日々の恐怖 2月9日 マンションの住人(1)
6年前に港区で一人暮らししていた。
築浅の綺麗なオートロックマンションだったけどちょっと訳ありの人が住むマンションで、飲食業・売れないグラドル・絶妙な服装で絶対顔を見せない人とかが集まってるところだった。
そういうマンションだから、夜こそ人がいなかった。
俺も飲食業だったから普段は夜に家にいることは全然ないんだけれど、その日は具合が悪いから店休んで家にいた。
深夜3時ちょい前に部屋の電気消してベッドでゴロゴロしてた。
すると、急にインターホンが鳴った。
そのマンションはオートロック越しの来訪と玄関直での来訪で音が違うんだけど、その時は玄関直の呼び出し音が鳴って、飛び上がるくらい驚いた。
驚きすぎて起き上がったまま硬直してたら、2回3回とインターホンが押される。
“ 同じ階の住人に、何かあったんかな・・・?”
って思って仕方なくインターホンを取った。
「 夜分遅くに申し訳ありません。」
ちょっと酒焼けしたようなおっさんの声だった。
「 はい?」
「 お住いの方みなさんにお聞きして回っているんですが、ころしていただけませんか?」
「 ころして?」
「 私をですね、殺害してもらいたいんですよ。
殺人、ご存知ですよね?」
「 何言ってんの?」
「 無理なようでしたら、あなたを殺させて頂けませんか?」
「 頭おかしいんじゃねーの!」
インターホン叩き切って、またベッドに戻った。
最初は、
“ 変なおっさんだったな、気持ち悪ぃ~。”
と思うだけだったんだけれど、だんだん怖くなって来た。
オートロック通って中入っちゃってるわけだし、みんなに聞いて回ってるってことはまだこのマンション内にいる。
警察に連絡するべきだったんだけれど、当時は税金とか払ってなかったし、ちょっと問題起こした時の賠償金みたいなのもバックれてたときで、連絡出来なくてずっとそわそわしていた。
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