ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『あなたを抱きしめる日まで』

2014-02-27 22:19:38 | 新作映画
(原題:Philomena)


----これもアカデミー賞作品賞にノミネートされているんだよね。
いわゆる話題作…。
「そうだね。
ただ、この日本語タイトルがなあ」

----えっ、ダメ?
「ダメじゃないけど、
他の作品に比べると、ちょっと弱い。
よくある母子モノという感じ。
ところが、これは“ある黒歴史”を基に作られたお話なんだ」

----黒歴史?
聞き捨てならないニャあ。
「うん。
じゃあ、まずはプロットを…。
舞台は1952年のアイルランドに遡る。
10代で未婚の母となったフィロミナ(ジュディ・デンチ)は修道院に入れられた上に、
息子をアメリカに養子に出されてしまう。
それから50年、イギリスで娘と暮らす彼女は、
彼の消息を求めて、
ジャーナリスト、マーティン(スティーヴ・クーガン)と共にアメリカに旅出つが……」

----ニャるほど。
修道院とジャーナリスト。
一見相いれない
このふたつの出会いが
ポイントになりそうだニャ。
「そうなんだ。
実は、このジャーナリストは
かつて第一線で活躍しながらも現在は職を失っている。
映画の冒頭では、
そのいきさつや現在の彼の暮らしぶりがユーモア交じりで描かれ、
ぼくなんか
『えっ、これ違う映画を掛け間違えてない?』と(笑)。
第一、肝心のジュディ・デンチがなかなか出てこない。
でも、この“糊代”部分が実に効果的。
気が付くと、観客は否応なく映画の中に引きずり込まれている…」

----いわゆる“語り口”というヤツだニャ。
「ちょっと話が逸れるかもだけど、
日本のドラマ、
たとえばNHK大河ドラマがいい例で、
あることを描こう描こうという、その気持ちが強すぎ、
出てくる人物は、ただそのことを喋るためだけにそこにいるようにしか見えない。
彼らのバックボーンや人となりが見えてこないんだ。
ところが、この映画では
ちょっとしたエピソードや会話から、
ふたりのそれが伺える。
たとえばアメリカへ向う飛行機の中。
ここでマーティンは自分が政治記者だった頃の仕事仲間に声をかけられる。
いかにもエリート風を吹かせるその男に対して
マーティンは?そしてフィロミナは?
あるいは機内で出されるドリンクがサービスと知った時のフィロミナが取った行動とは?
そんな一見、本筋からは関係ないように見えるエピソードを通して、
互いが互いを知り、
心が結びついていく過程が見えてくるんだ。
そういう意味では、これはロードムービーの変形とも言えるね」

----ロードじゃなくてスカイだけどね(笑)。
「つまんないギャグ(笑)。
さて、この映画のもうひとつのオモシロさは、
これが一種の謎解き=ミステリーの形を取っているところにある。
なにせ、目的は
フィロミナの息子を探すことだからね。
ところが最初に訪ねた修道院では資料は焼失。
しかしなぜか不思議なことに、
フィロミナが息子の行方は追わないと誓った書類だけは残っているんだ」

----う~む。
これは、少し胡散臭いニャあ。
「でしょ。
誰もがこの修道院には何かある!と思わずにはいられない。
さすがにこの後の展開は話せないけど、
渡米したあたりから
フィロミナの息子について
思いもよらぬことが次々と明らかになってくる…と、これくらいは言ってもいいだろう。
そして…」

----ゴクッ。
「ここも少し話しにくい部分だけど、
息子を探す旅は振り出しのアイルランドの修道院に戻ってくる。
そして明らかになった事実とは!?
映画はここから
罪と罰、そして赦しのテーマへと舵を切っていく。
さすがにここまでくると
ぼくの目には、うっすら涙。
日本ではまだ観ることができない
『her/世界でひとつの彼女』を覗いて
これでアカデミー賞作品賞候補作8本すべてを観たワケだけど、
拍手を送りたくなったのは唯一この作品だけ。
これは、そのテーマもさることながら、
映画を“見せる”という点においては一歩抜きんでている。
さすがベテラン、スティーヴン・フリアーズ監督。
8本の中でのぼくの一押し作品だね」




フォーンの一言「某ハリウッド女優も子どもを買っていたらしいのニャ」身を乗り出す

※なんと実名で出ててくる度
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