日々の恐怖 11月8日 冬の日
冬になると思い出すことがある。
俺が小学2年の頃、もう22、3年以上も昔の話なんだが、小学校のすぐ隣が中学校だった。
中学校のプールは大きくて深くて、年中水が張りっぱなしで、夏が終わると濁って緑色になる。
ある冬の日、俺はなんとなく中学校のプールを見に行った。
冬休みだったと思うが、小学校の敷地から見るプールには、人はいなかった。
俺はフェンスの破れ目からプールに侵入した。
プールは見事に氷が張っていて、まるでスケートリンクの様で、俺はつい夢中になって氷の上を走ったり滑ったりしてしまった。
ふと我に返って、足下をみると大きな気泡が氷の下で激しく動き回っていた。
“ なんか、ヤバいな・・・。”
と思った俺は、プールサイドめがけて走った。
しかし、氷はバカっと割れて俺は汚い氷水の中へ吸い込まれた。
“ やべえ、死ぬのか俺・・・?”
と小学生ながら生命の危機を感じ、あらん限りのパワーを振り絞って叫んだ。
「 助けてぇ~~~!」
中学校の先生が駆け付けてくれて、俺は助かった。
あと少し救助が遅かったら、俺は水を吸った衣類の重みで水の底に沈んでいただろう。
中学校の職員室で裸にされて毛布をまかれ親が呼び出された。
その日はすぐに家に帰ったが、翌日も、またその翌日も、俺がプールに落ちたという話が職員室や親の間で密かに続いているようだった。
そんな事件から3年が経ち、高学年に進級した俺はオヤジから衝撃的な話を聞かされた。
俺が溺れかけた日、そのプールの底から、
“ もう一人”
発見されたんだそうだ。
水を吸って石の様に重くなったコートやセーターを着た、当時の俺より少し小さな男の子が沈んでいたそうだ。
俺、水の中でそいつに会ってたんだよなァ・・・。
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