仰向け寝転んだ古畳の上。開け放った縁台の向こうの虫の声に、ふと目をやれば、いつのまにやら竹林を覆う叢雲の間に、僅かに月の垣間見える刻限になっていた。
刀を手に入れ決心がついた、怒りに任せた初めての人斬りを、不覚にも見られた坊主に言われるがままに誘われ、この苫屋に放り込まれた。
「鞘を抜かずにその竹を斬ってみろ」とだけぬかし、坊主は出て行った。
・・・出来る筈などない。
月に背を向ける。
所々剥げた土壁。斑に引っ付く粒々は、朽ちかけた老木のようである。
はっとする。
振り返れば「竹」は斬れていた。
刀を手に入れ決心がついた、怒りに任せた初めての人斬りを、不覚にも見られた坊主に言われるがままに誘われ、この苫屋に放り込まれた。
「鞘を抜かずにその竹を斬ってみろ」とだけぬかし、坊主は出て行った。
・・・出来る筈などない。
月に背を向ける。
所々剥げた土壁。斑に引っ付く粒々は、朽ちかけた老木のようである。
はっとする。
振り返れば「竹」は斬れていた。