かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

コケ関連の新刊・特集ラッシュです!

2019-06-20 16:35:06 | コケの本棚

   



「かつて『コケ』に関した出版物がこんなに一度に発行されたことあっただろうか!!」

というくらい、令和元年の初夏はコケ本・雑誌が出版ラッシュです。

10年ほど前、田中美穂さんの『苔とあるく』(WAVE出版)と秋山弘之さんの『苔の話』(中央公論新社)を何度も何度も読み返し、
自分にとっての〝コケの教科書〟として後生大事に持っていた、あの頃の私に教えてあげたい。こんな時代が来たことを!

すでにご存じの方も多いと思いますが、こちらでもオススメの本・雑誌を紹介させていただきます。

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まずは福井県立大学の大石善隆さんによる、怒涛の3冊連続出版!




『じっくり観察 特徴がわかる コケ図鑑』(ナツメ社)

ナツメ社の〝見分け図鑑シリーズ〟からの1冊。最初はこのシリーズの枕言葉にならって「ぱっと見分け」だったそうなのだが、
担当編集者Yさんによると「コケを『ぱっと見分ける』なんてうたったらクレームが殺到しそう…」ということで、
「じっくり観察」になったのだそう。たしかに前者のままだったら、コケ関係者から物言いがあったかも…(笑)。

掲載種が506種ということで、この手のハンドブックのなかでは断トツの情報量の多さ。
さらに1ページごとに種の見分けに役立つポイントを顕微鏡画像と共に解説しているところも非常にありがたい。

コケというのはとにかく小さいので、見つけた際にルーペで観察しただけでは明確な同定ができないのが当たり前、という世界。
でも、おおよそのグループ(科・属)だけでも〝自分〟で〝その場〟で〝目途を立ててみる〟ということしておくだけで、
確実にコケを見る眼が養われていくのも、また事実なわけで。

そんな時に、やはり欠かせないのがカバンやリュックに携帯しやすいハンディ図鑑。
私もここ最近の観察会には、必ずこちらの本を携帯して参考にさせてもらっている。

ちなみに、できれば携帯する図鑑は1冊といわず、2~3冊持っておくと
各図鑑から違った情報を得られるのでおすすめである(一言一句同じ文言の図鑑はないので!)。

できましたら、拙著『知りたい 会いたい 特徴がよくわかるコケ図鑑』(家の光協会)も先月、おかげさまで8刷目となりました(わー、ぱちぱち!)。
こちらのほうも引き続きお引き立てのほど、どうかよろしくお願いいたします。m(__)m(←ただの宣伝ねじ込み。失礼しました(^^;))。





『苔登山 もののけの森で山歩き』(岩波書店)

大石さんの初著書でやはり同出版社から2015年に刊行された『苔三昧 モコモコ・うるうる・寺めぐり』をご存じだろうか。こちらはその兄弟本。
前著書が社寺のコケがテーマだったのに対し、今回は山のコケがテーマである。

ピークを目指す「山歩き」と相反する、10メートルを1時間くらいのペースで進み、たいがいは麓で満足の「コケ歩き」。この両者が果たして両立できるのか?! 
大変興味深いテーマながら、私はこれから読むところでありまして、どのような内容になっているのか、
このブログを書いている今日時点ではまだ明らかではない(すみません!)。

だが、ざざっとページをめくったところ、前半は北海道から鹿児島県までの全国のコケの山・森スポット14か所の紹介と、山で見られるコケ図鑑、
後半は山の環境別のコケの生態と、各環境でコケがどのように自然に影響を与えているか等がまとめられていて、
フィールドに携帯して歩きたいという人にも、家でじっくり読みたいという人にもぴったりな内容となっている。





『コケはなぜに美しい』(NHK出版)

最後に、こちらは今まさに熟読中。大変面白いです。

しっかりしたデータを挙げながら、環境ごとのコケの生態について解説されていて、勉強になるのはもちろんのこと、
同時に文章の随所から大石さんのあふれ出るコケへの愛情も感じ取れ、時に行き過ぎとも取れる表現には笑ってしまった。
これを読めば、初心者でもコケをより身近な存在に感じ、コケともっと仲良くなりたいと思ってしまうだろう。

とくに猫より犬派の私としては、大石さんが完全にコケの生物学とは無関係に〝個人的な趣味〟として追っているという
「苔狛犬」についての文章はとりわけニヤニヤしながら読んだ(「庭園の章」の小話3「神社のコケ」より)。

苔狛犬とは、その名のとおり表面にコケが生えている狛犬のことを指し、
犬の毛並さながら美しくコケが生えそろったものほどすばらしい苔狛犬なのだそう。
ある時、大石さんが以前飼われていた愛犬(マルチーズ)に似た狛犬を神社で見つけたのが、苔狛犬探しのきっかけとなったらしい。
ただでさえ愛しいコケに愛犬の姿が重ね合わさったとなれば、研究そっちのけでついつい苔狛犬を追ってしまう気持ちも、やはり犬好きの私は共感できる。

他にも、「苔米は売れるか?」「コケのつく地名」「コケの花ことば」など、コケ好きなら誰もが気になるトピックも、
じつにユーモラスなコラムでまとめていらっしゃって、読んでいて楽しい。



▲オールカラーでコケの写真満載。各種のアップの写真も丸枠でついているのも嬉しい



▲新書なので書店での平積み期間は短く、さらに美しい苔庭のカバーもおそらく限定部数だと思われる(苔庭カバーの下には新書シリーズの定番カバー)。
 購入するならばぜひお早めに!


これらの本はいずれも「コケは楽しい、面白い、もっと知りたい!」という気持ちを高めてくれること請け合いだ。
しかし、のちに大石さんご本人からのメールで知ったのだが、大石さんは読者に対してあるメッセージを込めて、これら3冊のご本を執筆されたという。

それは、コケの保全

せっかくなので、大石さんの思いを私だけでなく、このブログを読んでくださっている方とも共有したい。
大石さんのメールの一部を抜粋してご紹介する。

「私がコケを始めてから、だいぶコケの景観も変わりました。
 環境変動や過剰な利用や乱獲、理由はさまざまですが、コケが減ったところはあれど、増えているところは見たことがほとんどないです。
 この本にどのくらいの影響力はあるか分からないのですが・・・コケの保全に一石を投じることができたら、と思っています。」


3冊のどの本でもよいので読んでいただけたら、どなたにもきっとこの重要なメッセージを感じていただけると思う。
ぜひ、お手に取ってみてほしい。

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さて、本部門だけですっかり長文になってしまいましたが、続きましては雑誌の中のコケ特集。

『&Premium』(マガジンハウス)のほうは、現在発売中の京都特集号の付録として、
京都のコケ名所とその周辺を紹介したガイドブックがついているというもの。




もともとはJR東海「そうだ 京都、行こう。」とのタイアップ企画で、期間中にJR東海を利用して京都に行った人、
毎日先着200人にこのガイドブックが京都駅にて無料配布されるそうなのだが、全国書店やアマゾン等で同誌を購入しても同じ付録を手に入れることができる。
7月末までに京都へ行く用事がないという人は、書店にてぜひ。

ちなみに付録ではなく本誌のほうには、以前から気になっている京都の花屋 みたてさんの四季折々のコラムが30本近く掲載されていて、
そちらは写真を見ているだけでも眼福。いつかお店も訪れてみたいなぁ。



そして最後の1冊は『婦人之友』(婦人之友社)
こちらの最新号(2019.6.12発売)にも「梅雨も愉しい苔歩き」と題して7Pのコケ特集が組まれている。
執筆は自分のコケ友である芝生かおりさん。ご本人も登場されて、コケさんぽの魅力やノウハウを優しい語り口で紹介されている。




ちなみに。本と違って、雑誌の良いところは目的の記事以外にもさまざまな世界の情報が載っているため、
何もしないでいるとついつい狭まりがちになる自分の視野を思わぬ方向にぐんと広げてくれることだ。
なんでも本号冒頭の目玉特集によると7月は「プラスチックフリー月間」とのこと。全然知らなかった。

 

<2019.6.21追記>

コケの大先輩Mさんに情報提供いただき、もう1冊!

Mossligt-LEDさんの作品が『園芸JAPAN』の7月号、新テラリウムのコーナーで5ページに渡り紹介されています。テラリウムにご興味のある方は、こちらもぜひ!

 

 


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さてさて。ここ最近、「お知らせ」続きで、すっかり情報発信のみのブログになってしまっているが、
今年は冬時期からほうぼうに出かけ、かなり充実したコケ活動を送らせてもらっている。

記憶をたどりながらにはなるが、もうそろそろブログにその一つひとつを記していかねば。
次回以降から少し季節はずれな話が続くかもしれませんがご容赦くださいませ。


●おまけ

最近の私。今年も東京都葛飾区の水元公園にて、初心者向けコケ観察会をさせてもらった。
今回で3回目だが、リピーターではなく初めて来られる方がほとんどで、
やはりコケがより多くの人の興味を惹いているのだと肌で感じることができた。
今回は5月開催だったが、いつも元気なコツボゴケが晴天続きでお疲れぎみ。やはり3月~4月初旬に行うのがベストだろう。


▲撮影:水元かわせみの里 水辺のふれあいルーム