日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 うーん、と現状では首をひねるしかないのですが、ともあれ「靖国参拝」という燃料が昨日(16日)、日本側から改めて投下されました。

 前回()のような側近の呟きなどではなく、小泉首相直々のお達しです。格が違います。言辞もより明快な意思表示となっております。
「他の国が干渉すべきでない」とまで言っています。最近の対中関係に関する小泉首相の発言としては、抜群ともいえる可燃度の高さです。

 まずは中港台マスコミの大半が元ネタに使っている共同通信の記事をどうぞ。

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 ●靖国参拝継続の意向 首相が中韓に不快感(共同通信2005/05/16/11:26)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=HKK&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2005051601001033

 小泉純一郎首相は16日午前の衆院予算委員会の外交問題などに関する集中審議で、今年中の靖国神社参拝の有無について「いつ行くか、適切に判断する」と参拝継続の意向をにじませた。
 同時に、首相は「戦没者の追悼でどのような仕方がいいかは、他の国が干渉すべきでない。靖国神社に参拝してはいけないという理由が分からない」と述べ、首相の参拝に反発する中国や韓国に強い不快感を表明した。
 また、首相は「中国側は『戦争の反省』を行動に示せというが、日本は戦後60年間、国際社会と協調し、二度と戦争をしないという、その言葉通りの行動によって、戦争の反省を示してきた」と強調し、靖国参拝の取りやめを求める中韓に反論した。

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 ……で、中港台マスコミの反応はおしなべて速かったです。ロイター電(中文版)が流れたのは小泉首相の発言後ほどもない当日の12時41分(※1)、香港紙『明報』のリアルタイム版である「明報即時新聞」での報道が14時30分(※2)。間髪を入れずに、というタイミングです。

 中国も今回は負けてはいません。国営通信社・新華社の電子版である「新華網」が中国新聞社電を14時15分に掲載(「明報即時新聞」より速い!)、胡錦涛の広報紙『中国青年報』のウェブサイト「中青在線」は、同じ記事を15時30分に掲載しています(※3)。

 また「人民網」(党中央機関紙『人民日報』電子版)での掲載は22時35分と大幅に遅れましたが、これは東京特派員によるオリジナル記事です(※4)。前回、掲載するまでに約30時間も逡巡したのがウソのようです。ともかく入れ食い状態と言いますか、大漁です(笑)。

 この勢いで釣れたのですから、日中関係も再び大荒れ間違いなし(中国の反発は必至だ)……の筈なんですけど、
実は反応が速い割にあまり盛り上がっていません。

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 今回の小泉発言は
タイミング・内容とも中国側の感情を逆撫でするようなものなのです。バンドン会議で村山談話を持ち出し、胡錦涛・総書記との首脳会談を実現。この胡錦涛と温家宝・首相は昨年それぞれ小泉首相と会談しており、その席上でいずれも靖国参拝問題が中国側から提起されたのは記憶に新しいところです。

 先日の日中外相同士の会談では李肇星・外相から
「靖国神社には絶対参拝すべきではない」との言葉が飛び出し、秦剛とかいう外交部の報道副局長も定例記者会見で何か吠えていました。実務者レベルでは関係修復を模索する戦略対話もとりあえず緒に就いて……という矢先にこの発言です。正に機を捉えるに敏、絶妙すぎます(笑)。

 とりあえず李肇星の面子は丸潰れ(秦剛は格下だから潰される顔がまだない)。胡錦涛と温家宝にとっても顔に泥を塗られたも同然の方向で事態が進んでいる(まだ参拝した訳ではないので)ので、面子はもちろん、また対外強硬派あたりから突き上げを喰うことになるのでしょうか?

 温家宝で思い出しましたが、実は呉儀という強面のオバサン副首相がきょう(17日)、愛知万博視察のため来日するのです。元々日本側は温家宝を引っ張り出したかったようですが、昨年末の李登輝氏訪日をまだ根に持っているのか、温家宝は首を縦に振らない。それで格下の呉儀の来日、となった訳ですが、その前日に小泉首相は上の発言でお出迎えという訳です。そこまで狙ったのかどうかは知りませんが、
中国側にとっては二重三重の「意地悪構造」になっていることは確かです(笑)。

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 ところが、不思議なことに
中国国内メディアはこの話題で盛り上がっていないのです。「新華網」や「中青在線」が転載した中国新聞社電は冒頭に掲げた共同通信の記事をなぞった内容で、「小泉首相がこれこれこういう発言をした」という事実関係のみが並べられており、論評は加えられていません。

 22時半になって出た「人民網」の東京特派員電も、時間をかけた割にこれまた事実関係のみ。今朝の『人民日報』(2005/05/17)でもその記事が使われているのですが、国際面に回されて大事な扱いは受けていません。標題に憎々しさを滲ませた観があるものの、レイアウト上で色々細工して目立たせるといったようなこともなされておらず、淡々とした印象を受けます。

 中国での第一報が14時すぎですから、翌朝の新聞に載せるための論評記事を書く時間的余裕は十分にあった筈です。実際、香港の親中紙『香港文匯報』(2005/05/17)は社説でこの題材を扱っています。しかし現時点では中国国内の主要メディア(電子版)に記事以外のものは登場していません。

 そこでこちらは、うーん、と首をひねるしかないのです。ひょっとして先日の訪中でヤマタクは意外と大きな仕事をしてきたのでしょうか?中国側のこの静まり方はどうでしょう。なにやら
「靖国参拝」について日中間で何らかの合意が密かに成立しているかのようではありませんか。

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 ●中国、首相の参拝中止困難は分かっている…山崎補佐官(読売新聞2005/05/13)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050512ia26.htm

 自民党の山崎拓首相補佐官は12日夜のTBS報道番組で、小泉首相の靖国神社参拝について「中国側は(首相が)靖国参拝を完全にやめるのが難しいのは分かっている」と述べた。(後略)

 この謎めいた言葉が改めて思い出されます。

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 仕方がないので『香港文匯報』の社説(※5)にあたるしかないのですが、これがまた抑制されたトーンになっています。

「支那人+華僑+朝鮮人=アジア人民」

 という相変わらずのお間抜けな認識に立ってとりあえず小泉発言を批判しているのですが、内容は紋切型という印象で目新しいものもなければ、激しいものもありません。むしろ最後の段落いっぱいを使って、

「でも、日本の大多数の市民とごく少数の軍国主義分子は区別しないとね。大半の日本人には戦争責任はない。彼らも戦争の被害者で、中国や広範なアジア人民と友好関係をとり結ぶことを願っているんだ。中国政府と中国人民も、日本との善隣友好関係の確立を望んでいる。ここ何年かは色々と波風も立っているけど、両国関係は常に友好・協力が主流をなしている。この点ばかりは誰にも変えることはできないんだ」

 と、いよいよトーンダウンしつつ、何やら明るいまとめ方で締めに入ります。最後の最後で、

「日本政府は中日間のこの得難い友好・協力関係を大事にするべきで、アジア人民の感情を傷つけるようなことはもうしないでほしい」

 ……というお約束の文言が出て終わるのですが、何というか全体的にソフトな内容で、いつものあの恫喝めいた言辞を弄するところが全くないため、読者は満腹感を得られません(笑)。……これは違います。
いつもの中国じゃありません。

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 時間がないので情報が揃わず、この程度の内容になってしまい申し訳ありません。あと半日ぐらい様子を見れば何か動きが出てくるかも知れませんが、いま私の身体は睡眠を欲しています(笑)。夜勤明けなのです。どうか諒としてやって下さい。

 とりあえず、

 ●中国側は素早く報じたものの、可燃度の高い大ネタの割には異様ともいえる静まり返ったスタンス。一晩経っても論評記事1本すら出さない(不可解)。

 ●香港における中共の御用新聞『香港文匯報』は社説を出したものの、紋切型かつソフトな内容に終始(失望)。

 ●共同通信が今回は「中国の反発は必至だ」を使っていない(意外)。

 ……ということに非常なる違和感を感じて頭がクラクラします。ああこれは眠いせいかも知れません。床に就きます。おやすみなさい。




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 【※1】http://hk.news.yahoo.com/050516/3/1cjqa.html

 【※2】http://www.mpinews.com/content.cfm?newsid=200505161430ta11430a

 【※3】http://news.xinhuanet.com/world/2005-05/16/content_2963109.htm(新華網)
     http://news.cyol.com/gb/news/2005-05/16/content_4830.htm(中青在線)

 【※4】http://world.people.com.cn/GB/1029/42354/3392226.html

 【※5】http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=WW0505170002&cat=005WW


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