「生協だれでも9条ネットワーク」

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【歴史認識】砂川事件最高裁判決を読み解く(寄稿)

2018-06-12 20:47:37 | みんなの声
砂川事件最高裁判決を読み解く
〜1959年12月16日大法廷判決〜




 「自衛隊を憲法に明記する」という安倍改憲をどのように考えるのかをめぐって様々な論議が沸騰している。
私は、憲法9条と自衛隊を含む現在の安全保障政策との関係を理解する出発点について考えてきた。
 その一つのアプローチとして、砂川事件の大法廷判決の「米軍合憲とする法理論」を9条改憲認識に関する一つの導きにできるのはないかと考え再度読み解くことが不可欠と判断した。ここに明らかにしたいと思う。

 敢えていまここに記すのは、米国国務省が「砂川事件大法廷判決(1959年)」に関わって「憲法9条の戦力とは日本が所持する戦力であって、他国駐留軍はその限りではない」とする新解釈を以て、在日米軍駐留を違憲とする砂川事件伊達判決に介入し、最高裁への飛躍上告を促し、最高裁は米国国務省の入れ知恵をそのまま援用し、米軍駐留を合憲と判決したとする見解は、すでにアメリカ公文書館所蔵の文書で明らかにされてされており、その機密は公開されているからである。

 最高最砂川事件大法廷判決は、3つの側面をもつ。最も流布されている論説は、以下「資料」の判決要旨8にある「統治行為論」による違憲審査に関する「判断停止」である。もう一つは、判決要旨5にある自民党9条改憲派がよく使う「憲法は自衛権を否定していない」とする「自衛権存在」の論拠となった。もう一つが、判決要旨7にある在日米軍合憲論の根拠である。この3つめはどういう訳かあまり紹介されていない。

 この合憲理由とは「憲法第九条第二項が戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となって、これに指揮権、管理権を行使することにより、同条第一項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起すことのないようにするためであり」「わが国が主体となって指揮権、管理権を行使し得ない外国軍隊はたとえそれがわが国に駐留するとしても憲法第九条第二項の「戦力」には該当しない。」との判断であった。

 日本政府が指揮権と管理権をもっていない米軍の存在を前提にして、日本の安全保障を担保したこと、つまり日本が制御できない戦力を日本国内に内在されることを日本の最高裁が是認し、これを「裁判所の司法審査権の範囲外にあると解すること」を統治行為として是認したことに他ならない。そしてこの判決は過去のものでなく、いま現在にも生きており、判決に援用されているのである。

 この判決要旨は、私のみならず日本人であれば、違和感を禁じ得ない。つまり日本の安全保障は、日本政府が指揮権も管理権をもたない外国軍隊(米軍)に依存し、なおかつその外国軍隊の指揮下に動く自衛隊をしかも自国の最高法規である「憲法」に書き込むことへの違和感である。まったく滅茶苦茶なことをいま何故しなければいけないのかについて改めて歴史的な検証を踏まえて問うべきであると思う。

【資料】砂川事件:日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反
(以下のように検索した内容を参照)
裁判所トップページ > 裁判例情報 > 検索結果一覧表示画面 > 検索結果詳細画面 → こちら

 1 刑訴規則第二五四条の跳躍上告事件において、審判を迅速に終結せしめる必要上、被告人の選任すべき弁護人の数を制限したところ、その後公判期日および答弁書の提出期日がきまり、かつ弁護人が公判期日に弁論をする弁護人の数を自主的に〇人以内に制限する旨申出たため、審理を迅速に終結せしめる見込がついたときは、刑訴第三五条但し書の特別の事情はなくなったものと認めることができる。
 憲法第九条は、わが国が敗戦の結果、ポツダム宣言を受諾したことに伴い、日本国民が過去におけるわが国の誤って犯すに至った軍国主義的行動を反省し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、深く恒久の平和を念願して制定したものであつて、前文および第九八条第二項の国際協調の精神と相まって、わが憲法の特色である平和主義を具体化したものである。
 憲法第九条第二項が戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となって、これに指揮権、管理権を行使することにより、同条第一項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起すことのないようにするためである。
 憲法第九条はわが国が主権国として有する固有の自衛権を何ら否定してはいない。
 わが国が、自国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置を執り得ることは、国家固有の権能の行使であって、憲法は何らこれを禁止するものではない。
 憲法は、右自衛のための措置を、国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事措置等に限定していないのであり、わが国の平和と安全を維持するためにふさわしい方式または手段である限り、国際情勢の実情に則し適当と認められる以上、他国に安全保障を求めることを何ら禁ずるものではない。
 わが国が主体となって指揮権、管理権を行使し得ない外国軍隊はたとえそれがわが国に駐留するとしても憲法第九条第二項の「戦力」には該当しない。
 安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査に原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。
 安保条約(またはこれに基く政府の行為)が違憲であるか否かが、本件のように(行政協定に伴う刑事特別法第二条が違憲であるか)前提問題となってている場合においても、これに対する司法裁判所の審査権は前項と同様である。
10 安保条約(およびこれに基くアメリカ合衆国軍隊の駐留)は、憲法第九条、第九八条第二項および前文の趣旨に反して違憲無効であることが一見極めて明白であるとは認められない。
11 行政協定は特に国会の承認を経ていないが違憲無効とは認められない。

記:大久保 厚


2 コメント

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Unknown (omachi)
2018-06-13 19:28:32
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
ネット小説も面白いです。
コメントありがとうございます。 (大久保 厚)
2018-06-29 21:18:20
コメントありがとうございます。

興福寺は何度か行く機会がありましたが、国宝館の阿修羅を見たことがありますが、北円堂なの六角堂を意図的に見たことがありませんでした。
ご紹介頂いたウェブ小説を読んで見たいと思います。
ありがとうございました。

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