かわいいコケ ブログ  I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、
ブログをはじめました。

苔好き、旅好き、山好き女子の
コケの記録帖です。

奥入瀬コケ紀行 extra : シャクシゴケ / 「コケはともだち」が5刷目に

2016-09-28 11:11:53 | コケをめぐる旅

奥入瀬渓流の森を歩いていると・・・

  
   ▲シャクシゴケの群落

出会いそうでなかなか出会わないこのお方、
以前もお会いしたのはこの森だったと記憶する。



▲葉状体の縁は細かく切れ込んでいる。中肋に沿うように並んでいる黒い点々はラン藻。ルーペ越しに見るとキウイの種のようにみずみずしかった

シャクシゴケは苔類にしては珍しくラン藻と共生しているコケだ。
本種以外に体内にラン藻が共生しているコケは、このコケと同じ科に属するウスバゼニゴケ科のウスバゼニゴケ、そしてツノゴケ類だけである。
さらに手持ちの図鑑によると、葉状体の先端に半月状の無性芽器がつき、なかには金平糖形の無性芽がつまっているのだとか。

でも私が見た群落は、先端にポケットはついているものの、どうも無性芽が中に入っているようには見えず、
もしかしたら今見えているのは、同じく葉状体の先端につくという雌株の生殖器官なのかもしれない。





じつはこの写真、いまやコケ好きの間では必携アイテムとなっているオリンパスのコンパクトデジカメ「STYLUS TG-4 Tough」で撮影した。
数年前から流行しているが、このたび私もようやく手に入れた次第で、使ったのはこの旅が初めて。

少し前までコケ好きの間で使われるコンパクトデジカメといえばリコーの「CX」シリーズがトレンドだったが、数年前に「生産終了」となってしまったため、
「もし手持ちのリコーが壊れたら、次のカメラはどうすればいいんだ!」と路頭に迷っていたコケ好きたちを救ったのが、
「顕微鏡モード」がついて、コケのような小さなものの撮影にも対応したこのTG-4だった。

初めて使ったカメラの撮影記念に。
以上、おまけのシャクシゴケでした。


----- One more extra -----


奥入瀬へ向かう前日、たまたま糞土師の伊沢正名さんと電話で話す機会があり、

「青森へ行くなら、小牧野遺跡へぜひ行ってみてください。僕が協力した展示物もあるから見てみて!」

とおすすめされた。

縄文時代にも大いに興味がある私(しかし知識はないです・・・)は、
それはぜひとも見てみたい!と、Kさん親子にわがままを言ってねぶた祭りが始まる前に連れて行っていただいた。

小牧野遺跡、それは縄文人が作ったとされる日本最大級の環状列石(ストーンサークル)なのであった。



▲直径55メートル。他にも環状列石は、青森県の弘前市、秋田県や岩手県、北海道など各地に遺跡が残っているという






▲「縄文の学び舎 小牧野館」にて、伊沢さんのうんちのコーナー

なぜこの資料館にこの展示?と思ったら、縄文時代は野外でうんちをするのが当たり前で、
そういった排泄物がどのように自然に還っていくかが、伊沢さんが足で、いやお尻で稼いだ克明なデータを基に、
リアルなレプリカを使って解説されていた。なるほど、そういうわけだったのね。



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▲『コケはともだち』(著:藤井久子/監修:秋山弘之/発行:リトルモア


さて、話はまったく変わって。
かなり遅ればせなのですが、少し前に嬉しいニュースがありました。

拙著『コケはともだち』が増刷され、このたびおかげさまで5刷目となりました。じつは7月末から書店に並んでいます。
6月に発行元のリトルモアさんからこの一報がありながら、日頃からブログに書かねばと思っていることが多過ぎて、
ついついこのニュースを書くのが今頃になってしまいました。

この本を手に取るといまでも、

「世間にはコケの美しさ、面白さに気づいていない人があまりにも多過ぎる。コケのことを知れば、その人の人生はもっと楽しくなるはず!」

と、この本の企画書を書いていた当時の、熱い(そしてちょっとおせっかいな?!)気持ちがありありと思い出されます。
そしてページをめくれば、私だけでなく、編集者のTさん、リトルモアの皆さん、監修やイラスト、デザインなど、
この本にに携わってくれた皆様が注いでくれた愛情がにじみ出てきそうです。

これからもどうかこの本が、コケのことが気になり始めた方の助けとなる一冊であり続けますように。

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奥入瀬コケ紀行 その3: 「苔ルーム」に潜入!

2016-09-23 12:54:42 | コケをめぐる旅




9月に入り、机にかじりつきながらコケのことばかりしている今日この頃です。
最近、夢にまでコケのことが出てくるシマツで、「あ、夢にまでコケが出てきた!」と寝ている自分が驚いて、深夜に飛び起きてしまうことも。
まさに寝ても覚めてもコケ状態。好きなことでここまで頭がいっぱいになるって正直、大変。
だけど生きている間に自分の好きなことが見つかり、それに没頭できる環境もあるというのはやっぱりありがたい。
恵まれた日々を噛みしめる毎日です。

さて、そんなわけで同じく「コケのこと」ながら、なかなかブログが更新できなかったのだが、
今日はやっとこ奥入瀬コケ紀行の最終話である。

今回、旅行の直前までその予定ではなかったのだが、まさかのチャンスに恵まれて、
奥入瀬渓流沿いにたたずむ高級リゾートホテル「奥入瀬渓流ホテル」のとある特別なお部屋に泊まることができた。


それはどんなお部屋かというと・・・





こちら!





▲じゃーん! グリーンで埋め尽くされたお部屋!


こちら、同ホテルが企画したこの夏限定の「苔ルーム」である。 →詳細は星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルのHP

この部屋のことは、周りのコケ好きさんたちの間でニュースリリースが発表された当初から話題になっており、
その存在は知っていたのだが、まさか自分が泊まれることになるなんて・・・。

もちろん、親しいコケ友さんたちからはうらやましがられ、
「泊まったからには、その部屋の細部にいたるまで見てきたことをあますことなく報告せよ!」
との任も仰せつかりましたゆえ、ここにそのすべてをご報告させていただきます、ハイ。(笑)


まずは、玄関。





「グリーン系のスリッパ」というのは想定の範囲内だったので驚かなかったのだが、注目すべきはスリッパの先にあった。



▲なんじゃこりゃ!



▲そう、コケの胞子体です


スリッパはただのグリーンのスリッパと見せかけて、じつはコケの群落だったのだ。やられた!



▲履いてみるとこうなります


そして玄関横にある靴入れの上には本物のコケがお出迎え。



▲右にあるスプレーはシュースプレーなどではない。もちろん苔玉を潤すための水が入ったスプレーである


次にバスルームは・・・



▲写真が暗くてちょっとわかりにくいですが、タオルはもちろん石鹸もグリーン、歯磨き粉のパッケージもグリーン(これはたまたま?!)だった


そしてお手洗いは・・・



▲便座の蓋が大地に見立てられ、コケが一面を覆っています(注:もちろんフェイクです!)。



▲よく見るとトイレットペーパーもグリーン


ちなみに後日、この部屋の写真をSNSにアップしたところ、
オカモス関西の重鎮Mさんから「スリッパの胞子体はオオツボゴケでは?」との主旨のコメント。

オオツボゴケとは動物のフンの上に生える、コケの中でも珍しい種類で、いわゆる「糞ゴケ」と呼ばれる類。
たしかにこのスリッパの胞子体は、まだ胞子を飛ばす前の若いオオツボゴケの胞子体に見える。

  ※残念ながら手持ちの写真がないので、詳しく知りたい人は「オオツボゴケ」もしくは同種とよく似た「マルダイゴケ」で検索してみてください。



思わずSNSのコメントを見て、さすがMさん!と唸ったと同時に、
それならばこのスリッパは玄関よりもぜひトイレに!と思った次第である。







さて、玄関周りで長くなりましたが、いよいよ部屋の中に入ります。





















大型家具からちょっとした小物に至るまで、どこもかしこもグリーン系。
よくぞここまで集めたなぁと、部屋を一望し思わず感嘆の声が漏れる。

なお、この部屋を企画した同ホテルのNさんによると、

「初めての試みなのでまだ手探りなところも多いんですが、まず初年はとにかくコケに包まれているような緑の空間を作りたかったのです」

とのこと。

この部屋を作るに際し、アイデアを地元のデザイン系の学生たちに募り、スリッパの胞子体やトイレカバー、ベッドの壁面にかけられたコケ画など、
これは絶対に既製品ではないなと思わせるオリジナリティーの高いグッズは彼らによる制作なのだそうだ。

さらに、ベッドの向かい側にあるテレビ台周りもステキでした。












▲はい、喜んでシュッシュさせていただきます!


ちなみに、ちょっと気になったのがこの空間。
このモコモコのコケ風マット、手触りもよくて、
見ているだけではどうにももったいないのだが・・・
はて、どんな使い道があるだろう?






▲ベッド横のソファからジャゴケ風クッション(クッションカバーの質感が似ている)を持ってきて、上の棚から読みたい本をチョイスして・・・



▲こんなふうに利用してはどうでしょう


さらに苔ルームを出ても、このホテルのコケ尽くしは終わらない。



▲フロントで受付係の方々が使っているパソコン



▲コケが全面を覆わず、まだ土部分が見えているところが逆にリアル



▲お土産物コーナー。「苔涼し」は数年前に訪れた時にもあったコケスイーツ。もはや定番なのだろう



▲ちなみにこちらが中身。奥入瀬渓流のコケむす岩をイメージしたクルミ入りの砂糖菓子だ



▲さらにその横には、新たなコケスイーツが増えていた!



▲和菓子もあれば、洋菓子もあり!




▲丁寧な断り書きが・・・





▲さらにさらに、お土産物コーナーの目立つところにはビクセンとコラボレーションして作られたコケ観察グッズまで




▲もちろん苔ルームにも置いてあり、自由に試用できるようになっていた

 
   ※なお、このコケ観察グッズは「おいけん」で通販もしている模様。詳細についてはこちらへ → 


読んでいる方もだいぶお腹いっぱいになってきたかと思われるが、まだまだ終わりません。
こういった有形のもの以外にも、先述のNさんをはじめコケに詳しい同ホテルのガイドさんの案内で趣向を凝らしたコケツアーも用意されており、
宿泊者のやる気次第で、さらにディープなコケ世界に足を踏み入れることも可能なのである。



ちょっとこの画像では見づらいが、早朝5時からの「渓流モーニングカフェ」も前日からすでに予約で満席。
奥入瀬の自然を体感したいという宿泊者たちのモチベーションの高さがうかがえる。





また、さらにホテルでは毎日「森の学校」と銘打った地元ガイドによる座学の講座も開催されている(無料)。
基本的に夜開催なので、昼間に別のガイドツアーの予定を入れている人でもこの講座を聞くことができる。
星空講座などは屋外で実際に夜空を観察をしながら行われたりもするのだそう。





普段、旅行するといってもこのような高級リゾートホテルに泊まり慣れていない私は、正直言って宿泊費が高い!と思っていたが、
宿泊者がこのホテルでどのように過ごしたいか、よりよい選択ができるように設けられた幅広いサービスのための価格設定なのだとちょっと納得した。


ホテルをチェックアウトしたあと時間があったので、フロントロビーから1階下に降りてみた。
そこは間仕切りもなく広々とした空間で、地元にちなんだアートを紹介するスペースが設けられていた。
さらにそこからホテルの敷地内の林へと出ることもできるし、屋内の椅子に座ってガラス越しに緑を楽しむこともできる。



▲最近新しく設けられた展示物。看板を読むと、当の展示物は屋外にあるとのこと



▲コケむす板?!いえいえ、これはかつて奥入瀬渓流に置かれていた「苔テーブル」でした



▲2012年秋に訪れた際に撮影した、在りし日の苔テーブル


青森滞在最後の夜は、地元ガイドのKさん親子にねぶた祭りに連れて行ってもらった。

人生初体験、聞きしに勝る「ねぶた」の大迫力。
老若男女がそろいのハッピを着て、跳人(はねと)たちが練り歩き、
沿道からは見物客たちの威勢のよい「ラッセラー」の掛け声があちこちで響く。

5日間続くこの祭りが終わることは青森県民の夏が終わるのと同意であるという。
祭りの終わりをさかいに、気候も不思議と秋めいてくるのだそうだ。


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奥入瀬コケ紀行 その1 : 4時間で200メートルの旅

2016-08-19 16:27:08 | コケをめぐる旅

▲アオモリサナダゴケ (2016年8月 奥入瀬渓流)


この夏は夫の仕事の都合もあって8月初旬にまとまった休みを取り、青森県の奥入瀬渓流へ遊びに行った。
2012年に初めて訪れて以来、今回が人生5回目の奥入瀬である。

昔から旅行が好きで、人生の限りある時間とお金を私はできるだけ世界の色々な所を見て回るのに使いたいという旅行者タイプであり、
決して同じ場所を何度も訪れる旅を好む人間ではないと思っていたのだけれど、屋久島と奥入瀬だけは別格だ。何年かに一度は無性に訪れたくなる。

それはなぜなのかと考えてみたところ、やはり一番はその場所の自然環境が醸し出す独特の雰囲気みたいなものに強く惹かれていること、
そしてもうひとつ大事なポイントとしては、心惹かれるけれどそれをいまだ上手く言い表わせずにいる私に寄り添って、
一緒に答え探しに付き合ってくれる人々がそこにいるからだと思い当たった。

ちなみに屋久島はここ15年ほどで6回、今月末で7回目の訪問となる予定。
日に日に楽しみなのであるが、その前にいま抱えている大切な仕事に目途をつけなくてはと焦る毎日でもある。


さて、ありがたいことに今回の旅も、地元の自然ツアーガイドであり、
〝私の奥入瀬の妹〟と(勝手に)呼んでいるEさんが連日私たち一家をアテンドしてくださった。

初日は同じく地元ガイドのNさん宅に泊めていただき、夕方から庭で宴会、そのままの流れで夜中には星空観察へ。
奥入瀬渓流にほど近く周りに民家が数軒しかないNさんの自宅の庭では、夜空を見上げると天の川がはっきりと見えた。
夏の星を数えていたら大きな流れ星も通りぬけ、私たちは声をあげて大興奮。
星の世界もなかなか奥が深そうだが、名も知らぬ無数の星たちを眺めているとやっぱり興味が湧いてしまう。



▲初日に私たち一家を泊めてくれたNさん宅の庭で見つけたカタツムリ。見たことのない殻の形をしていた



▲宴会に地元の写真家Ⅰさんが持ってきてくれたコブつきのミズ(山菜)


翌日は午前中にMさんのガイドで十和田湖のカヌーツアー、
午後からはKさんのガイドで森歩きツアーを楽しんだ。

Kさんとは、じつは「NPO法人 奥入瀬自然観光資源研究会」の代表理事であり、
この春に『奥入瀬自然誌博物館』という本を上梓した河井大輔さんのことである(ちなみに本のデザインを手がけられたのはカヌーガイドのMさん)。
この本は自然に興味がある人にとっては大変面白い内容で、私の中ではここ数年読んだ本のなかで印象に残る本ベスト5には確実に入る本である。

本の背表紙を閉じた時には私はすっかり「河井大輔ファン」になっており、
せっかく今回もツアーをお願いできるのだからと旅行の数日前には再度この本を読み込んで当日に臨んだ。

この本の魅力については今ここで書くと長くなるので、このあとの記事でゆっくりと語らせていただこうと思う。
 ※ちなみに発行当初に、コケ友Yさんもブログでもこの本の感想を書いていて、激しく共感したものでした。



▲十和田湖をカヌーでめぐる




▲午後からは奥入瀬渓流の森へ


さて、河井さんと奥入瀬渓流の下流域にある「石ヶ戸休憩所」で待ち合わせ、まずはその辺りを歩こうということになった。

最初は奥入瀬渓流が今回初めての夫にカリスマガイド・河井大輔の解説をぜひとも聞いてもらいたい!と
夫を河井さんの前へ前へと積極的に促していたつもりだったのだが、
いつのまにか途中から私が河井さんを横取り(?)し、Eさんも巻き込んで3人でどんどんミクロの世界へ。
今思い出しても何きっかけでそうなってしまったのかわからない。

でも気づくと4時間近く森にいて、たった200メートルほどしか移動していないのだった。
夫はあきれを通り越してなんとやら…だったろうが、なんせ私はこの200メートルの間ほとんど地面に集中していたので、
実際に彼がどんな表情をしていたのかはわからない。毎度のことだがこんな私で申し訳ない、夫よ。

そして謝っていながらなんだが、やはり森の足元は私の心をわしづかみするような不思議に満ちていて、
地面から一時も目が離せず、たった200メートルの移動でも十分満足のミクロトリップができたのだった。






▲「河井さん横取り事件」のきっかけは、薄暗い森の中で明るく輝く「アオモリサナダゴケ」を見つけたからか、はたまた美しいキノコが目に留まったからだったか…



▲地面に落ちたホオノキの実にだけつくという「ホソツクシタケ」。若い時は白く、成熟するとこのように黒くなる



▲こちらは落ち葉からニョキニョキと「オチバタケ」



▲高々と無性芽を突き上げる「エゾチョウチンゴケ」






▲コケマットの上には小さなシダたちの群生



▲マットなグリーンで葉の上に毛が生えている「カラクサシダ」



▲こちらは「コケシノブ」(という名前のシダ)。珍しくソーラス(胞子嚢群)をつけている






▲コケよりさらに小さい変形菌たち


そしてこの日、いちばん驚いたのはこちら。



▲(ちょっとピンボケしていますが)地面から長~いマッチ棒?!



▲「そっと掘り起こしてみて」と河井さんに言われEさんが掘ってみると



▲キノコかなとは思っていたが、まさか冬虫夏草だったとは!正体はカメムシに寄生する「カメムシタケ」だそう



▲宿主となったカメムシ


森で出会ういかなるものについても、河井さんは当たり前のように熟知しており、
彼らに向けるまなざしは、まるで子どもの成長を長く見守ってきた親のようである。
そして私見ながら、私が奥入瀬を訪れるたびに、この河井さんの森の生き物たちに対する「親度」はカクジツに増している。
親にもいろいろいるが、河井さんは心温かくも冷静沈着な親である。
だからこそ、あのような本が書けたのだろうなと思う。 (つづく)



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「おとなのためのコケ講座」@みえむ

2015-11-22 07:58:45 | コケをめぐる旅
いよいよ昨日から京都府立植物館で「苔・こけ・コケ展2015」が開催されているが、
初日ですでに来場者は1000人を超えているとかで、かなり盛況とのこと(すばらしい!)。

自分はこの企画展のためにここ1週間は会場の展示物や物販の準備に追われていたのだけど、
じつは他にも今月はいろいろとコケ活動があり、充実した1か月になっている。

その第1弾は、11月7日(土)に三重県総合博物館(通称:MieMu/みえむ)で行われた「おとなのためのコケ講座」に参加してきたことだ。
「おとなのための」だなんて、なんてステキな響き!と案内が出されて早々、意気揚々と申込んだはよいものの、
よくよく調べたら現地に行くのに2時間半かかることを知り(しかも前日に…)、当日は午前10時の開催に間に合うよう午前7時には自宅を飛び出たのだった。


▲三重県総合博物館の最寄駅は津市。駅前のロータリーからバスに乗り、博物館までは5~10分ほど。



▲三重県総合博物館。


平成26年4月にオープンしたみえむはオープンしてまだ1年半ということで、とてもきれいな施設だった。
そしてコケがテーマの本格的な講座はオープン以来、今回が初めてだったのだとか。


▲講師は若手女性研究者のMさん(嬉しいことにMOSS‐Tシャツを着てくださっていた!)。


今回の講座は博物館の敷地内にあるコケを採取して、顕微鏡で見て図鑑と照らし合わせてみるという内容だった。
まず「コケとは何か?」という基礎的なレクチャーを座学で受けたあと、野外に出てMさんが作られた「コケマップ」に沿って7種のコケを採取する。

この日の参加者は11人。コケ初心者の方が大半を占め(とはいえコケ以外の植物や自然に詳しい方が何人もいらっしゃった)、
さらにクマムシなどコケの中のムシについて調べている方や、東京からわざわざ夜行バスに乗って(!)こられたコケ友のTさんがいて驚いた。


▲まずは敷地内の明るくて土が軟らかめの盛土に生えるコケを採取する。さて、何種類のコケがいるでしょう?



▲いろいろなメンツが見えてきた。



▲コスギゴケ。



▲ケヘチマゴケ。



▲ユミゴケ(これはコケマップのリスト外)。



▲次に踏みしめると靴に水がしみてくるような、水分の多い土壌にて。ウマスギゴケを採取。



▲さらに日陰がちな雑木林のなかへ。



▲ここではコカヤゴケを採取。他にヒメタチゴケの大きな群落からも一部を採取した。



▲日当たりの良い場所に生えるギンゴケを見つけに行く途中に生えていたネジグチゴケ。
 裸地の中でひときわ目立っていた赤い柄がコケ好きたちの目にとまらないわけがなく、しばし撮影タイム。



▲はまだ若く、これから成熟していくようだった。この秋中に胞子を飛ばすのか、いや次の春に向けて準備中という感じかな?!


昼食を食べた後は、いよいよ顕微鏡でコケ観察。

Mさんいわく、
「今日はこちらで先に何ゴケかを教えてしまっていますが、本来はコケの名前を調べる時は、
 まずは図鑑とコケを見比べて『絵合わせ』をすることが大切です」
とのこと。

今回、図鑑は「原色日本蘚苔類図鑑」 (保育社 ※現在は廃版) と「日本の野生植物―コケ」(平凡社)が、
顕微鏡は、実体顕微鏡と静物顕微鏡が参加者一人ずつに用意されていて、顕微鏡のセットの仕方から教わった。



▲上から時計回りにウマスギゴケ、ヒメタチゴケ、コスギゴケ。こう見るとコスギゴケのなんと小さなこと!


採取後に採取袋(クラフト紙)に入れておいたコケたちは、
たいがい紙に水分を奪われてこのように乾燥しているため、
まずは水滴を落として元の状態に戻す。



▲実体顕微鏡で見たコスギゴケの(帽をかぶった状態)。


何においてもそうだが、コケの同定をするときも判断するための材料が多いに越したことはない。
このように胞子体のついたものが見つかればラッキーだ。

それにしても久々に顕微鏡で見たコスギゴケの帽は、えもいわれぬきめ細やかで美しいつくり。
当たり前だが、これって人や虫がつくったわけではなく、コケ自身がつくり出したものなのだ。

毎回のことながら、顕微鏡下のコケの世界には生命の神秘を感じてしまう
(と同時に、しばらく見ていると「なんかヴェトナム風揚げ春巻っぽい」と神秘のカケラもない想像も膨らませてしまったワタクシ。コスギゴケよ、ごめん・・・)。



▲こちらは生物顕微鏡で見たヒメタチゴケ。

実は私はこの日、大阪で友人の結婚パーティーが夕方からあったため、ここでタイムオーバー。
泣く泣く途中退室することに・・・(なんせ、2時間半かかるんで!)。

参加者のみなさん、7種類すべて観察できたかな。
次回はじゅうぶん時間に余裕を持って参加したい。


なお、Mさんが最初の自己紹介でご自分がコケを意識するようになった
きっかけを話してくださったのがとても印象に残ったので最後に書き留めておきたい。

Mさんは小学2年生の時に、教科書に出てきた海外児童文学「むぎばたけ」(アリスン・アトリー著)のなかで、
ハリネズミのねぐらがふかふかのコケのベッドだったという一文を読んで以来、コケに目覚めたのだという。
私自身は文系で、国語が好きだったということもあり、このエピソードにとてもほっこり。

しかしよくよく考えれば、Mさんはまだ10代にもならない時分から、物語に出てくるたった一文でコケに目覚め、
現在に至るまでそのままコケの道をまっしぐらに進んでこられたのだから、そのコケへの情熱たるや計り知れないものがある。

でもきっと、本来、質の高い物語というのは物語の主題とは関係ないような部分にまで、
そこかしこに子どもの想像力を広げてくれる装置が仕掛けられているものなのかもしれない。
そして著者でさえ予期しないようなところで小さな読者の心を心地よく刺激し、
読者が大人になってもなお心のよりどころとなり続ける存在なのだ。

Mさんをそんな気持ちにさせ、いまもコケ研究の原点となっている「むぎばたけ」、近々ぜひ読んでみたいと思う。

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青い森へ再び。

2015-08-29 10:56:51 | コケをめぐる旅

▲奥入瀬渓流にて。オシダに光が宿る


「毎日暑すぎる…」「暑くて寝れない…」と暑さに文句を言っているうちに
8月が終わっていくような気がしていたが、数日前からようやくホッとひと息つける涼しさが戻ってきた。

いや、空は日に日に透明度が増してきているし、
夕方の雲はなんだかちれぢれとしたものがたくさん浮かんでいる。

風が吹いたときの匂いはなんだか生き物が土に還っていくような感じがして、
これはいよいよそこまで秋がきているのだと、夏の終わりに少しさみしくもなる。

でもとりあえず8月中にブログが更新できたので何よりです。


この夏は例年になくたっぷり休みを取り、旅を満喫することができた。
というのもお盆帰省で夫の実家がある山形へ行く前に、さらに北上して青森へ。

私が今住んでいる関西からだと、山形へ行くにも青森へ行くにもそれぞれ交通費にウン万円かかるのだが、
ふと思い立って調べてみたところ、山形―青森間は新幹線と在来線を乗り継いで1万円ちょっと。
乗車時間も約3時間ですむと知り、今回は山形へ行く前に急きょ青森旅行をねじこんだのであった。

行き先はもちろん、秋田県との県境にほど近い十和田湖を水源とする「奥入瀬渓流」。
約2年ぶり、人生4度目の奥入瀬である。


今回はコケも楽しみたかったが、それ以上に夏の奥入瀬渓流という、
そこかしこに生命力が満ち溢れる青々とした森をしっかりと体感したかった。

というのもいままでの奥入瀬訪問では「木を見て森を見ず」ならぬ
「コケ見て森を見ず」状態であったから(なんとも森に失礼でお恥ずかしい…)。
今回は4度目ということもあるし、あえて意識は青い森の上へ上へ。









ふー。森の空気を胸いっぱい吸い込むだけで、なんだか心が生き返る。

奥入瀬渓流とは、奥入瀬川の水源・十和田湖にほど近い子ノ口(ねのくち)から焼山(やけやま)までの全長14kmのエリアのことで、
約200mの高低差のある渓流沿いには、トチノキ、カツラを中心とした落葉広葉樹林の森が広がっている。


▲トチノキ




▲若い葉は5枚。手を広げたような形で、各葉の根元は1か所に集まっている


▲よく似ているがこちらはホオノキ。朴葉焼きの料理でもおなじみの葉っぱ。
 葉は車輪状につき各葉の根元が離れているところがトチノキと見分けるポイントだ



▲こちらはカツラの大木




▲丸い葉は秋になると濃い黄色に紅葉し、さらに落葉間近になるとカラメルのような甘い香りがする。
 この香りさえあればシロップなしでホットケーキが食べられるほど、私はこの香りが大好き(笑)



▲川向こうの木々の足元に茂るのはヤグルマソウ


▲園芸品種はひょろっと伸びた茎に青やピンクの花をつけるが、野生種は葉がとても大きい



▲シダの一種、ミツデウラボシ。「ミツデ」の名の通り本来は三つ葉だが、北国では単葉になるとか。
 葉の裏のソーラスが星に見立てられて「ウラボシ」なのだが、パン好きの私には「カイザーゼンメル」に見える…
  (カイザーゼンメルのフリー画像が見つけられなかったため載せられませんが気になる方は検索してみてくださいマセ)


しかしやっぱり足元も気にせずにいられないのが、コケ好きの悲しき性。

いつの間にかうつむき、うつむき歩いていたところ、
案内してくださっていた現地のネイチャーガイド・Kさんが、
「ここがおもしろいですよ」と腐木が積まれた一帯を指さす。




Kさん 「コケ以外にもいろんなやつがいるんです。今日はいるかな~」

さっそくルーペを取り出し、のぞきこむKさん。

私 (お、なになに? なにがいるの!?)

うずくまる私たち。



▲お、いた!やっぱり腐木といったらコケ!チョウチンゴケの仲間かな


▲(ブレブレですが)こちらはアオモリサナダゴケ。東北で多く見られ、青森県で最初に見つかり記録されたことが名前の由来


▲クモの繭(卵のう?!)


▲キセルガイ


▲腐木の上にはツルアジサイ、オヒョウ、アイコ(東北ではイラクサのことをこう呼ぶ。猛毒)など。



▲お、粘菌?!


▲あ、こっちにも粘菌だ!(ブレブレですみません)



▲白い粘菌


▲オレンジの粘菌。コケの上についている!


▲この粘菌、腐木と土のはざまに生えていたヒラハイゴケ(他のコケも混じっています)に付き、優雅に胞子を飛ばしている模様


▲あれ?! コケでも粘菌でもないものが何か見えますよ


▲おそらくコヤガの幼虫とのこと。からだに粘菌を身にまといながら、なんと粘菌をむしゃむしゃ食べていた!
 (正確にいうと粘菌を身にまとっているかは不明だが、からだの色が同化していた)

朽ちかけた木片の隙間に、湿ったやわらかい土にうずまるように、
ひそやかに生きるミクロサイズの生きものたち。
その生き様のどれもが私の想像を超え、なんと不思議で愉快なこと!
一つ一つがキラキラとまばゆい宝石のように輝いて見える。

腐木とは、木が「死」を迎えたあと、土に還っていく過程の姿だ。
しかし、その「死」のまわり、上も下も、朽ちかけているからだの中さえもが、
小さな生きものたちにとっては人生ドラマの舞台であり、
無数の小さなものたちがその場所で命を燃やし、輝いては、消えを繰り返す。

大きなものの一つの死の足元で、一日のあいだに何度も、数時間の間に何度も、
人間の目ではとうてい捉えきれない数とサイクルで、小さなものたちの生と死が交錯する。

そして彼らに居場所を与えている大きな腐木もまた彼らの手を借りながら、
大地に還り、いつしか完璧な土へと完成していく。
なんという美しいシステムだろう。

腐木が、そしてそこに潜む小さな生きものたちの営みが、
生命の不変の真理を教えてくれる。

私は彼らの姿をひと時も見逃すまいと
時間も忘れてルーペの先を見つめ続けた。


◆今回もコケ絵日記を描いてみた。この感動を忘れぬうちに・・・

  

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マイ タマゴケ クロニクル vol.3

2015-05-11 13:52:37 | コケをめぐる旅



さて、のびのびになっておりました「タマゴケ クロニクル」の最終章。
待っていてくれた人がいらっしゃるか否かはわかりませんが、遅くなってしまいすみませんでした。


春先のタマゴケ「タマちゃん」を待ちわびるようになって気づいたのは、
周囲のコケ友さん、またコケ好きの方の話に耳を傾けていると、やはり私と同じように
タマゴケが胞子体をつけるのを心待ちにしている人がとても多いということなのだった。

春にコケ好きが集まると、どんな場所でタマちゃんと出会ったか、どんな群落だったか、
いかにかわいかったかと、タマちゃん談義に花が咲く(いや「胞子が咲く」か!?)。

コケ好きじゃない人にはにわかに信じられないかもしれないが、
コケ好き同士でタマゴケの話をし始めたらコーヒー1、2杯の時間はじゅうぶんに間が持つ。

それほどにタマゴケのあの色、形、たたずまいは、コケ好きの心をくすぐる。
タマゴケはもはやコケ界のアイドル的存在なのだ。


そしてここ数年、私はアイドル・タマちゃんを追っかけて西へ東へ。
次第にどんな場所に行けばタマちゃんに会えるのか図鑑を見ずともコツがつかめてきた。




▲三重県にて。4月中旬。



▲近づいてみると・・・いました、目玉おやじ!





▲タマゴケに出会うなら低山へ。山道ぞいにひそんでいることが多い。東京都4月上旬。



▲おぉ!巨大群落!



▲しかし、とうてい手の届かない高さ・・・高嶺の花ならぬ高嶺のコケ。



▲4月上旬の東京のタマちゃんはまだ青リンゴ状態でした。




▲こちらは山形県のタマちゃん。毎年GWに訪れる夫の実家の近くの裏山。



▲手のひらよりも大きな群落。崩れやすそうな土の斜面によくくっついていられるなぁ。



▲桜前線と同じくタマちゃん前線も南から北上、東北の見ごろは4月下旬から5月あたりなのかもしれない。



▲ちなみにこれは今年のGWの様子。
 今年は全国的に夏の陽気で、同地も10日間連続の晴天。
 残念ながらタマちゃんはすっかり乾燥してアイドルらしからぬうらぶれた姿に・・・


最後に。ここ最近の新しいタマゴケトピックとして、
このかわいいタマちゃんを脅かす、
おそるべき菌類がいることも記しておきたい。

それは「タマゴケ寄生菌」と呼ばれ、タマゴケの雌株に寄生して、
本来、胞子体が出るべきところを菌糸で覆ってしまうというのである。

もしタマゴケの群落から真っ白い柄が何本も伸びていたらご注意を。
それはタマゴケ寄生菌の可能性が高い。
(写真で紹介したかったのですが、ざっと探したところ手持ちの中からは見つからず…)

なおこの菌についての詳しい話は、Google等で「タマゴケ 菌」で検索してもらうと、
日本植物分類学会が公開している「ニュースレター No. 47」の16ページ目に
コケを研究している学生Oさんが寄稿された文章が読める。

また、自然科学系雑誌「このは」(文一総合出版)でも「コケに寄生する菌類」のタイトルで
コケ研究者のAさんがタマゴケ寄生菌について触れられている。

ご興味がある方はぜひ読まれたらよいと思う。

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マイ タマゴケ クロニクル vol.2

2015-04-01 06:28:35 | コケをめぐる旅
2008年の夏にタマちゃん(タマゴケ)と初めて出会った私は、
その愛らしい姿にすっかり心をわしづかみにされ、
それからというもの山に入るたびに「タマちゃん、タマちゃん…」と
念仏のように唱えながら(はたから見るとかなり怪しい)再会を試みるのだった。

その後、何度か八ヶ岳を登った際には小さな群落と出会い、
また最初に出会った針山タマちゃん(なんだか人の名前みたいだ)とは
同じ登山ルートを登るたびに再会し、その鞠のようなフォルムに毎回きゅーんとなっていたのだが、
次に衝撃的なタマちゃんと出会ったのは、思いもかけぬ場所、
母の実家がある田舎の山中でのことだった(ちなみにこれまた長野県)。


山の緩やかな斜面に建つ母の実家には、田舎ならではのそこそこ大きな庭がある。
そして庭からは、地続きで裏山に入ることができる。

法事で母の実家を訪れた私は法要を終えて、
久々に顔を合わせた親戚たちが居間で談笑する中をこっそり抜け出し、
また例のごとくコケチェックをしに庭に出た。

 ※コケチェック:コケ図鑑を読むようになってからというもの、行く先々、とくに緑の多い場所へ行くと、
  必ずどんなコケがそこに自生しているのかをルーペと図鑑でチェックするのが習慣となっていた。


庭に配置された大きな岩に付いたコケ、スギなどの樹幹に付いたコケなどをルーペを使って夢中で見る。
ルーペでコケを覗いていると、まるで森に入っているような豊かな気持ちになれる。これが何とも楽しい。
そうして小さな森を見てはちょっと移動、見てはちょっと移動を繰り返しているうちに、
知らないうちにどんどん庭の奥へ奥へと進んでいたらしく、気づけば裏山に足を踏み入れていた。

親戚たちの声が届かない所まできてしまい、これはさすがにまずいだろう。
そう思い、庭へ戻ろうと踵を返したその時だった。

(ん?なにやら強い視線を感じる・・・)

そう、何かにじっと睨まれているような。

(タヌキか!? ま、ま、まさか、、、クマ!!?)

クマと遭遇した自分の姿が頭をよぎり、背筋が寒くなる。
もし本当にクマだったらえらいこっちゃ!
まずは冷静に。そしてクマに背中を向けぬようにせねば!

できる限り物音を立てぬようにおそるおそる辺りを見回してみる。

すると・・・



▲ジーーーーーーッ!

ぎゃ!!!

タマちゃん!! しかもなんと大勢な!!

いままで見たことのない巨大な群落からは、無数の「目玉おやじ」がにょきっと顔を出し、
このおやじ部分だけ見ていると、なんだか、エイリアン襲来、そしてこのままにじり寄られて囲まれて、
最終的には誘拐されちゃうんではないかとすら思えてくるものものしさである。



▲ちょっと引いて見てみるとこんな感じ。大きさは大人の頭部くらいはあった。(長野県、4月中旬)


まさか田舎の裏山で潜伏中のエイリアンと遭遇するとは。
しかし、ビビりつつも不思議とまたいっそうタマゴケに心惹かれてしまう。

あの睨み、キモチ悪いはずのに、なぜだか快感。
むしろ「もっと睨んで!」とさえ思えてしまう。
なんだろう、この感じ。うーむ。これぞタマちゃんマジック!


▲ジーーーーーーッ!


それ以来、あの赤い目玉にまた睨まれたくて、
タマゴケ探しは胞子体が出て(サク)の蓋が取れる春先(4月頃)を狙うようになるのであった。

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マイ タマゴケ クロニクル vol.1

2015-03-23 11:18:27 | コケをめぐる旅
顔に当たる風が気づけば驚くほど暖かくなっていて、
いよいよ春が来たと感じる今日この頃。

道端のちいさな草花や軒先の大きな木々もそれぞれに花を咲かせてにぎやかだが、
コケもご多分にもれず、ひそやかに(いやコケにとしては大々的に!だろう)春を迎えている。


登山や野山を歩くのが好きなコケ好きたちにとって、
この時季にもっとも気になるコケの一つが「タマゴケ」だろう。

「タマちゃん」の愛称がコケ好きの間ではもはや当たり前になっているほど
幅広い層から愛され続けているこのコケは、その名のとおり玉のような球形の群落を作る。
そしてこの時季になると、これまたまん丸な(サク)をつけ、
ひと目見たら忘れられないほどユニークで愛らしい表情を見せるのだ。

春になったらその姿を見ようと、タマゴケ愛好家の間では、
桜前線ならぬ「タマゴケ前線」の北上がこの時季の一大関心事。

かくいう私もタマちゃんファンの一人として桜の開花予報と一緒に
「タマゴケのが出ますよ予報」もニュースでやればいいのにとすら思っている。


欧米ではタマゴケのことを「Apple moss」という。
この時季の丸く膨らんだばかりの若いからその名がついたのだろう。

アメリカのコケ図鑑「Common Mosses of the Northeast and Appalachians」(Karl B. Mcknight,Joseph R. Rohrer,Kirsten Mcknight Ward, Warren J. Perdrizetら共著)
のタマゴケの頁では「若い時の明るい緑色の球形のは、小さなリンゴに似ている」と書かれている。



▲たしかにこの時季の若いは青りんごのよう。の上にちょこんとかぶさる蓋はリンゴの葉っぱに見えなくもない!?(東京都、4月初旬)

リンゴといえば日本人は赤色をイメージする人が大半と思うのだが、
青リンゴを連想するのがいかにも欧米らしい。



▲一方、日本のコケ好きは蓋が取れたあとのこちらのタマちゃんを「目玉おやじ」と呼ぶ。(三重県、4月中旬)


思い返せば、私のタマゴケとの初めての出会いは2008年、真夏の八ヶ岳であった。
コケは気になっていたものの「気になる」程度であったため、タマゴケの存在は知るはずもなく、
そのまん丸な姿をひと目見た時に「何これ!!!」と衝撃を受けたことを今も鮮明に覚えている。
そして下山後、すぐにコケ図鑑を買い求め、それ以来みるみるうちにコケにはまっていった。



▲(ややピンボケで見づらくてすみません)胞子体が球体の群落からツンツンと四方八方から出て、まるで緑の針山だ。(長野県、8月末)


いま見れば、このタマちゃん、すっかりが茶色くなって見頃はとうにすぎているのだが、
コケのことをよく知らなかった当時の私にとって「もしかしたらもしかするとこれは森の精霊かも…」と本気で思わせるほど、
じつに美しく神秘的なオーラをこのコケは放っており、非常にインパクトがあった。



▲若いが青リンゴなら、こちらの古いは焼きリンゴかも。


タマゴケは日本国内なら北海道から九州(ただし屋久島では見られないそうだ)の山地で見られるので、
いまもハイキングや登山でほうぼうの山を訪れるたびにタマちゃんチェックは欠かせない。

次回は、これまで出会ったタマちゃんたちについてさらに詳しく振り返ってみたい。
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ミジンコゴケ(その2)-コケたちよ、もっとミクロであれ!-

2014-05-13 08:27:51 | コケをめぐる旅
ミジンコゴケを持ち帰り、まずは実体顕微鏡で観察。

  ※実体顕微鏡:対象物を切ったり、プレパラートに載せたりせず、そのままの状態で拡大する顕微鏡。
    倍率は数倍~40倍くらいまでの比較的低倍率。
 


おぉ、ルーペよりもはるかに1個1個の個体が明確に見える!
先ほどは糸こんにゃくのように見えていたものが、
今度はウミブドウのように見えてきた。


ミジンコゴケはムチゴケ科に属するコケである。

ムチゴケ科にはこの他に、ムチゴケ、コムチゴケ、フォーリームチゴケなど「~ムチゴケ」と名のつくコケ、
スギバゴケ、フォーリースギバゴケ、コスギバゴケなど「~スギバゴケ」と名のつくコケ、
さらには西表島にしか生育が確認されていない「テララゴケ」などがある。

~ムチゴケと名のつくコケたちは大型(数センチ~十数センチ)のものが多く、
日本全国の森や林でわりと見られるメジャー種。


▲フォーリームチゴケ。茎の長さは3~8センチ。鞭枝(べんし)と呼ばれるムチのような茎がブラブラと垂れ下がっているのが特徴。
(3月、屋久島)


また~スギバゴケと名のつくコケたちはムチゴケの仲間に比べて一見、
線が細いというか繊細な体のつくりをしているが、群落はわりと大きいのでそれなりに目立つ。
自分の経験上、ムチゴケが自然と目にとまるレベルの
コケ目になっていれば、ほどなくして見つけられるコケであろう。


▲こちらはフォーリースギバゴケ。茎の長さは10センチほどとけっこう長めだが、直径は0.5センチと細くて繊細(3月、屋久島)



▲さらにアップ。一見、葉がないように見えるが、茎と枝についているボコボコとしたものが葉である


極小のミジンコゴケがこれらのコケと同じ科に属しているなんて、なんだか不思議であるが、
顕微鏡でからだのつくりを見てみると、茎は這い、二又に枝分かれしているところなどはムチゴケのようだし
葉は非常に小さくて、一見ないかのように見えるあたりはスギバゴケのようで、
ミジンコレベルに小さいとはいえ、やはりこれもムチゴケ科のはしくれなのだと見て取れないことはない。


▲そしてこちらがミジンコゴケを生物顕微鏡(数百倍まで拡大できる高倍率顕微鏡)で見たところ。
 茎の長さわずか約5ミリ、幅は葉を含めて0.2~0.4ミリ。茎からちょぼちょぼと何か出かかっているように見えるのが、なんと葉っぱ!


▲さらに、そのミクロサイズの葉の先には透明細胞があるのが特徴


しかし、いくら大目に見たってミジンコゴケは他のムチゴケ科の仲間と比べたら、
小さいことはもとより、からだのつくりがシンプルすぎる。

茎はわかったが、数百倍に拡大して見ても葉がどうにも葉っぱっぽくない。
見れば見るほど緑の棒っきれからちょっと枝が伸びかけたという感じで
教えてもらわないと葉の存在にはとても気づけない。

ミジンコゴケの葉はもしかして、退化してこんなお粗末なことになってしまったのだろうか。

もしかしたらミジンコという名前のゆえんも、
いまにも消え入りそうなその存在感の薄さからきているのかしら。

そんな素朴な疑問を古木さんに伝えたところ、
いやはや、とんでもない答えが返ってきた。


「むしろ逆です!ミジンコゴケはムチゴケ科の中でもっとも進化した最新型モデルのコケなんですよ」

「エエェッ!?」(マスオさんよろしくのけぞる私)


ここからは、その時の古木さんの詳しいお話をリアルタイムで
聞き書きしたメモが手元に残っているので、それを簡単に要約する。

 注)とはいえ、あくまで自分のために整理した文章ですので意味がわかりにくい部分があるかも。
   また明らかに認識が間違っている個所などあれば、コケに詳しい有識者の方、ご指摘いただけると助かります。


・ムチゴケ科の中で逆に最も原始的なのはスギバゴケで、その次にムチゴケなのだそうだ。

・原始的なコケというのは直立性が多く、進化が進んだコケほど匍匐性(這うタイプ)になる。
 匍匐して地面に張り付いていると、直立しているよりも風を受けにくいため乾燥にも強い。
 乾燥に強いということは、乾燥しがちな土地にも広く進出できるということであり、
 たとえば都会の公園や庭先でよく見られるハイゴケ(蘚類)はそういった意味で進化が進んだコケと見てよい。

・また、コケとは進化しているものほど小型化する傾向もある。

・つまりものは考えようで、体が大きくない・葉も発達していないというのは一見デメリットのように思えるが、
 つまりはそれだけ「体の形成にエネルギーを使っていない、省エネタイプ」ということでもある。

・なおかつ、そんなシンプルな体でありながら、枝葉が発達した大型のコケたちと同じ場所に生きられるということは、
 それだけ、徹底的に無駄を省き、かつ機能的なボディを備えている証拠というわけである。


この話を聞くまで私は、小さなコケたちの中でも、
少しでも他のコケより大きく育って表面積をかせいだほうが、
コケとして勝ち組な生き方なのだろうと勝手に思っていた。

しかしコケの哲学はこれとは真逆で、面積をかせぐ云々よりも、
より小さくシンプルであること、エネルギーを無駄遣いしないことをよしとし、
それこそがコケたちが求める「スマート」な生き方、「進化」と呼ぶにふさわしい生き方ということなのだ。

うーむ、なんだかまるで機能性・小型化をカッコ良しとする日本の電化製品のようではないか!?


私はミジンコゴケのことをすっかり誤解していたようだ。

ミジンコゴケはまさにミクロでなんぼのコケ界の看板をしょって立つ、
コケ界きっての牽引役なのではないか!

いやはや、ミジンコゴケさん、おみそれしました。

それにひきかえ、コケに魅せられたはしくれながら、
面積での陣取り合戦をとやかく言っているワタクシの脳は
しょせん、まだまだフツーの植物サイズでございます・・・。

他の植物に比べて、すでにじゅうぶん小さいにもかかわらず、
まだまだ小さく、より隙間、隙間へ向かおうとしているコケ。

コケの考えていることは底が知れない。

その奥深さに気が遠くなりながらも、
これからもますます心惹かれてしまうことになりそうだ。


▲シダの前葉体と一緒に生えていたミジンコゴケ(3月、屋久島)





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ミジンコゴケ(その1) -意外とあっけない出会い-

2014-05-07 14:08:17 | コケをめぐる旅

▲スギの木の根元。いったい何を写してるの?!とツッコミたくなるショットではありますが・・・しかしヤツはここにいる!

遅まきながら屋久島コケフォレーレポートのつづき。

屋久島コケフォレー3日目は、
今回のコケ合宿で最も衝撃を受けた一日であった。

コケフォレーは毎日午前中は島内の異なる環境へ出向き、
それぞれの環境特有のコケを見て回る。

ご存じの方も多いと思うが、屋久島は九州本土の南に浮かぶ外周約130㎞ほどの島で、
レンタカーを借りれば3時間程度で1周できる。

しかし地形は決して平たんではなく、島の内陸には
九州一の高さを誇る宮之浦岳(1,936m)をはじめ、1800m級の険しい山々が連なる。

南にあるためつい温暖な気候をイメージしてしまうが、
冬は標高の高い場所では雪が降り積もるほど。
そのような地形的特徴から屋久島は「洋上のアルプス」の異名を持つ。

小さな島に標高の高い山々が連なるということは、
つまり海辺から内陸に向けて急激に環境が変わっていくということでもある。

屋久島では海岸付近の低地は亜熱帯性の森が広がり、
少し上がって標高1,000mあたりまでは冷温帯性で
東北から九州までの暖温帯に生えている照葉樹林が見られる。

さらに登り進めば「屋久杉」をはじめとする針葉樹の森が陣取り、
標高1,800mを越えた山頂付近になると亜高山帯の植生が広がる。

この標高差における植生の違いは小さなコケについてもまたしかり。

亜熱帯性の森と亜高山帯の森では、
見られるコケの種類がまったく異なってくる。

そういった意味でも、屋久島はひとたび訪れれば
九州から北海道までコケトリップができたような気分になれる、
とってもおトクな島なのである。


▲環境省「日本の自然遺産」より抜粋


さて、前置きが長くなってしまったが、コケフォレー3日目に
私たちが訪れたのは標高460mほどに位置する渓谷だった。

今回は苔類を専門に研究されている古木達郎さんが講師ということで、
あそこにもここにもキラキラと輝く蘚類の誘惑はあれど、それらをすべて振り切って
「今回は苔類のみに集中するぞ!」とひそかに決意する。

古木さんは(前の記事にも書いたが)素人の質問にも常に真摯に答えてくださる方で、さらには
「せっかく屋久島まで来たのですから、もし見たい苔類があったら言ってくれれば探しましょう」
とまでおっしゃってくださる。

もちろん社交辞令だったのかもしれないが、そのひとことにちゃっかり乗っかった私は、
「今日の観察地で、このコケは見られますか?もしいれば見たいのですが…」
と毎日のようにリクエストを出すシマツ。

その一つが、図鑑で見てひと目で心奪われた「ミジンコゴケ」なのだった。


そう、名前に「ミジンコ」などとついているのだ。

ただでさえ小さいコケ、そのなかでもとりわけ小型な種類が多い苔類、
さらに日本に600種類ほどいるその苔類の中において
「ミジンコ」の名を冠するコケとなれば、これはぜひとも見てみたい。

しかも平凡社のコケ図鑑によれば生育地域が「鹿児島県~琉球、小笠原」とある。
つまり屋久島はエリア内であるが、地元・関西に帰ってからではどんなに見たくても見られないということ。

このチャンス、生かさずしてどうする!?

厚かましい私のミジンコゴケリクエストにも快諾してくださった古木さんは、
「いるところにはいるんですよ。スギやヘゴの木の根元、根元と土中間の辺りのね、少し暗くて湿りかけたような所にね」
と言いながら、ずんずんと渓谷の奥へ入っていかれる。

それを追っかける私と同じくミジンコゴケに興味津々のコケ好き数名。

(図鑑によれば茎の長さは約5㎜、幅はたった0.2~0.4㎜。そのようなミクロなコケ、いくら古木さんでも見つけられるのだろうか・・・)

すこし不安になりながら古木さんの背中を追いかける。
いくらなんでもそんなすぐには見つからないだろうと高をくくっていた矢先・・・

「あ、ここにいますね~」

とあっさりおっしゃる古木さん。

「えっ(早っ!) ミジンコゴケ、そこにいるんですか?!」



▲「はい、ここです」とスギの根元を指をさす古木さん

あわてて駆け寄るが、どこにいるんだか私にはさっぱり見えない。

「す、すみません、どこでしょう…(汗)」

「ここです、ここ。いや~、けっこうな大群落だな~」

と言ってミジンコゴケがついた樹皮の一部を手渡してくださる。


▲ちっちゃ!緑のモヤモヤは見えるが、小さすぎて形がよくわからない


そこでルーペでよく見てみると・・・







絡み合うように生い茂る透明感のある美しき緑色。
そしてルーペで見てもやはり茎と葉の区別がよくわからない。
なんだか頼りなげで、緑色の糸こんにゃくのようにも見える。

こ、これもコケなのか・・・。

「適した環境を探せばいる所にはいるコケですが、ここまで大きな群落は珍しいですね」

と古木さん。

自分が想像していたよりも小さく、そしてあまりに簡素なつくりに驚きつつ、
この樹皮の破片を持ち帰り、顕微鏡で観察することにする。 (つづく)


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