日々の恐怖 8月11日 全寮制(1)
俺が入学した高専は俺が生まれた年、昭和に出来た学校なんだけど、山裾の何もない丘を切り開いて作られた学校だった。
そこは俺んちのすぐ近所で、子供の頃にはその校舎の電灯に集まってくるカブト虫やクワガタ虫に夢中になって、夜明けと同時刻に弟と二人、敷地の中に忍び込み、昆虫採集に夢中になっていた。
あれはある晩のことだった。
晩というかもうすぐ夜が明けるといった未明だ。
弟が突然、
「 やべえっ!」
って言った。
“ どうしたんだろ・・・?”
と思って弟が見てた方に顔を向けると、校舎の窓から青白い顔をした女の人がこっちを見ていた。
それも、背中に赤ちゃんをおんぶしてる感じだった。
俺ら、よく忍び込んでは見巡りの守衛から見つかって逃げまくっていたので、それも学校関係者の人なのかと思って一目散に逃げ帰った。
それから10年ほどして、その学校に俺が入学することになるわけだけど、入学してわかったのは、この学校は2年まで全寮制で、寮生は希望入寮者含めて4年までいる。
それと、俺らが子供の頃にカブト虫採集に忍び込んでいたのは寮内の敷地だったことだった。
自宅が学校の目と鼻の先にも関わらず、俺は全寮制のしきたりで寮に入ることを強いられた。
それで、寮に入るとどこでもあることだろうけど、先輩たちから寮内のルールや秘密なんかを教わる。
俺が聞いてびっくりしたのは、1年坊主の寮棟から洗濯室まで行く途中の渡り廊下に、髪の長い女の幽霊が出るって噂だった。
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