染症対策本部決定)の、〈三 新型コロナウイルス感染症対策の実施に関する重要事項 (3)まん延防止 8)緊急事態措置区域及び重点措置区域以外の都道府県における取組等〉の⑤に、〈政府は、関係団体や地方公共団体に対して、飲食店に係る業種別ガイドラインの遵守徹底のための見回り調査、遵守状況に関する情報の表示や認定制度の普及を促すとともに、関係団体等と連携しつつ、クラスターが発生している分野等(飲食・職場など)を対象とした業種別ガイドラインについて、見直し・強化を図り、徹底する。〉と記されている。(文飾当方)

 要するに飲食店や飲食店利用者の自主性に任せていたのでは感染防止はできない、感染防止に関わるガイドラインの遵守徹底を図るためには関係団体や地方公共団体のより強力な関与が必要だというわけなのだろう。

 なぜかくも飲食を伴う場での感染に神経を使っているのかと言うと、ここ数日は東京都よりも大阪府の1日の感染者数が上回っているが、これまで最も多かった東京都の感染者の半数前後が感染経路不明ではあるが、感染経路判明の濃厚接触者の内訳はクラスターの発生場所と発生状況に応じて順位が入れ替わることがあるが、大体に於いて「家庭内」が最も多く、次いで「施設内」か「職場内」、最後が「会食」となっているものの、新型コロナウイルス感染症対策分科会会長尾身茂が、〈歓楽街や飲食を介しての感染が感染拡大の原因 家族内感染や院内感染は感染拡大の結果である〉と見ているからである。少々大袈裟な言い方をすると、感染拡大の目の敵にすべきは飲食の場であるというわけである。

 この言葉は「新型コロナウイルス感染症対策分科会(第19回)」(2020年12月23日)の中で新型コロナウイルス感染症対策分科会会長尾身茂が「現在直面する3つの課題」と題してグラフ入りで分析し、警告を発している見方である。

 その他にも次のように分析し、警告を発している。

 〈見えているクラスターだけを見ても飲食店でのクラスターが多い〉、〈クラスターの発生は飲食店で先行した後に医療・福祉施設で発生する〉、〈レストランの再開が感染を最も増加させる〉等、いわば飲食店元凶説を掲げている。

 さらに感染経路不明者の感染についても飲食店元凶説に立っている。

 〈例えば東京都では”見えている感染”だけを見ると家族内感染が最も多いが、“見えない感染”を”見る”と・・・

1. 東京などの都市部では、感染者数が多いことに加え、人々の匿名性が地方に比べ高いことから、感染経路不明(”見えない感染”)の割合が多い(東京都では約6割)。
2. しかし、この感染経路が分からない感染の多くは、飲食店における感染によるものと考えられる。その理由は以下a b cである。

 a. これまでのクラスター分析の結果、日常生活の中では、飲酒を伴う会食による感染リスクが極めて高く、クラスター発生の主要な原因の一つであることが分かっている。
 b. 感染経路が判明している割合の高い地方でも、飲酒を伴うクラスター感染が最近になっても多く報告されている。
 c.欧州でもレストランを再開すると感染拡大に繋がることが示されてる。〉

 勢い飲酒を伴う会食の場への「見回り隊」という発想が出てくるのも無理はないということになる。元凶を抑えることができなければ、緊急事態宣言の発令と解除の繰り返しか、まん延防止等重点措置に頼ることになるということなのだろう。

 最初に挙げた「見回り隊」についての記載がある「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」に次のような記載がある。

 〈新型コロナウイルスに感染した人が他の人に感染させる可能性がある期間は、発症の2日前から発症後7日から10日間程度とされている。また、この期間のうち、発症の直前・直後で特にウイルス排出量が高くなると考えられている。

 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、他の人に感染させているのは2割以下で、多くの人は他の人に感染させていないと考えられている。〉

 後段の「他の人に感染させているのは2割以下」であっても、飲食店が感染拡大の元凶説としている以上、、飲食店での感染の危険性を抑えなければならない。

 新型コロナウイルスの潜伏期間(病原体に感染してから、体に症状が出るまでの期間)は1〜14日程度で、平均の発症期間は5~6日程とWHOは報告している。つまり感染したその日に発症する場合もあれば、2週間後に発症するというケースもあるが、平均すると、感染してから5~6日後程度の発症ということになる。

 この平均値を取るとして、先の〈新型コロナウイルスに感染した人が他の人に感染させる可能性がある期間は発症の2日前から発症後7日から10日間程度とされている。〉としている予測を当てはめると、感染後の平均的な発症期間5~6日から他人に感染させる可能性期間である発症2日前を差し引くことによって感染から3~4日後程度で他人に感染させる2次感染源になり得るという計算が成り立つ。あるいは平均での遅いケースでは発症後5日から8日程度は2次感染源となり得る可能性は消えないということになる。

 この早いケースの場合のみを逆の方向から言うと、感染から1~2日後程度は2次感染源になり得ない、他人に感染させる可能性は少ないということになる。と言うことは、PCR検査をして翌日に陰性と判定されれば、検査当日の検査後にか、検査翌日に感染したとしても、その間は他人に感染させる可能性は低いことになる。あくまでも「低い」であって、絶対ではないが、可能性としては成り立つ。

 そしてこのことは感染していてもウイルス量が少ないために陰性と判定された場合でも、ウイルス量が増えて人に感染させるまでに1~2日程度は余裕を見ることができるから、当てはめ可能となる。

 PCR検査の結果について翌日に判定することは決して不可能ではないはずだ。「NHK NEWS WEB」記事がプロ野球の巨人軍は2021年4月3日に監督やコーチ、選手、スタッフの合わせて101人にPCR検査を行った結果、二人の選手が陽性判定、一人が再検査となったと報じていた。2021年4月4日 13時23分の報道だから、検査翌日に結果を伝えられていたことになる。PCR検査を行っている民間病院の中には翌日結果判明を謳っているサイトを見受けることができる。

 PCR検査の翌日結果判定の体制を整えさえすれば、陰性判定された対象者はその翌日に飲食店、その他で飲酒を伴う会食をしたとしても、他人に感染させる可能性はかなり低く見積もることができる。勿論、PCR検査日と結果判定日を入れた陰性証明書の発行が必要で、その提示者のみの入店を認めれば、マスク装着をさ程厳しくしなくても、あるいは見回り隊などと物々しい体制を敷かずとも、現況以下に感染を抑えることができることは否定できないし、飲食店元凶説も、遠い話とすることができる。

 こういった状況を招くことができれば、時短も必要なくなる。飲みたくなったら、その都度PCR検査を受け、陰性証明書を持ってた客のみの入店を許可すればいい。時短が必要なくなれば、経済もそれなりに回すことができる。

 但し全てのPCR検査を無料の行政検査としなければならない。現在、感染再拡大を防ぐために不特定の市民に対してPCR検査を通した街頭モニタリング検査を各地で行っているが、方法は希望する無症状者に唾液を使ったPCR検査キットを無料で配布、持ち帰って唾液を専用容器に入れ、指定場所に送ると、検査結果が返ってくる仕組みだということだが、それをその場で専用容器に唾液を採取(唾液はペッと吐くのではなく口の中に溜めて容器に垂らす方法を厳守させれば採れば、飛沫は飛ばない)、検査側が回収してその日のうちに検査機関に持ち込めば、翌日の判定は可能とすることができる最善の方法になると思うが、このようなPCR検査と併行して飲食店に行く予定者を特定的に行政検査の対象とする体制に持っていく。

 これまで飲食店等に対する時短要請で受ける飲食店側等の損失に対してその補償を行ってきたが、時短が必要でなくなれば、その補償金が浮いて、無料の行政検査費用にまわすことができる。

 この方法は不可能だろうか。
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