ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『外事警察 その男に騙されるな』

2012-05-13 18:51:39 | 新作映画
----今日の映画は、この前話していた『外事警察』だね。
テレビでも放映されて評判がいいようだけど…。
「らしいね。
でも、テレビでこの味あいって出せるのかな?」

----どういうこと?
「この映画の売りの一つは“銀残し”の手法。
これは映画史的には、市川崑監督が『おとうと』で最初に取り入れたと言われている。
現像の際、本来取り除く銀をあえて残すことでコントラストを増し、
黒を締め、彩度を落とすことで引き締まった映像を創りだしているんだ」

----えっ、でもこの映画ってデジタルでしょ?
「そこなんだよね、オモシロいのは。
実はこの映画、ALEXAというフィルムライクな映像を可能にする
フィルムスタイルのデジタルカメラを採用。
なんて、これはぼくも知らずに
あとでプレスを読んで分かったことだけど…。
本来はフィルムで生まれた映像スタイル、
それをあえてデジタルでやることの意味。
このことを考え出すと、夜も寝れなくなる…」

----またまたオーバーな…。
「まあ、そう見えるかもね。
でも、フィルムとカメラというところから生まれた映画。
その中で生みだされた表現を、
あえてデジタルで再現しようとしているワケだから…。
“見てくれは似ていても中身は違う”と言うか…。
テレビでもやはりこれを採用しているのか否か?
なんて、いろいろとね。
でも、ここのところばかりを話していてもしょうがないから
別のことにも触れよう。
物語的にも見どころはけっこうあるし…。
というのも、今回の事件は3.11の震災、
その後の原発事故により立ち入り禁止となった区域にある大学の研究施設から、
核に関する軍事機密データが盗まれたことから始まる。
そしてそれは朝鮮半島の某国(もちろんあの国)の核テロに結びついていくという、
実に大胆なストーリーなんだ」

----確かに大胆だ…。
これまでにも
3.11によって一変した風景をバックにした映画はいくつかあったけど、
これって、いわゆるエンターテイメント大作だものね。
「そういうこと。
いやあ、ここまで踏み切るのはかなり勇気がいったと思う。
復興からはほど遠い瓦礫の跡を映像として目の前に提示されたその時、
こちらが受けるインパクト。
それが、こういう刑事ドラマと結びついちゃうんだから…。
そうそう、言うのが遅くなったけど、
この映画のタイトルにもなっている“外事警察”とは、
国際テロを未然に防ぐための組織。
主人公の住本健司(渡部篤郎)は
任務遂行というか、国益保護のためなら手段を選ばない。
そこも想像していたのと少し違っていて、
(というより副題『その男に騙されるな』に気がつかなかっただけだけど…)
そのためなら、彼はどんな嘘でも付く。
いわゆる、人を騙すことなんてなんとも思っていない」

----良心のかけらもないってこと?
「この映画はそこも観る者自身に問いかける。
人ひとり騙したからって、
国益に適えばそれは良心に従っていることになるのではないか?とね。
さて、次の見どころ、演技について。
今回、この映画でぼくが買っているのは
田中泯、そして真木よう子
田中泯が扮しているのは、日本で最先端の技術を学び、
25年前に祖国へ渡った在日二世のエリート科学者・徐昌義。
彼が住本に『君の言う国益とはなんだ?』と問うシーンの迫力たるや、
もう鳥肌モノ。
真木よう子は借金まみれの過去を持つシングルマザー、果織。
その彼女を救いだす形で結婚したのが奥田正秀、本名・金正秀。
金は果織と結婚することで日本国籍を取得しているんだ」

----これはオモシロいストーリーだニャあ。
「そう。
ほんとうに無駄なく、
物語がラストまで突き進む。
しかも、ここで描かれるテロは
これまでにない理由が狙いとなっている。
自分の命を投げ打つと、こういうことまで考えるのかって感じ。
ただなあ…」

----ただ?
「“ラストまで”と言ったばかりではあるけど、
クライマックスがね。
ここは、核が爆発するかどうかの
タイムリミット・サスペンスになるんだけど、
どうもそこが少し弱い。
アメリカ映画ほど能天気じゃないけど、
緊張感が乏しい気がする。
本来は、核の爆発ってとんでもないこと。
これまで、娯楽映画で核を爆発させたシーンを写した日本映画(実写)がないのも、
広島・長崎を経験した我々が、
その恐怖を知っていればこそ。
折しも3.11以降の原発再稼働をめぐる論争が明らかにしてみせたように、
日本人の核アレルギーは
かつてに比べて、かなり失せてきているのかな…と、
そう思わないでもなかったね」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「脚本は『探偵はBARにいる』 古沢良太 なのニャ」身を乗り出す
※この副題、内容に比べて少し軽すぎる度

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