S&Pグローバル・レーティングは15日、中国の不動産開発大手、中国恒大集団と複数の子会社の格付けを
「CC」に引き下げた。流動性が枯渇しているようだとしている。リーマン型の金融危機ではなく 一番差し迫
った不安は国内の不動産価格の暴落だ。恒大集団が保有資産を投げ売りすれば価格形成メカニズムが破壊され
借り入れに頼る不動産開発会社が破滅して、中国経済の4分の1を占める不動産セクターが機能不全になりか
ねない。中国の商業銀行の不良債権比率は4─6月期で1.76%と十分制御できる範囲でモラルハザードを
起こしてまで恒大集団を救うことにはならないでしょう。他に同じような不動産会社があれば中国のマンション
市場崩壊もあり得ます。30数年前の日本の不動産バブル崩壊に似ていますね。
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かつて中国一の販売実績を誇った不動産開発大手、中国恒大集団が崖っぷちに立たされている。混乱を伴って
幅広い影響をもたらす形の経営破綻に追い込まれるか、あるいは「管理された倒産」を余儀なくされるのか。
一方で、政府による救済の可能性は乏しそうだ。 1996年創業の恒大集団は、中国当局が借金や建設事業
を自由気ままに許していた時代の申し子と言える。だが、現在では2兆元(3050億ドル)近くの負債を
抱え、ここ数年の中国で最大級の破綻を起こす可能性が目の前に迫ってきた。 近年、中国では金融リスク抑
制と住宅取得促進の一環として、不動産開発会社に借り入れや土地購入を制限し、その他に何百種類もの新
しい規制が導入されている。 そうした規制を受けて昨年、恒大集団は債務圧縮の取り組みを加速させた。来
年初めまで主な外債の償還期限は到来しないが、サプライヤーへの支払いや債務利払いが遅れていることで
長年にわたって投資家の間にくすぶっていた懸念が顕在化する事態になった。 今のところ、恒大集団は新た
な資金調達手段を手に入れない限り、サプライヤーに対する支払いや開発案件の完成、増収などがままなら
なくなった。アドバイザー起用に動くとともに、デフォルト(債務不履行)のリスクを警告している。この
デフォルトに加え、身売り、解体もしくは救済などが、検討されているシナリオだ。 アナリストは、200
8年の米リーマン・ブラザーズ破綻と同一視することには否定的だ。当時、リーマンのさまざまな取引相手
にも危機が生じて、最終的には世界全体の金融市場が一時機能を停止させた。 それでも一部の投資家は、恒
大集団もそれなりに負の波及効果を生み出すのではないかと懸念する。 ディストレスト資産や高利回り債
を専門に扱うSCレービのマイケル・レービ氏は「恒大集団が予想通りデフォルトに陥り、再建過程に入っ
た場合、なぜ影響が伝播しないと考えられるのか。流動性を入手する手段がなく、事業の手を広げ過ぎたと
いう同じ問題に苦しむ不動産開発会社は、ほかにも存在する」と述べた。 さらに銀行の不動産向け融資焦げ
付きや、痛手をもたらす兆候をよそに、当局が断固として不動産市場改革を推し進める構えであることにも
懸念の声が聞かれる。 今のところ、反応が見られるのは債券市場と、恒大集団や同業者の株価にとどまって
いる。恒大集団の株価は過去14カ月で約90%下落し、ドル建て社債は額面の3─4割で推移。ナティク
シスのエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は、中国の不動産セクターという最も明白な「灰色の
サイ(高い確率で大きな問題を引き起こすと考えられながら軽視されているリスク)」を巡り、緊張が高ま
りつつあるとの見方を示した。 <不動産市場崩壊も> 一番差し迫った不安は、リーマン型の金融危機では
なく不動産価格の暴落だ。恒大集団が保有資産を投げ売りすれば価格形成メカニズムが破壊され、借り入れ
に頼る不動産開発会社が破滅して、中国経済の4分の1を占める不動産セクターが機能不全になりかねない。
ロンドンを拠点とする独立系アナリスト、パトリック・ペレット・グリーン氏は「リーマン(の破綻)は金
融システム全般に波及し、活動を停止させたという点で非常に異なる。多数の取引相手が抱えていた何百
万もの契約があり、誰もがポジションを解消しようとしていた。恒大集団については、不動産セクター全体
を抑圧する」と説明した。 恒大集団には、数多くの銀行が融資を行っている。昨年明らかになった文書によ
ると、同社は128行超の銀行と、121社を超えるノンバンクから借金がある。この文書を巡って、同社
は「でっち上げ」と主張している半面、アナリストは真実味があると受け止めている。 もっとも各種データ
を見ると、中国の商業銀行の不良債権比率は4─6月期で1.76%と十分制御できる範囲に収まっている。
米国と比べ、政府がずっと厳しく金融システムを統制しているのが、中国の特徴だ。 こうした中で、恒大集
団はどうなるのか。信用分析情報を提供するリオルグのディストレスト債アナリスト、ジェームズ・シー氏
は「政府は肥大化した不動産セクターで、債務圧縮に向けた取り組みを熱心に進めている。だから、恒大集
団に救いの手を差し伸べる公算は乏しい」と話す。 14日には恒大集団本社に、怒りの声を上げながら債権
の回収を求めて約100人の投資家が集まった。それらの状況を踏まえ、アナリストの間では小口投資家を
守るための「管理された倒産」を想定する向きが増えてきている。 ノムラのアナリスト、アイリス・チェン
氏は顧客向けノートに「政府が(民間資本の)恒大集団を救済する動機があるとは考えられない。だが、彼
らは積極的に恒大集団を追い込むつもりもなく、万が一の場合、より秩序のあるデフォルトを取り仕切るの
ではないか、というのがわれわれの見解だ」と記した。