かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

【コケ情報】5月はコケイベントが盛りだくさん&奥入瀬コケマップ第2弾完成、そして京都でのヒトコマ。

2014-04-25 16:01:23 | コケ情報

▲ハリガネゴケの仲間 (2014.4月 京都にて)


ここ最近、お知らせばかりが続いていますが、
またも耳に入ってきたコケ情報をいくつかご紹介。

そして最後にコケ近況報告をば!

---------------------------------------------------------------------------------

☆5/10(土)サイエンスカフェ「南極では主役!コケの不思議」

東京・立川にある国立極地研究所で行われるサイエンスカフェ。
講師は南極のコケの研究をされている伊村智さんです!

日 時 : 2014年5月10日(土) 15:00〜16:30
講 師 : 国立極地研究所 生物圏研究グループ教授 伊村智さん
参加費 : 無料
申 込 : 不要(直接会場へお越しください)
定 員 : 先着40名程度
場 所 : サザンクロス(南極・北極科学館隣り)

※詳細はこちら


☆5/17(土)「『コケに誘われコケ入門』出版記念トークイベント~コケの不思議とその魅力~」

先日、このブログでもご紹介した「このは」のコケ特集がなかなかの人気だそうで、
原稿執筆にかかわられた国立科学博物館の樋口正信さんを招いてのトークイベントが
東京・渋谷のMARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店で開催されるとのことです!

開催日時 : 2014年5月17日(土) 開演14:00 (開場13:30)
講師   : 国立科学博物館植物研究部 陸上植物研究グループ長 樋口正信さん
開催場所 : MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店 7階喫茶コーナー
定員   : 40名
入場料  : 1000円(1ドリンク付き)

※詳細はこちら


☆5/24(土)東京理科大野田キャンパス第7回コケ観察会

コケ友・中島啓光さんが毎年春と秋に開催しているコケ観察会が今年もあります!

講師  : 横浜国立大学大学院 研究教員 中島啓光さん
定員  : 10名
場所  : 東京理科大学野田キャンパス・自然公園
集合  : 5月24日(土)午前11時 東武野田線運河駅改札前
内容  : 初心者を対象とした、説明会付きのコケ(コケ植物と地衣類)観察会
      キャンパス内の会議室にてプロジェクターを使ったコケ説明会の後、
      昼食(各自持参)をはさんで、午後からキャンパスと自然公園に生育する
      10種類以上のコケ植物と5種類以上の地衣類を観察します。
参加費 : 無料
申込  : 件名を「第7回コケ観察会申込」とし、氏名、当日の連絡先を明記したEメールを
      中島さん宛て h-nakaji◆ynu.ac.jp 宛(◆を@に)にお送りください。


なんだかGW明けの関東の土曜日はコケづくしになる模様・・・(笑)
ご興味のある方は早めの申し込みがおすすめです!

---------------------------------------------------------------------------------

さらにイベントではありませんが、もうひとつコケ情報。

少し前に奥入瀬の「コケ散歩ガイドブック」のことを書きましたが
さらに今回、新たなコケさんぽマップが完成したとのこと!


▲ハンディサイズの4つ折りパンフレット

前回はどちらかといえば対象が子供向け、
今回は大人向け(奥入瀬に来られる自然が好きな方向け)だそうです。


▲中身を開くとこんな感じ(見開きの右半分)

わがやの家庭用プリンター兼スキャナーではパンフレットの半分の面しかスキャンできなかったのですが、
実際はもう左半分にもマップが続いていて、奥入瀬渓流の上流・中流・下流、
そして水源となる十和田湖周辺で見られる主なコケ16種類が紹介されています。

このマップを手に渓流沿いを歩くのはきっと楽しいだろうなぁ。

現地の河井大輔さん(NPO法人奥入瀬自然観光資源研究会 理事長)によると、
いまの奥入瀬はまだ残雪に覆われており、スノーシューなしではところどころ歩くことができないのだとか。

しかし、すでにコツボゴケやタマゴケなどのコケたちが
いっせいにを伸ばし始めているとのこと。

奥入瀬の春はこれからのようです。

---------------------------------------------------------------------------------

そして、ここからは私自身のコケ近況報告。

冒頭の写真は、数日前の京都での一枚。

「岡山コケの会 関西」はほぼ毎月、コケ観察会が行われており、
今月は初夏の陽気の中、京都市内の山あいでコケ観察をしてきた。

山道を歩いている途中、そこここに立派なタマゴケ群落を目にするも、
この冬は寒さが厳しかったせいか、もう4月も下旬になるのに胞子体をつけているものがとても少ない。

よくよく見ても、これから胞子体を伸ばす兆しもなさそう。
何らかの理由で受精がうまくいかなかったのかもしれない。

一方、そんな華のないタマゴケ(といったらタマちゃんに失礼か…)をよそに、
他では威勢よく胞子体をつけている種類もいて。

そのなかのひとつがこちら。


▲どうです、大群落でしょう?


よくわからないって? 
近づいて側面からのぞいてみると・・・



▲たわわに実るハリガネゴケの一種でした



▲まだ青々しい感じからして、中の胞子は熟していないご様子


それにしても立派なサクだこと!



しばらくルーペで眺めていると、なんだかみずみずしいヘチマのように見えてきて。
さくさくと切って浅漬けにしたら、さぞおいしいだろうなぁ、なんて(あぁお腹がすいてきた…)。


それにしてもこんなにヘチマに似ているのに
なぜ「ハリガネゴケ」という名前なのだろう。

「どこが『ハリガネ』なんでしょうね?」

と思わず一緒にコケを見ていた方に聞いてみたら、

「(コケの小さい体からしたら)これだけの重みのサクをこんな垂直面で支えている強靭な柄が、ハリガネっぽく見えるかも」

とのお返事。

 ※正式な和名の由来ではなく、あくまでイメージです。





なるほど~、たしかに!

細い針金をくの字に曲げたその先に
サクがぶら下がっているように見えてきた。

それにしてもサクの先端にある未成熟なサク歯の束が、
光に透けて、まるでキラキラ輝く宝石のよう。

針金の柄をほどよいところでカットして、
耳につけたら、そのままピアスになるんじゃないかしら。

誰も足を止めないような道端で
小さくて美しいものをひたすら見つめる昼下がり。

妄想は果てしなく広がっていく。

【コケ情報】屋久島の高田裕子さんの個展、開催中です。

2014-04-11 10:00:00 | 文系女子のコケ目線



屋久島在住の画家・高田裕子さんの個展が、
4/9(水)から東京・南青山の「新生堂」にて開催されています。


<高田裕子展>
●日程:4月9日(水)~25日(金)  ※日曜・祝日休廊
●時間:am11:00~pm6:00(最終日pm5:00)
●場所:新生堂 http://www.shinseido.com/
   〒107-0062 東京都港区南青山5-4-30
    tel:03-3498-8383


なんと高田さんご自身も屋久島から来られていて、初日だけでなく、
2日目以降も13時~18時まで在廊されているとのこと(!)。

ちなみに私が高田さんの絵を自分が知ったのは
去年の屋久島コケフォレーがきっかけで。

屋久島の雑貨屋さんで取り扱われていたというポストカードはコケモチーフのものばかり。
コケ友さんたちと「まさにコケの森だね!」「きっとこれは○○ゴケじゃない?!」とそれはそれは盛り上がったこと。

さらに去年8月の日本蘚苔類学会で、学会員たちのコケ作品の中に再び高田さんの絵を見つけた時は、
真夏の暑さも吹き飛ぶような、優しく爽やかな風が心の中に吹いたのを覚えています。

絵のことをよくわからない素人が言うのもなんですが、
高田さんの絵は、繊細で、優しくて、幻想的。

人間にはとうてい踏み込めないような屋久島の森が醸し出す「静寂」が
1枚の絵の中に凝縮しているように私には感じられます。

そして、そこにコケを描くということはきっと必要不可欠だったのではないかな
とも思わせてくれます(・・・勝手に評論家気取りでスミマセン!)。

なお今回の個展には新作のコケの絵も並ぶそうですので、
購入希望の方は早めに足を運ばれた方がよいかも。
またポストカードの販売もあるそうです。

屋久島コケフォレー2014備忘録。ツノゴケ3種類の見比べ

2014-04-10 13:36:42 | コケをめぐる旅

▲ニワツノゴケ(2014.3月 屋久島にて)

すっかり遅ればせになってしまったが、3月2~6日に開催された
屋久島コケフォレーの記録をぼちぼち書いていこうと思う。

このイベントは日本蘚苔類学会主催で、
「フォレー(foray)」とはいわゆる〝採集会〟のこと。
つまり、屋久島のコケ採集会ということになる。

しかし、この会の主な参加対象は、
「野外でのコケ植物観察と顕微鏡を使用したコケ同定法を学びたい方」
とされており、事実、参加者の多くは、コケに興味がある初心者・中級者、
または植物学を専攻中の学生さんで、コケを採集したくてたまらない!というよりは
「いろんなコケを見てみたい」、「顕微鏡で正しく同定をしてみたい」、
「第一線で活躍されている研究者の話を聞きたい」という目的で参加している人の方が多い印象を受けた。

今年は去年に引き続き屋久島での開催で、
テーマは「屋久島のタイ類をわかる」。

苔類(タイ類)を専門に研究されてきた
千葉県立博物館の古木達郎さんを講師に迎えての会だった。


苔類については、実は自分も色々と思うところがあって、
今回のフォレーには絶対参加せねば!と思っていた。

とういうのも、苔類は・・・

①ゼニゴケ、ジャゴケなど誰の目にもつきやすい大型な種類がいる一方で、
 肉眼ではなかなか認められないようなミクロサイズのものも非常に多い。
 そもそもどうやって見つけたらいいのか?コツはあるのか?

②蘚類とはまた別の独特の専門用語が多いため、図鑑を読んでも意味が理解できない。
  (これは私が素人ゆえのことかもしれないのだが)

③そんなわけで、似た種類を見つけても、同じものなのか別種なのか判別できず、
 同定の途中でつまづく・・・というか挫折してしまい、常にモヤモヤ・・・。

というような、いかんともしがたいハードルがあり、私の中ではここ数年、
〝苔類フラストレーション〟みたいなものが常に渦巻いていたのだ。

そもそも苔類専門の研究者というのが、業界全体を見ても少ないということも一因にあるのかもしれない。
つまり、苔類の情報を得るチャンスが非常に少ないのだ。

過去数年の自分の参加した観察会やシンポジウムを思い返すも、
苔類に的を絞った詳しい話が聞けたことはほとんどないように記憶している。

それこそ、日本蘚苔類学会と国立科学博物館共催のイベント
古木さんからレクチャーを受けたことがあるくらいである。

  ※ちなみに、今年も↑このイベント↑が5/24(土)に東京・上野で開催されるとのこと(応募締切は5/5)。詳細はこちらへ。


そんなわけでたまりにたまった数年分の苔類フラストレーションを抱えて屋久島へ渡った私は、
会期中ほぼ毎日、隙を見ては古木さんを質問攻めの刑(どんな罰ゲームだ…)に遭わせてしまった。

質問リストを持参しての質問に次ぐ、質問。
無我夢中のしつこさで、いま思い返すもお恥ずかしい限り・・・。
まったく反省ザルである。

しかしながら、そんな超しつこい質問攻めをくらわされながらも、
早朝でも深夜でも嫌な顔一つせず、常に真摯に丁寧に素人の質問に答えてくださった古木さん。

はっきりいってあの時の私には、古木さんが神様か仏様のように見えましたヨ(いや、ほんまに)。

おかげさまでワタクシ、苔類ラビリンスから無事抜け出すことができ、
いままで「なんかわからん、苔類…」だったのが、「苔類って、実はおもしろい!」と
確実に苔類への見方・興味が変わったと思います。

改めて古木達郎さん、そしてこういう貴重な会を企画してくださった
岡山理科大の西村直樹さんにお礼申し上げます。


さてさて、思いの丈を綴っていたらすっかり長文になってしまったが・・・。

屋久島コケフォレーでは、苔類への長年の疑問が
諸々解決したことはもちろん、今回もさまざまなコケと出会うことができた。

古木さんはもとより、苔類に詳しいMさんやTさん、
現地ガイドのOさんやYさん、京都の若手のOくん、
いろんな方が「ここに面白いコケがいるよ」
「あそこにも珍しいコケがいるよ」と教えてくださり、
そのおかげで自分だけでは決して見つけられない面々ともご対面することができた。


▲今回も、屋久島の各地でコケ観察ができた。

たとえば、ツノゴケ類もその一つ。

ツノゴケ類は蘚類・苔類と共に「コケ植物」を形成する1つのグループだが、
蘚類が日本に約1100種類、苔類が約600種類いるのに対し、
ツノゴケ類はたった17種類しか確認されていないという非常に少数派グループだ。
いまでこそ独立したグループであるが、それこそ20世紀の中頃までは苔類グループの中に収められていたという。

生育地は低地にある公園や庭、畑などの土上と、わりと人間の生活圏内なのだが、
なにせツノ(胞子体)が出ていないとコケ研究者でも見つけにくいというクセモノで、
自分も今思い出せるだけで、ツノゴケに会えたのは6、7回くらいか・・・。

しかしながら、さすが優れたコケ目を持つ方々が集うコケフォレー、
会期中のある日には、ツノゴケがなんと3種類も一堂に会すというめったにないことが起きた。

そもそも出会うこと自体が難しいので、
ましてや見比べができるなんて初めての経験だった。


▲メモに書かれている特徴があるかどうか、ルーペや顕微鏡で実際に確認することができた

ちなみにツノゴケ類は胞子体がツノ状なのに加え、
体内(葉状体)に藍藻類が共生しているのも大きな特徴である。

古木さんのよると、藍藻類は運動性のあるもので、自分からコケの中に入り込むらしい。
藍藻類はコケの中に入ることで安全な住みかや水分を獲得し、
コケは藍藻類から生育に必要な(窒素固定をした)アンモニアを受け取るため、
双方にメリットがあり、共生関係が成り立っているらしい。

なお、このように体内に藍藻が共生しているのはこのツノゴケ類と、
苔類のウスバゼニゴケ科(ウスバゼニゴケとシャクシゴケの2種類)のみであるという。