ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ハッピーアワー』

2015-11-16 13:15:26 | 新作映画
『ハッピーアワー』は今年一番の傑作とは言わずとも
最大の問題作であることに疑問を挟むものはいないだろう。
濱口竜介監督言うところの「残酷」で「陳腐」な物語は、
「好き」という感情と「会話」の奥の心について5時間17分考察される。
だが恐ろしいことにこの人生の「続き」がまだまだ観たくなるのだ。

(Twitter、観た直後のつぶやき)

----これって上映時間317分。
5時間以上もある映画だよね。
よく出かけていったニャあ。
トイレは大丈夫だったの?
「うん。
2回インターミッションが入ると聞いてたからね。
これは先日、映画評論家のUさんとお話した時の会話だけど、
映画が好きな人って、どこかMなところがあって、
こりゃ大変だぞと分かっていながら、
あえて観に行っちゃうようなところがある(笑)」

----ニャるほどね。
で、帰ってきたらかなり興奮してたよね。
Twitterでも、
ことあるごとにこの映画に触れていなかった?
「そう。
たとえばこれだね。

いかん。『ハッピーアワー』の衝撃が凄まじすぎて、
昨日、観た二本の映画のことがなかなか呟き出せなくなっている。
これはこれで語るべきところ多かった映画たちなのだけど…。


そして

12月から1月にかけてぼく好みの映画が立て続けに公開。
『ハッピーアワー』『知らない、ふたり』、そして『サウルの息子』。
それらに共通するのはこれまでに観たことのない語り口を持った映画だということ。
話の内容で映画を選ばない人、
人喰い巨人映画や仮装宇宙映画にがっかりの人へオススメ。

もうすべての映画は撮られてしまった。
50年前、そうゴダールは言った…。
かっこいいと思った。
しかし『知らない、ふたり』『ハッピーアワー』『サウルの息子』、
これらの映画を観ると、
いやいや映画はまだ捨てたもんじゃないよ…と、その可能性に賭けたくなる。


そうだね。これらのツイートに尽きる」

----う~ん。
でも、これだけじゃよくわからないニャあ。
もう少し説明してよ。
主人公は4人の家庭を持つ主婦なんでしょ。
たいしたドラマがありそうにもないけど…
「そうだね。
とりわけて特別な物語が展開するわけじゃない。
主人公は30代後半を迎えたあかり(田中幸恵)、桜子(菊池葉月)、芙美(三原麻衣子)、純(川村りら)の4人の女性。
いつも一緒に出掛ける仲のいい彼女ら。
ところがあるワークショップの打ち上げの席での純の発言をきっかけに、
それぞれが心の奥に抱えていた不安や悩みが表面化。
だれもが自分と改めて向き合い、
そしてそれまでのお互いの関係について
見つめ直さざるを得なくなる…と、まあこういうお話」

----ニャるほど。
どこにでもありそう。
だから監督は「陳腐」という言葉を使ったんだニャ。
でも、それが映画としてオモシロいってのは?
「うん。
さっきの5時間強の尺にも
その答えの一つがある。
第一部では、アーティスト・鵜飼による
身体を使ったワークショップが延々と続く。
観ながら、なんでこんなのを延々と見せるんだろうと、
そうこちらは思うわけ。
ところが、次第に自分もそのワークショップに参加している気になってくる。
そしてそのカリキュラムの一つ一つへの自分の反応が、
彼女たちのそれと重なり合っていくんだ。
つまり、このシークエンスには、
主人公4人の生理を観客に一体化させるという
そういう役割が持たせたあるんだ。
で、一見、ドキュメンタリー化のように無造作に撮られたこのシーンも、
実は細かい計算がなされていることが
後で分かってくる。
途中、互いにパートナーを見つけての
フィジカル面でかなり危ういトライアルがあるんだけど、
すぐに相手が見つかる人、
この人と組みたいなと思っている人、
それぞれの感情の動きを見せる目線のとらえ方が
リアルでサスペンスフル

---ふむふむ。
どうせなら、きれいな女性と組みたいよね。
「でしょ。
ぼくも体育館でこれに似たシーンに出会ったことがあるから
よく分かったな。
さて、話はこの後、急展開。
打ち上げの席で、話の流れ上から、
自分がもう1年近く協議離婚をしていることを打ち明ける純。
そのことを知らされていなかったと怒るあかり。
しかし、中学時代からの純の友人の桜子はそれを知っていて…」

---ニャるほど。
まあ、それは仕方ないよね。
友だちと言っても
そういうことまで誰にでもペラぺラというわけにはいかない
「だよね。
でもやはり
秘密を持たれただとか、
嘘をつかれていただとかを大問題と考える人がいるのも事実。
この映画のオモシロいところは、
この4人の誰が正しい、誰が間違っているではなく、
そういう、いろんな立場の考え方の人を
その普段の生活とともに見せきること
にある。
さて、第二部。
協議離婚の裁判から始まり、舞台は
かねてより4人が約束していた有馬温泉への旅行へと移っていく…。
と、ストーリーを話していると
それだけで延々続いてしまうので、
この後のポイントを要約。
芙美の夫・拓也は編集者。
彼は担当している若い女性小説家・こずえの取材に同行してやはり有馬温泉へ。
自分とは別の女性と一緒にいる夫の姿を見た芙美の目線。
と、まあ、これくらいはぼくでも気が付くんだけど、
後に、ふたりの関係を疑った芙美は夫にこう言う。
私といる時より声のトーンが少し高い』。
もう、これには脱帽だったね。
さて、純に続き芙美と
映画に流れ始めた不穏な空気は
桜子、さらにはあかりへと伝染していく。
そのどれもが、
観る者に納得させてしまうのは
最初のワークショップあってのもの」

---ニャるほど。
ひとりひとりの
よくあるようなドラマだけど、
その人物像が観る方と一体化しているから
目が離せなくなるってわけだニャ。
でも「残酷」ってのは…?。
「それはね。
後半に用意された、別の打ち上げの席で爆発。
この打ち上げというのが、
小説家こずえの新作朗読と
トークイベントを受けたものなわけだけど、
この時点で、もう何か起こることは観客にはすでに予想が付いている。
登場人物全員の気持ちが分かっているわけだからね。
で、やめた方がいいんじゃないの?
という気持ちと、
怖いもの見たさの半分の気持ちで
カサカサピリピリした打ち上げの行方を見つめていく。
案の定、いたたまれなくなって飛び出す芙美。
その彼女を追う桜子。
ところが…。
ここからはネタバレ要素もあるからぼかしちゃうけど、
結局、友情だの、人のことを思いやっているように見えても、
人間、いちばん大切なのは自分。
これを思い知らされた…というのがこの映画」

--まあ、それが人間ってものじゃニャイの?
「う~ん。
ぼくは、
わりとヒューマンな映画にポロっと行く方だからね。
この映画についてUさんに話したら、
女性はみんな自分が一番大切って分かっている。
でも、男性はそう思っていない人が多いから…

というようなことを指摘された」

---そうだね。えいは、甘すぎるよ。
映画に対しても人生に対しても。
「あらあら…」

フォーンの一言「続きができればオモシロいのにニャ」身を乗り出す

※そう思っている人、きっと多い度
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