原発地元、福島事故の原因究明求める意見多数=ロイター調査
[東京 23日 ロイター] 原子力発電所が立地する多くの道県知事と市長村長が、原発再稼動の前提として政府に東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原発事故の原因究明などを求めていることがロイターのアンケート調査で判明した。
原発の再稼動については多くの知事が慎重姿勢である一方、市町村長からは「条件付き賛成」とする回答も少なくなかった。
福島事故に関する政府の「事故調査・検証委員会」は昨年末に中間報告を公表したが、事故原因の究明などをさらに掘り下げる最終報告は夏にまとめる予定。
政府は、電力会社が実施したストレステスト(耐性評価)の内容を専門家が審査する安全確認を通じて停止中の原発の再稼動を目指している。
しかし、ストレステストだけでなく福島事故の原因究明などを求めている意見が強い立地自治体とのスタンスの違いは、再稼動の先行き不透明な実態を示したと言えそうだ。
アンケート調査は、全国54基の原発が立地する道県知事13人と市町村長21人あてに2月下旬から3月中旬にかけて行い、12道県と19市町村から回答があった。福島県からは回答がなかった。
<6道県知事、福島事故の解明必要>
福島原発事故の原因究明や再発防止策の必要性などを挙げたのは北海道、宮城、新潟、茨城、福井、島根の6道県。福井県の西川一誠知事は再稼動に向けた考え方として、
「地震の揺れや高経年化による事故の影響の検証、浜岡原発のみ運転停止を要請し他を安全とした判断根拠、事故の知見を反映した暫定的な安全基準について明確な回答を示す必要がある」と答えた。
12市町村も福島事故の原因究明などの必要性を指摘した。
各地の原発再稼動に関する質問では、a)賛成、b)条件付き賛成、c)反対、d)決めていない・言えない、e)その他─の選択肢を設定。
この回答で
北海道、宮城、茨城、石川、島根、佐賀の6道県が「決めていない・言えない」を選択し、
愛媛県は「言えない」ではなく「決めていない」と回答した。
e)の「その他」を選択したのは、青森、新潟、静岡の3県。
新潟県は「まずやらなければいけないのは福島事故で、何があったのかという検証。
この検証がなければ、再稼動について議論する段階ではない」と回答。
静岡県は「浜岡原発は国が運転再開の条件としている防波壁の設置をはじめ津波対策が完了しておらず、国による評価、確認もされていない」としたうえで、「県民の意向を踏まえて運転再開の是非を判断することとしており、当面、運転再開を認めない」と回答した。
鹿児島県は再稼動に対する選択肢には回答しなかった。
<9市町村が再稼動に条件付き賛成>
再稼動に「条件付き賛成」と答えたのは、北海道泊村、青森県東通村、新潟県刈羽村、福井県美浜町、同おおい町、同高浜町、同敦賀市、佐賀県玄海町、鹿児島県薩摩川内市の9市町村。
条件としては、
「政府の責任ある態度」(新潟県刈羽村)、
「福島事故を踏まえた安全基準」(福井県美浜町)、
「原子力の必要性を国が国民に明示すること」(福井県おおい町)、
「原子力災害発生・緊急時のアクセス道路整備などの配慮」(福井県高浜町)、
「ストレステスト1次評価での安全性確認、国が安全基準を設けて住民に対して理解を求めていくこと」(佐賀県玄海町)
といった回答が寄せられた。
「反対」と回答した茨城県東海村の村上達也村長は、
理由として「安全サイドの原子力政策が確立されていない」ことを挙げた。
(ロイターニュース 月森修 浜田健太郎 編集 宮崎大)