Speed Boosterはホントに良い?

 今月15日に縮小光学系と云うタイトルで、スピードブースターについて書いた(see here)。簡単に云えば、APS-Cイメージセンサーを持つノンレフレックスカメラに、一眼レフ用のレンズを装着するためのアダプタなのだが、これまでのアダプタと違うのは縮小光学系(レンズ)が内臓されている事。

 一眼レフ用のレンズをAPS-Cサイズのイメージセンサーを持つカメラに装着すると、イメージセンサーの大きさの違いから、レンズの焦点距離が1.5倍のレンズ相当の画角のレンズとして使用することになることはご存じの通り。具体的には、APS-C機に18mmのレンズを装着した場合、フルフレーム機に27mmのレンズを装着した時と同じ画角での撮影になると云う事である。

 300mmのレンズをAPS-C機に装着すれば450mmの超望遠と同じ画角で撮影することになる例からは、望遠には非常に有利となるがその逆、つまり広角側では不利になると云う事をご理解いただけるだろう。この問題を解決するのがMetabones社のSpeed Boosterなのである。

 マスターレンズに装着することでレンズの焦点距離を引き延ばすことが出来るテレコンバージョンレンズと呼ばれるアタッチメントがある。その多くは焦点距離を1.4倍、2倍に引き延ばす光学系(レンズ)を内蔵しており、マスターレンズとボディとの間に装着して使う。例えば1.4倍のテレコンバージョンレンズを200mmのレンズに装着すると焦点距離は280mmとなる(この状態のレンズをAPS-C機に装着すると、更に1.5倍の420mmの超望遠と同じ画角となる)。

 テレコンバージョンレンズを使うことにより手軽に超望遠撮影が出来るようになるのだが、良いことばかりではない。レンズのF値は、レンズの焦点距離と有効口径によって決まる。式で表すと「F値=焦点距離/有効口径」である。つまり、レンズの有効口径が同じままで焦点距離が1.4倍になるわけだから、F値は1.4倍(絞り一段分)と暗くなる。具体的にはF2.8のマスターレンズに1.4倍のテレコンバージョンレンズを装着すると、F値は4となるのである。

 Speed Boosterは上で説明したテレコンバージョンレンズのまったく逆の働きをするアダプタである。つまり50mm F1.4のレンズの焦点距離を0.7倍の35mmに変換する。「F値=焦点距離/有効口径」の公式にこれを当てはめるとF値は1.0と大幅に明るくなることがわかる。焦点距離は35mmとなるのだが、Speed Boosterを介して装着するカメラのイメージセンサーはフルフレームよりも小さなAPS-Cサイズだから、焦点距離が1.5倍相当、つまりマスターレンズの焦点距離とほぼ同じ52mmレンズ相当の画角での撮影となる。

 「デジカメWatch」に、キヤノンの50mm F1.4のレンズをSpeed Boosterを介してソニーのNEX-6に装着してのインプレッションが早々と掲載されていた(see here)。記事には「4群4枚の本格的なレデューサーレンズを搭載したおかげで、画質劣化はほぼ感じられなかった」と書かれて入るが、果たして本当だろうか。

 メーカー純正のテレコンバージョンレンズでさえも解像度が低下するなどマスターレンズの描写性能に悪影響を及ぼすのである。この事実を考えた時、サードパーティー製の「ワイドコンバージョン」レンズがマスターレンズの性能の悪影響を及ぼさないとは俄かに信じされない郷秋<Gauche>なのである。


 と云う訳で、今日の一枚は郷秋<Gauche>が持っている唯一のテレコンバージョンレンズ、AF-S Teleconverter TC-14II(1.4X)。どのレンズにでも装着できれば便利なのだが、装着できるレンズが限られており、これが使える郷秋<Gauche>手持ちのレンズは70-200mm F2.8のズームのみ。これを装着すると98-280mm F4のズームレンズとして使うことになる。マスターレンズがF2.8と明るいので暗くなるとは云ってもF4なので使い勝手が極端に悪くなることはないが、画質の低下をカバーするために開放で使う事は少なく、5.6以上まで絞るのが通例である。

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