日々の恐怖 5月17日 日記
小学生の時、両親の離婚で引越ししてった幼なじみの女の子と交換日記していた。
でも途中から女の子が友達にも日記を書かせたりするようになってきて、俺はそれがいい気分がしなくてだんだん返すのが遅くなってった。
ある時、その子がめちゃくちゃ長文で書いてきて、嫌になってきてた俺は、気が向いたらまた読もうってほったらかしにしていた。
あんまり日が経ってしまったら、今度は今更返すのもバツが悪くなってしまって、ずっと置いてあった。
でもある日やっぱり悪いなと思って読もうとしたら、ノートがない。
部屋中どこを探しても見つからない。
母親に聞いたら、その子がノート返してほしいって家に来たから返しておいたって言った。
それで、そんなの聞いてないってケンカになった。
それからその子からノートが送られてくることはなかった。
しばらくして、中学に上がる頃くらいにその子が事故で亡くなったと聞いた。
本当に事故なのかどうかは分からない。
その時母ちゃんに聞かされたのは、ノートを家に取りにきたすぐ後くらいにその子が入院したことだった。
そのきっかけが、母ちゃんがその子の様子がおかしいって学校に連絡したからだった。
なんでも家に来たその子は、別人みたいな大人みたいな話し方で、
「 本人が交換日記をどうしても読みたがるから返して下さい。」
と、本人にも係わらずまるで他人事のように言ったらしい。
日記のことも知ってた母ちゃんは部屋から日記を探して渡したんだけど、気味が悪くなって学校に連絡した。
俺はあの時最後の日記に何が書いてあったのか、なぜ読んであげなかったのかとても自分を責めたけど、うちの親はもっと身近にいた人達も分からなかったんだから、まして子供だったお前が自分を責める必要はない、って言ってくれた。
でもやっぱり心は今でも晴れない。
もう何年も前だけど、その子が亡くなってから3年~4年経ったある日、突然その子の父親が家に俺を訪ねて来た。
しかし、俺は留守にしていて会えなかった。
その子は母親に引き取られてたんだけど、父親はお葬式には来てなかった。
父親が言うには俺がその子と転校してからも仲良くしてくれてたと聞いて、一言どうしてもお礼を言いたくて訪ねてきたらしかった。
恥ずかしながら亡くなったことも最近まで知らなかったと、とても寂しそうな表情で俺に会えなかったことを残念そうにして、とても感謝してると伝えて下さいと言ってたそうだ。
でもなんか怖いんだよ。
その子の父親は本当に俺にお礼を言いたくて会いに来たのかなって。
本当は俺を恨んでるんじゃないのか。
最後の日記に何が書いてあったのか。
その子は俺に何が言いたかったのかな。
母親の方は俺でも分かるほど人間性の欠けた人だったからあれだけど、父親は別だったような気がする。
父親はそのときまで死んだことも知らされていなかった。
日記も見たのかもな。
分からないけど無性に不安になる。
今でも時々、夜後ろから人が走ってきたりすると怖くて仕方ない時がある。
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